1 00:02:09,848 --> 00:02:13,451 お方様は このゆきえに 2 00:02:13,451 --> 00:02:18,123 家を捨てて いま一度 大奥へ 3 00:02:18,123 --> 00:02:20,425 そう言われるのですね? 4 00:02:20,425 --> 00:02:24,829 無理な頼みであることは 分かっている 5 00:02:24,829 --> 00:02:27,599 何度も考えました 6 00:02:27,599 --> 00:02:33,672 そなたも今では幸せな母 妻 7 00:02:33,672 --> 00:02:36,374 大奥へ上がるためには 8 00:02:36,374 --> 00:02:39,074 その2つを捨てなければならぬ 9 00:02:41,179 --> 00:02:43,949 でも そこをあえて… 10 00:02:43,949 --> 00:02:49,187 お方様 なぜでございます? なぜそのような無理を? 11 00:02:49,187 --> 00:02:55,126 ゆきえ この度のこと底が深い 12 00:02:55,126 --> 00:03:00,065 事が福松君一人では 済まぬことだからです 13 00:03:00,065 --> 00:03:04,736 確かなことは このわたくしには分からぬ 14 00:03:04,736 --> 00:03:08,006 そなたの夫 木村殿にも 15 00:03:08,006 --> 00:03:12,644 いまだ しかとは お分かりに なっていないことであろう 16 00:03:12,644 --> 00:03:15,213 大奥では滝川殿 17 00:03:15,213 --> 00:03:21,152 だが その背後には もっと大きな力の存在がある 18 00:03:21,152 --> 00:03:24,689 それ以外には考えられぬ 19 00:03:24,689 --> 00:03:27,359 したが ゆきえ 20 00:03:27,359 --> 00:03:32,330 このようなこと言うても 私の本音は 21 00:03:32,330 --> 00:03:37,202 母… 母だからです 22 00:03:37,202 --> 00:03:39,204 母… 23 00:03:39,204 --> 00:03:44,943 別れる時 私の名を呼んだ福松君の声が 24 00:03:44,943 --> 00:03:48,246 この耳に残って離れない 25 00:03:48,246 --> 00:03:52,450 ハア… あの声が 26 00:03:52,450 --> 00:03:56,721 私は腹を貸しただけと さげすまされる 27 00:03:56,721 --> 00:04:00,325 お腹様かもしれぬ 28 00:04:00,325 --> 00:04:05,730 でも子を思う気持ち 誰にも負けぬ 29 00:04:05,730 --> 00:04:09,534 のう ゆきえ 頼みじゃ 30 00:04:09,534 --> 00:04:14,105 私は大奥を出る時 御台様にすがって 31 00:04:14,105 --> 00:04:18,543 これ このように 書状を書いてもらってきた 32 00:04:18,543 --> 00:04:22,213 書状? そなたを 33 00:04:22,213 --> 00:04:25,583 福松君の乳母として 大奥へ上げてもよいという 34 00:04:25,583 --> 00:04:28,353 お許しの書状です 35 00:04:28,353 --> 00:04:34,459 ゆきえ これ このとおり 見てたもう 36 00:04:34,459 --> 00:04:38,296 頼みじゃ のう ゆきえ 37 00:04:38,296 --> 00:04:42,534 お方様のお気持ちは よく分かります 38 00:04:42,534 --> 00:04:46,634 分かっているからこそ こうして お目にかかりに来たのです 39 00:04:49,441 --> 00:04:53,478 でも… でも? 40 00:04:53,478 --> 00:04:58,249 お言葉を そのまま お返しすることになります 41 00:04:58,249 --> 00:05:04,222 ゆきえ そなた 私の頼み 断ると言うのでは? 42 00:05:04,222 --> 00:05:07,926 お断りさせてくださいませ 43 00:05:07,926 --> 00:05:10,428 ゆきえ 44 00:05:10,428 --> 00:05:12,797 お方様 45 00:05:12,797 --> 00:05:17,736 「家を捨てて」 お方様は言われますが 46 00:05:17,736 --> 00:05:22,340 わたくしにとって家とは 夫や一子 小太郎 47 00:05:22,340 --> 00:05:24,609 夫にとって この度の出来事は 48 00:05:24,609 --> 00:05:28,780 命を懸けて当たらねばならぬこと 49 00:05:28,780 --> 00:05:32,884 夫を支えるのは妻の役目 50 00:05:32,884 --> 00:05:35,854 ゆきえ 夫を支えるは 51 00:05:35,854 --> 00:05:39,791 何も内からだけとは 限らないでしょ 52 00:05:39,791 --> 00:05:42,961 外から わたくしが あの方の仕事の 53 00:05:42,961 --> 00:05:46,131 助けができるでしょうか? 54 00:05:46,131 --> 00:05:51,903 内にいて つらい思いに耐えかねる あの方の気持ちを 55 00:05:51,903 --> 00:05:54,639 支えとうございます 56 00:05:54,639 --> 00:05:59,811 そのためにこそ わたくしは あの方の妻になったのです 57 00:05:59,811 --> 00:06:05,049 命を懸けた夫の身に 万一のことがあれば 58 00:06:05,049 --> 00:06:07,652 小太郎はまだ5歳 59 00:06:07,652 --> 00:06:11,122 誰があの子の将来の面倒を 見るのでしょう 60 00:06:11,122 --> 00:06:14,826 ゆきえ 福松君も同じ5つじゃ 61 00:06:14,826 --> 00:06:17,328 いま一度 考えてたもう 62 00:06:17,328 --> 00:06:19,764 のう ゆきえ 63 00:06:19,764 --> 00:06:23,601 お方様 お許しを 64 00:06:23,601 --> 00:06:27,401 なかったことにして お許しください 65 00:06:33,411 --> 00:06:36,581 そうであったな 66 00:06:36,581 --> 00:06:39,584 そなたも母 67 00:06:39,584 --> 00:06:43,521 わらわも母 68 00:06:43,521 --> 00:06:48,760 母なれば そなたの気持ち 69 00:06:48,760 --> 00:06:51,660 分かってやらねばならぬ 70 00:06:55,200 --> 00:06:57,836 今の願いは 71 00:06:57,836 --> 00:07:02,340 私のわがままでした 72 00:07:02,340 --> 00:07:05,577 許してたもう 73 00:07:05,577 --> 00:07:08,177 お方様 74 00:07:57,996 --> 00:08:00,996 お母様 どこに行ってたんです? 75 00:08:06,905 --> 00:08:10,475 あ… ちょっと 76 00:08:10,475 --> 00:08:16,314 私の本音は母… 母だからです 77 00:08:16,314 --> 00:08:22,587 別れる時 私の名を呼んだ福松君の声が 78 00:08:22,587 --> 00:08:26,658 この耳に残って離れない 79 00:08:26,658 --> 00:08:29,761 そなたも母 わらわも母 80 00:08:29,761 --> 00:08:34,098 母なれば そなたの気持ち 81 00:08:34,098 --> 00:08:36,701 分かってやらねばならぬ 82 00:08:36,701 --> 00:08:42,740 今の願いは私のわがままでした 83 00:08:42,740 --> 00:08:45,040 許してたもう 84 00:08:52,250 --> 00:08:55,954 旦那様 お願いがあります 85 00:08:55,954 --> 00:08:57,954 何だ 86 00:09:00,692 --> 00:09:06,197 何にもおっしゃらずに わたくしを離別してくださいませ 87 00:09:06,197 --> 00:09:08,866 離別? 88 00:09:08,866 --> 00:09:11,602 急に どうしたというのだ ですから… 89 00:09:11,602 --> 00:09:14,405 ゆきえ 物事には 90 00:09:14,405 --> 00:09:18,209 黙って のんでよいことと ならんことがある 91 00:09:18,209 --> 00:09:21,579 理由も分からずに 長年 連れ添ったそなたを 92 00:09:21,579 --> 00:09:23,779 離別できると思うか 93 00:09:25,917 --> 00:09:30,655 それとも この私に 何か至らぬ所でも見いだしたのか 94 00:09:30,655 --> 00:09:33,055 いいえ では何だ 95 00:09:35,727 --> 00:09:42,133 私たちには 小太郎という子もいるんだぞ 96 00:09:42,133 --> 00:09:45,336 今度のことは 97 00:09:45,336 --> 00:09:48,072 その子ゆえです 98 00:09:48,072 --> 00:09:50,341 小太郎? 99 00:09:50,341 --> 00:09:55,446 今日 左京の方様に お目にかかりました 100 00:09:55,446 --> 00:10:00,685 左京の方様? 何かお話があったのか 101 00:10:00,685 --> 00:10:04,885 大奥に戻ってくれと言われました 102 00:10:07,191 --> 00:10:10,495 福松君を守るのが わたくしの役目 103 00:10:10,495 --> 00:10:13,698 いや しかし ゆきえ それは… はい 104 00:10:13,698 --> 00:10:18,703 わたくしは はっきりとお断りしました 105 00:10:18,703 --> 00:10:21,572 でも… 気が変わったのか? 106 00:10:21,572 --> 00:10:25,810 考え直す気になったのです 107 00:10:25,810 --> 00:10:29,013 この袖を見て 108 00:10:29,013 --> 00:10:31,082 これを見て? 109 00:10:31,082 --> 00:10:33,985 お方様も おっしゃっておいででした 110 00:10:33,985 --> 00:10:36,685 この度のことは根が深いと 111 00:10:38,689 --> 00:10:42,693 あなた わたくしが大奥に上がることは 112 00:10:42,693 --> 00:10:46,697 あなたのお仕事の お役に立つことになりませぬか? 113 00:10:46,697 --> 00:10:48,933 ゆきえ 聞いてください 114 00:10:48,933 --> 00:10:52,703 もうしばらく わたくしの言うこと 115 00:10:52,703 --> 00:10:58,042 お方様は後に残した福松君の 身を案じられ 116 00:10:58,042 --> 00:11:01,145 わたくしに頼みに見えたのですが 117 00:11:01,145 --> 00:11:04,082 大奥に上がることは 118 00:11:04,082 --> 00:11:08,352 夫と子供を捨てること それはできませぬ 119 00:11:08,352 --> 00:11:10,888 まして この度のお仕事は 120 00:11:10,888 --> 00:11:15,893 あなたも 命を懸けていることなれば 121 00:11:15,893 --> 00:11:18,563 万一ということもある 122 00:11:18,563 --> 00:11:22,900 その時に 小太郎の将来は どうなります?と 123 00:11:22,900 --> 00:11:25,503 申し上げると 124 00:11:25,503 --> 00:11:29,340 お方様はこう申されました 125 00:11:29,340 --> 00:11:34,178 そなたも母なら わらわも母 126 00:11:34,178 --> 00:11:39,817 母ならばこそ そなたの気持ちが分かる 127 00:11:39,817 --> 00:11:44,822 わがままを言った 許してくれ 128 00:11:44,822 --> 00:11:49,127 あのお言葉 身に染みました 129 00:11:49,127 --> 00:11:51,662 そこへ この袖 130 00:11:51,662 --> 00:11:56,734 お方様の身に関わる大切なお品 131 00:11:56,734 --> 00:11:59,904 お役に立ちたいと思っても 132 00:11:59,904 --> 00:12:02,807 伽羅の匂いがするとばかりで 133 00:12:02,807 --> 00:12:06,611 何一つ分かりません 134 00:12:06,611 --> 00:12:09,013 福松君を置かれて 135 00:12:09,013 --> 00:12:12,783 養生所へ行かれた お方様のためと 136 00:12:12,783 --> 00:12:16,521 あなた様のために 137 00:12:16,521 --> 00:12:21,726 大奥へ上がりとうございます 138 00:12:21,726 --> 00:12:28,099 ゆきえ そなたの気持ちは よく分かった 139 00:12:28,099 --> 00:12:32,036 そこまで考えてくれてと 140 00:12:32,036 --> 00:12:35,873 感謝の気持ちさえ湧く 141 00:12:35,873 --> 00:12:40,211 だが何も離別の要は… 142 00:12:40,211 --> 00:12:43,581 いいえ 大奥に上がって 143 00:12:43,581 --> 00:12:47,652 わたくしが あなた様のお仕事のお役に立つ時 144 00:12:47,652 --> 00:12:50,555 木村伊織の妻の身では 145 00:12:50,555 --> 00:12:52,955 通ることも通らなくなりましょう 146 00:12:54,926 --> 00:12:57,228 その代わり 147 00:12:57,228 --> 00:13:01,732 お役目果たしたその後で 148 00:13:01,732 --> 00:13:05,002 互いに無事でおりましたら 149 00:13:05,002 --> 00:13:09,740 どうぞ… どうぞまた 150 00:13:09,740 --> 00:13:14,745 あなた様の妻にしてくださいませ 151 00:13:14,745 --> 00:13:17,315 ゆきえ 152 00:13:17,315 --> 00:13:22,920 頂いた離縁状をしっかりと抱いて 153 00:13:22,920 --> 00:13:27,658 小太郎を連れて大奥に上がります 154 00:13:27,658 --> 00:13:30,895 小太郎も連れて? 男のお仕事に 155 00:13:30,895 --> 00:13:34,332 後ろ髪引かれる存在は禁物 156 00:13:34,332 --> 00:13:38,736 それに母上と別れられた福松君は 157 00:13:38,736 --> 00:13:42,540 共に同じ年の5つなれば 158 00:13:42,540 --> 00:13:46,244 よい遊び相手にもなりましょう 159 00:13:46,244 --> 00:13:50,944 旦那様 分かってください 160 00:13:57,421 --> 00:14:00,221 滝川様がお見えでございます 161 00:14:02,827 --> 00:14:07,598 木村殿 そなたの妻女 左京の方の頼みにて 162 00:14:07,598 --> 00:14:11,469 大奥へ入るというのは まことか はっ 163 00:14:11,469 --> 00:14:15,973 バカな そのような 左京の方が何と言おうと 164 00:14:15,973 --> 00:14:20,444 大奥の女を雇い入れる権限は すべて この滝川 165 00:14:20,444 --> 00:14:24,382 まして そなたの… ゆきえはもはや 166 00:14:24,382 --> 00:14:26,550 私の妻ではございません 167 00:14:26,550 --> 00:14:28,552 何? 168 00:14:28,552 --> 00:14:31,489 望みにより 169 00:14:31,489 --> 00:14:34,792 離別いたしました 170 00:14:34,792 --> 00:14:37,395 それから滝川様 171 00:14:37,395 --> 00:14:40,865 大奥の女たちを雇い入れる権限は 172 00:14:40,865 --> 00:14:46,070 すべて滝川様にと言われましたが 特別の場合もありましょう? 173 00:14:46,070 --> 00:14:48,170 何が特別なのじゃ 174 00:14:53,611 --> 00:14:57,311 ゆきえには このとおり 175 00:14:59,684 --> 00:15:02,553 御台様のお墨付きがございます 176 00:15:02,553 --> 00:15:07,158 「左京の頼み きいてやるがよい」 177 00:15:07,158 --> 00:15:09,258 御台… 178 00:15:16,901 --> 00:15:20,905 おもん様 福松君に 179 00:15:20,905 --> 00:15:25,409 新しいお母様ができるのですよ 180 00:15:25,409 --> 00:15:29,447 よかったですね ウフフフ 181 00:15:29,447 --> 00:15:31,547 アハハハ 182 00:15:41,425 --> 00:15:44,228 旦那様 183 00:15:44,228 --> 00:15:46,528 行くのか 184 00:15:48,532 --> 00:15:52,903 小太郎 お父様にご挨拶を はい 185 00:15:52,903 --> 00:15:58,242 お父様 小太郎はお母様と 大奥へ参ります 186 00:15:58,242 --> 00:16:02,346 小太郎 そちには昨日も 187 00:16:02,346 --> 00:16:06,183 よーく申し聞かせたな 覚えておるか? 188 00:16:06,183 --> 00:16:09,453 はい 言ってみるがよい 189 00:16:09,453 --> 00:16:15,025 小太郎は今日から お父様の子でも お母様の子でもありません 190 00:16:15,025 --> 00:16:18,529 若君にお仕えする木村小太郎です 191 00:16:18,529 --> 00:16:21,532 よく言うた そのとおりだ 192 00:16:21,532 --> 00:16:25,669 お父様は小太郎を 弱虫に育てたつもりはない 193 00:16:25,669 --> 00:16:28,205 小太郎は武士の子だ 194 00:16:28,205 --> 00:16:32,042 どんなことがあっても 泣いたり 弱音を吐いたりするでない 195 00:16:32,042 --> 00:16:35,379 はい お母様に無理を言って 196 00:16:35,379 --> 00:16:39,583 困らせるでないぞ はい 197 00:16:39,583 --> 00:16:45,156 ゆきえ そなたも今日 七つ口を入ったからは 198 00:16:45,156 --> 00:16:50,194 福松君の乳母 松島 心するがよい 199 00:16:50,194 --> 00:16:52,897 はい 200 00:16:52,897 --> 00:16:54,932 それから例の袖のことだが… 201 00:16:54,932 --> 00:16:57,268 分かっております 202 00:16:57,268 --> 00:17:00,838 このとおり肌身離さず 203 00:17:00,838 --> 00:17:05,409 きっとお役に立てるよう努めます 204 00:17:05,409 --> 00:17:10,309 お体だけは十分に おいといくださいますよう 205 00:17:14,218 --> 00:17:16,718 そなたもだ 206 00:17:27,331 --> 00:17:31,068 福松様 乳母 松島殿 通ります 207 00:17:31,068 --> 00:17:33,168 はっ 208 00:17:41,612 --> 00:17:45,850 同じく お遊び相手 小太郎殿 通ります 209 00:17:45,850 --> 00:17:47,850 はあっ 210 00:17:55,793 --> 00:17:59,697 松島様って以前は やはり 大奥においでになって 211 00:17:59,697 --> 00:18:02,333 左京の方様に お仕えしていたのですって 212 00:18:02,333 --> 00:18:08,072 まあ 子までお連れになって どういうおつもりかしら 213 00:18:08,072 --> 00:18:12,710 若君 松島でございます 214 00:18:12,710 --> 00:18:18,182 わたくしは今日から これ このとおり 215 00:18:18,182 --> 00:18:23,654 御台様のお許しによって あなた様の乳母 216 00:18:23,654 --> 00:18:29,254 母代わりと思し召して 何なりとお申し付けくださいませ 217 00:18:32,062 --> 00:18:35,266 それから ここに控えておりますのは 218 00:18:35,266 --> 00:18:39,136 松島の子 小太郎でございます 219 00:18:39,136 --> 00:18:42,039 若君様のお遊び相手として 220 00:18:42,039 --> 00:18:46,577 同じく 今日から 若君にお仕えいたします 221 00:18:46,577 --> 00:18:48,579 小太郎 はい 222 00:18:48,579 --> 00:18:51,482 ご挨拶を 木村小太郎です 223 00:18:51,482 --> 00:18:55,619 今日から若君のお遊び相手として お仕えします 224 00:18:55,619 --> 00:18:59,189 よろしくお願いします 福松じゃ 225 00:18:59,189 --> 00:19:02,159 松島のことも 小太郎のことも 226 00:19:02,159 --> 00:19:06,359 お母様から よく聞いていた よろしく頼む 227 00:19:12,002 --> 00:19:15,039 小太郎 中を案内してやろう 参れ 228 00:19:15,039 --> 00:19:17,041 あ… 229 00:19:17,041 --> 00:19:19,041 はい 230 00:19:24,648 --> 00:19:29,453 あ… うれしそうな若君 231 00:19:29,453 --> 00:19:32,356 松島様 お役目ゆえ 232 00:19:32,356 --> 00:19:35,960 今日まで わたくしが 代わりを務めてまいりましたが 233 00:19:35,960 --> 00:19:39,496 これで ほっといたしました 234 00:19:39,496 --> 00:19:42,333 では ご案内を 235 00:19:42,333 --> 00:19:44,602 どこへでございます? 236 00:19:44,602 --> 00:19:47,705 ご挨拶回りをなさるのでは ありませんか? 237 00:19:47,705 --> 00:19:52,343 あ… 梢といいましたね はい 238 00:19:52,343 --> 00:19:55,946 わたくしは今日から福松君の乳母 239 00:19:55,946 --> 00:20:01,619 福松君といえば まもなく お世継ぎになられるお方なのです 240 00:20:01,619 --> 00:20:04,755 お世継ぎといえば上様に次ぐお方 241 00:20:04,755 --> 00:20:08,325 その福松君の母代わりを 務める わたくしが 242 00:20:08,325 --> 00:20:12,229 なぜ こちらから 挨拶に出向かねばなりませぬ 243 00:20:12,229 --> 00:20:18,335 挨拶なら 向こうから来て 当然でございましょ 244 00:20:18,335 --> 00:20:20,804 そうであろう? 245 00:20:20,804 --> 00:20:22,906 そうでございました 246 00:20:22,906 --> 00:20:27,044 本当に松島様の おっしゃるとおりでございます 247 00:20:27,044 --> 00:20:31,615 福松君は お世継ぎになられるお方 248 00:20:31,615 --> 00:20:37,054 挨拶は向こうから見えるのが 本当でございます 249 00:20:37,054 --> 00:20:40,457 何?こちらから出向けと? 250 00:20:40,457 --> 00:20:42,693 松島が確かに そう申したのか 251 00:20:42,693 --> 00:20:44,928 はい 生意気な 252 00:20:44,928 --> 00:20:49,400 滝川様 このようなこと 許してはなりませぬ 253 00:20:49,400 --> 00:20:52,803 そうか よい 254 00:20:52,803 --> 00:20:54,872 では こちらから行こう 255 00:20:54,872 --> 00:20:56,872 滝川様 256 00:21:21,532 --> 00:21:25,936 これは松島殿 しばらくでございましたな 257 00:21:25,936 --> 00:21:29,073 以前 確か同じ名前の侍女が 258 00:21:29,073 --> 00:21:32,443 左京の方殿の部屋にいたと 思っていたが 259 00:21:32,443 --> 00:21:35,446 やはり同じ松島殿 260 00:21:35,446 --> 00:21:41,218 どこやらに嫁ぐために奥向きを 下がったと聞いておりましたが 261 00:21:41,218 --> 00:21:46,890 聞けば この度 大奥総取締の このわたくしさえ知らぬ間に 262 00:21:46,890 --> 00:21:51,462 こそこそと 子まで連れて2度の勤め 263 00:21:51,462 --> 00:21:56,366 気の毒に まあ 離別されたそうでございますな 264 00:21:56,366 --> 00:22:02,706 ホホホ 「大奥を預かる 総取締の私でさえ」とは大げさな 265 00:22:02,706 --> 00:22:04,942 アハハ… わたくしは 266 00:22:04,942 --> 00:22:08,612 御台様のお許しを得て 大奥に上がったのです 267 00:22:08,612 --> 00:22:12,316 何なら書状をお見せいたしましょ 268 00:22:12,316 --> 00:22:17,254 それに以前にも 滝川様という同じ名の 269 00:22:17,254 --> 00:22:21,158 意地の悪い御年寄が おいでになりましたが 270 00:22:21,158 --> 00:22:25,295 聞けば今では意地悪いだけでなく 271 00:22:25,295 --> 00:22:27,731 何かを たくらんでおいでとか 272 00:22:27,731 --> 00:22:30,901 年経た化け猫が 何をたくらんでいるのか 273 00:22:30,901 --> 00:22:34,538 正体 現すまでは この松島 274 00:22:34,538 --> 00:22:39,338 命に代えても福松君を お守り申さねばなりませぬ 275 00:22:41,678 --> 00:22:45,516 さて どんな正体 現すことか 276 00:22:45,516 --> 00:22:47,584 オホホホホ 277 00:22:47,584 --> 00:22:49,887 お黙り! 278 00:22:49,887 --> 00:22:54,424 滝川様 あなたは私を昔のままの 279 00:22:54,424 --> 00:22:58,796 左京の方様の侍女 松島と 思っておいでかもしれませぬが 280 00:22:58,796 --> 00:23:03,133 今日から わたくしは 福松君の乳母 松島 281 00:23:03,133 --> 00:23:06,133 めったな口を きいてもらいますまい 282 00:23:10,674 --> 00:23:14,211 では 梢 283 00:23:14,211 --> 00:23:16,711 御台様にご挨拶 284 00:23:21,885 --> 00:23:25,589 松島殿 松島殿の今の言葉 285 00:23:25,589 --> 00:23:28,959 この滝川 肝に銘じて よう覚えておく 286 00:23:28,959 --> 00:23:32,359 後で痛い目に遭うても 後悔するでない 287 00:23:51,849 --> 00:23:55,519 どちらが後悔することになるか 288 00:23:55,519 --> 00:23:58,419 よい勝負でございましょう