1 00:02:34,384 --> 00:02:37,387 おい あかねちゃん! は~い。 2 00:02:37,387 --> 00:02:40,390 あれ どこやった? あれ。 「あれ」って何ですか? 3 00:02:40,390 --> 00:02:43,059 あれは あれだろ。 全然 わかんないです。 4 00:02:43,059 --> 00:02:45,495 もう… あれだよ ほら。 あれ。 5 00:02:45,495 --> 00:02:47,730 あれ? あれ! 6 00:02:47,730 --> 00:02:50,717 ちょっと今 忙しいんで あとにしてもらっていいっすか? 7 00:02:50,717 --> 00:02:54,387 あ… あ… あれ? 8 00:02:54,387 --> 00:02:57,440 あれ? 俺 何 探してるんだっけ? ちょっと待って。 9 00:02:57,440 --> 00:03:00,043 今 思い出すから。 えっと…。 えっと。 10 00:03:00,043 --> 00:03:02,128 え~。 何? 11 00:03:02,128 --> 00:03:04,128 あれだよ あれ。 なに? 12 00:03:08,368 --> 00:03:11,488 ごめんください。 いらっしゃいませ。 13 00:03:11,488 --> 00:03:14,488 いらっしゃいませ。 あ…。 14 00:03:16,376 --> 00:03:21,381 まあ 立派になっちゃって。 でも 面影 残ってるわ。 15 00:03:21,381 --> 00:03:25,552 あ… あの… どちら様でしょうか? 16 00:03:25,552 --> 00:03:27,952 坂口です。 17 00:03:30,039 --> 00:03:32,108 坂口…。 18 00:03:32,108 --> 00:03:34,477 坂口恭子。 19 00:03:34,477 --> 00:03:38,381 え…。 アハハ 思い出せないかな。 20 00:03:38,381 --> 00:03:41,401 坂口畳屋の。 21 00:03:41,401 --> 00:03:46,001 恭子さん… 恭子さん!? 22 00:03:48,041 --> 00:03:50,041 えっ…。 23 00:03:53,129 --> 00:03:56,049 <東京は不思議な街だ。 24 00:03:56,049 --> 00:03:59,052 いくつになっても 出会いが待っている。 25 00:03:59,052 --> 00:04:01,371 これは 何度目の恋だろう。 26 00:04:01,371 --> 00:04:03,371 そして 今日も…> 27 00:04:08,061 --> 00:04:11,361 どうぞ。 いただきます。 28 00:04:15,718 --> 00:04:18,371 ああ おいしい。 29 00:04:18,371 --> 00:04:20,390 お元気でしたか? 30 00:04:20,390 --> 00:04:24,360 おかげさまで。 卓三君は? 31 00:04:24,360 --> 00:04:27,380 あ… 俺は もう 元気なだけが取り柄ですから。 32 00:04:27,380 --> 00:04:30,049 ウフフ。 33 00:04:30,049 --> 00:04:33,486 松村屋デパートで 和菓子フェア やってて➡ 34 00:04:33,486 --> 00:04:37,140 モダン最中 いただいたわ。 ああ。 35 00:04:37,140 --> 00:04:40,043 くるりやさんの お菓子だって聞いて➡ 36 00:04:40,043 --> 00:04:43,343 卓三君 元気かなって 懐かしくなって。 37 00:04:45,465 --> 00:04:48,368 あの… いつぶりですか? こっちへ戻ってこられるのは。 38 00:04:48,368 --> 00:04:53,373 初めてよ。 びっくりしたわ。 39 00:04:53,373 --> 00:04:56,442 国際劇場が ホテルになってるし➡ 40 00:04:56,442 --> 00:05:00,597 電気館も仁丹塔もなくなってて。 41 00:05:00,597 --> 00:05:04,233 でもね 今でも路地裏に入ると➡ 42 00:05:04,233 --> 00:05:07,053 時間が止まったみたいに 昔のまんまです。 43 00:05:07,053 --> 00:05:09,539 ふ~ん。 よかったら ご案内しましょうか? 44 00:05:09,539 --> 00:05:11,541 えっ? 45 00:05:11,541 --> 00:05:13,893 あの もし 恭子さんがよろしければ。 46 00:05:13,893 --> 00:05:16,379 でも お店があるでしょう? 47 00:05:16,379 --> 00:05:19,032 いえいえ。 もう仕込みは終わってますから。 48 00:05:19,032 --> 00:05:22,051 それに 店は アイツに 任せておけば大丈夫ですから。 49 00:05:22,051 --> 00:05:24,037 な? 50 00:05:24,037 --> 00:05:26,122 はい。 51 00:05:26,122 --> 00:05:28,122 すみません。 52 00:05:36,382 --> 00:05:38,885 じゃ いってくるよ。 53 00:05:38,885 --> 00:05:42,388 ごゆっくり。 うん。 54 00:05:42,388 --> 00:05:44,988 いきましょうか。 55 00:05:53,883 --> 00:05:55,885 あかねちゃん。 56 00:05:55,885 --> 00:05:58,438 あ びっくりした。 はい。 57 00:05:58,438 --> 00:06:01,374 どなた? 58 00:06:01,374 --> 00:06:04,877 わかんないですけど 私の読みだと➡ 59 00:06:04,877 --> 00:06:08,047 初恋の人ですかね。 初恋? 60 00:06:08,047 --> 00:06:10,550 ま 今回は大丈夫だと思いますよ。 61 00:06:10,550 --> 00:06:15,650 あれ いちばんお気に入りのネクタイ。 62 00:06:37,360 --> 00:06:41,564 <恭子さんは 近所に住む 畳屋のひとり娘だった。 63 00:06:41,564 --> 00:06:45,218 和菓子屋の仕事に忙しい 親父とお袋の代わりに➡ 64 00:06:45,218 --> 00:06:48,087 よく遊んでくれたものだ。 65 00:06:48,087 --> 00:06:51,040 美人で優しくて…> 66 00:06:51,040 --> 00:06:54,210 突然いなくなって驚いたでしょ? 67 00:06:54,210 --> 00:06:57,647 ごめんなさい 父から誰にも話すなって➡ 68 00:06:57,647 --> 00:06:59,732 口止めされてて…。 69 00:06:59,732 --> 00:07:07,373 あ… 子供心に なんとなく事情は察してました。 70 00:07:07,373 --> 00:07:10,760 たしか…。 71 00:07:10,760 --> 00:07:15,047 オイルショックのときだから 1973年。 72 00:07:15,047 --> 00:07:20,720 あれから もう 40年も経つんですね。 73 00:07:20,720 --> 00:07:25,041 浅草も すっかり 変わっちゃうわけだ。 74 00:07:25,041 --> 00:07:29,712 恭子さんは 変わらないですね。 75 00:07:29,712 --> 00:07:34,700 アハッ 卓三君 変わらないは 失礼じゃない? 76 00:07:34,700 --> 00:07:37,537 だって最後に会ったの22のときよ。 77 00:07:37,537 --> 00:07:41,207 あ 失礼しました。 78 00:07:41,207 --> 00:07:43,893 フフフ。 79 00:07:43,893 --> 00:07:47,864 <外国からの たくさんの 観光客で賑わう浅草だが➡ 80 00:07:47,864 --> 00:07:49,916 言問通りを渡ると➡ 81 00:07:49,916 --> 00:07:53,569 それまでのけん騒が ウソのように静かになる。 82 00:07:53,569 --> 00:08:01,894 観音裏とか奥浅草と呼ばれ 地元の人間に親しまれている。 83 00:08:01,894 --> 00:08:07,200 待乳山聖天は 巾着と二股大根が紋章という➡ 84 00:08:07,200 --> 00:08:10,052 ユニークなお寺だ。 85 00:08:10,052 --> 00:08:12,054 巾着は商売繁盛。 86 00:08:12,054 --> 00:08:16,692 二股大根は夫婦和合 無病息災を意味している> 87 00:08:16,692 --> 00:08:20,379 あぁ ユニークですね。 ハハハ…。 88 00:08:20,379 --> 00:08:22,381 ねえ 卓三君 覚えてる? 89 00:08:22,381 --> 00:08:25,935 あれは 卓三君が 小3のときだったかな。 90 00:08:25,935 --> 00:08:29,205 お父さんと喧嘩して家出して➡ 91 00:08:29,205 --> 00:08:32,391 隅田川に落っこっちゃったんじゃ ないかって みんな心配して➡ 92 00:08:32,391 --> 00:08:37,230 捜し回ってたら そこの本堂で グーグー寝てて。 93 00:08:37,230 --> 00:08:41,701 え? なんてバチ当たりな…。 ハハハ。 94 00:08:41,701 --> 00:08:43,703 どうも その節は お世話になりました。 95 00:08:43,703 --> 00:08:47,303 今となっては いい思い出だけど。 96 00:08:49,425 --> 00:08:52,395 《憧れの人だった。 97 00:08:52,395 --> 00:08:57,383 あの恭子さんと 俺は今 浅草の街を2人で散歩している。 98 00:08:57,383 --> 00:09:02,183 なんだろう この胸が苦しくなる感じは》 99 00:09:32,218 --> 00:09:35,555 《父親の営む畳店の経営が傾き➡ 100 00:09:35,555 --> 00:09:38,541 ある日突然 恭子さんは 姿を消した。 101 00:09:38,541 --> 00:09:41,711 あのとき 俺の頭は➡ 102 00:09:41,711 --> 00:09:44,714 いなくなった恭子さんの 笑顔でいっぱいになって➡ 103 00:09:44,714 --> 00:09:50,236 勉強も遊びも手につかなくなった。 特別な人だったことに➡ 104 00:09:50,236 --> 00:09:53,336 いなくなって 初めて気づいたんだ》 105 00:09:55,558 --> 00:09:58,958 あれから どうされてたんですか? 106 00:10:02,698 --> 00:10:04,700 両親は離婚して➡ 107 00:10:04,700 --> 00:10:10,406 母と一緒に大阪の 親類の家にお世話になって➡ 108 00:10:10,406 --> 00:10:16,379 ウエートレスをしたり 缶詰工場に勤めたり➡ 109 00:10:16,379 --> 00:10:19,382 できることは 何でもしたわ。 110 00:10:19,382 --> 00:10:24,704 大変でしたね。 111 00:10:24,704 --> 00:10:27,223 あの… ご結婚は? 112 00:10:27,223 --> 00:10:30,543 ええ 一度だけですけど。 113 00:10:30,543 --> 00:10:33,412 一度すれば十分だと思います。 114 00:10:33,412 --> 00:10:36,866 ウフフ…。 アハハハ…。 115 00:10:36,866 --> 00:10:39,869 お子さんは? 娘が1人。 116 00:10:39,869 --> 00:10:43,322 へぇ~。 いや 恭子さんのお嬢さんなら➡ 117 00:10:43,322 --> 00:10:46,442 さぞかし きれいなんでしょうね。 118 00:10:46,442 --> 00:10:50,096 アハハ… こんなおばあちゃんに お世辞を言っても➡ 119 00:10:50,096 --> 00:10:54,867 何にも出ませんよ。 いやいや… 恭子さん全然➡ 120 00:10:54,867 --> 00:10:57,203 おばあちゃんなんかじゃ ありませんよ。 121 00:10:57,203 --> 00:10:59,372 今でも すごくきれいです。 122 00:10:59,372 --> 00:11:02,875 いや 僕が 嘘をつけないのは➡ 123 00:11:02,875 --> 00:11:04,877 恭子さんがいちばん よく知ってるじゃないですか。 124 00:11:04,877 --> 00:11:08,381 ええ 覚えてますよ オオカミ卓ちゃん。 125 00:11:08,381 --> 00:11:12,702 えっ? 卓三君は 嘘をつくと➡ 126 00:11:12,702 --> 00:11:17,707 鼻の下がのびるんだから。 アハハッ ほら。 いや…。 127 00:11:17,707 --> 00:11:22,211 嘘をついても すぐにバレる。 相変わらずね。 128 00:11:22,211 --> 00:11:28,034 《恭子さん あの頃のあなたとの思い出は➡ 129 00:11:28,034 --> 00:11:32,054 俺のすべてだったから 嘘なんかじゃない》 130 00:11:32,054 --> 00:11:35,354 これは ホントにホントに本音です。 131 00:11:46,035 --> 00:11:49,635 あ…。 あ…。 132 00:11:52,725 --> 00:11:54,744 お願いします。 133 00:11:54,744 --> 00:11:57,713 《ガキの頃 俺は芸者さん見たさに➡ 134 00:11:57,713 --> 00:12:03,386 用もないのに よく このあたりを ウロウロしたものだ》 135 00:12:03,386 --> 00:12:06,889 ねぇ 卓三君 覚えてる? 136 00:12:06,889 --> 00:12:09,041 芸者さんに見とれて➡ 137 00:12:09,041 --> 00:12:13,045 電信柱に頭ぶつけて 4針も縫ったの。 138 00:12:13,045 --> 00:12:18,267 あぁ… ありましたっけかね そんなこと。 139 00:12:18,267 --> 00:12:22,038 恭子さん 何でも 覚えていらっしゃいますね。 140 00:12:22,038 --> 00:12:27,126 年をとると 昔のことほど よく覚えてるってことない? 141 00:12:27,126 --> 00:12:29,045 あぁ…。 142 00:12:29,045 --> 00:12:32,431 卓三君は まだ若いから そんなことないかな。 143 00:12:32,431 --> 00:12:36,385 いえ。 僕 全然 若くないですから。 144 00:12:36,385 --> 00:12:39,371 確かに 恭子さんのおっしゃるとおり➡ 145 00:12:39,371 --> 00:12:42,708 感受性の強い 若いときに見た映画とか➡ 146 00:12:42,708 --> 00:12:46,378 聴いた音楽のことは なかなか忘れませんよね。 147 00:12:46,378 --> 00:12:49,381 うん。 『風と共に去りぬ』の 最後のところなんて➡ 148 00:12:49,381 --> 00:12:52,034 一言一句 覚えてるわ。 149 00:12:52,034 --> 00:12:55,371 「Tomorrow is another day」。 150 00:12:55,371 --> 00:12:59,375 あぁ… 僕は寅さんだな。 151 00:12:59,375 --> 00:13:03,546 全48作 マドンナの名前 全部言えます。 152 00:13:03,546 --> 00:13:07,383 ハハッ 卓三君らしいわ。 153 00:13:07,383 --> 00:13:09,385 はぁ~。 154 00:13:09,385 --> 00:13:12,037 はぁ~ ずいぶん歩いたから ちょっと疲れちゃいましたね。 155 00:13:12,037 --> 00:13:15,337 休みましょうか。 あぁ そうね。 156 00:13:23,382 --> 00:13:26,385 これこれ。 157 00:13:26,385 --> 00:13:31,607 豆と寒天と黒蜜だけ。 158 00:13:31,607 --> 00:13:34,376 一つひとつは シンプルなんだけど➡ 159 00:13:34,376 --> 00:13:39,048 この組み合わせが 絶妙なんですよね。 160 00:13:39,048 --> 00:13:42,034 豆かんの味がわかるなんて➡ 161 00:13:42,034 --> 00:13:46,122 卓三君も大人になったわね。 え? 162 00:13:46,122 --> 00:13:48,724 いっつも あんみつばっかり注文して➡ 163 00:13:48,724 --> 00:13:54,697 さくらんぼを最後まで大事そうに 残して食べてたのに。 164 00:13:54,697 --> 00:13:59,201 あれ そうでしたっけ? 165 00:13:59,201 --> 00:14:03,806 忘れちゃった? 166 00:14:03,806 --> 00:14:08,494 《そのとき 別のことを思い出していた。 167 00:14:08,494 --> 00:14:11,080 中学1年生に なったばかりの俺は➡ 168 00:14:11,080 --> 00:14:13,716 この店で あんみつを ごちそうになりながら➡ 169 00:14:13,716 --> 00:14:16,285 せっせと貯めた お小遣いで買った➡ 170 00:14:16,285 --> 00:14:19,705 花やしきのチケットを 2枚 握りしめて➡ 171 00:14:19,705 --> 00:14:23,305 恭子さんをデートに誘った》 172 00:14:27,396 --> 00:14:30,382 《10歳も年上の人を誘うなんて➡ 173 00:14:30,382 --> 00:14:34,720 今 思えば ずいぶん ませたことをしたもんだ。 174 00:14:34,720 --> 00:14:38,390 返事は オーケーだった。 175 00:14:38,390 --> 00:14:43,390 しかし その約束は果たされないまま》 176 00:14:46,465 --> 00:14:51,136 おいしい。 おいしいですよね。 177 00:14:51,136 --> 00:14:57,376 《恭子さんは あの約束を覚えているだろうか》 178 00:14:57,376 --> 00:14:59,695 何? 179 00:14:59,695 --> 00:15:03,399 あっ いえ…。 180 00:15:03,399 --> 00:15:08,721 恭子さん どうしてまた こっちに 戻ってこようと思ったんですか? 181 00:15:08,721 --> 00:15:13,142 最後に もう一度 この街を見ておきたくて。 182 00:15:13,142 --> 00:15:15,394 え? 183 00:15:15,394 --> 00:15:17,694 《最後?》 184 00:15:19,715 --> 00:15:23,315 《最後って どういうことだ?》 185 00:17:58,357 --> 00:18:01,360 《最後? 186 00:18:01,360 --> 00:18:05,381 最後って どういうことだ? 187 00:18:05,381 --> 00:18:10,352 もしかして 恭子さんは 不治の病にかかり➡ 188 00:18:10,352 --> 00:18:13,752 残りわずかの命?》 189 00:18:19,862 --> 00:18:23,365 卓三君 今日は どうもありがとう。 190 00:18:23,365 --> 00:18:25,701 とっても楽しかったわ。 191 00:18:25,701 --> 00:18:30,522 あっ 僕もです。 192 00:18:30,522 --> 00:18:35,711 なんだか タイムスリップしたみたいです。 193 00:18:35,711 --> 00:18:40,632 タイムスリップか…。 194 00:18:40,632 --> 00:18:43,018 戻れるものなら➡ 195 00:18:43,018 --> 00:18:46,922 もう一度 あの頃に 戻ってみたかったな。 196 00:18:46,922 --> 00:18:49,374 《え?》 197 00:18:49,374 --> 00:18:53,174 じゃあ またね。 198 00:18:57,049 --> 00:19:00,049 じゃあ また。 199 00:19:06,875 --> 00:19:12,698 《またね。 あのときも そう言って別れたまま…。 200 00:19:12,698 --> 00:19:15,350 いいのか? 卓三。 201 00:19:15,350 --> 00:19:18,787 このままでは あのときと一緒だぞ》 202 00:19:18,787 --> 00:19:21,190 恭子さん。 203 00:19:21,190 --> 00:19:24,176 なに? 204 00:19:24,176 --> 00:19:29,031 今度 花やしき 一緒に行きませんか? 205 00:19:29,031 --> 00:19:32,534 花やしき? はい。 206 00:19:32,534 --> 00:19:35,537 《困ってる。 207 00:19:35,537 --> 00:19:37,706 やっぱり 恭子さんは…。 208 00:19:37,706 --> 00:19:42,044 病人を遊園地に誘うなんて… バカ! 209 00:19:42,044 --> 00:19:45,714 俺は いったい 何をやってるんだ》 210 00:19:45,714 --> 00:19:49,101 おかしいですよね。 211 00:19:49,101 --> 00:19:51,901 大の大人が 遊園地だなんて。 212 00:19:55,207 --> 00:20:01,029 それより お体のことが いちばん大事ですよね。 213 00:20:01,029 --> 00:20:04,533 体のこと? 214 00:20:04,533 --> 00:20:08,353 最後に この街を もう一度 見ておきたいって➡ 215 00:20:08,353 --> 00:20:10,372 おっしゃってましたよね。 216 00:20:10,372 --> 00:20:16,472 どこか お体の具合が 悪いのかと…。 217 00:20:19,198 --> 00:20:22,184 心配してくださって ありがたいけど➡ 218 00:20:22,184 --> 00:20:26,355 ピンピンしてるわ。 はい? 219 00:20:26,355 --> 00:20:30,042 ひどいわ 年寄り扱いなんかして。 220 00:20:30,042 --> 00:20:36,198 いやいや… でも じゃあ どうして最後って…。 221 00:20:36,198 --> 00:20:40,018 この歳になると 突然 同級生の訃報に➡ 222 00:20:40,018 --> 00:20:42,888 触れたりすることが 多くなってきて。 223 00:20:42,888 --> 00:20:46,041 それで 少し 感傷的になって➡ 224 00:20:46,041 --> 00:20:49,341 大げさな言い方を しちゃったのかもしれない。 225 00:20:51,363 --> 00:20:54,700 あぁ…。 226 00:20:54,700 --> 00:20:57,369 《やっちまったけど➡ 227 00:20:57,369 --> 00:21:03,692 俺の勘違いで 本当に 本当によかった》 228 00:21:03,692 --> 00:21:07,195 せっかくのお誘い 嬉しかったんだけど➡ 229 00:21:07,195 --> 00:21:09,715 冥土への はなむけのつもりだった? 230 00:21:09,715 --> 00:21:11,800 いやいや… とんでもない。 231 00:21:11,800 --> 00:21:17,372 フフフ だったら 今度 行きましょうか 花やしき。 232 00:21:17,372 --> 00:21:19,725 いいんですか? 233 00:21:19,725 --> 00:21:22,725 約束よ。 234 00:21:29,368 --> 00:21:36,708 ♬「指切りげんまん 嘘ついたら 針千本 飲ます」 235 00:21:36,708 --> 00:21:39,211 《恭子さんの歌声だ。 236 00:21:39,211 --> 00:21:44,533 まるで あの頃に戻ったような…》 237 00:21:44,533 --> 00:21:47,402 (2人)指切った。 238 00:21:47,402 --> 00:21:51,556 (笑い声) 239 00:21:51,556 --> 00:21:53,642 じゃあ。 240 00:21:53,642 --> 00:21:56,442 じゃあ。 241 00:22:09,358 --> 00:22:12,694 勘違い甚だしいにも ほどがあるでしょ。 242 00:22:12,694 --> 00:22:17,699 だってさ 最後にって言われたら➡ 243 00:22:17,699 --> 00:22:21,720 誰だって そう思うだろ。 244 00:22:21,720 --> 00:22:25,320 でも よかったですね 勘違いで。 ああ。 245 00:25:05,383 --> 00:25:07,385 ごめんください。 いらっしゃいませ。 246 00:25:07,385 --> 00:25:11,723 久留里卓三さん いらっしゃいます? 247 00:25:11,723 --> 00:25:14,323 はい 私ですが。 248 00:25:16,711 --> 00:25:24,035 相島美香と申します。 坂口恭子の娘です。 249 00:25:24,035 --> 00:25:26,335 はぁ。 250 00:25:28,373 --> 00:25:33,044 母の病状は 急速に進行してまして➡ 251 00:25:33,044 --> 00:25:37,344 記憶のほうが まだらといいますか…。 252 00:25:39,384 --> 00:25:46,224 いや でも そんなふうには。 253 00:25:46,224 --> 00:25:50,879 昔のことは まだ 覚えてるみたいなんですが➡ 254 00:25:50,879 --> 00:25:54,279 昨日のことさえ 思い出せないときも。 255 00:25:57,702 --> 00:26:03,041 母は 自分の病状を 自覚していません。 256 00:26:03,041 --> 00:26:05,043 お医者様には➡ 257 00:26:05,043 --> 00:26:10,131 母を混乱させないように 言われてます。 258 00:26:10,131 --> 00:26:16,631 久留里さん… どうか ご理解ください。 259 00:26:26,381 --> 00:26:30,381 憧れの年上のヒトですか。 260 00:26:32,554 --> 00:26:37,154 やっと会えたんだ… やっと。 261 00:26:49,204 --> 00:26:53,208 また会うんですか? 262 00:26:53,208 --> 00:26:56,878 一緒に➡ 263 00:26:56,878 --> 00:27:00,878 花やしきに行く約束したんだ。 264 00:27:03,885 --> 00:27:09,985 でも その約束も 忘れてるかもしれませんよ。 265 00:27:12,193 --> 00:27:15,647 忘れてしまったなら➡ 266 00:27:15,647 --> 00:27:21,747 また新しい思い出を作ればいい。 267 00:27:30,712 --> 00:27:35,550 そういう卓さん 俺 好きですよ。 268 00:27:35,550 --> 00:27:54,369 ♬~ 269 00:27:54,369 --> 00:27:59,369 《本当に来るだろうか… いや 来るはずだ》 270 00:28:06,381 --> 00:28:08,533 あっ…。 271 00:28:08,533 --> 00:28:11,202 恭子さん! 272 00:28:11,202 --> 00:28:14,072 卓三君。 あっ…。 273 00:28:14,072 --> 00:28:17,372 娘から ここへ行くように言われて。 274 00:28:19,527 --> 00:28:22,547 娘さんから? 275 00:28:22,547 --> 00:28:24,547 ひさしぶり! 276 00:28:29,204 --> 00:28:31,222 おひさしぶりです。 277 00:28:31,222 --> 00:28:35,393 《やっぱり この前 会ったことも 覚えていないのか…》 278 00:28:35,393 --> 00:28:40,382 不思議ね。 なんだか ひさしぶりじゃないみたい。 279 00:28:40,382 --> 00:28:42,384 えっ? 280 00:28:42,384 --> 00:28:44,784 今日は どうしたの? 281 00:28:50,058 --> 00:28:54,362 覚えてませんか? 約束。 282 00:28:54,362 --> 00:28:56,662 約束? 283 00:28:59,701 --> 00:29:03,354 ええ 覚えてるわ。 284 00:29:03,354 --> 00:29:08,043 えっ? 花やしき! 285 00:29:08,043 --> 00:29:10,695 あっ…。 286 00:29:10,695 --> 00:29:14,099 恭子さん 覚えていらっしゃったんですか。 287 00:29:14,099 --> 00:29:16,384 もちろんよ。 288 00:29:16,384 --> 00:29:19,871 この前の…。 この前? 289 00:29:19,871 --> 00:29:24,375 梅むらで あんみつ食べながら 誘ってくれたでしょ? 290 00:29:24,375 --> 00:29:28,263 花やしきに 一緒に行きませんか? って。 291 00:29:28,263 --> 00:29:30,331 えっ? 292 00:29:30,331 --> 00:29:32,331 忘れちゃった? 293 00:29:46,214 --> 00:29:48,314 これは…。 294 00:32:56,387 --> 00:32:58,787 これは…。 295 00:33:03,878 --> 00:33:08,278 《恭子さんにあげた 花やしきのチケットだ》 296 00:33:12,220 --> 00:33:15,220 大事に持ってたの。 297 00:33:19,761 --> 00:33:26,718 恭子さん… こんな昔のこと 覚えてらっしゃったんですか? 298 00:33:26,718 --> 00:33:31,318 あんな嬉しかったこと 一生忘れないわ。 299 00:33:35,793 --> 00:33:40,548 あの頃 家に帰れば➡ 300 00:33:40,548 --> 00:33:44,886 借金のことで 両親はケンカしてばかり。 301 00:33:44,886 --> 00:33:48,373 毎日 泣いてた。 302 00:33:48,373 --> 00:33:53,478 そんなときに 卓三君が誘ってくれたの。 303 00:33:53,478 --> 00:33:55,478 嬉しかったわ。 304 00:33:58,866 --> 00:34:03,388 いつか 必ずこの街に戻ってきて➡ 305 00:34:03,388 --> 00:34:06,788 卓三君と一緒に 花やしきに行くんだって…。 306 00:34:08,876 --> 00:34:11,379 あの言葉があったから➡ 307 00:34:11,379 --> 00:34:15,779 あのとき私は 前に向くことができた。 308 00:34:17,885 --> 00:34:22,285 卓三君 どうもありがとう。 309 00:34:26,461 --> 00:34:28,861 恭子さん…。 310 00:34:39,207 --> 00:34:42,377 恥ずかしいわ こんな おばあちゃんと。 311 00:34:42,377 --> 00:34:45,880 恥ずかしいことなんかありません。 312 00:34:45,880 --> 00:34:51,880 恭子さんは いつまでも僕のマドンナです。 313 00:34:55,390 --> 00:34:59,360 行きましょうか。 314 00:34:59,360 --> 00:35:28,372 ♬~ 315 00:35:28,372 --> 00:35:33,377 こんなに楽しかったのひさしぶり。 316 00:35:33,377 --> 00:35:35,777 ありがとね。 317 00:35:37,882 --> 00:35:39,901 いえ。 318 00:35:39,901 --> 00:35:44,372 お礼を言わなければいけないのは 僕のほうです。 319 00:35:44,372 --> 00:35:47,391 今日は つきあっていただいて➡ 320 00:35:47,391 --> 00:35:50,391 本当にありがとうございました。 321 00:35:54,382 --> 00:35:59,682 恭子さん また会えますか? 322 00:36:06,093 --> 00:36:09,493 Tomorrow is another day。 323 00:36:13,401 --> 00:36:16,501 明日は また 別の1日。 324 00:36:28,716 --> 00:36:33,316 卓三君 忘れないでね。 325 00:36:39,210 --> 00:36:41,210 はい。 326 00:36:50,054 --> 00:36:54,559 《恭子さんは わかっていたのかもしれない。 327 00:36:54,559 --> 00:36:57,211 明日になれば 今日の記憶は➡ 328 00:36:57,211 --> 00:37:00,211 すっかり消えてしまうかも しれないということを…》 329 00:37:10,374 --> 00:37:13,060 おかえりなさい。 330 00:37:13,060 --> 00:37:16,063 ただいま。 331 00:37:16,063 --> 00:37:18,063 どうでした? 332 00:37:24,222 --> 00:37:29,322 約束は 果たせたよ。