1 00:00:10,911 --> 00:00:16,817 (寅子)先生は 私の話を遮らなかった。 2 00:00:16,817 --> 00:00:19,620 (穂高)言いたいことがあれば 言いたまえ。 3 00:00:19,620 --> 00:00:23,957 君のような優秀な女性が学ぶに ふさわしい場所だ。 4 00:00:23,957 --> 00:00:26,960 それだけで すごくうれしかった。 5 00:00:29,296 --> 00:00:33,967 法律のことは まだまだ全然 分からない。 6 00:00:33,967 --> 00:00:41,308 でも そんな人が勧めてくれる場所でなら できるかもって思ったの。 7 00:00:41,308 --> 00:00:49,182 心の底から自分を誇って笑えるかも… 胸を張って一番になれるかもって。 8 00:00:49,182 --> 00:00:53,887 もちろん そのために 必死に勉強する。 知ってるでしょ 私が女学校でも…。 9 00:00:53,887 --> 00:00:57,190 (はる)あなたが優秀なことぐらい 分かってます! 10 00:01:06,266 --> 00:01:09,937 ♬「どこから春が巡り来るのか」 11 00:01:09,937 --> 00:01:14,274 ♬「知らず知らず大人になった」 12 00:01:14,274 --> 00:01:18,612 ♬「さよなら100年先でまた会いましょう」 13 00:01:18,612 --> 00:01:22,482 ♬「心配しないで」 14 00:01:22,482 --> 00:01:26,286 ♬「いつの間にか 花が落ちた」 15 00:01:26,286 --> 00:01:30,157 ♬「誰かがわたしに嘘をついた」 16 00:01:30,157 --> 00:01:34,161 ♬「土砂降りでも構わず飛んでいく」 17 00:01:34,161 --> 00:01:40,300 ♬「その力が欲しかった」 18 00:01:40,300 --> 00:01:45,639 ♬「誰かと恋に落ちて また砕けて」 19 00:01:45,639 --> 00:01:48,308 ♬「やがて離れ離れ」 20 00:01:48,308 --> 00:01:52,646 ♬「口の中はたと血が滲んで」 21 00:01:52,646 --> 00:01:55,983 ♬「空に唾を吐く」 22 00:01:55,983 --> 00:02:00,821 ♬「瞬け羽を広げ 気儘に飛べ」 23 00:02:00,821 --> 00:02:03,790 ♬「どこまでもゆけ」 24 00:02:03,790 --> 00:02:07,928 ♬「100年先も憶えてるかな」 25 00:02:07,928 --> 00:02:09,863 ♬「知らねえけれど」 26 00:02:09,863 --> 00:02:12,599 ♬「さよーならまたいつか!」 27 00:02:12,599 --> 00:02:18,605 ♬~ 28 00:02:28,148 --> 00:02:32,919 だから 女学校に行かせた。 29 00:02:32,919 --> 00:02:37,624 母さんは行きたくても 行かせてもらえなかった女学校に…。 30 00:02:37,624 --> 00:02:42,496 母さん 5人きょうだいの4人目だったからね。 31 00:02:42,496 --> 00:02:47,634 高等小学校までしか 行かせてもらえなかった。 32 00:02:47,634 --> 00:02:50,971 母さんのお母さんはね➡ 33 00:02:50,971 --> 00:02:57,310 私をどこに嫁がせれば 一番 旅館にとって うまみがあるか…➡ 34 00:02:57,310 --> 00:03:00,213 それしか考えていなかった。 35 00:03:00,213 --> 00:03:04,584 それが しゃくだから 父さんと結婚したの。 36 00:03:04,584 --> 00:03:08,255 えっ…。 もちろん 今では➡ 37 00:03:08,255 --> 00:03:12,125 父さんと一緒になって 心から よかったって思ってますよ。 38 00:03:12,125 --> 00:03:18,265 でも その当時は 旅館から遠く逃げられるなら➡ 39 00:03:18,265 --> 00:03:21,568 誰でもよかったのかもしれない。 40 00:03:25,138 --> 00:03:28,275 とにかくね 私は決めたの。 41 00:03:28,275 --> 00:03:35,282 私は 自分の子供の幸せを 一番に考えられる母親になろうって。 42 00:03:39,619 --> 00:03:44,958 きっと あなたは その女子部とやらでも勉学に励んで➡ 43 00:03:44,958 --> 00:03:48,295 優秀な成績を収めることでしょう。 44 00:03:48,295 --> 00:03:52,165 法律家にだって もしかしたら なれるかもしれない。 45 00:03:52,165 --> 00:03:54,167 じゃあ…。 46 00:03:54,167 --> 00:03:59,306 でも なれなかった時は? えっ…。 47 00:03:59,306 --> 00:04:06,913 なれたとしても うまくいかなくて やめなくてはいけなくなった時は? 48 00:04:06,913 --> 00:04:09,583 それは…。 49 00:04:09,583 --> 00:04:14,454 どうせ父さんは 「いざとなったら 俺が全部なんとかするから」とか➡ 50 00:04:14,454 --> 00:04:17,257 そんなふうに言ったんでしょ? 51 00:04:17,257 --> 00:04:19,926 (直言)全部 なんとかするから! 52 00:04:19,926 --> 00:04:22,262 ねえ 分かるでしょう? 53 00:04:22,262 --> 00:04:29,603 夢破れて 親の世話になって 行き遅れて 嫁のもらい手がなくなって➡ 54 00:04:29,603 --> 00:04:34,608 それが どんなに惨めか 想像したことある? 55 00:04:36,943 --> 00:04:40,280 今 行こうとしている道で あなたが心から笑えるとは➡ 56 00:04:40,280 --> 00:04:44,618 お母さんは 到底思えないの。 57 00:04:44,618 --> 00:04:47,521 どう進んだって地獄じゃない。 58 00:04:47,521 --> 00:04:49,823 そうでしょ? 59 00:04:51,491 --> 00:04:55,262 頭のいい女が 確実に幸せになるためには➡ 60 00:04:55,262 --> 00:05:00,567 頭の悪い女のふりをするしかないの。 61 00:05:00,567 --> 00:05:06,239 だから あなたは 新しい きれいな振り袖を着て➡ 62 00:05:06,239 --> 00:05:09,576 できるだけ あなたに見合った すてきな殿方と➡ 63 00:05:09,576 --> 00:05:14,281 お見合いをするんです。 絶対に! 64 00:05:19,920 --> 00:05:27,227 ありがとう。 私のこと 心から愛してくれて。 65 00:05:31,531 --> 00:05:46,947 でも 私には お母さんが言う幸せも…➡ 66 00:05:46,947 --> 00:05:51,251 地獄にしか思えない。 67 00:05:54,287 --> 00:05:59,159 やりたいことも 言いたいことも言えず➡ 68 00:05:59,159 --> 00:06:04,898 必死に家のことしても 家族の前以外では スンッとして。 69 00:06:04,898 --> 00:06:08,568 スン? 70 00:06:08,568 --> 00:06:21,581 だから 私は お母さんみたいな生き方じゃなくて…。 71 00:06:21,581 --> 00:06:25,252 お母さんみたいに なりたくないっていうこと? 72 00:06:25,252 --> 00:06:28,588 あなた 私のこと そんなふうに見てたの? 73 00:06:28,588 --> 00:06:31,291 違う そういうことじゃ…。 74 00:06:33,460 --> 00:06:35,762 お母さん 違うんだって! 75 00:06:43,603 --> 00:06:46,306 おはようございます。 おはようございます。 76 00:06:59,152 --> 00:07:06,226 正真正銘の親不孝になってしまったと 寅子は思いました。 77 00:07:06,226 --> 00:07:10,563 (食材を切る音) 78 00:07:10,563 --> 00:07:13,466 おはよう。 79 00:07:13,466 --> 00:07:15,435 おはよう。 80 00:07:15,435 --> 00:07:19,239 女学校近くの ほら 御茶ノ水に➡ 81 00:07:19,239 --> 00:07:22,909 竹もとっていう 甘いもん屋さんがあるでしょ。 82 00:07:22,909 --> 00:07:26,579 うん。 そこで待ち合わせにしましょう。 83 00:07:26,579 --> 00:07:30,917 へっ? 振り袖 買いに行くって言ったでしょ。 84 00:07:30,917 --> 00:07:36,589 ねえ お母さん 私は…。 ごはんを おひつに よそってちょうだい。 85 00:07:36,589 --> 00:07:39,592 早く! はい! 86 00:08:27,574 --> 00:08:30,877 いらっしゃい! こんにちは。 87 00:08:40,920 --> 00:08:42,922 あっ! 88 00:08:48,795 --> 00:08:51,564 あの ご無沙汰しております。 89 00:08:51,564 --> 00:08:54,868 以前 夜学の授業に お邪魔させていただいた…。 90 00:08:56,936 --> 00:08:59,272 (桂場)ああ 君か。 91 00:08:59,272 --> 00:09:03,143 猪爪寅子です。 その節は ありがとうございました。 92 00:09:03,143 --> 00:09:07,547 私は別に何も。 いえ あの時 背中を押していただいたおかげで➡ 93 00:09:07,547 --> 00:09:11,418 明律大学女子部法科への道が開けました。 94 00:09:11,418 --> 00:09:16,723 いや… まだ完全には 開けてはいないのですが…。 95 00:09:19,893 --> 00:09:26,232 実は 母に 女子部進学を反対されておりまして…。 96 00:09:26,232 --> 00:09:31,538 あの 先生ならば どのように母を説得されますか? 97 00:09:34,107 --> 00:09:37,243 私も 女子部進学には反対だ。 98 00:09:37,243 --> 00:09:40,914 えっ… 何でですか? 君が女だからだ。 99 00:09:40,914 --> 00:09:42,849 はて? 100 00:09:42,849 --> 00:09:46,252 穂高先生の言葉に だまされない方がいい。 101 00:09:46,252 --> 00:09:49,589 あの方のお考えは 進んでおられて すばらしい。 102 00:09:49,589 --> 00:09:53,927 だが あまりに非現実的だ。 えっ でも…。 103 00:09:53,927 --> 00:09:56,596 君は頭がいいんだろう。 104 00:09:56,596 --> 00:10:00,467 女学校で1番だったかもしれないが。 2番です。 105 00:10:00,467 --> 00:10:03,470 とにかく 時期尚早だ。 106 00:10:03,470 --> 00:10:07,240 いつかは 女が法律の世界に携わる日が 来るかもしれない。 107 00:10:07,240 --> 00:10:12,612 だが 今じゃない。 それは やってみないと…。 108 00:10:12,612 --> 00:10:17,951 今 君が先陣を切って血を流したとしても 何の報いもないだろう。 109 00:10:17,951 --> 00:10:19,886 それも やってみないと。 110 00:10:19,886 --> 00:10:23,289 母親一人 説得できないようじゃ 話にならない。 111 00:10:23,289 --> 00:10:25,625 この先 戦うのは 女だけじゃない。 112 00:10:25,625 --> 00:10:29,963 優秀な男と肩を並べて 戦わなければならなくなるんだよ。 113 00:10:29,963 --> 00:10:35,301 あの… 私の母は とても優秀ですが? 114 00:10:35,301 --> 00:10:37,971 はっ? 115 00:10:37,971 --> 00:10:41,307 恐らく 今 想像してらっしゃるよりも ずっと頭がよく➡ 116 00:10:41,307 --> 00:10:44,210 記憶力も誰よりも優れています。 何言ってるんだ 君は。 117 00:10:44,210 --> 00:10:46,179 ですから 母を説得できないことと➡ 118 00:10:46,179 --> 00:10:51,951 私が優秀な殿方と肩を並べられないことは 全く別問題かと。 119 00:10:51,951 --> 00:10:56,322 心躍る あの場所に行けるなら 血くらい いくらでも流します。 120 00:10:56,322 --> 00:10:58,992 それに 私 同じ土俵にさえ立てれば➡ 121 00:10:58,992 --> 00:11:01,594 殿方に負ける気はしませ…。 いいや 負ける! 122 00:11:01,594 --> 00:11:03,530 通うまでもなく分かる。 123 00:11:03,530 --> 00:11:06,933 君のように 甘やかされて育ったお嬢さんは➡ 124 00:11:06,933 --> 00:11:10,270 土俵に上がるまでもなく 血を見るまでもなく➡ 125 00:11:10,270 --> 00:11:13,606 傷つき 泣いて逃げ出すのがオチだろう。 126 00:11:13,606 --> 00:11:16,509 お黙んなさい! お母さん! 127 00:11:16,509 --> 00:11:19,479 お母さん!? (はる)何を偉そうに。 128 00:11:19,479 --> 00:11:23,950 あなたに うちの娘の 何が分かるっていうんですか? 129 00:11:23,950 --> 00:11:28,288 なにが時期尚早ですか。 泣いて逃げ出すですか。 130 00:11:28,288 --> 00:11:32,625 そうやって 女の可能性の芽を 摘んできたのは どこの誰? 131 00:11:32,625 --> 00:11:34,561 男たちでしょ! 132 00:11:34,561 --> 00:11:38,965 そんな 私に感情的になられても…。 133 00:11:38,965 --> 00:11:41,634 自分に その責任はないと? 134 00:11:41,634 --> 00:11:46,639 それなら そうやって無責任に 娘の口を塞ごうとしないでちょうだい! 135 00:11:48,975 --> 00:11:52,645 行きますよ 寅子。えっ…。 行きますよ! 136 00:11:52,645 --> 00:11:54,581 は… はい! 137 00:11:54,581 --> 00:12:08,127 ♬~ 138 00:12:08,127 --> 00:12:11,130 あっ… あの。 いいから黙ってなさい! 139 00:12:11,130 --> 00:12:13,266 えっ…。 140 00:12:13,266 --> 00:12:34,954 ♬~ 141 00:12:34,954 --> 00:12:36,956 (ドアが開く音) 142 00:12:38,625 --> 00:12:43,630 六法全書 下さい。 あっ はい ただいま。 143 00:12:45,965 --> 00:12:51,971 ああ 腹が立つ。 知ったような口きいて 若造が! 144 00:12:54,974 --> 00:12:58,845 私は 私の人生に悔いはない。 145 00:12:58,845 --> 00:13:03,249 でも この新しい昭和の時代に➡ 146 00:13:03,249 --> 00:13:08,121 自分の娘には スンッとしてほしくないって➡ 147 00:13:08,121 --> 00:13:10,590 そう思っちゃったのよ! 148 00:13:10,590 --> 00:13:14,260 そこに来て あんな若造に あんなこと言われたら➡ 149 00:13:14,260 --> 00:13:18,931 こうならざるをえないでしょ!? お母さん…。 150 00:13:18,931 --> 00:13:22,602 寅子 何度でも言う。 151 00:13:22,602 --> 00:13:24,937 今 お見合いした方がいい。 152 00:13:24,937 --> 00:13:28,608 その方が 間違いなく幸せになれる。 153 00:13:28,608 --> 00:13:34,614 それでも 本気で 地獄を見る覚悟はあるの? 154 00:13:37,950 --> 00:13:39,952 ある。 155 00:13:47,293 --> 00:13:49,629 そう。 156 00:13:49,629 --> 00:14:21,928 ♬~ 157 00:14:21,928 --> 00:14:26,265 こうして 最後の敵を倒した寅子は➡ 158 00:14:26,265 --> 00:14:31,571 無事 地獄への切符を手に入れたのでした。 159 00:14:36,909 --> 00:14:40,279 ねえ 私って ヘラヘラして うっとうしいですか? 160 00:14:40,279 --> 00:14:44,617 そもそも 男と女 同じ土俵に立ててすらいないんだ。 161 00:14:44,617 --> 00:14:47,520 じゃあ 「法律とは?」の正解は何なんですか? 162 00:14:47,520 --> 00:14:49,956 起立。 法とは…。 163 00:14:49,956 --> 00:14:52,291 法律って…。 本来 法律は…。 164 00:14:52,291 --> 00:14:55,294 誰かに教えてもらった? 教えてもらってないよね?