1 00:00:09,139 --> 00:00:16,480 <私は 生まれて初めて味わう 緊張感に包まれていました> 2 00:00:16,480 --> 00:00:22,980 ♬~ 3 00:00:33,396 --> 00:00:37,334 (鞠子)全部で 716冊。 4 00:00:37,334 --> 00:00:40,470 ほとんど残っちゃったね…。 5 00:00:40,470 --> 00:00:43,306 (常子)あと1冊➡ 6 00:00:43,306 --> 00:00:45,642 頑張ってみない? 7 00:00:45,642 --> 00:00:47,677 (五反田)あの人に相談してみろよ。 8 00:00:47,677 --> 00:00:50,313 あの人? 花山伊佐次。➡ 9 00:00:50,313 --> 00:00:53,216 きっと 君の作ろうとしている雑誌を➡ 10 00:00:53,216 --> 00:00:55,485 よりよく してくれるはずだ。 11 00:00:55,485 --> 00:01:11,835 ♬~ 12 00:01:11,835 --> 00:01:16,135 ≪はいはい お手紙届いてるかなあ? 13 00:01:17,707 --> 00:01:20,010 あっ…。 どちら様? 14 00:01:20,010 --> 00:01:23,680 あっ あの… 私…。 15 00:01:23,680 --> 00:01:26,349 ♬「普段から」 16 00:01:26,349 --> 00:01:29,252 ♬「メイクしない 君が」 17 00:01:29,252 --> 00:01:35,058 ♬「薄化粧した朝」 18 00:01:35,058 --> 00:01:41,631 ♬「始まりと 終わりの狭間で」 19 00:01:41,631 --> 00:01:50,139 ♬「忘れぬ約束した」 20 00:01:50,139 --> 00:01:54,810 ♬「花束を君に贈ろう」 21 00:01:54,810 --> 00:02:01,317 ♬「愛しい人 愛しい人」 22 00:02:01,317 --> 00:02:07,189 ♬「どんな言葉並べても」 23 00:02:07,189 --> 00:02:12,662 ♬「真実にはならないから」 24 00:02:12,662 --> 00:02:15,164 ♬「今日は贈ろう」 25 00:02:15,164 --> 00:02:18,200 ♬「涙色の」 26 00:02:18,200 --> 00:02:22,038 ♬「花束を君に」 27 00:02:22,038 --> 00:02:26,876 ♬「花束を君に贈ろう」 28 00:02:26,876 --> 00:02:33,549 ♬「愛しい人 愛しい人」 29 00:02:33,549 --> 00:02:39,355 ♬「どんな言葉並べても」 30 00:02:39,355 --> 00:02:44,794 ♬「君を讃えるには足りないから」 31 00:02:44,794 --> 00:02:47,296 ♬「今日は贈ろう」 32 00:02:47,296 --> 00:02:50,333 ♬「涙色の」 33 00:02:50,333 --> 00:02:56,033 ♬「花束を君に」 34 00:02:57,807 --> 00:03:02,311 茜ちゃん 2歳… 3歳ですか? 35 00:03:02,311 --> 00:03:06,983 3歳です。 ほら きちんと ご挨拶なさい。 36 00:03:06,983 --> 00:03:08,918 うん? 37 00:03:08,918 --> 00:03:11,854 フフフフ…。 てれ屋さんなんですね。 38 00:03:11,854 --> 00:03:14,724 甘えん坊で いつも こんな感じで。 39 00:03:14,724 --> 00:03:16,692 茜ちゃん。 40 00:03:16,692 --> 00:03:19,328 ≪(花山)ただいま。 (三枝子)あっ。➡ 41 00:03:19,328 --> 00:03:21,328 すみません。 42 00:03:24,166 --> 00:03:28,037 (三枝子)お帰りなさいませ。 (茜)お帰りなさい。 43 00:03:28,037 --> 00:03:31,974 あなたに お客様が。 (花山)客? 44 00:03:31,974 --> 00:03:43,119 ♬~ 45 00:03:43,119 --> 00:03:45,054 お邪魔しております。 46 00:03:45,054 --> 00:03:48,457 私 5年前に 一度 お目にかかった事がある…。 47 00:03:48,457 --> 00:03:50,960 覚えてる。 甲東出版の小橋常子だ。 48 00:03:50,960 --> 00:03:53,295 あ… でも 今は そちらを辞めて…。 49 00:03:53,295 --> 00:03:55,965 知ってる。 何だ? 用件を言いたまえ。 50 00:03:55,965 --> 00:03:57,900 あの…。 51 00:03:57,900 --> 00:04:04,306 私 雑誌を作ったんです。 母と妹2人で。 52 00:04:04,306 --> 00:04:07,343 ですが 思うように売れず➡ 53 00:04:07,343 --> 00:04:09,979 どうしたらいいか 行き詰まってしまって。 54 00:04:09,979 --> 00:04:14,150 五反田さんに相談したところ 花山さんを紹介して頂いたんです。 55 00:04:14,150 --> 00:04:18,020 お力を貸して頂けないでしょうか。 力など貸さん。 帰れ。 56 00:04:18,020 --> 00:04:21,824 五反田も余計な事を。 (三枝子)あなた。 57 00:04:21,824 --> 00:04:24,493 お前も 素性の分からぬ者を 勝手に家に上げるな。 58 00:04:24,493 --> 00:04:26,529 強盗や詐欺の類いだったら どうする? 59 00:04:26,529 --> 00:04:31,000 ああいう害のなさそうな まぬけ面でも 油断するな。 60 00:04:31,000 --> 00:04:33,769 (三枝子)ごめんなさいね。 いえ。 61 00:04:33,769 --> 00:04:37,569 (三枝子)今 お茶いれますね。 あっ ありがとうございます。 62 00:04:40,109 --> 00:04:43,612 あの… せめて この雑誌の駄目なところを➡ 63 00:04:43,612 --> 00:04:46,649 一度だけでも 見て頂けませんか? 駄目なところしかない。 64 00:04:46,649 --> 00:04:50,486 そんな 見もしないで…。 たまたま 闇市で買ったんだ。 65 00:04:50,486 --> 00:04:53,122 えっ? どうして…。 66 00:04:53,122 --> 00:04:55,157 そうなんですか? 67 00:04:55,157 --> 00:04:58,294 買った事を後悔したよ。 68 00:04:58,294 --> 00:05:02,798 何を見せたいんだ? 文章か? 洋服か? テーマは何だ!? 69 00:05:02,798 --> 00:05:06,302 どのページを見ても 同じような 割り付けで 飽き飽きする。 70 00:05:06,302 --> 00:05:08,637 紙も劣悪で 手触りも悪い。 71 00:05:08,637 --> 00:05:13,809 こんなものに 7円払うなら ちり紙を100枚買う事を勧めるね! 72 00:05:13,809 --> 00:05:18,314 そもそも 君は 読者を想像できていない。 73 00:05:18,314 --> 00:05:20,816 外国人や 一握りの令嬢が着るような➡ 74 00:05:20,816 --> 00:05:23,719 浮世離れした洋服を載せて 何になる? 周りを見てみろ! 75 00:05:23,719 --> 00:05:28,491 焼け野原の中 食う物も着る物も 最低限しかない中で生きてるんだ。 76 00:05:28,491 --> 00:05:32,261 作り方を載せたところで 材料など どうやって手に入れる? 77 00:05:32,261 --> 00:05:37,561 型紙も載せないで 読者が 本当に作れると思うのか? 78 00:05:41,604 --> 00:05:45,304 もう いいだろ。 帰れ。 79 00:05:47,109 --> 00:05:49,145 フン! 80 00:05:49,145 --> 00:05:57,753 ♬~ 81 00:05:57,753 --> 00:06:03,659 (滴が落ちる音) 82 00:06:03,659 --> 00:06:11,967 ♬~ 83 00:06:11,967 --> 00:06:16,305 (五反田) でも よかったじゃないか。 結局 助言はもらえたんだろ? 84 00:06:16,305 --> 00:06:18,974 的確で 圧倒されました。 85 00:06:18,974 --> 00:06:21,810 (五反田)才能は抜群だ。 ただ…➡ 86 00:06:21,810 --> 00:06:26,649 僕が仕事の依頼をした際 言われたんだ。 87 00:06:26,649 --> 00:06:29,985 二度とペンは握らないとね。 88 00:06:29,985 --> 00:06:31,954 どうしてですか? 89 00:06:31,954 --> 00:06:36,425 何だか疲れたって 濁された。 90 00:06:36,425 --> 00:06:40,095 今は 品川で 珈琲屋を始めたらしい。 91 00:06:40,095 --> 00:06:43,432 花山さん➡ 92 00:06:43,432 --> 00:06:48,132 私たちの編集長に なって下さいませんかね…。 93 00:06:49,772 --> 00:06:54,276 どうしたもんじゃろのぉ…。 94 00:06:54,276 --> 00:06:59,148 (君子)花山さんって方の事? ええ。 95 00:06:59,148 --> 00:07:02,985 いいんじゃないの? 無理して 編集長をやって頂かなくても。 96 00:07:02,985 --> 00:07:06,855 う~ん でも 花山さんの指摘って➡ 97 00:07:06,855 --> 00:07:09,625 すごく的を射ていると思わない? 98 00:07:09,625 --> 00:07:12,294 (美子)う~ん 確かに…。 99 00:07:12,294 --> 00:07:17,132 けど 私の文章のよさが 分からないだけかもしれないし➡ 100 00:07:17,132 --> 00:07:19,969 そもそも その方は断ったんでしょ? 101 00:07:19,969 --> 00:07:23,769 まあ… そうなんだけどね。 102 00:07:28,677 --> 00:07:33,616 晴れたら 雨漏りの修繕しないとね。 103 00:07:33,616 --> 00:07:37,920 いいの いいの。 うちの事は 私に任せて➡ 104 00:07:37,920 --> 00:07:41,423 あなたは 花山さんのところに伺ったら? 105 00:07:41,423 --> 00:07:43,359 ん? 106 00:07:43,359 --> 00:07:47,159 どうしても 諦められないんでしょ? 107 00:07:49,098 --> 00:07:51,298 はい。 108 00:07:56,438 --> 00:07:58,374 (花山)頂きます。 109 00:07:58,374 --> 00:08:00,574 (2人)頂きます。 110 00:08:13,856 --> 00:08:17,293 (三枝子)お味 薄いですかね。 111 00:08:17,293 --> 00:08:19,795 うん… まあ。 112 00:08:19,795 --> 00:08:23,132 おしょうゆが 途中で切れてしまって…。 113 00:08:23,132 --> 00:08:26,168 (花山)こんな時に ぜいたくは言ってられんさ。 114 00:08:26,168 --> 00:08:31,307 少ない私の収入で 君が やりくりしてくれてるのに。 115 00:08:31,307 --> 00:08:35,107 どこかで手に入らないか 見て回りますわ。 116 00:08:41,750 --> 00:08:48,257 ♬~ 117 00:08:48,257 --> 00:08:50,759 あ… すみません。 118 00:08:50,759 --> 00:08:52,759 いや。 119 00:08:55,431 --> 00:08:58,334 昼間 いらっしゃった 小橋さんって…。 120 00:08:58,334 --> 00:09:01,303 うん? (三枝子)お母様と妹さん➡ 121 00:09:01,303 --> 00:09:05,441 女だけで 雑誌を作ってるって おっしゃってましたけど➡ 122 00:09:05,441 --> 00:09:08,344 それで 暮らしていけるんですかね? 123 00:09:08,344 --> 00:09:12,314 人の心配している余裕など ないだろ。 124 00:09:12,314 --> 00:09:16,952 そうですけど 何だか気になって。 125 00:09:16,952 --> 00:09:19,788 よし。 126 00:09:19,788 --> 00:09:23,959 今度 長澤に会おうと思う。 127 00:09:23,959 --> 00:09:27,830 長澤さん? 古くからの知人だ。 128 00:09:27,830 --> 00:09:31,133 一緒に 衣料の事業をやらないかと 誘われている。 129 00:09:31,133 --> 00:09:33,068 事業をなさるの? 130 00:09:33,068 --> 00:09:36,739 まだ決めた訳じゃない。 話を聞いてみるだけだ。 131 00:09:36,739 --> 00:09:38,774 そうですか。 132 00:09:38,774 --> 00:09:43,612 どのみち 今の暮らしは もう少し よくせねばな。 133 00:09:43,612 --> 00:09:47,383 今のままの貧しい食事では➡ 134 00:09:47,383 --> 00:09:49,883 茜が不憫でね。 135 00:10:06,101 --> 00:10:09,938 <鞠子と美子は 売れ残った雑誌を手に➡ 136 00:10:09,938 --> 00:10:12,938 闇市に向かったのですが…> 137 00:10:15,110 --> 00:10:17,146 こんにちは。 こんにちは。 138 00:10:17,146 --> 00:10:21,450 あんたらか。 また あの雑誌かい? はい。 139 00:10:21,450 --> 00:10:24,787 懲りないね。 あんなに売れ残ったのに。 140 00:10:24,787 --> 00:10:28,290 7円から4円に値下げすれば まだ売れると思うんです。 141 00:10:28,290 --> 00:10:31,193 なので 置いて頂けませんか? 142 00:10:31,193 --> 00:10:36,031 安くするのは構わねえが こっちがもらう額は変わんねえよ。 143 00:10:36,031 --> 00:10:39,301 じゃあ 今までどおり 3円って事ですか? 144 00:10:39,301 --> 00:10:42,204 ああ。 そんなに払ったら 利益なんて ないんです。 145 00:10:42,204 --> 00:10:45,174 3円なんて…。 嫌なら 置き場所はない。 146 00:10:45,174 --> 00:10:47,174 帰んな! 147 00:10:50,312 --> 00:10:54,149 すみません あの… この珈琲屋さん ご存じ…。 148 00:10:54,149 --> 00:10:57,653 ああ それなら そこの角 まっすぐ行った 奧の店だよ。 149 00:10:57,653 --> 00:10:59,953 ありがとうございます。 150 00:11:44,099 --> 00:11:46,899 ごめんください。 151 00:12:07,155 --> 00:12:11,660 ああ いらっしゃい。 あっ こんにちは。 152 00:12:11,660 --> 00:12:14,696 あっ 好きな席に どうぞ。 153 00:12:14,696 --> 00:12:16,696 はい。 154 00:12:24,006 --> 00:12:26,909 うちは コーヒーしかないから。 155 00:12:26,909 --> 00:12:29,878 あ… はい。 156 00:12:29,878 --> 00:12:34,616 あの… 花山さんは いらっしゃいますか? 157 00:12:34,616 --> 00:12:37,452 ん? ああ…。 158 00:12:37,452 --> 00:12:40,289 マスター お客さんだよ。 159 00:12:40,289 --> 00:12:42,289 ≪はい。 160 00:12:48,163 --> 00:12:50,299 また 君か…。 161 00:12:50,299 --> 00:12:52,634 お水 持ってきますね。 162 00:12:52,634 --> 00:12:55,137 接客など 結構です。 客じゃありませんから。 163 00:12:55,137 --> 00:12:58,974 えっ? すみません コーヒーを1つ。 164 00:12:58,974 --> 00:13:03,478 何? 注文しましたから 私は もう客です。 165 00:13:03,478 --> 00:13:07,778 ほう…。 コーヒーね。 166 00:13:09,651 --> 00:13:11,651 フフフ…。 167 00:13:14,489 --> 00:13:17,326 昨日の話なら 何度来ても同じ事だ。 168 00:13:17,326 --> 00:13:19,828 昨日の話ではありません。 169 00:13:19,828 --> 00:13:24,166 昨日は 雑誌の助言を頂きたく 伺いました。 170 00:13:24,166 --> 00:13:27,202 今日は 雑誌の編集長として➡ 171 00:13:27,202 --> 00:13:29,671 入って頂きたく 参ったんです。 172 00:13:29,671 --> 00:13:31,640 どういう頭を持てば そうなる? 173 00:13:31,640 --> 00:13:35,777 助言するのを断った人間が 編集長になる訳などなかろう! 174 00:13:35,777 --> 00:13:38,113 ですから そこを 説得しようと。 無駄だ。 帰れ。 175 00:13:38,113 --> 00:13:40,113 帰りません。 176 00:13:42,951 --> 00:13:47,456 花山さんと お会いすると いつも このやり取りですね。 177 00:13:47,456 --> 00:13:52,961 帰れ。 邪魔するな。 ですから…。 帰れ。 邪魔するな。 178 00:13:52,961 --> 00:13:55,631 3度も言わせるな~! 179 00:13:55,631 --> 00:13:57,666 最初に お会いした時も➡ 180 00:13:57,666 --> 00:13:59,866 先日の お宅でも。 181 00:14:03,372 --> 00:14:06,141 君が 来てほしくない時に 来るからだ。 182 00:14:06,141 --> 00:14:09,044 では いつ伺えば? 私の葬儀だ。 183 00:14:09,044 --> 00:14:12,814 えっ? 死んでいれば 君の話を 聞かなくて済む。 184 00:14:12,814 --> 00:14:14,850 はぁ…。 185 00:14:14,850 --> 00:14:18,320 ≪本当に 失礼な物言いをなさいますね。 186 00:14:18,320 --> 00:14:20,989 よし…。 二度とペンを握らないのは➡ 187 00:14:20,989 --> 00:14:23,659 なぜなんですか? 188 00:14:23,659 --> 00:14:28,159 本当の理由を 教えて頂けませんか? 189 00:14:35,303 --> 00:14:37,773 聞いて どうする? 190 00:14:37,773 --> 00:14:42,110 どうしても 花山さんと一緒に 雑誌を作らせて頂きたいんです。 191 00:14:42,110 --> 00:14:44,780 そんな事は知らん。 大体 君は身勝手すぎる。 192 00:14:44,780 --> 00:14:48,116 何度も押しかけてきて。 申し訳ございません。 193 00:14:48,116 --> 00:14:51,153 でも 花山さんほどの才能が ありながら➡ 194 00:14:51,153 --> 00:14:53,455 ご自身で身を引かれる…。 帰れ。 目障りだ。 195 00:14:53,455 --> 00:14:56,155 花山さん…。 何も話す気はない。 出ていけ! 196 00:15:03,165 --> 00:15:08,465 分かった。 君が帰らんのなら 私が帰る。 197 00:15:10,472 --> 00:15:12,808 あとは 頼みます。 198 00:15:12,808 --> 00:15:26,308 ♬~