1 00:00:01,640 --> 00:00:07,050 風太の奮闘むなしく 団吾師匠の声がラジオから流れ…。 2 00:00:07,050 --> 00:00:09,380 (ラジオ・団吾)ラジオをお聴きの皆さん。 (風太)放送始まってんのか。 3 00:00:09,380 --> 00:00:11,720 (トキ)普通に。 (団吾)わしは 今➡ 4 00:00:11,720 --> 00:00:14,720 京都の放送所から しゃべってまんねん。 5 00:00:16,590 --> 00:00:19,390 やられた! ハハハハ! 6 00:00:19,390 --> 00:00:22,090 (藤吉)さすが 団吾師匠や。 7 00:00:24,900 --> 00:00:35,540 ♬~ 8 00:00:35,540 --> 00:00:41,250 ♬「出かける時の忘れ物」 9 00:00:41,250 --> 00:00:46,590 ♬「ひょいとつかむ ハンカチのように」 10 00:00:46,590 --> 00:00:51,930 ♬「心の中に すべり込む」 11 00:00:51,930 --> 00:00:57,270 ♬「いちばん ちいさな魔法」 12 00:00:57,270 --> 00:01:02,540 ♬「泣いたり 笑ったり」 13 00:01:02,540 --> 00:01:07,210 ♬「今日も歩き出す」 14 00:01:07,210 --> 00:01:15,080 ♬「ありがとうと言いたい あなたのために」 15 00:01:15,080 --> 00:01:24,230 ♬「ごめんねと言えない あなたのために」 16 00:01:24,230 --> 00:01:32,530 ♬「パレードは まわり続けてる」 17 00:01:40,070 --> 00:01:44,410 何より怖いいうたら 死ぬ事でんな。 18 00:01:44,410 --> 00:01:48,750 ホンマに魂抜いてきよりますのが 死神っちゅう奴でして…。➡ 19 00:01:48,750 --> 00:01:54,420 なんとも 縁起の悪い噺に おつきあい頂きます。➡ 20 00:01:54,420 --> 00:01:58,290 ここに1人 死神に 取り憑かれた男がおりまして➡ 21 00:01:58,290 --> 00:02:02,700 借金で首が回らんようになった この どうしようもない男。➡ 22 00:02:02,700 --> 00:02:07,030 「ああ 金のないのは 首のないのと同じや。 もう➡ 23 00:02:07,030 --> 00:02:10,910 こうなったら 死んでしまうより しかたないわ」。➡ 24 00:02:10,910 --> 00:02:14,910 「おい おい」。➡ 25 00:02:14,910 --> 00:02:18,050 「だ… 誰や? あんた」。➡ 26 00:02:18,050 --> 00:02:21,880 「わしゃ 死神や」。➡ 27 00:02:21,880 --> 00:02:27,560 「死神? あっ お前 わしを あの世に連れに来たんやな?➡ 28 00:02:27,560 --> 00:02:30,390 急に死にとなったんは お前のせいやな!」。➡ 29 00:02:30,390 --> 00:02:35,060 「そうやない 藤吉。➡ 30 00:02:35,060 --> 00:02:38,730 お前には まだ寿命がある。➡ 31 00:02:38,730 --> 00:02:43,070 勝手に死なれたら困るさかい 出てきたんや」。➡ 32 00:02:43,070 --> 00:02:46,740 「そやかて 金がなかったら 死ななしゃあないやないかい」。 33 00:02:46,740 --> 00:02:50,080 (アサリ)藤吉!? 藤吉言うたで! 34 00:02:50,080 --> 00:02:52,980 (万丈目) これ 東京落語の「死神」や。 35 00:02:52,980 --> 00:02:55,420 (トキ)東京の? うん。 36 00:02:55,420 --> 00:02:58,090 甲斐性なしの男が 死のうとしてたら➡ 37 00:02:58,090 --> 00:03:00,990 「まだ寿命がある」言うて 死神に助けてもろて➡ 38 00:03:00,990 --> 00:03:05,690 金儲けするっちゅう噺や。 (団吾)「お前 医者になれ」。➡ 39 00:03:05,690 --> 00:03:09,560 「医者? アホな事 言いなはんな!➡ 40 00:03:09,560 --> 00:03:14,700 〽 死んで花が咲くかいな」。 41 00:03:14,700 --> 00:03:22,380 すごいな。 こんな東京の噺まで 勉強してはったんやな。 42 00:03:22,380 --> 00:03:30,050 この男 大金に目がくらみ 死神との掟を破ってしまいます。 43 00:03:30,050 --> 00:03:32,720 そして 死神に捕まって➡ 44 00:03:32,720 --> 00:03:35,620 人間の寿命のろうそくが 並んでいる所へと➡ 45 00:03:35,620 --> 00:03:39,060 連れていかれます。 46 00:03:39,060 --> 00:03:43,400 (団吾) 「これが皆 人間の寿命や」。➡ 47 00:03:43,400 --> 00:03:46,730 「この目の前の半分ぐらいの長さで 威勢よう燃えてんのは➡ 48 00:03:46,730 --> 00:03:49,400 誰のでんねん?」。 49 00:03:49,400 --> 00:03:55,280 「そら お前が大金もろうて助けた 病人や」。 50 00:03:55,280 --> 00:04:00,680 「さよか。 元気になりましてんな。 あれ その横のは?➡ 51 00:04:00,680 --> 00:04:04,190 暗うて短うて 今にも消えそうな…。➡ 52 00:04:04,190 --> 00:04:09,690 あっ これ まさか…」。 53 00:04:09,690 --> 00:04:16,560 「そうや これが 藤吉 お前や。➡ 54 00:04:16,560 --> 00:04:23,040 消えそうや。 消えたら 命ないで。➡ 55 00:04:23,040 --> 00:04:28,910 お前の寿命は もっと長かったのに 欲張り過ぎたんや。➡ 56 00:04:28,910 --> 00:04:35,720 気の毒に。 もうじき 死ぬで」。➡ 57 00:04:35,720 --> 00:04:38,890 「命が助かるんやったら 何でもする。 まだまだ俺には➡ 58 00:04:38,890 --> 00:04:41,920 やり残した事が ぎょうさん あるんや!」。 59 00:04:41,920 --> 00:04:47,600 「ほな ここに 灯しかけの ろうそくがある。➡ 60 00:04:47,600 --> 00:04:53,070 これに その消えかかってる火ぃを 移すんや。➡ 61 00:04:53,070 --> 00:04:58,940 あんじょう移せたら 助かるかもしれん」。➡ 62 00:04:58,940 --> 00:05:03,340 「分かりました。 はよ 貸しとくなはれ」。➡ 63 00:05:03,340 --> 00:05:09,220 「はよせんと 消えるで」。➡ 64 00:05:09,220 --> 00:05:13,020 「横から ゴチャゴチャ言いなはんな!➡ 65 00:05:13,020 --> 00:05:22,700 〽 死んで花が咲くかいな」。 66 00:05:22,700 --> 00:05:27,370 「そない震えたら 消えるで。➡ 67 00:05:27,370 --> 00:05:30,040 消えるで。➡ 68 00:05:30,040 --> 00:05:34,340 ああ… 消えた」。 69 00:05:48,060 --> 00:05:53,060 すごいわ。 ラジオやのに ろうそく消えたん 見えたわ。 70 00:05:55,930 --> 00:06:00,000 人の一生は 限られてます。➡ 71 00:06:00,000 --> 00:06:06,340 そやけど 限られてるからこそ 美しいんや思います。➡ 72 00:06:06,340 --> 00:06:12,210 ろうそくみたいに 最後まで 明るう燃え尽きたいもんや。➡ 73 00:06:12,210 --> 00:06:17,950 それでは 最後に皆さん この男が 末永う生きられますよう➡ 74 00:06:17,950 --> 00:06:20,950 ご唱和を。 75 00:06:22,890 --> 00:06:32,590 〽 死んで花が咲くかいな 76 00:06:34,370 --> 00:06:38,040 落語は まだまだ オモロなりまっせ! 77 00:06:38,040 --> 00:06:43,540 皆さん 明日は 風鳥亭の高座で お待ちしとります。 78 00:06:43,540 --> 00:06:47,050 月の井団吾でございました。 79 00:06:47,050 --> 00:06:58,660 ♬~ 80 00:06:58,660 --> 00:07:06,530 やっぱり団吾師匠は 天才や。 81 00:07:06,530 --> 00:07:11,240 ♬~ 82 00:07:11,240 --> 00:07:23,940 ♬~(ラジオ) 83 00:07:25,690 --> 00:07:28,690 (風太)お前ら 何 わろてんのや。 84 00:07:33,360 --> 00:07:41,540 俺らは 今 笑いの歴史の とんでもない瞬間を➡ 85 00:07:41,540 --> 00:07:45,040 味わったんかもしれん。 86 00:07:45,040 --> 00:07:47,040 (てん)へえ。 87 00:07:49,380 --> 00:07:52,280 てん。 88 00:07:52,280 --> 00:07:57,250 何や分からんが➡ 89 00:07:57,250 --> 00:08:00,650 力 湧いてきたで。 90 00:08:00,650 --> 00:08:02,590 へ? 91 00:08:02,590 --> 00:08:07,530 この 団吾師匠のラジオ放送が➡ 92 00:08:07,530 --> 00:08:13,230 今まで当たり前やった 寄席の世界を➡ 93 00:08:13,230 --> 00:08:16,530 ぶち壊そうとしてるんや。 94 00:08:19,010 --> 00:08:22,340 俺も はよ退院して➡ 95 00:08:22,340 --> 00:08:24,340 働くで! 96 00:08:26,010 --> 00:08:30,010 へえ。 また 頑張っていきましょ。 97 00:08:35,020 --> 00:08:39,690 やられた。 もう しまいや。 98 00:08:39,690 --> 00:08:43,360 しゃあないわ。 あんたより 団吾師匠の方が➡ 99 00:08:43,360 --> 00:08:46,660 一枚 上手やったんや。 そんな事ない! 100 00:08:50,700 --> 00:08:53,610 何 わろてんねや! 101 00:08:53,610 --> 00:08:56,310 そうかて…。 102 00:08:59,050 --> 00:09:03,750 お前は 俺の味方 ちゃうんか。 103 00:09:05,320 --> 00:09:07,990 味方って? 104 00:09:07,990 --> 00:09:11,660 いつも そばにいてて➡ 105 00:09:11,660 --> 00:09:15,330 俺の事 よう知ってるやろ。 106 00:09:15,330 --> 00:09:19,670 大口たたいてるけど 気は小さいとか。 107 00:09:19,670 --> 00:09:25,670 饅頭 粒あんより こしあん派とか 何か そう…。 108 00:09:29,340 --> 00:09:31,340 そやな。 109 00:09:34,010 --> 00:09:39,190 うちは いつも あんたの味方や。 110 00:09:39,190 --> 00:09:43,020 いや ちゃう! え? 111 00:09:43,020 --> 00:09:49,900 その… そっちの…➡ 112 00:09:49,900 --> 00:09:52,600 そういう味方やのうて。 113 00:09:57,040 --> 00:09:59,040 何? 114 00:10:05,710 --> 00:10:08,010 お前が好きや。 115 00:10:11,390 --> 00:10:14,090 結婚して下さい。 116 00:10:18,260 --> 00:10:20,960 嫁さんになって下さい。 117 00:10:23,960 --> 00:10:29,740 一生 そばにいて下さい。 118 00:10:29,740 --> 00:10:45,040 ♬~ 119 00:10:48,760 --> 00:10:54,090 ホンマに…➡ 120 00:10:54,090 --> 00:10:57,000 ホンマに うちでええの? 121 00:10:57,000 --> 00:11:03,370 ♬~ 122 00:11:03,370 --> 00:11:06,670 アホ! お前しかおらへんわ。 123 00:11:10,710 --> 00:11:14,410 そのかわり 約束せえ。 124 00:11:16,380 --> 00:11:19,050 え? 125 00:11:19,050 --> 00:11:24,350 結婚したら 俺の三歩後ろを歩け。 126 00:11:28,400 --> 00:11:33,100 飯には 甘いもんを一品つけろ。 127 00:11:35,070 --> 00:11:40,370 それと 一番大事な事や。 128 00:11:42,740 --> 00:11:50,620 俺より… 俺より 絶対➡ 129 00:11:50,620 --> 00:11:52,920 長生きせえ。 130 00:11:55,090 --> 00:12:03,390 ♬~ 131 00:12:11,040 --> 00:12:13,740 よろしゅうお願いします。 132 00:12:23,380 --> 00:12:45,640 ♬~ 133 00:12:45,640 --> 00:12:52,340 風太と おトキにとって 特別な出来事があった翌日。 134 00:12:54,350 --> 00:12:56,750 カラカッチカッチ。 「おいおい…」。 135 00:12:56,750 --> 00:13:00,350 ラジオで 初めて 団吾の落語を聴いた人々が➡ 136 00:13:00,350 --> 00:13:07,050 その面白さに驚き 生で見たいと 寄席へ押しかけたのです。 137 00:13:16,700 --> 00:13:21,580 ただいま戻りました。 138 00:13:21,580 --> 00:13:25,380 社長。 お帰りやす。 139 00:13:25,380 --> 00:13:28,220 (岩さん)待ってましたで。 (歌子)お帰りやす。 140 00:13:28,220 --> 00:13:30,880 よかったな。 (2人)お帰り。 141 00:13:30,880 --> 00:13:33,720 もう 休むんは飽き飽きや。 142 00:13:33,720 --> 00:13:37,060 これから頑張って 働くで。 143 00:13:37,060 --> 00:13:40,390 そない無理せんでも 何やったら もうひとつきぐらい➡ 144 00:13:40,390 --> 00:13:42,330 休んどったら よかったんや。 145 00:13:42,330 --> 00:13:45,070 ここは 俺と おトキがいてたら 安泰や。 146 00:13:45,070 --> 00:13:47,400 俺と? おトキ? 147 00:13:47,400 --> 00:13:51,740 ようやっと この二人 祝言挙げる気ぃになったんや。 148 00:13:51,740 --> 00:13:55,610 お~っ やっとか! おめっとさん! 149 00:13:55,610 --> 00:13:59,550 おめでとう 風太 おトキ。 おおきに。 150 00:13:59,550 --> 00:14:03,020 おめでとうさん。 おおきに。 151 00:14:03,020 --> 00:14:07,350 (亀井)あんたらが結婚できんのも 団吾師匠のおかげちゃうか? 152 00:14:07,350 --> 00:14:11,530 確かに 寄席が繁盛してんのは 師匠のおかげやしな。 153 00:14:11,530 --> 00:14:16,030 俺も 新しいもんに挑戦する気持ち もろたわ。 154 00:14:16,030 --> 00:14:18,370 へえ。 155 00:14:18,370 --> 00:14:23,240 これからは ラジオとケンカせんと 仲ようしていきまひょな。 156 00:14:23,240 --> 00:14:25,710 (一同)へえ! 157 00:14:25,710 --> 00:14:28,210 こうして 北村笑店は➡ 158 00:14:28,210 --> 00:14:33,710 笑いの新時代を 歩み始めたのでございます~。