1 00:00:39,612 --> 00:00:41,948 (鯉斗)お初にお目にかかります。 2 00:00:41,948 --> 00:00:47,603 私 このドラマの案内人 瀧川鯉斗と申します。 3 00:00:47,603 --> 00:00:51,124 みなさん 「弥次喜多」って 聞いたことありますよね? 4 00:00:51,124 --> 00:00:54,277 弥次喜多こと 弥次さん喜多さんは➡ 5 00:00:54,277 --> 00:00:57,780 京都に銅像があるほどの 有名人でございますが➡ 6 00:00:57,780 --> 00:01:01,180 実在した人物では ございません。 7 00:01:03,119 --> 00:01:07,123 江戸時代に 十返舎一九 というお方が書いた滑稽本➡ 8 00:01:07,123 --> 00:01:12,128 『東海道中膝栗毛』の キャラクターでございました。 9 00:01:12,128 --> 00:01:19,285 江戸庶民の憧れだった旅を テーマに語られる この道中記は➡ 10 00:01:19,285 --> 00:01:23,122 当時 売れに売れた 大ベストセラーだったんですね! 11 00:01:23,122 --> 00:01:27,627 でも その実 中身は➡ 12 00:01:27,627 --> 00:01:32,648 二人の女好きが 旅先で ハメを外すだけの➡ 13 00:01:32,648 --> 00:01:36,448 お話でございまして…。 14 00:01:47,313 --> 00:01:51,634 (おたこ)あんた いい男だね~。 15 00:01:51,634 --> 00:01:55,521 私と遊ばなくても 街に出りゃ➡ 16 00:01:55,521 --> 00:01:58,641 花びらの数よりも たくさんの女が待ってんだろ? 17 00:01:58,641 --> 00:02:02,462 (喜多)待ってる女より…。 18 00:02:02,462 --> 00:02:06,132 今のおめぇが欲しいのさ。 19 00:02:06,132 --> 00:02:08,468 うれしい~! 20 00:02:08,468 --> 00:02:12,522 《どうだい弥次さん 勝負は俺の勝ちだ~っ!》 21 00:02:12,522 --> 00:02:15,057 何考えてるのさぁ! 22 00:02:15,057 --> 00:02:17,460 私を抱くのに 他の女のこと考えて。 23 00:02:17,460 --> 00:02:19,946 バカなことを。 24 00:02:19,946 --> 00:02:22,982 俺の頭の中は おめぇだけだよ。 25 00:02:22,982 --> 00:02:25,151 うれしい~! 26 00:02:25,151 --> 00:02:29,251 あんたが お人よしの大バカでね! 27 00:02:31,307 --> 00:02:35,161 (芋七)おうおう! この 間男野郎。 28 00:02:35,161 --> 00:02:37,196 ひと様の女と遊んで➡ 29 00:02:37,196 --> 00:02:39,482 タダで済むと思ってるのかお前。 30 00:02:39,482 --> 00:02:41,482 おいっ! へっ? 31 00:02:44,137 --> 00:02:46,137 ハッ ハメやがったな~! 32 00:02:51,027 --> 00:02:54,297 待ちやがれ おいっ! 冗談じゃねえ! 33 00:02:54,297 --> 00:02:56,297 たあ~っ。 34 00:03:01,304 --> 00:03:03,304 いってぇ~! 35 00:03:05,808 --> 00:03:11,464 おい 待ちやがれ~! 36 00:03:11,464 --> 00:03:13,466 どけ どけ どけ~っ! 37 00:03:13,466 --> 00:03:15,468 待て 待て 待て~っ! 38 00:03:15,468 --> 00:03:17,668 そこどけ~っ! (悲鳴) 39 00:03:19,622 --> 00:03:21,624 <時は享和二年。 40 00:03:21,624 --> 00:03:24,293 徳川十一代将軍 家斉様の頃。 41 00:03:24,293 --> 00:03:29,165 と 申しましても 明治よりわずか 六十数年前。 42 00:03:29,165 --> 00:03:31,184 江戸は神田八丁堀に➡ 43 00:03:31,184 --> 00:03:35,972 昔 役者をやっていた ちょいといい男がおりました> 44 00:03:35,972 --> 00:03:42,895 ♬~ 45 00:03:42,895 --> 00:03:44,797 気をつけろ コラァ!! 46 00:03:44,797 --> 00:03:47,466 てめぇ!! よっ。 47 00:03:47,466 --> 00:03:49,785 < これまたちょいと 腕がたち…。 48 00:03:49,785 --> 00:03:53,139 そして めちゃくちゃ女好き。 49 00:03:53,139 --> 00:03:57,126 この男こそ この話の主役➡ 50 00:03:57,126 --> 00:04:02,648 喜多さんこと 喜多八でございます> 51 00:04:02,648 --> 00:04:07,286 (芋七)待ちやがれ~っ! まっじい! 52 00:04:07,286 --> 00:04:10,706 (咳き込む声) 53 00:04:10,706 --> 00:04:13,292 はっ はっはぁ~。 54 00:04:13,292 --> 00:04:16,979 なんて日だぁ~。 55 00:04:16,979 --> 00:04:20,616 はぁ…。 弥次さんのヤツ➡ 56 00:04:20,616 --> 00:04:23,486 うまく やってやがるんだろうなぁ~。 57 00:04:23,486 --> 00:04:25,488 悔しい~っ! 58 00:04:25,488 --> 00:04:28,124 < おっと! 言い忘れておりました。 59 00:04:28,124 --> 00:04:32,295 実は この喜多さんには 相棒がいるのでございます> 60 00:04:32,295 --> 00:04:34,297 (弥次)おしのちゃ~ん。 61 00:04:34,297 --> 00:04:38,184 ようやく おじさんの気持ちに 応えてくれるんだねぇ~。 62 00:04:38,184 --> 00:04:40,469 おじさん うれしいよ~! 63 00:04:40,469 --> 00:04:42,788 なぁ~んにも心配いらないよ。 64 00:04:42,788 --> 00:04:46,125 おじさんが優し~く なでなでするだけだから。 65 00:04:46,125 --> 00:04:49,128 ねぇ~? あぁ かわいい足。 66 00:04:49,128 --> 00:04:52,298 ちょっとシワシワかな アッハハ。 67 00:04:52,298 --> 00:04:54,951 働き者の足だ。 68 00:04:54,951 --> 00:04:56,969 あ~あ フフフッ。 69 00:04:56,969 --> 00:05:00,973 ほら お顔を見せてごらん。 70 00:05:00,973 --> 00:05:05,945 《フフフ… 喜多さんよ 俺様の勝ちだぜ》 71 00:05:05,945 --> 00:05:09,649 もう~ ウブなんだからぁ。 72 00:05:09,649 --> 00:05:13,619 恥ずかしがってないで お顔を見せなさいったら! 73 00:05:13,619 --> 00:05:17,073 げっ!! おっ およね婆さん! 74 00:05:17,073 --> 00:05:21,143 (およね)好き 好き…。 いや違う! いや あの…! 75 00:05:21,143 --> 00:05:23,145 弥次さんが悪いんだよ! なっ 何で…。 76 00:05:23,145 --> 00:05:25,181 産婆の婆さんを こんな気にさせといて。 77 00:05:25,181 --> 00:05:27,216 気にしないで。 ああ もう止まらない。 78 00:05:27,216 --> 00:05:29,118 止めて 止めて! いいんだよ ほらいいんだよ。 79 00:05:29,118 --> 00:05:32,288 あ~っ!! 離しやがれ! 80 00:05:32,288 --> 00:05:34,957 冗談じゃねえや! あっ 弥次さん。 81 00:05:34,957 --> 00:05:38,644 < この いくつになっても 煩悩が抜けないおじさんこそ➡ 82 00:05:38,644 --> 00:05:41,797 喜多さんの相棒。 弥次さんこと➡ 83 00:05:41,797 --> 00:05:44,197 弥次郎兵衛で ございます> 84 00:06:02,468 --> 00:06:04,470 (二人)行く? 85 00:06:04,470 --> 00:06:08,441 アッハハ… 弥次さんこそバカだね~! 86 00:06:08,441 --> 00:06:12,278 < このお話は 喜多八と弥次郎兵衛。 87 00:06:12,278 --> 00:06:14,947 二人のお調子者が巻き起こす➡ 88 00:06:14,947 --> 00:06:17,947 痛快なる 旅日記なのでございます> 89 00:07:00,609 --> 00:07:03,963 <第一話の舞台は 花のお江戸。 90 00:07:03,963 --> 00:07:06,615 二人が なぜ 旅に出ることになったのか➡ 91 00:07:06,615 --> 00:07:11,215 そのあたりのいきさつを お話しさせて頂きましょう> 92 00:07:14,623 --> 00:07:18,223 (お雪)旦那様 死んじまうんだね…。 93 00:07:41,634 --> 00:07:44,120 なにか用かい? 喜多八。 94 00:07:44,120 --> 00:07:47,056 用があるなら 部屋に 入ればいいじゃないか。 95 00:07:47,056 --> 00:07:50,643 手代の身で 旦那様の ご寝所に入るなど➡ 96 00:07:50,643 --> 00:07:52,661 恐れ多ございやす。 97 00:07:52,661 --> 00:07:56,661 奥ゆかしいんだねぇ~。 ええ。 98 00:07:58,634 --> 00:08:03,806 奥ゆかしいんでございます。 99 00:08:03,806 --> 00:08:06,642 ちょっ… やめなさい。 100 00:08:06,642 --> 00:08:08,961 私は大黒屋の女将なんだ。 101 00:08:08,961 --> 00:08:13,632 おかしなことはしないでおくれ。 102 00:08:13,632 --> 00:08:17,632 籠の外に出るんだぜ お雪。 103 00:08:33,202 --> 00:08:36,288 ⦅おおっ! うめえじゃねえか お雪。 104 00:08:36,288 --> 00:08:39,475 あい 喜多さん。 105 00:08:39,475 --> 00:08:43,475 この金魚も 川で 泳ぎてえんだろうなぁ。 106 00:08:48,634 --> 00:08:53,806 二匹でだったら… 怖くねえぜ⦆ 107 00:08:53,806 --> 00:08:56,976 喜多さん…。 108 00:08:56,976 --> 00:08:59,979 大黒屋は 俺のもんだ~っ! 109 00:08:59,979 --> 00:09:03,632 信じていいんだな? あたぼうよ。 110 00:09:03,632 --> 00:09:05,651 女将は手なずけた。 111 00:09:05,651 --> 00:09:10,306 吉原から落籍されたはいいが 主との年の差は五十。 112 00:09:10,306 --> 00:09:13,475 まともじゃねえ 籠の鳥だ。 113 00:09:13,475 --> 00:09:20,132 主さえ 黄泉路の旅に出りゃ 俺が女将の婿殿だ アッハハ…。 114 00:09:20,132 --> 00:09:23,986 大黒屋といやぁ 身代 十万両はくだらねえ大店だ。 115 00:09:23,986 --> 00:09:27,122 おめぇがそこの主様とはなぁ てぇしたもんだ。 116 00:09:27,122 --> 00:09:30,142 だからさぁ… 頼むよ 十五両。 117 00:09:30,142 --> 00:09:32,628 前々から やる男だとは 思ってたけどよう。 118 00:09:32,628 --> 00:09:34,628 あっ 思いついた! 119 00:09:44,974 --> 00:09:47,459 フッフフ… どうだい? 120 00:09:47,459 --> 00:09:50,396 どうだって? わかんねえヤツだね。 121 00:09:50,396 --> 00:09:52,464 夜逃げを 「する」と➡ 122 00:09:52,464 --> 00:09:54,967 俺たちの故郷 「駿河」を かけてるんだよ! 123 00:09:54,967 --> 00:09:57,002 十数年前に駿河で出会って➡ 124 00:09:57,002 --> 00:09:59,038 この江戸まで 一緒に夜逃げをしてきた➡ 125 00:09:59,038 --> 00:10:01,073 役者くずれの喜多さんが➡ 126 00:10:01,073 --> 00:10:03,642 天下の大黒屋の主様とはなぁって 感動してるんだよ。 127 00:10:03,642 --> 00:10:06,979 そんなことより 頼みごと! 何だっけ? 128 00:10:06,979 --> 00:10:10,449 いや だから 十五両! 悪い女と手 切るために➡ 129 00:10:10,449 --> 00:10:13,152 お店の金に 手をつけちまったんだよ~。 130 00:10:13,152 --> 00:10:17,289 今 女将にバレたら 愛想つかされて捨てられちまう。 131 00:10:17,289 --> 00:10:20,125 俺が主になったら 大番頭にしてやるからさぁ。 132 00:10:20,125 --> 00:10:22,161 だから 頼むよ弥次さん。 133 00:10:22,161 --> 00:10:26,448 いや 弥次郎兵衛大明神様! 134 00:10:26,448 --> 00:10:29,718 大番頭…。 135 00:10:29,718 --> 00:10:34,573 ⦅一同:大番頭様~。 は~い⦆ 136 00:10:34,573 --> 00:10:37,573 (笑い声) 137 00:10:40,963 --> 00:10:46,468 わかった 何とかしよう。 アッハハハ…。 138 00:10:46,468 --> 00:10:49,888 つまんねえ浮世を おもしろおかしく暮らそうぜ。 139 00:10:49,888 --> 00:10:53,788 ハッハッハ… しっかり頼むぜ~! 140 00:12:41,617 --> 00:12:45,120 とは言ったものの 十五両 どうすっかねぇ~。 141 00:12:45,120 --> 00:12:47,139 おっ 弥次。 あっ 大家さん。 142 00:12:47,139 --> 00:12:49,141 ちょっと来い。 いいから来い。 えっ…? 143 00:12:49,141 --> 00:12:51,141 えっ 何なに? 144 00:12:58,817 --> 00:13:00,817 弥次 どうすんだ? 145 00:13:03,122 --> 00:13:06,922 これで 十五両は安心だ ヘヘッ。 146 00:13:24,726 --> 00:13:28,147 お雪も ついに決心したか ヘヘヘッ。 147 00:13:28,147 --> 00:13:30,247 いよいよ大詰めだぜ。 148 00:13:40,292 --> 00:13:42,277 帰ったぜ。 149 00:13:42,277 --> 00:13:45,464 うわっ 何しやがんでい! 150 00:13:45,464 --> 00:13:48,117 どこ行ってやがったんだ この宿六が! 151 00:13:48,117 --> 00:13:50,803 どこ行ってたって 商いの話だよ。 152 00:13:50,803 --> 00:13:54,790 フンッ どうせ 若い女の尻を追いかけて➡ 153 00:13:54,790 --> 00:13:57,726 フラフラ 湯島辺りまで 行ってたんだろうが! 154 00:13:57,726 --> 00:13:59,611 うわっ! 155 00:13:59,611 --> 00:14:01,947 湯島まで行ってちゃ こんな早く帰ってこれねえよ。 156 00:14:01,947 --> 00:14:04,466 ホントに仕事だよ。 ウソ言うんじゃないよ。 157 00:14:04,466 --> 00:14:08,966 見てみな 急ぎの仕事すら ほっぽらかしじゃないか! 158 00:14:12,774 --> 00:14:17,262 うう…。 159 00:14:17,262 --> 00:14:19,465 なんだよ 急に。 160 00:14:19,465 --> 00:14:22,267 私は だまされた あの仲人に。 161 00:14:22,267 --> 00:14:25,838 お前は 元をただせば 駿府の大店のせがれだ。 162 00:14:25,838 --> 00:14:29,274 素性はいい おまけに 絵の腕があるから稼ぎもある。 163 00:14:29,274 --> 00:14:32,628 こんな良縁 またとないとか ぬかしやがって。 164 00:14:32,628 --> 00:14:35,297 ウソばっかりじゃないか! 165 00:14:35,297 --> 00:14:38,497 駿府の大店 栃面屋のせがれ ってのは本当だぜ。 166 00:14:41,453 --> 00:14:47,125 女の尻は追いかける。 絵は ちっとも芽が出ない。 167 00:14:47,125 --> 00:14:50,762 役立たずの でくのぼうじゃないか! 168 00:14:50,762 --> 00:14:53,265 私の十年を返しやがれ このスットコドッコイ! 169 00:14:53,265 --> 00:14:56,285 お… おめぇ それは ちぃと言いすぎじゃねえか? 170 00:14:56,285 --> 00:14:58,303 だったら売れてごらんよ。 171 00:14:58,303 --> 00:15:00,455 女遊びしたきゃ➡ 172 00:15:00,455 --> 00:15:02,958 ここに千両箱積んでから やってみろって言ってんだよ! 173 00:15:02,958 --> 00:15:04,943 この とうへんぼく! 174 00:15:04,943 --> 00:15:07,346 何とか言ってみろ…。 175 00:15:07,346 --> 00:15:10,949 何とか言ってみろってんだよ このポンポコたぬき! 176 00:15:10,949 --> 00:15:15,487 《畜生 次から次と いろんな悪口並べやがって。 177 00:15:15,487 --> 00:15:17,789 その減らず口も今日限りだ。 178 00:15:17,789 --> 00:15:20,459 ほえづらかくな クソババアめ》 179 00:15:20,459 --> 00:15:22,444 何か言ったかい? 180 00:15:22,444 --> 00:15:24,613 いえ 何も。 181 00:15:24,613 --> 00:15:27,115 お片づけしましょうね はい… 足元ごめんなさいよ。 182 00:15:27,115 --> 00:15:29,115 はいはい えぇ…。 183 00:15:40,128 --> 00:15:42,147 おっ! (太鼓の音) 184 00:15:42,147 --> 00:15:45,701 ≪当た~り! 当た~り! 185 00:15:45,701 --> 00:15:48,270 当た~り じゃねえ 聞いてんのか おめぇ。 186 00:15:48,270 --> 00:15:50,455 なんだもう だいたい おめぇ➡ 187 00:15:50,455 --> 00:15:52,624 そんな絵に描いたように うまくいくのか? 188 00:15:52,624 --> 00:15:55,944 絵に描いたんじゃねえ 本に書いたんだよ。 189 00:15:55,944 --> 00:15:58,263 見てみな これはな 今 売り出し中の➡ 190 00:15:58,263 --> 00:16:00,299 十返舎一九先生が 書いてくだすった筋書きだ。 191 00:16:00,299 --> 00:16:02,284 間違いねえ。 あとは お前が➡ 192 00:16:02,284 --> 00:16:04,453 役を務めてくれりゃ 幕は開くんだよ。 193 00:16:04,453 --> 00:16:06,455 なあ 芋七➡ 194 00:16:06,455 --> 00:16:09,441 一緒に 吉原通いした 仲じゃねえか。 195 00:16:09,441 --> 00:16:11,460 な? ん~? 196 00:16:11,460 --> 00:16:13,462 おめぇの筋書きどおりやったら➡ 197 00:16:13,462 --> 00:16:17,099 美人局すら うまくいかねえが➡ 198 00:16:17,099 --> 00:16:21,436 十返舎一九なら なんとかなるかもな。 199 00:16:21,436 --> 00:16:23,789 何? なになに? もうけ話? 200 00:16:23,789 --> 00:16:25,774 今度はうまくいくんだろうね。 201 00:16:25,774 --> 00:16:28,110 おたこ こいつぁ 幸先がいい。 202 00:16:28,110 --> 00:16:30,128 実はな 娘の役もあるんだよ。 203 00:16:30,128 --> 00:16:33,115 これだこれ 決まりだ これ。 204 00:16:33,115 --> 00:16:38,120 よし 稽古! 稽古…。 205 00:16:38,120 --> 00:16:41,620 おめぇも来い おめぇも…。 206 00:18:46,598 --> 00:18:51,787 あんた 誰を描いてるんだい? 207 00:18:51,787 --> 00:18:53,772 おめぇだよ。 208 00:18:53,772 --> 00:18:57,459 思えば この十年 描いたことなかったからな。 209 00:18:57,459 --> 00:19:01,113 美人すぎやしないかい? 210 00:19:01,113 --> 00:19:05,117 今までありがとよ。 バカだねぇ。 211 00:19:05,117 --> 00:19:09,104 (芋七)頼もう 頼もう! (戸の開く音) 212 00:19:09,104 --> 00:19:11,606 弥次郎兵衛の屋敷であるか! 213 00:19:11,606 --> 00:19:14,706 お前さん 変なのが来たよ。 214 00:19:17,279 --> 00:19:22,784 あの… こちらは お屋敷ではございませんが…。 215 00:19:22,784 --> 00:19:26,805 ここは 弥次郎兵衛の 住まいでございますが…。 216 00:19:26,805 --> 00:19:30,108 そうだ 弥次郎兵衛の住まいだ。 217 00:19:30,108 --> 00:19:33,111 私が 弥次郎兵衛でございますが。 弥次郎兵衛はおるか? 218 00:19:33,111 --> 00:19:35,280 (おふつ)話がずれてますけど…。 219 00:19:35,280 --> 00:19:38,133 ここは 絵師 弥次郎兵衛の住まいで➡ 220 00:19:38,133 --> 00:19:40,769 これが 弥次郎兵衛でございます。 221 00:19:40,769 --> 00:19:47,793 うん わしは 駿府城詰め 松田兵五左衛門と申す。 222 00:19:47,793 --> 00:19:52,881 この娘を嫁がせるため はるばる駿府から参った。 223 00:19:52,881 --> 00:19:55,100 たこと申します。 224 00:19:55,100 --> 00:19:58,119 誰に嫁がせるんでございます? 225 00:19:58,119 --> 00:20:01,289 だから 弥次郎兵衛にだ。 (おふつ)えぇ!? 226 00:20:01,289 --> 00:20:05,277 この娘と 俺は 祝言が決まったのだ。 227 00:20:05,277 --> 00:20:07,279 それは おめでとうございます。 228 00:20:07,279 --> 00:20:10,198 ご丁寧に… そうではない! 229 00:20:10,198 --> 00:20:12,117 何なんですか? 230 00:20:12,117 --> 00:20:15,120 この娘は 俺のいいなずけなのに➡ 231 00:20:15,120 --> 00:20:18,557 弥次郎兵衛と 末を誓ったと言うではないか。 232 00:20:18,557 --> 00:20:21,977 お武家様 それは 何かの間違いでございましょう。 233 00:20:21,977 --> 00:20:23,962 弥次郎兵衛には➡ 234 00:20:23,962 --> 00:20:28,149 私という女房が 十年前から いるんでございますよ。 235 00:20:28,149 --> 00:20:31,152 えぇ~! 女房がいる!? 236 00:20:31,152 --> 00:20:33,652 ねぇ お前さん。 237 00:20:37,642 --> 00:20:40,128 本当に おたこなのかい? 238 00:20:40,128 --> 00:20:42,428 あい。 239 00:20:44,699 --> 00:20:48,637 江戸に来る前 私には 末を誓った娘がいた。 240 00:20:48,637 --> 00:20:54,009 それが このおたこなんだ。 まだ私を思ってたなんて…。 241 00:20:54,009 --> 00:20:56,628 うれしい! おたこ! 242 00:20:56,628 --> 00:20:58,630 いやいやいや…。 243 00:20:58,630 --> 00:21:00,632 あんたいくつ? 十九に見える二十歳です。 244 00:21:00,632 --> 00:21:02,651 あんた いくつのときに 手出したの? 245 00:21:02,651 --> 00:21:05,303 十年より前だから 十歳…。 246 00:21:05,303 --> 00:21:09,641 そうさね 光源氏が 若紫を見つけた心持ちだったよ。 247 00:21:09,641 --> 00:21:13,628 ご武家様 それにしても せっかく決まったご縁談➡ 248 00:21:13,628 --> 00:21:16,598 よく破談になさいましたね。 え…。 249 00:21:16,598 --> 00:21:19,634 私でしたら そんなふしだらな娘➡ 250 00:21:19,634 --> 00:21:23,471 よくも武士の顔に 泥を塗ったなと➡ 251 00:21:23,471 --> 00:21:25,457 一刀のもとに叩き斬りますがね。 252 00:21:25,457 --> 00:21:27,475 え…。 お嬢様も➡ 253 00:21:27,475 --> 00:21:29,461 こんな男と関わったなんてこと➡ 254 00:21:29,461 --> 00:21:31,479 黙っていらっしゃれば いいものを➡ 255 00:21:31,479 --> 00:21:33,632 わざわざ お明かしになるということは➡ 256 00:21:33,632 --> 00:21:35,800 ご覚悟は できていらっしゃるわけでしょ? 257 00:21:35,800 --> 00:21:37,786 ええっと…。 258 00:21:37,786 --> 00:21:39,771 でしたら まずは お武家様➡ 259 00:21:39,771 --> 00:21:42,257 このお嬢様をお斬りになって➡ 260 00:21:42,257 --> 00:21:47,112 それから… 宿をお斬りください。 261 00:21:47,112 --> 00:21:50,949 お… おめぇ 俺に 殺されろって言うのかい? 262 00:21:50,949 --> 00:21:55,949 お前さん一人死なせやしない 私も すぐに後を追うさ。 263 00:21:58,623 --> 00:22:00,609 というわけですので お嬢様➡ 264 00:22:00,609 --> 00:22:05,463 お前様は お一人で 黄泉路をお行きくださいまし。 265 00:22:05,463 --> 00:22:07,799 私は 亭主と二人仲よく➡ 266 00:22:07,799 --> 00:22:10,452 死出三途を越すといたしましょう。 267 00:22:10,452 --> 00:22:14,105 ええっと…。 268 00:22:14,105 --> 00:22:17,475 どうすりゃいいんだよ。 269 00:22:17,475 --> 00:22:19,511 《ヤベぇよ。 270 00:22:19,511 --> 00:22:22,447 おふつのほうが 俺より一枚も二枚もうわてだよ。 271 00:22:22,447 --> 00:22:25,300 コイツ 戯作者になったほうが いいんじゃねえか? 272 00:22:25,300 --> 00:22:29,700 畜生 考えろ 考えろ 考えろ 考えろ…》 273 00:22:33,441 --> 00:22:35,460 お武家様! 274 00:22:35,460 --> 00:22:38,113 私を駿府のご一族様のもとへ お連れくださり➡ 275 00:22:38,113 --> 00:22:41,549 そこで 首をはねてくださいまし! 276 00:22:41,549 --> 00:22:44,452 お前さん? 277 00:22:44,452 --> 00:22:48,440 ふだんは ケンカばかりでも 十年連れ添った恋女房。 278 00:22:48,440 --> 00:22:51,142 死なせるわけにゃいきません。 279 00:22:51,142 --> 00:22:54,796 おふつ おめぇには まだまだ先がある。 280 00:22:54,796 --> 00:22:58,650 幸せになっておくれ 今 三行半を書く。 281 00:22:58,650 --> 00:23:00,650 本気なのかい? 282 00:23:03,455 --> 00:23:07,642 今までありがとよ。 283 00:23:07,642 --> 00:23:10,462 わかりました。 そっか ありがとよ! 284 00:23:10,462 --> 00:23:14,282 うれしそうだね。 そんなことあるかよ! うっ…。 285 00:23:14,282 --> 00:23:18,486 でも お前さん 私は 十年連れ添った恋女房。 286 00:23:18,486 --> 00:23:23,892 死なせるわけにゃいかないって そう言ってくれただけで十分だよ。 287 00:23:23,892 --> 00:23:29,292 さあ お武家様 スッパリとやっておくんなさいまし。 288 00:23:31,800 --> 00:23:33,800 早まっちゃいけえねえ おふつ。 289 00:23:36,304 --> 00:23:40,792 大きな空へ飛び立つんだ。 290 00:23:40,792 --> 00:23:44,479 大きな空…。 291 00:23:44,479 --> 00:23:48,349 お前さんが そこまで言うなら。 292 00:23:48,349 --> 00:23:50,749 それじゃ 三行半を書く。 293 00:23:58,309 --> 00:24:00,295 三行半だ。 ずいぶん早いね。 294 00:24:00,295 --> 00:24:03,481 俺は 仕事が早いんだよ。 295 00:24:03,481 --> 00:24:06,181 達者で暮らせよ 女房殿。 296 00:24:19,647 --> 00:24:21,647 終わった 終わった~! 297 00:24:38,633 --> 00:24:45,023 十年連れ添った恋女房 追い出しやがって。 298 00:24:45,023 --> 00:24:48,960 おふつ 俺が ふがいないばっかりに…。 299 00:24:48,960 --> 00:24:51,296 うっ… すまねえ すまねえ! 300 00:24:51,296 --> 00:24:53,631 あらあら。 (泣き声) 301 00:24:53,631 --> 00:24:55,934 おい 弥次。 来た 大家さん! 302 00:24:55,934 --> 00:24:58,770 はいはい よっ… ほい ごめんよ ほい…。 303 00:24:58,770 --> 00:25:00,789 はいはいはい! 304 00:25:00,789 --> 00:25:02,791 あれあれ? おふつさんは? 305 00:25:02,791 --> 00:25:05,977 ヘヘッ 心配ありませんよ 約束どおり追い出しました。 306 00:25:05,977 --> 00:25:08,980 お前も とんでもねえ野郎だな。 とんでもねえ? 307 00:25:08,980 --> 00:25:12,133 大家さんの役に立つためだったら これしかないじゃありませんか。 308 00:25:12,133 --> 00:25:14,636 そんなことより 十五両。 309 00:25:14,636 --> 00:25:17,806 はいよ はいよ ほれ。 310 00:25:17,806 --> 00:25:22,811 ヘヘヘ 確かに。 おい 入っておいで。 311 00:25:22,811 --> 00:25:25,463 おぉ~ 来たね! 312 00:25:25,463 --> 00:25:28,967 おい この女 誰なんだよ? おなか大きくない? 313 00:25:28,967 --> 00:25:32,103 おつぼ 今日から この弥次郎兵衛が➡ 314 00:25:32,103 --> 00:25:34,622 おめぇの旦那様だ。 315 00:25:34,622 --> 00:25:38,626 弥次 優しくしてやってくれよ。 316 00:25:38,626 --> 00:25:41,226 へえ。 アハハハハ! 317 00:25:47,285 --> 00:25:50,455 えっ? 318 00:25:50,455 --> 00:25:52,774 おい どういうわけなんだよ。 319 00:25:52,774 --> 00:25:54,826 よいしょ ほいほいほい…。 320 00:25:54,826 --> 00:25:58,379 はい はい ご苦労様! 321 00:25:58,379 --> 00:26:00,281 いやいや だから➡ 322 00:26:00,281 --> 00:26:03,635 この女は 誰なんだって聞いてんだよ。 323 00:26:03,635 --> 00:26:08,306 俺の新しい女房。 (おたこ/芋七)え~っ! 324 00:26:08,306 --> 00:26:10,959 大家さんがな 訳ありで 腹ボテになっちまった女を➡ 325 00:26:10,959 --> 00:26:12,977 どっかに片づけてくれって。 326 00:26:12,977 --> 00:26:14,963 その女にゃ 持参金が 十五両ついてくるからって➡ 327 00:26:14,963 --> 00:26:17,382 言いやがってよ。 ちょちょちょ ちょっと待て。 328 00:26:17,382 --> 00:26:20,635 おめぇは 持参金が欲しくて 女房 騙して➡ 329 00:26:20,635 --> 00:26:23,288 放り出しちまったってことか? さあさあ 今宵は➡ 330 00:26:23,288 --> 00:26:25,623 俺たちの初夜だからよ そろそろ引きあげちゃくんねえか。 331 00:26:25,623 --> 00:26:30,295 こんな腹ボテで初夜って お前 どうかしてるよ お前! 332 00:26:30,295 --> 00:26:33,965 大丈夫だろ。 (おたこ)ゲスの極み。 333 00:26:33,965 --> 00:26:37,302 あ~あ ダメだ こりゃ。 さあ 帰るぞ。 334 00:26:37,302 --> 00:26:39,337 帰れ 帰れ。 335 00:26:39,337 --> 00:26:43,408 あ~あ。 はいはいはい。 336 00:26:43,408 --> 00:26:47,962 これからは 道で会っても 声かけないでね。 337 00:26:47,962 --> 00:26:53,051 フン! 俺様は もうすぐ 大黒屋の大番頭様だ。 338 00:26:53,051 --> 00:26:54,969 望むところだよ。 339 00:26:54,969 --> 00:26:57,305 おっ さあさあ 上がんねえ 上がんねえ。 340 00:26:57,305 --> 00:27:02,005 今宵から 俺が お前の 新しい旦那様だ。 よろしく頼むぜ。 341 00:27:04,295 --> 00:27:07,465 おいおいおいおい…。 うわ~ん! 342 00:27:07,465 --> 00:27:10,134 弥次の野郎には ホントあきれたぜ もう。 343 00:27:10,134 --> 00:27:13,634 とはいえ 儲かったね。 遊ぼ 遊ぼ。 遊ぼ 遊ぼ。 344 00:29:22,600 --> 00:29:24,969 (泣き声) 345 00:29:24,969 --> 00:29:27,638 おいおいおい しようがないじゃねえか。 346 00:29:27,638 --> 00:29:29,624 おめぇの腹の子のテテ親は➡ 347 00:29:29,624 --> 00:29:32,593 世間じゃ名乗れねえ 訳ありのお方なんだろ? 348 00:29:32,593 --> 00:29:35,279 しかも 捨てられてよ。 349 00:29:35,279 --> 00:29:38,950 (泣き声) 350 00:29:38,950 --> 00:29:41,936 どうせ 私は 捨てられた女です! 351 00:29:41,936 --> 00:29:44,956 いやいや その代わり 十五両つけてくださったんだろ。 352 00:29:44,956 --> 00:29:47,375 だから 俺が亭主と親父 両方に➡ 353 00:29:47,375 --> 00:29:49,944 なってやろう っつってんじゃねえかよ。 354 00:29:49,944 --> 00:29:55,299 安心しな。 いい亭主になってやっからよ。 355 00:29:55,299 --> 00:29:57,935 前の奥さんは どうするの? 356 00:29:57,935 --> 00:30:01,289 えっ? ああ 聞いてたの。 357 00:30:01,289 --> 00:30:03,624 十年連れ添った奥さんを 捨てる男が➡ 358 00:30:03,624 --> 00:30:05,960 いい亭主になるなんて 信じられない。 359 00:30:05,960 --> 00:30:07,979 言うねえ。 360 00:30:07,979 --> 00:30:12,283 いいんだよ。 俺は アイツに夢を見させられねえ。 361 00:30:12,283 --> 00:30:17,288 今のまま 一緒にいても 幸せじゃねえってことさ。 362 00:30:17,288 --> 00:30:21,692 うん? 十年連れ添ったって話 したっけ? 363 00:30:21,692 --> 00:30:23,611 (戸を叩く音) 364 00:30:23,611 --> 00:30:25,947 誰でい。 365 00:30:25,947 --> 00:30:28,966 まさか おふつが 戻ってきたんじゃねえだろうな。 366 00:30:28,966 --> 00:30:31,619 やべぇ やべぇ。 (戸を叩く音) 367 00:30:31,619 --> 00:30:36,624 おいおいおい ちと悪ぃけどよ こん中へ隠れちゃくんねえか。 368 00:30:36,624 --> 00:30:39,277 はい よいしょ。 369 00:30:39,277 --> 00:30:42,277 前の女房だったら 首絞められちまうからよ。 370 00:30:50,621 --> 00:30:53,291 (戸を叩く音) 371 00:30:53,291 --> 00:30:55,276 誰でい。 372 00:30:55,276 --> 00:30:57,278 俺だよ。 373 00:30:57,278 --> 00:30:59,680 なんでい 喜多さんかよ。 どうした? 374 00:30:59,680 --> 00:31:02,600 頼んだ十五両 大丈夫かと思ってよ。 375 00:31:02,600 --> 00:31:05,620 だって 旦那 ホント今日明日なんだぜ。 376 00:31:05,620 --> 00:31:09,273 それまでに返しておかねえとよ。 377 00:31:09,273 --> 00:31:11,609 百倍にして返してもらうぜ。 378 00:31:11,609 --> 00:31:16,280 おうおう やるねえ。 男だね! どうやって都合した? 379 00:31:16,280 --> 00:31:18,766 女だよ。 女に都合させたんだよ。 380 00:31:18,766 --> 00:31:21,953 か~っ! かますねえ。 まぁ 何でもいいや。 381 00:31:21,953 --> 00:31:26,340 (おつぼ)産まれる! あ~ 痛い! 産まれる! 382 00:31:26,340 --> 00:31:29,944 おふつさん みごもってたのか。 ハハッ こいつは めでてぇ。 383 00:31:29,944 --> 00:31:33,297 んな訳ねえだろ。 新しい女房だよ。 新しい女房!? 384 00:31:33,297 --> 00:31:35,800 おい おめぇ ちょっと 長持 開けるの手伝ってくれ。 385 00:31:35,800 --> 00:31:38,636 長持に いんのかい。 386 00:31:38,636 --> 00:31:40,688 せ~の…。 (二人)よいしょ。 387 00:31:40,688 --> 00:31:44,625 おい 大丈夫かい。 おうおう お嬢さん しっかりしろ。 388 00:31:44,625 --> 00:31:47,945 喜多さん! えっ? 389 00:31:47,945 --> 00:31:51,299 おつぼ! おっ お知り合い? 390 00:31:51,299 --> 00:31:54,602 やっぱり助けに来てくれたんだね。 喜多さん! 391 00:31:54,602 --> 00:31:56,637 いや ちょちょちょ… どういうわけだい? 392 00:31:56,637 --> 00:31:58,956 いや こっちが聞きてえよ。 393 00:31:58,956 --> 00:32:01,626 もしかして 腹の子の父親っていうのは…。 394 00:32:01,626 --> 00:32:04,295 喜多さんです。 なに!? 395 00:32:04,295 --> 00:32:07,281 バレちゃった? バレちゃった? じゃねえよ お前。 396 00:32:07,281 --> 00:32:10,651 もしかして 使い込んだ お店の十五両ってのは➡ 397 00:32:10,651 --> 00:32:12,970 この女 片づけるための 持参金なのかい? 398 00:32:12,970 --> 00:32:14,956 それじゃあ 大家のヤツ➡ 399 00:32:14,956 --> 00:32:17,625 あの十五両を 弥次さんとこ持ってきたのか! 400 00:32:17,625 --> 00:32:19,627 あの野郎…。 401 00:32:19,627 --> 00:32:22,280 俺は テメエの女と腹の子を 引き受けるために➡ 402 00:32:22,280 --> 00:32:26,651 恋女房 追い出しちまったってのかい。 403 00:32:26,651 --> 00:32:29,937 こんな女がいることが お雪の耳に入ってみろ。 404 00:32:29,937 --> 00:32:31,956 何もかも ふいだろうが。 405 00:32:31,956 --> 00:32:34,292 それに もう 十五両 手に入ったわけだしよ。 406 00:32:34,292 --> 00:32:36,327 それは おめぇに渡す金じゃねえか。 407 00:32:36,327 --> 00:32:39,630 そのために 俺は 何もかも失っちまったんだぞ。 408 00:32:39,630 --> 00:32:41,616 俺が大黒屋のあるじになったら➡ 409 00:32:41,616 --> 00:32:44,018 何百倍にもして 返してやる って言ってんだろう。 410 00:32:44,018 --> 00:32:45,937 そりゃ わかってるがよ。 411 00:32:45,937 --> 00:32:48,272 なんだか 俺は 無性に腹が立ってきやがったぜ。 412 00:32:48,272 --> 00:32:50,625 俺は おめぇに コケにされた ってのが許せねえんだよ。 413 00:32:50,625 --> 00:32:53,294 話に乗ったんだろうが! 今更 ガタガタ言ってんじゃねえよ! 414 00:32:53,294 --> 00:32:55,994 なんだと!? なんだよ! 415 00:32:57,982 --> 00:32:59,967 痛ぇ! 416 00:32:59,967 --> 00:33:02,667 イテテテテ…。 417 00:33:05,623 --> 00:33:07,642 あの~。 418 00:33:07,642 --> 00:33:37,638 ♬~ 419 00:33:37,638 --> 00:33:42,627 腕は 落ちてねえようだな。 おめぇもな。 おら! 420 00:33:42,627 --> 00:33:45,313 イタタタタ… おいおい! 421 00:33:45,313 --> 00:33:47,348 おい 返せ! 返してくれ~! 422 00:33:47,348 --> 00:33:49,348 もらった~! 423 00:33:51,802 --> 00:33:53,802 放せ この バカ力! 424 00:34:02,980 --> 00:34:06,680 (おつぼ)産まれる~! (二人)えっ!? 425 00:36:30,611 --> 00:36:34,281 (およね)はいはい 産まれるって聞いたけど。 426 00:36:34,281 --> 00:36:38,619 あぁ? 誰なんだい? この娘。 427 00:36:38,619 --> 00:36:41,672 (弥次/喜多)コイツの女房だ。 どっちなんだよ! 428 00:36:41,672 --> 00:36:43,724 どっちでもいいからよ 早く頼むぜ。 429 00:36:43,724 --> 00:36:45,643 はいはい ほら お湯 沸かしとくれ。 430 00:36:45,643 --> 00:36:50,014 ほら いくよ。 安心をし… えっ? 431 00:36:50,014 --> 00:36:53,014 どうしたい? 男か? 女か? 432 00:36:58,305 --> 00:37:02,259 人形だ。 (弥次/喜多)え~っ! 433 00:37:02,259 --> 00:37:04,295 どうなってんの? 434 00:37:04,295 --> 00:37:06,964 おいおい おつぼ! どういうことだよ! 435 00:37:06,964 --> 00:37:09,264 (おふつ)そこまでだよ! 436 00:37:14,605 --> 00:37:16,624 おふつ! 437 00:37:16,624 --> 00:37:19,293 弥次 悪ぃ。 ごめんね。 438 00:37:19,293 --> 00:37:23,931 おめぇら…。 コイツら どっかで会ったような…。 439 00:37:23,931 --> 00:37:26,617 あっ! 間男野郎。 440 00:37:26,617 --> 00:37:28,602 なんだ? 知らねえ。 441 00:37:28,602 --> 00:37:31,288 おい 弥次! あぁん!? 442 00:37:31,288 --> 00:37:35,676 聞いたぞ。 おふつさんを騙すために➡ 443 00:37:35,676 --> 00:37:39,280 十返舎一九に 筋書きをこしらえさせたそうだな。 444 00:37:39,280 --> 00:37:41,282 うるせぇな。 テメエは 黙ってろよ。 445 00:37:41,282 --> 00:37:43,601 弥次さんに回すなんて ボケてんじゃねえの。 446 00:37:43,601 --> 00:37:46,270 ええい 黙りな。 447 00:37:46,270 --> 00:37:49,623 このお方を どなたと心得る。 448 00:37:49,623 --> 00:37:54,945 当代一の売れっ子戯作者 十返舎一九先生よ。 449 00:37:54,945 --> 00:37:58,282 はい 私が…。 450 00:37:58,282 --> 00:38:03,103 十返舎一九でございます。 451 00:38:03,103 --> 00:38:06,703 え~っ! ウソ! 大家さんが十返舎一九!? 452 00:38:09,627 --> 00:38:14,615 よくも こんな三文芝居を 俺の作だなんて言ってくれたな。 453 00:38:14,615 --> 00:38:16,951 このバカどもが。 いやいや それは あの…。 454 00:38:16,951 --> 00:38:18,936 おふつさ~ん! 455 00:38:18,936 --> 00:38:21,605 (喜多/弥次) え~っ! ここも知り合い!? 456 00:38:21,605 --> 00:38:25,943 おふつさんの言うとおりだった。 信じた私が バカだった。 457 00:38:25,943 --> 00:38:29,263 おつぼ 子ができたってのは ウソだったのか? 458 00:38:29,263 --> 00:38:32,283 ウソなんて言葉で 片づけてほしくないね。 459 00:38:32,283 --> 00:38:35,286 おつぼちゃんは 真剣だったんだから。 460 00:38:35,286 --> 00:38:37,972 うちの宿六に稼ぎがないから➡ 461 00:38:37,972 --> 00:38:42,142 私が神田明神様の門前の茶店に 働きに行ってるのは 知ってんね。 462 00:38:42,142 --> 00:38:45,442 ⦅ごちそうさま。 どうも ありがとうございます。 463 00:38:52,286 --> 00:38:54,305 あの~。 464 00:38:54,305 --> 00:38:59,627 喜多さんのお友達の 弥次さんの奥様ですよね。 465 00:38:59,627 --> 00:39:03,927 奥様って柄じゃないけど。 あなたは? 466 00:39:08,302 --> 00:39:13,457 うわ~ん! ちょっと どうしたの? 467 00:39:13,457 --> 00:39:15,643 ちょっと…。 468 00:39:15,643 --> 00:39:18,012 ほら ちょっと座って。 はいはい⦆ 469 00:39:18,012 --> 00:39:20,047 (おふつ)聞けば 喜多さんが➡ 470 00:39:20,047 --> 00:39:22,967 二世を契りながら 最近 ちっとも会ってくれない。 471 00:39:22,967 --> 00:39:24,969 やっと会えたと思ったら…。 472 00:39:24,969 --> 00:39:27,621 ⦅あっ 喜多さん。 どこへ行ってたの? 473 00:39:27,621 --> 00:39:30,624 急に いなくなるし 私 心配で心配で…。 474 00:39:30,624 --> 00:39:32,643 喜多八。 はい。 475 00:39:32,643 --> 00:39:37,982 この人は? いや あの… 遠縁の者です。 476 00:39:37,982 --> 00:39:41,682 あっ 先に行っててもらえますか。 すぐに追いかけますんで。 477 00:39:50,961 --> 00:39:53,647 一緒には なれないって どういうこと? 478 00:39:53,647 --> 00:39:57,067 俺は 今 まともに働いてんだ。 479 00:39:57,067 --> 00:40:02,656 見てみろ。 天下の大黒屋だぜ。 480 00:40:02,656 --> 00:40:05,693 今の俺にゃあ 商い第一。 481 00:40:05,693 --> 00:40:08,645 とても 所帯を持つ余裕は ねえんだ。 482 00:40:08,645 --> 00:40:11,298 すまねえ。 483 00:40:11,298 --> 00:40:13,298 じゃあな。 484 00:40:16,687 --> 00:40:18,706 喜多さん⦆ 485 00:40:18,706 --> 00:40:21,475 まっ 出会いがありゃ 別れもあるってな。 486 00:40:21,475 --> 00:40:23,460 おめぇよう 袖にするにも➡ 487 00:40:23,460 --> 00:40:25,462 もうちょっと 言いようってのが あんだろうが。 488 00:40:25,462 --> 00:40:27,948 偽芝居で 三行半 書いたヤツが口出すな。 489 00:40:27,948 --> 00:40:29,967 はい。 490 00:40:29,967 --> 00:40:32,986 ひでぇ話だな まったくよ。 491 00:40:32,986 --> 00:40:38,292 それで この二人が この私に相談に来たって寸法だ。 492 00:40:38,292 --> 00:40:41,295 大家さんが十返舎一九だって いつ わかったんだよ。 493 00:40:41,295 --> 00:40:44,698 お前さんは 一枚 絵が描けると すぐ飲みに行っちまうだろ。 494 00:40:44,698 --> 00:40:47,317 版元さんに持っていくのは いつも 私だった。 495 00:40:47,317 --> 00:40:49,970 そのとき たまたま会ったんだよ。 496 00:40:49,970 --> 00:40:53,841 そうか。 女房が お世話になりまして…。 497 00:40:53,841 --> 00:40:55,876 黙ってな。 はい。 498 00:40:55,876 --> 00:40:58,962 一九先生は 喜多さんに子ができたと言って➡ 499 00:40:58,962 --> 00:41:01,648 反応を見なさいと おっしゃってくださいました。 500 00:41:01,648 --> 00:41:04,301 そんなことを。 それを聞いて➡ 501 00:41:04,301 --> 00:41:08,455 喜多が喜ぶか それとも違う顔をするか。 502 00:41:08,455 --> 00:41:10,974 とにかく そのまま 伝えろって言ったんだよ。 503 00:41:10,974 --> 00:41:12,976 そうしたら…。 504 00:41:12,976 --> 00:41:15,979 ⦅こ こ こ… 子ができたって!? 505 00:41:15,979 --> 00:41:19,679 ちょ ちょ ちょっと…。 506 00:41:21,985 --> 00:41:24,285 本当か? 507 00:41:27,624 --> 00:41:29,960 まずいな…。 508 00:41:29,960 --> 00:41:33,647 いや ちょっと待て ちょっと待て ちょっと待て⦆ 509 00:41:33,647 --> 00:41:36,633 (おつぼ)喜多さんは 私を一九先生のところへ➡ 510 00:41:36,633 --> 00:41:39,069 連れていきました。 511 00:41:39,069 --> 00:41:42,489 ⦅あの娘と腹の子を なんとかしてくれだと? 512 00:41:42,489 --> 00:41:44,475 ええ 誰か…。 513 00:41:44,475 --> 00:41:47,845 まとめて もらってくれる人は いませんかね 大家さん。 514 00:41:47,845 --> 00:41:52,299 ご挨拶に初がつおを 持っていくのと訳が違うんだぞ。 515 00:41:52,299 --> 00:41:57,304 持参金に十五両 これで なんとかしてもらえませんか? 516 00:41:57,304 --> 00:42:00,724 お前 その金 どうした? 517 00:42:00,724 --> 00:42:03,961 お店の金に手をつけました。 518 00:42:03,961 --> 00:42:06,647 とんでもねえ野郎だな お前は! 519 00:42:06,647 --> 00:42:11,318 涼風の喜多八 一世一代の大博打です。 520 00:42:11,318 --> 00:42:15,318 お願いしやす お願いしやす!⦆ 521 00:42:17,608 --> 00:42:19,776 あちゃ~ しくじった。 522 00:42:19,776 --> 00:42:21,962 いや~ ぶったまげたよ。 523 00:42:21,962 --> 00:42:25,949 これに関しては 私の戯作の上をいった。 524 00:42:25,949 --> 00:42:28,118 いっそのこと 黄表紙にしちまえば? 525 00:42:28,118 --> 00:42:30,103 ハハ 弥次さん 絵描かせてもらえよ。 526 00:42:30,103 --> 00:42:32,289 いいね。 そこ うるさい! 527 00:42:32,289 --> 00:42:34,625 (二人)はい…。 とにかく驚いたよ。 528 00:42:34,625 --> 00:42:36,944 もともと 一九先生が お立てになった策が➡ 529 00:42:36,944 --> 00:42:39,947 ぐるっと回って 一九先生に 戻ってきたんだからね。 530 00:42:39,947 --> 00:42:43,450 それで もう一度 みんなで集まって➡ 531 00:42:43,450 --> 00:42:46,136 この企てになったというわけさ。 532 00:42:46,136 --> 00:42:48,622 ⦅よし わかった! 533 00:42:48,622 --> 00:42:51,222 弥次を使おう⦆ 534 00:42:53,777 --> 00:42:58,682 俺たちは 弥次が 持参金付きの娘を頼まれて➡ 535 00:42:58,682 --> 00:43:01,952 どう出るか。 そして 喜多が➡ 536 00:43:01,952 --> 00:43:06,623 おつぼが弥次のものになるのを 知ってどう出るか➡ 537 00:43:06,623 --> 00:43:08,775 それを見てたんだよ。 538 00:43:08,775 --> 00:43:12,129 女が一生をささげるに 値する男かどうか。 539 00:43:12,129 --> 00:43:17,284 まっとうな心を持った 男かどうか 見てたんだよ。 540 00:43:17,284 --> 00:43:23,607 ほら 三行半 大きな空に飛んできな! 541 00:43:23,607 --> 00:43:26,607 喜多さん さようなら! 542 00:43:28,946 --> 00:43:32,616 (二人)そんなこと言うなよ! 543 00:43:32,616 --> 00:43:35,819 (二人)ひゃ~! よし ほら 行くぞ。 544 00:43:35,819 --> 00:43:38,319 さぁ 立て 立て。 545 00:43:42,960 --> 00:43:47,660 とっとと出てけ! ぬれねずみが! フフフ。 546 00:45:21,725 --> 00:45:28,348 いやいやいや まいったね って 何がまいったんだ? ヘヘヘ…。 547 00:45:28,348 --> 00:45:30,650 ゲッ 版元!? 548 00:45:30,650 --> 00:45:33,286 先生 いつになったら➡ 549 00:45:33,286 --> 00:45:36,473 原稿いただけるん でしょうかね? 550 00:45:36,473 --> 00:45:38,959 前金もらって➡ 551 00:45:38,959 --> 00:45:41,645 何も書かないんじゃすみませんよ。 552 00:45:41,645 --> 00:45:44,781 もうちょっと もうちょっと お待ちください! 553 00:45:44,781 --> 00:45:46,967 ネタなら ちゃんとあるんです。 554 00:45:46,967 --> 00:45:50,470 もうちょっと もうちょっとです お願いします! 555 00:45:50,470 --> 00:45:54,891 私が先生の顔を 忘れないうちに頼みますよ。 556 00:45:54,891 --> 00:45:57,661 はっ。 でないと 前金が➡ 557 00:45:57,661 --> 00:46:00,261 手切れ金ですからね! はっ。 558 00:46:03,300 --> 00:46:05,819 あ~あ。 559 00:46:05,819 --> 00:46:09,172 やれやれやれやれ。 560 00:46:09,172 --> 00:46:12,609 いいネタなんてありゃしねえんだよ。 561 00:46:12,609 --> 00:46:15,929 なぁ 大福…。 562 00:46:15,929 --> 00:46:17,929 あっ! 563 00:46:20,016 --> 00:46:22,769 ハァ… 無宿もんになっちまったな。 564 00:46:22,769 --> 00:46:27,641 ヘヘヘ ハハハ…。 565 00:46:27,641 --> 00:46:29,693 なんだよ? 566 00:46:29,693 --> 00:46:31,778 いや… 駿府出て➡ 567 00:46:31,778 --> 00:46:36,133 二人で江戸に来たときも こうだったな と思ってよ。 568 00:46:36,133 --> 00:46:39,269 ああ そうだったな。 569 00:46:39,269 --> 00:46:44,458 心配すんねぇ 弥次さん まだ大黒屋があらぁ。 570 00:46:44,458 --> 00:46:47,427 そうだ そうだったな。 ハハハハ。 571 00:46:47,427 --> 00:46:50,330 そうだよ ヘヘヘヘ。 572 00:46:50,330 --> 00:46:54,968 お~ ビックリした! 何だ? このかわいいの。 573 00:46:54,968 --> 00:46:58,968 うん? 文がついてるぞ。 574 00:47:00,991 --> 00:47:03,527 う~ん? なんでぇ? 575 00:47:03,527 --> 00:47:08,982 あ~! だ… 大黒屋の旦那が 亡くなったってよ! 576 00:47:08,982 --> 00:47:13,470 よっしゃ~! 大番狂わせだ! 577 00:47:13,470 --> 00:47:18,670 十万両の旦那と大番頭だぜ。 (二人)アハハハ…。 578 00:47:20,627 --> 00:47:22,813 いてぇ…。 何しやがる! 579 00:47:22,813 --> 00:47:25,298 これから旦那様の弔いの支度だ。 580 00:47:25,298 --> 00:47:29,302 喜多八 あんたは 入れるわけにはいかない。 581 00:47:29,302 --> 00:47:31,738 なんだって!? 旦那様から➡ 582 00:47:31,738 --> 00:47:35,642 自分にもしものことがあったら 喜多だけは追い出すように と➡ 583 00:47:35,642 --> 00:47:38,812 遺言をたまわってたんだよ。 ウソだろ お雪! 584 00:47:38,812 --> 00:47:41,298 なれなれしく呼ぶでないよ。 遊女のおめぇが➡ 585 00:47:41,298 --> 00:47:43,733 あんなじいさんに落籍された。 586 00:47:43,733 --> 00:47:48,288 楽しくもねえ籠の鳥 やっと 空に羽ばたけるんじゃねえか。 587 00:47:48,288 --> 00:47:51,458 なぁ お雪… お雪! 588 00:47:51,458 --> 00:47:54,644 鳥は籠から出たら 一羽 勝手に飛ぶもんさ。 589 00:47:54,644 --> 00:47:57,631 籠の中での夢は忘れたよ。 590 00:47:57,631 --> 00:48:00,631 私は大黒屋をしょって いかなきゃいけないんだ。 591 00:48:04,304 --> 00:48:08,704 喜多さん あんたも そろそろ 目を覚ましなよ。 592 00:48:15,298 --> 00:48:17,998 お… お雪! 593 00:48:30,297 --> 00:48:32,315 (おふつ)そうそうそうそう。 594 00:48:32,315 --> 00:48:37,315 あっ そうそう…。 あっ 出来ました! 595 00:48:39,723 --> 00:48:42,723 あっ あっ… ハックシュン! 596 00:48:44,661 --> 00:48:46,646 夜が明けた。 597 00:48:46,646 --> 00:48:49,533 眠っちまったかい? 598 00:48:49,533 --> 00:48:51,801 いいや。 599 00:48:51,801 --> 00:48:54,971 己のバカさ加減が つくづく嫌になって➡ 600 00:48:54,971 --> 00:48:57,641 眠れやしねえよ。 601 00:48:57,641 --> 00:49:02,996 ハァ… 何もかもなくなっちまった。 602 00:49:02,996 --> 00:49:06,283 金も 住む家も 女房も。 603 00:49:06,283 --> 00:49:08,952 自業自得か。 604 00:49:08,952 --> 00:49:11,955 ハァ…。 605 00:49:11,955 --> 00:49:16,359 これから どうしよっかな…。 606 00:49:16,359 --> 00:49:20,981 俺みてぇなバカのことなんか 誰も知らねえ➡ 607 00:49:20,981 --> 00:49:23,817 遠いところへ行ってしまいてぇよ。 608 00:49:23,817 --> 00:49:25,969 まったくだ。 609 00:49:25,969 --> 00:49:30,669 とはいえ どこ行きゃ いいんだろうな…。 610 00:49:32,959 --> 00:49:35,295 お伊勢参りか。 611 00:49:35,295 --> 00:49:37,981 ああ お伊勢参りだ。 612 00:49:37,981 --> 00:49:40,650 はやってんだってな。 613 00:49:40,650 --> 00:49:45,305 伊勢神宮に参拝して これまでの垢を落として➡ 614 00:49:45,305 --> 00:49:47,974 清い体になって…。 615 00:49:47,974 --> 00:49:50,627 あ~! あ~ ビックリした! 616 00:49:50,627 --> 00:49:53,797 弥次さん。 うん? 伊勢参りだ。 617 00:49:53,797 --> 00:49:56,983 お伊勢さんへお参りするんだよ! 618 00:49:56,983 --> 00:49:59,135 汚れちまった俺たちにゃ➡ 619 00:49:59,135 --> 00:50:03,023 間に合うかどうか わかんねえけど もし 生まれ変われるなら➡ 620 00:50:03,023 --> 00:50:05,125 これから やり直して みようじゃねえか。 621 00:50:05,125 --> 00:50:08,295 ねぇ 弥次さん。 お伊勢参りか。 622 00:50:08,295 --> 00:50:13,316 のった! さえてるぜ 喜多さん。 (二人)ハハハハ。 623 00:50:13,316 --> 00:50:15,485 あっ だめだ。 えっ えっ えっ? 624 00:50:15,485 --> 00:50:18,685 路銀がねえ すっからかんだもん。 625 00:50:21,341 --> 00:50:23,960 長屋へ戻って 家財道具 売っ払って路銀作ろうぜ。 626 00:50:23,960 --> 00:50:26,630 クズのやりおさめだ。 弥次さん。 627 00:50:26,630 --> 00:50:28,815 なんでぇ? さえてるな! 628 00:50:28,815 --> 00:50:32,315 ありがとよ! (笑い声) 629 00:50:35,739 --> 00:50:39,793 しめしめ 誰もいない… えっ? 630 00:50:39,793 --> 00:50:42,646 あ~ 何もねえ! 631 00:50:42,646 --> 00:50:45,315 おふつの野郎 やることが 早いじゃねえか。 632 00:50:45,315 --> 00:50:47,715 おい 弥次さん? うん? あれ。 633 00:50:54,257 --> 00:50:56,793 (おふつ)「旦那としては 下の下だけれど➡ 634 00:50:56,793 --> 00:51:00,193 楽しましてもらいました ふつ」。 635 00:51:02,165 --> 00:51:05,035 (おつぼ)「次に会う時は ため息が出るほど➡ 636 00:51:05,035 --> 00:51:08,035 いい女になっています つぼ」。 637 00:51:11,958 --> 00:51:14,644 これは旅の一式だぜ。 638 00:51:14,644 --> 00:51:17,297 おい 弥次さん! うん? 639 00:51:17,297 --> 00:51:19,797 路銀だ…。 640 00:51:22,469 --> 00:51:25,138 何もかも お見通しってか。 641 00:51:25,138 --> 00:51:28,992 お釈迦様の手のひらの上だぜ。 642 00:51:28,992 --> 00:51:32,692 逃がした魚は大きかったな…。 643 00:51:34,631 --> 00:51:37,283 一九先生。 644 00:51:37,283 --> 00:51:40,687 うん? 645 00:51:40,687 --> 00:51:47,987 あ~ 逃げやがったな! 646 00:51:49,946 --> 00:51:54,946 「道中膝栗毛 はじまり」。 647 00:51:59,956 --> 00:52:03,626 弥次公! 喜多公! 648 00:52:03,626 --> 00:52:08,114 (二人)大きくなって 帰ってこいよ! 649 00:52:08,114 --> 00:52:12,786 あれ? 今 おつぼの 声が聞こえたような。 650 00:52:12,786 --> 00:52:15,705 俺もおふつの声が聞こえたような。 651 00:52:15,705 --> 00:52:19,275 んなわけねえか 空耳だ。 だな。 652 00:52:19,275 --> 00:52:21,611 よし 行くぞ 弥次さん。 ちょっと待て。 653 00:52:21,611 --> 00:52:24,211 一首思いついた。 654 00:52:37,627 --> 00:52:39,946 ヘヘ。 どういう意味だ? 655 00:52:39,946 --> 00:52:43,433 道中教えてやるよ。 なんだ それ! 656 00:52:43,433 --> 00:52:45,935 いくぞ。 へい。 657 00:52:45,935 --> 00:52:50,290 <難波江とは 大阪湾の入り江のこと。 658 00:52:50,290 --> 00:52:53,660 入り江のあしが 邪魔になったとしても➡ 659 00:52:53,660 --> 00:52:57,280 旅立ちたいと思った その日が最高の日➡ 660 00:52:57,280 --> 00:53:01,951 という意味でございます。 とにもかくにも二人の旅に➡ 661 00:53:01,951 --> 00:53:05,151 どうぞ おつきあいくださいませ> 662 00:53:07,624 --> 00:53:10,610 < あらら? 一九先生?> 663 00:53:10,610 --> 00:53:13,797 アイツらなら 行く先々で➡ 664 00:53:13,797 --> 00:53:19,285 いいネタになる騒動を 起こしてくれるに違いない。 665 00:53:19,285 --> 00:53:25,685 < こりゃまた 本当に 何が起こりますことやら>