1 00:00:00,994 --> 00:00:08,168 お前が 嫁っこさ行ったら 2人で こだこと できねえなぇ。 2 00:00:08,168 --> 00:00:25,868 ♬~ 3 00:00:33,092 --> 00:00:35,495 いや~ 今日も一段と 暑くなりそうだね。 4 00:00:35,495 --> 00:00:39,666 昔から 絹産業の盛んな福島。 5 00:00:39,666 --> 00:00:43,536 その県下有数の呉服屋 喜多一に➡ 6 00:00:43,536 --> 00:00:50,176 この日 待望の跡取り 古山裕一が生まれました。 7 00:00:50,176 --> 00:00:56,950 (まさ) もう無理かなって諦めかけてたのに…。 8 00:00:56,950 --> 00:01:00,820 旦那さん まだ戻ってこないわね。 9 00:01:00,820 --> 00:01:04,691 昔から そういう人なんで。 10 00:01:04,691 --> 00:01:09,329 (三郎)うお~! 生まれだべ~! ちなみに この人が裕一の父 古山三郎。 11 00:01:09,329 --> 00:01:11,397 喜多一の4代目。 12 00:01:11,397 --> 00:01:15,702 3人兄弟の末っ子でしたが 兄2人が亡くなり➡ 13 00:01:15,702 --> 00:01:18,738 急きょ 店を継いだそうです。 14 00:01:18,738 --> 00:01:24,878 ♬~ 15 00:01:24,878 --> 00:01:30,350 ♬「泣いて 生まれて 響く命」 16 00:01:30,350 --> 00:01:35,822 ♬「きっと嬉しくて 笑っているんだ」 17 00:01:35,822 --> 00:01:41,494 ♬「僕らはきっと 出逢うでしょう」 18 00:01:41,494 --> 00:01:47,667 ♬「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」 19 00:01:47,667 --> 00:01:55,542 ♬「きっといつか今日の日も 意味を持って ほら」 20 00:01:55,542 --> 00:01:59,279 ♬「耳をすませば」 21 00:01:59,279 --> 00:02:05,018 ♬「星の見えない日々を 超えるたびに」 22 00:02:05,018 --> 00:02:10,690 ♬「互い照らすその意味を 知るのでしょう」 23 00:02:10,690 --> 00:02:14,027 ♬「愛する人よ」 24 00:02:14,027 --> 00:02:16,529 ♬「親愛なる友よ」 25 00:02:16,529 --> 00:02:24,529 ♬「遠くまで 響くはエール」 26 00:02:30,543 --> 00:02:33,279 (善治)旦那 今日は生ぎのいいのが入ってますよ。 27 00:02:33,279 --> 00:02:37,817 お~ それより あれ 何だ? 28 00:02:37,817 --> 00:02:41,287 (三郎)おい おめえら 手伝え! (桑田)はあ? 29 00:02:41,287 --> 00:02:44,490 いいがら いいがら! 桑田 及川 運んでくれ。 30 00:02:44,490 --> 00:02:46,993 (及川)はい! 落とすなよ! 31 00:02:46,993 --> 00:02:51,864 壊したら 一大事だからな! (大河原)何? 旦那さん… あれ…。 32 00:02:51,864 --> 00:02:57,170 まさ! まさ! 33 00:02:57,170 --> 00:03:01,040 起きちゃうから そんな大きな声出さないで。 34 00:03:01,040 --> 00:03:05,311 お~ めんこいな~。 まさ よぐ頑張った。 35 00:03:05,311 --> 00:03:08,181 どこ行ってたの? あっ そうだ…。 36 00:03:08,181 --> 00:03:11,517 おい こっち こっち! はい はい はい! ただいま! 37 00:03:11,517 --> 00:03:13,853 ゆっくり ゆっくり…。 早く 早く! 38 00:03:13,853 --> 00:03:16,322 段差あっぞ。 落とすなよ。 はい ただいま。 39 00:03:16,322 --> 00:03:19,192 (まさ)何? それ。 40 00:03:19,192 --> 00:03:22,528 レジスターっつうもんだ。 こいづは すげえんだ。 41 00:03:22,528 --> 00:03:26,699 客がいくら買ったかを全部記録できる。 42 00:03:26,699 --> 00:03:29,736 こんな日に… これを買いに? 43 00:03:29,736 --> 00:03:33,973 そうだ。 まだ 日本に数台しかねえ。 44 00:03:33,973 --> 00:03:37,276 こいづのために もっと働かなきゃなんねえ。 45 00:03:37,276 --> 00:03:40,146 これで商売 頑張っぞ! 46 00:03:40,146 --> 00:03:44,150 いてっ! いててて いててて…。 あっ… 大丈夫ですか? 47 00:03:44,150 --> 00:03:48,021 たまげたね~。 48 00:03:48,021 --> 00:03:54,160 子宝に恵まれず 諦めかけていた時にできた子ども 裕一。 49 00:03:54,160 --> 00:03:58,860 おかげで ご両親の愛情をたっぷり受け…。 50 00:04:00,833 --> 00:04:04,170 いや いささか 受け過ぎたのか➡ 51 00:04:04,170 --> 00:04:08,174 ちょっぴり心もとない 子どもに育ったようです。 52 00:04:08,174 --> 00:04:11,044 (笑い声) 53 00:04:11,044 --> 00:04:23,044 ♬~ 54 00:04:24,857 --> 00:04:29,195 (笑い声) 55 00:04:29,195 --> 00:04:32,995 とにかく 運動は からっきし。 56 00:04:37,470 --> 00:04:39,405 (裕一)あっ。 (笑い声) 57 00:04:39,405 --> 00:04:44,343 武道も苦手。 そして 何より…。 58 00:04:44,343 --> 00:04:47,980 に… に…➡ 59 00:04:47,980 --> 00:04:51,818 に… 庭の… す す…。 60 00:04:51,818 --> 00:04:55,688 緊張すると 言葉がうまく出ません。 61 00:04:55,688 --> 00:05:02,161 す… 隅で… 先ほどから…。 62 00:05:02,161 --> 00:05:06,499 自分の内面が うまく外に出せない感じ。 63 00:05:06,499 --> 00:05:10,369 外の世界との間に壁がある感じ。 64 00:05:10,369 --> 00:05:15,369 自分と彼らとの距離は 遠くに感じました。 65 00:05:17,143 --> 00:05:19,679 (笑い声) 66 00:05:19,679 --> 00:05:23,516 (史郎)花! おなごか おめえ。 (笑い声) 67 00:05:23,516 --> 00:05:27,186 (太郎)おめえんち すげえ でっけえ呉服屋らしいな。 68 00:05:27,186 --> 00:05:33,126 町一番の金持ちだって自慢してっぺ。 ハハハハ! 69 00:05:33,126 --> 00:05:37,463 な… な… 何もしてねえよ。 70 00:05:37,463 --> 00:05:42,969 「な… な… 何も…」。 (笑い声) 71 00:05:42,969 --> 00:05:46,769 でも おめえに文句があるやつ いっぞ。 72 00:05:48,474 --> 00:05:51,277 (とみ)うぢの店の方が金持ちだわ。 73 00:05:51,277 --> 00:05:56,149 それに あんたんどごは 父っちゃんの代になって落ち目だっぺ。 74 00:05:56,149 --> 00:06:01,821 そこでだ どっちが金持ちか けんかで決着つけっぺ。 75 00:06:01,821 --> 00:06:05,021 乃木大将が審判すっから。 76 00:06:13,533 --> 00:06:17,303 や… やんないよ 僕は。 77 00:06:17,303 --> 00:06:22,003 あんたの そのどもり 父っちゃんのせいなんだべ? 78 00:06:25,044 --> 00:06:29,515 父っちゃんが 商売下手だから そんなんになったんだべ。 79 00:06:29,515 --> 00:06:32,515 うぢの父ちゃんが言っでだ。 80 00:06:34,353 --> 00:06:39,125 おっ! やる気になったか? 81 00:06:39,125 --> 00:06:43,462 お お お… おなごだからって➡ 82 00:06:43,462 --> 00:06:46,162 手… 手 抜がねえからな。 83 00:06:49,335 --> 00:06:52,138 んっ…。 ん~…。 84 00:06:52,138 --> 00:06:54,438 ん~… やっ! 85 00:07:02,148 --> 00:07:06,152 (鉄男)おめえの負けでいいな?➡ 86 00:07:06,152 --> 00:07:10,823 やめろ その笑い。 87 00:07:10,823 --> 00:07:13,860 悔しいことを笑ってごまかすな。 88 00:07:13,860 --> 00:07:15,995 この づぐだれが。 89 00:07:15,995 --> 00:07:21,868 「づぐだれ」というのは 「意気地なし」という意味です。 90 00:07:21,868 --> 00:07:27,173 (鉄男)俺は おめえみてえな づぐだれが大っ嫌えだ。 91 00:07:27,173 --> 00:07:30,373 街で見かけたら ぶっ飛ばす。 92 00:07:40,253 --> 00:07:42,955 (善治)それは心配ですね 旦那。 93 00:07:42,955 --> 00:07:47,126 ほら 言葉のあれもあっぺ。 だからよ…。 94 00:07:47,126 --> 00:07:50,129 男子たるもの たくましく育ってほしいっすよね。 95 00:07:50,129 --> 00:07:55,468 俺の若え頃みてえにな。 おっ 旦那さんも 相当? 96 00:07:55,468 --> 00:07:59,138 もぢろん。 向かってくる野郎は バッタバッタと。 97 00:07:59,138 --> 00:08:03,643 バッタバッタ バッタバッタ…。 (茂兵衛)三郎君 久しぶりだ。 98 00:08:03,643 --> 00:08:05,643 はい。 99 00:08:14,153 --> 00:08:17,453 声 ちっちぇえ…。 100 00:08:20,493 --> 00:08:23,396 この人は 権藤茂兵衛さん。 101 00:08:23,396 --> 00:08:26,165 お母さんのお兄さんです。 102 00:08:26,165 --> 00:08:32,605 県内でも有数の資産家で 銀行を中心に いろんな商売をしています。 103 00:08:32,605 --> 00:08:36,108 …で どうなんだ? 経営の方は。 104 00:08:36,108 --> 00:08:40,613 まあ… まあまあで。 105 00:08:40,613 --> 00:08:47,119 毎日 何十人も経営者を見てるが 駄目なやつは みんな一緒だな。 106 00:08:47,119 --> 00:08:51,457 兄さん わざわざ そんなこと言いに? 107 00:08:51,457 --> 00:08:55,457 俺 暇じゃねえ。 じゃあ 何? 108 00:09:00,132 --> 00:09:04,003 (レコード)「良雄なるか よう見えたぞ。➡ 109 00:09:04,003 --> 00:09:08,274 そなた来るを待つや 久しゅう思うていたぞ」。➡ 110 00:09:08,274 --> 00:09:14,814 「はっ いつもながら 麗しきを拝し 内蔵助 身にとり…」。 111 00:09:14,814 --> 00:09:19,514 桃中軒空左衛門です ハハハ。 112 00:09:22,288 --> 00:09:27,088 蓄音機に レジスターか… くだらん。 113 00:09:28,828 --> 00:09:33,599 東北で2台目ですよ。 見てて下さい。 114 00:09:33,599 --> 00:09:37,103 うん? 115 00:09:37,103 --> 00:09:39,038 あれ? 116 00:09:39,038 --> 00:09:40,973 ハハ… アハハ…。➡ 117 00:09:40,973 --> 00:09:44,610 あれ? ハハハ…。 (レジスターを打つ音) 118 00:09:44,610 --> 00:09:46,645 邪魔した。 119 00:09:46,645 --> 00:09:49,845 あれれ? おい…。 120 00:09:53,319 --> 00:09:58,124 (三郎)義兄さん 来る予定だったか? 今日。 121 00:09:58,124 --> 00:10:00,960 日銀にでも寄った帰りじゃない? 122 00:10:00,960 --> 00:10:03,796 あらかじめ 来っ時は言ってもらわねえど。 123 00:10:03,796 --> 00:10:07,666 ごめんなさい。 伝えておきます。 124 00:10:07,666 --> 00:10:09,966 (ため息) 125 00:10:17,343 --> 00:10:21,043 おめえ その顔…。 126 00:10:26,052 --> 00:10:29,488 ≪(まさ)あと もう少し…。 (けん玉をする音) 127 00:10:29,488 --> 00:10:37,363 甘えたい裕一でしたが お母さんは 2歳下の弟 浩二に付きっきり。 128 00:10:37,363 --> 00:10:43,363 ちなみに 弟が生まれたお祝いは 蓄音機でした。 129 00:10:55,014 --> 00:10:58,317 ≪(三郎)裕一 入るぞ。 130 00:10:58,317 --> 00:11:00,517 うん。 131 00:11:10,062 --> 00:11:12,362 よっと…。 132 00:11:20,573 --> 00:11:25,711 何? うん? あっ そうだ…。 133 00:11:25,711 --> 00:11:29,882 あれだ 勉強。 勉強してっか? 134 00:11:29,882 --> 00:11:32,651 まあ それなりには。 135 00:11:32,651 --> 00:11:36,155 そうか。 136 00:11:36,155 --> 00:11:41,827 こんな時 言葉に詰まるのは お父さんも一緒でした。 137 00:11:41,827 --> 00:11:48,167 まあ あれだ… 人生いろいろある。 138 00:11:48,167 --> 00:11:50,669 なかなか 思いどおりにはなんねえ。 139 00:11:50,669 --> 00:11:57,176 だから 何でもいい 夢中になるもん探せ。 なっ? 140 00:11:57,176 --> 00:12:01,176 それがあれば 生きていけっから。 141 00:12:04,316 --> 00:12:07,686 お… お父さんは? えっ? 142 00:12:07,686 --> 00:12:11,524 お… お父さんは 何? 143 00:12:11,524 --> 00:12:15,694 今は おめえの話だよ。 144 00:12:15,694 --> 00:12:18,394 あるか? 何か。 145 00:12:23,569 --> 00:12:28,069 山。 はっ? 146 00:12:29,875 --> 00:12:34,647 川。 山? 川って… あれか? 147 00:12:34,647 --> 00:12:37,550 流れてる川か? 148 00:12:37,550 --> 00:12:42,388 うん。 あれ見てっと ほっとする。 149 00:12:42,388 --> 00:12:47,159 何で おめえ そんな…。 もっと楽しいこと…。 150 00:12:47,159 --> 00:12:50,663 しゃべんなくて済むがら。 151 00:12:50,663 --> 00:12:54,300 そうか…。 152 00:12:54,300 --> 00:12:57,169 そ… そうだ! 新しいレコード買ったんだ。 153 00:12:57,169 --> 00:13:00,506 舶来品だ。 聴くか? 154 00:13:00,506 --> 00:13:02,441 いい。 155 00:13:02,441 --> 00:13:35,341 ♬~ 156 00:13:35,341 --> 00:13:38,143 そして この日➡ 157 00:13:38,143 --> 00:13:44,343 初めて お父さんは 西洋音楽のレコードをかけました。 158 00:13:48,787 --> 00:14:00,165 ♬~(「威風堂々」) 159 00:14:00,165 --> 00:14:37,803 ≪♬~ 160 00:14:37,803 --> 00:14:46,478 ♬~ 161 00:14:46,478 --> 00:14:48,414 裕一。 162 00:14:48,414 --> 00:15:12,504 ♬~ 163 00:15:12,504 --> 00:15:20,804 その音色は 裕一の心に 深く響き渡ったのです。