1 00:00:03,029 --> 00:00:07,534 <母が帰ったあと かをるは 部屋へ案内された。➡ 2 00:00:07,534 --> 00:00:12,038 女中頭・ハマが決めた 自分の部屋である> 3 00:00:12,038 --> 00:00:25,738 ♬~ 4 00:00:32,993 --> 00:00:51,077 ♬~(歌声) 5 00:00:51,077 --> 00:00:54,077 (ドアの開閉音) 6 00:00:55,749 --> 00:00:58,418 (華)聴かせてよ~。 7 00:00:58,418 --> 00:01:02,118 (音)恥ずかしいの。 練習してないから。 8 00:01:04,291 --> 00:01:07,291 お父さん よかったね。 9 00:01:09,429 --> 00:01:13,929 そうね…。 どうしたの? 10 00:01:15,602 --> 00:01:19,473 お父さんは行きたかったみたい。 11 00:01:19,473 --> 00:01:25,245 お国のため? う~ん…。 12 00:01:25,245 --> 00:01:31,051 もっと複雑な…。 13 00:01:31,051 --> 00:01:35,722 まあいいや。 お父さんがいるなら。 14 00:01:35,722 --> 00:01:37,722 そうね。 15 00:01:39,893 --> 00:01:42,393 ねえ お母さん。 うん? 16 00:01:44,197 --> 00:01:48,997 私のために… 歌をやめたの? 17 00:01:55,575 --> 00:01:58,375 んっ。 (床をたたく音) 18 00:02:07,087 --> 00:02:10,787 私が選んだの あなたを。 19 00:02:14,427 --> 00:02:18,932 それに 夢は諦めてない。 20 00:02:18,932 --> 00:02:21,835 お父さんに預けてある。 21 00:02:21,835 --> 00:02:26,239 夢って預けられるの? うん。 22 00:02:26,239 --> 00:02:29,609 2人でかなえるの。 23 00:02:29,609 --> 00:02:31,878 2人で? うん。 24 00:02:31,878 --> 00:02:36,049 そっちの方が楽しそうだね。 フフフ…。 25 00:02:36,049 --> 00:02:40,554 華 いいこと言うね。 フフッ そうね。 26 00:02:40,554 --> 00:02:47,427 いつか見たい。 大きな劇場のお母さん。 27 00:02:47,427 --> 00:02:50,063 うん…。 28 00:02:50,063 --> 00:02:58,572 華も大きくなったし 戦争が終わったら 私も始めたい。 29 00:02:58,572 --> 00:03:00,507 ねえ…。 うん? 30 00:03:00,507 --> 00:03:05,445 その前に聴きたい。 歌って。 え~? 31 00:03:05,445 --> 00:03:07,445 お願い。 32 00:03:10,083 --> 00:03:27,434 ♬「君を思えば はるかなり」 33 00:03:27,434 --> 00:03:41,948 ♬「浪のかなたを はるかなり」 34 00:03:41,948 --> 00:03:57,063 ♬「たよりをよめど かすかにて」 35 00:03:57,063 --> 00:04:11,863 ♬「涙のうちに はるかなり」 36 00:04:15,415 --> 00:04:17,350 いい歌! 37 00:04:17,350 --> 00:04:19,586 でしょ? うん。 38 00:04:19,586 --> 00:04:23,757 この曲で お父さんと恋に落ちたの。 39 00:04:23,757 --> 00:04:27,594 いや~ 聞きたくな~い。 どうして? 40 00:04:27,594 --> 00:04:31,364 華だって 弘哉君のこと…。 41 00:04:31,364 --> 00:04:35,702 えっ? 違う… 違うよ! 何が違うの? 42 00:04:35,702 --> 00:04:39,873 えっ 違う 違う…。 えっ 何が違うの? 43 00:04:39,873 --> 00:04:42,175 えっ 違う~! アハハハハ…。 44 00:04:42,175 --> 00:04:48,548 ♬~ 45 00:04:48,548 --> 00:04:54,054 ♬「泣いて 生まれて 響く命」 46 00:04:54,054 --> 00:04:59,392 ♬「きっと嬉しくて 笑っているんだ」 47 00:04:59,392 --> 00:05:04,898 ♬「僕らはきっと 出逢うでしょう」 48 00:05:04,898 --> 00:05:11,071 ♬「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」 49 00:05:11,071 --> 00:05:18,945 ♬「きっといつか今日の日も 意味を持って ほら」 50 00:05:18,945 --> 00:05:22,682 ♬「耳をすませば」 51 00:05:22,682 --> 00:05:28,421 ♬「星の見えない日々を 超えるたびに」 52 00:05:28,421 --> 00:05:34,027 ♬「互い照らすその意味を 知るのでしょう」 53 00:05:34,027 --> 00:05:37,030 ♬「愛する人よ」 54 00:05:37,030 --> 00:05:40,166 ♬「親愛なる友よ」 55 00:05:40,166 --> 00:05:47,866 ♬「遠くまで 響くはエール」 56 00:05:50,543 --> 00:05:53,179 (三隅)こちらになります。 (裕一)はい。 57 00:05:53,179 --> 00:05:55,679 「若鷲の歌」。 58 00:06:12,532 --> 00:06:15,068 すばらしい詞です。 でしょ!? 59 00:06:15,068 --> 00:06:19,939 西條さんも とても苦労されてたのですが 実際に予科練を見学して頂きまして➡ 60 00:06:19,939 --> 00:06:23,743 そうしましたら そこで いきなり 最初の2行が浮かばれまして➡ 61 00:06:23,743 --> 00:06:26,412 もう それからは一気でした!➡ 62 00:06:26,412 --> 00:06:29,749 いいですよね~! 特に 僕は その➡ 63 00:06:29,749 --> 00:06:34,721 「七つボタンは桜に錨」ってところが 何とも詩的で…。 64 00:06:34,721 --> 00:06:38,358 ただ…。 はい? 65 00:06:38,358 --> 00:06:45,231 あの… この「ハア ヨカレン ヨカレン」が ちぐはぐかなと…。 66 00:06:45,231 --> 00:06:49,536 そうですかね~? ここは聴かせどころですし…。 67 00:06:49,536 --> 00:06:52,372 いや そうなんですけど… この部分 なくしてもいいか➡ 68 00:06:52,372 --> 00:06:55,041 西條先生に聞いてもらえませんか? 69 00:06:55,041 --> 00:06:57,377 いや~…。 70 00:06:57,377 --> 00:07:00,180 最後の一番盛り上がるところですよ? 71 00:07:00,180 --> 00:07:03,383 ♬「ハア ヨカレン」 あっ 違うか?➡ 72 00:07:03,383 --> 00:07:05,418 まあまあ それは先生に任せるとして➡ 73 00:07:05,418 --> 00:07:08,721 え~ みんなが歌う場面 浮かびますけどね~。 74 00:07:08,721 --> 00:07:12,058 いや… 最後は この➡ 75 00:07:12,058 --> 00:07:16,058 「でかい希望の雲が湧く」で締めた方が 力強くなります。 76 00:07:17,864 --> 00:07:21,768 では3日後 上野待ち合わせでお願いします。 77 00:07:21,768 --> 00:07:23,968 よろしくお願いします。 78 00:07:26,206 --> 00:07:29,075 これだから音楽家は…。 79 00:07:29,075 --> 00:07:31,075 んっ! 80 00:07:33,680 --> 00:07:40,980 彼らのような若者のおかげで… 今 この国はもってるんだ。 81 00:07:46,259 --> 00:07:48,559 頑張らないと…。 82 00:07:50,697 --> 00:07:55,869 礼拝も厳しく監視されるようになった 信徒たちは➡ 83 00:07:55,869 --> 00:08:00,039 ひそかに集まって対応を話し合いました。 84 00:08:00,039 --> 00:08:03,543 (柿澤)殺されたんだわ。 (瓜田)ほだほだ! 許せんって! 85 00:08:03,543 --> 00:08:06,446 (光子)声 抑えて。 86 00:08:06,446 --> 00:08:14,721 (梨本)光子さん あんた ず~っと黙っとるが どう思っとるだ? 87 00:08:14,721 --> 00:08:19,559 私は…➡ 88 00:08:19,559 --> 00:08:23,429 私の信仰は捨てたくない。 守りたい。 89 00:08:23,429 --> 00:08:27,433 ほだらあ…。 だからといって➡ 90 00:08:27,433 --> 00:08:29,736 危険を冒すくらいなら 今は…。 91 00:08:29,736 --> 00:08:34,140 あんた 戦争に協力するっちゅうことかん? 92 00:08:34,140 --> 00:08:38,011 どうしようもないことはある。 93 00:08:38,011 --> 00:08:41,014 都合がよすぎるわ。➡ 94 00:08:41,014 --> 00:08:47,720 まあ それも しょうがないわ。 あんたら 軍のお金で ごはん食べとるで。 95 00:08:47,720 --> 00:08:53,493 そのおかげで 兵役逃れの人もおるし。 96 00:08:53,493 --> 00:08:56,863 (梅)ひどい…。 取り消して下さい! 97 00:08:56,863 --> 00:09:02,368 違っとる? 違っとるなら謝るわ。 98 00:09:02,368 --> 00:09:06,539 ともかく こういう集まりは危険だで。➡ 99 00:09:06,539 --> 00:09:09,539 しばらくは やめとこまい。 100 00:09:22,555 --> 00:09:25,458 「聖書」読んどるの? 101 00:09:25,458 --> 00:09:29,195 (五郎)何か眠れなくて。 102 00:09:29,195 --> 00:09:33,066 みんなが危険を冒してまで 信仰してるものを➡ 103 00:09:33,066 --> 00:09:36,502 僕も もっと知りたくなって。 104 00:09:36,502 --> 00:09:42,008 そっか… 本当 不自由な時代よね。 105 00:09:42,008 --> 00:09:44,911 本も自由に書けんし…。 106 00:09:44,911 --> 00:09:49,882 でも 書いてんでしょ? まあね。 107 00:09:49,882 --> 00:09:53,720 すごいな~ 梅ちゃんは。 108 00:09:53,720 --> 00:09:56,420 本のアイデアは どこから来んの? 109 00:09:59,025 --> 00:10:04,163 昔ね 裕一さんが突然 うちに来たの。 110 00:10:04,163 --> 00:10:08,868 先生が? フフ… お姉ちゃんを奪うためにね。 111 00:10:08,868 --> 00:10:14,540 あの先生が そんな大胆な行動を? そう 意外でしょう。 112 00:10:14,540 --> 00:10:19,045 …で その時 言われたことがあって。 113 00:10:19,045 --> 00:10:22,382 音さんいないと 曲 書けないんだ。 114 00:10:22,382 --> 00:10:28,254 ものを作るには 何かのきっかけとか つながりが必要なんだ。 115 00:10:28,254 --> 00:10:32,725 ほら 梅ちゃん 今 自分の中から出そうとしてっけど➡ 116 00:10:32,725 --> 00:10:37,196 書けないなら ほら… 外に 目 向けてみっといいかも。 117 00:10:37,196 --> 00:10:41,401 その言葉が突破口だったんだ。 118 00:10:41,401 --> 00:10:46,572 僕だけじゃなく 梅ちゃんまで。 119 00:10:46,572 --> 00:10:50,910 先生は偉大だ。 うん。 120 00:10:50,910 --> 00:10:53,110 (くしゃみ) 121 00:10:58,584 --> 00:11:02,922 つまりね 五郎ちゃん➡ 122 00:11:02,922 --> 00:11:08,428 あなたがいるから 書くことができるの。 123 00:11:08,428 --> 00:11:11,330 梅ちゃん…。 124 00:11:11,330 --> 00:11:14,300 梅って呼びん。 125 00:11:14,300 --> 00:11:17,603 えっ? 126 00:11:17,603 --> 00:11:20,803 う う…。 127 00:11:23,776 --> 00:11:25,711 梅。 128 00:11:25,711 --> 00:11:47,011 ♬~ 129 00:11:48,734 --> 00:11:53,734 (五郎のすすり泣き) (梅)フフフ…。 130 00:12:01,447 --> 00:12:04,283 よし… じゃあ 行ってきます。 131 00:12:04,283 --> 00:12:06,285 気を付けて。 いい子でね。 132 00:12:06,285 --> 00:12:08,785 うん。 行ってらっしゃい。 行ってきます。 133 00:12:12,959 --> 00:12:15,828 お父さん どこ行くの? 予科練。 134 00:12:15,828 --> 00:12:20,233 よかれん? 兵隊さんになる訓練をするところ。 135 00:12:20,233 --> 00:12:25,071 そこで作った歌を披露するんだって。 ふ~ん。 136 00:12:25,071 --> 00:12:31,544 海軍飛行予科練習生 いわゆる予科練の制度は➡ 137 00:12:31,544 --> 00:12:35,381 海軍の航空機 搭乗員育成のため➡ 138 00:12:35,381 --> 00:12:40,253 10代の志願者に 厳しい基礎訓練を施すものでした。 139 00:12:40,253 --> 00:12:44,557 その採用試験は大変に狭き門であり➡ 140 00:12:44,557 --> 00:12:51,898 練習生の七つボタンの制服は 少年たちの憧れの的でした。 141 00:12:51,898 --> 00:12:55,201 (三隅)先生がおっしゃるとおりでした。➡ 142 00:12:55,201 --> 00:12:57,904 明るくて力強い! これ いけます! 143 00:12:57,904 --> 00:13:01,574 そうですか。 完璧ですよ~。 144 00:13:01,574 --> 00:13:05,411 西條先生は 詞のこと 何か言われてました? 145 00:13:05,411 --> 00:13:08,080 いいえ… というか➡ 146 00:13:08,080 --> 00:13:13,419 「なるほど! そこは削った方がいい」と おっしゃってました。 147 00:13:13,419 --> 00:13:19,091 そこをなんとか! ひとつ! 148 00:13:19,091 --> 00:13:21,761 (西條)う~ん…。 149 00:13:21,761 --> 00:13:27,633 そうですか。 よかった。 ただ…。 はい? 150 00:13:27,633 --> 00:13:30,937 何か違う気がするんです。 151 00:13:30,937 --> 00:13:32,905 三隅さん…。 先生 そんなことありません! 152 00:13:32,905 --> 00:13:37,376 「若鷲の歌」は最高です! 史上最高の映画主題歌です。 いや…。 153 00:13:37,376 --> 00:13:41,881 気のせいです。 訓練する若者を勇気づけます。 でも…。 154 00:13:41,881 --> 00:13:45,551 何ですか? まだ何かあります。 155 00:13:45,551 --> 00:13:50,389 何か? 明日って 朝一番で曲の発表ですよね? 156 00:13:50,389 --> 00:13:53,426 はい… その手はずです。 それ 待って頂けませんか? 157 00:13:53,426 --> 00:13:57,163 へっ? もっと彼らのことを知りたいんです。 158 00:13:57,163 --> 00:14:00,900 はい? 3日… いや…➡ 159 00:14:00,900 --> 00:14:04,403 1日だけでもいいです。 とにかく 彼らのことを知りたい。 160 00:14:04,403 --> 00:14:07,907 つまり… 見学したいと? 161 00:14:07,907 --> 00:14:13,412 予科練の若者の気持ちを もっと こう 熱く… もっと深く こう➡ 162 00:14:13,412 --> 00:14:15,348 表現できるんじゃないかって。 163 00:14:15,348 --> 00:14:21,087 何か こう… この辺りまで 来てるんですけど 引っ掛かってて。 164 00:14:21,087 --> 00:14:23,089 ここですか? こ… この辺です。 165 00:14:23,089 --> 00:14:25,591 あっ それ 魚の骨じゃありませんか? 166 00:14:25,591 --> 00:14:29,428 ご迷惑なのは承知してますが どうか…。 167 00:14:29,428 --> 00:14:34,400 う~ん… 僕は これで十分だと思うけどな~…。 168 00:14:34,400 --> 00:14:38,037 何か… この心の内を まだ昇華できてないんです。 169 00:14:38,037 --> 00:14:40,873 三隅さんも おっしゃいましたよね この作品に懸けると。 170 00:14:40,873 --> 00:14:46,178 そのお気持ちは ありがたいですが… うちにも予算と予定がありまして。 171 00:14:46,178 --> 00:14:48,881 三隅さん! はい…。 172 00:14:48,881 --> 00:14:53,052 もう一曲だけ書かせて下さい! お願いします! どうか お願いします! 173 00:14:53,052 --> 00:14:54,987 お願いします…。 174 00:14:54,987 --> 00:14:58,557 分かりました! 175 00:14:58,557 --> 00:15:00,757 ありがとうございます。 176 00:15:05,064 --> 00:15:08,864 うん… うん…。 177 00:15:10,736 --> 00:15:17,076 (戸の開閉音) 178 00:15:17,076 --> 00:15:19,979 ≪(三隅)んんっ! ああっ!➡ 179 00:15:19,979 --> 00:15:26,179 もう 何なんだよ 何なんだよ! ああっ! ≪(じだんだを踏む音)