1 00:00:02,090 --> 00:00:04,700 いや~ 今日も一段と 暑くなりそうだね。 2 00:00:04,720 --> 00:00:08,660 昔から 絹産業の盛んな福島。 3 00:00:08,660 --> 00:00:12,530 その県下有数の呉服屋 喜多一に➡ 4 00:00:12,530 --> 00:00:19,170 この日 待望の跡取り 古山裕一が生まれました。 5 00:00:19,170 --> 00:00:25,950 (まさ) もう無理かなって諦めかけてたのに…。 6 00:00:25,950 --> 00:00:29,820 旦那さん まだ戻ってこないわね。 7 00:00:29,820 --> 00:00:33,690 昔から そういう人なんで。 8 00:00:33,690 --> 00:00:38,320 (三郎)うお~! 生まれだべ~! ちなみに この人が裕一の父 古山三郎。 9 00:00:38,320 --> 00:00:40,390 喜多一の4代目。 10 00:00:40,390 --> 00:00:44,700 3人兄弟の末っ子でしたが 兄2人が亡くなり➡ 11 00:00:44,700 --> 00:00:47,730 急きょ 店を継いだそうです。 12 00:00:47,730 --> 00:00:53,870 ♬~ 13 00:00:53,870 --> 00:00:59,350 ♬「泣いて 生まれて 響く命」 14 00:00:59,350 --> 00:01:04,820 ♬「きっと嬉しくて 笑っているんだ」 15 00:01:04,820 --> 00:01:10,490 ♬「僕らはきっと 出逢うでしょう」 16 00:01:10,490 --> 00:01:16,660 ♬「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」 17 00:01:16,660 --> 00:01:24,540 ♬「きっといつか今日の日も 意味を持って ほら」 18 00:01:24,540 --> 00:01:28,270 ♬「耳をすませば」 19 00:01:28,270 --> 00:01:34,010 ♬「星の見えない日々を 超えるたびに」 20 00:01:34,010 --> 00:01:39,690 ♬「互い照らすその意味を 知るのでしょう」 21 00:01:39,690 --> 00:01:43,020 ♬「愛する人よ」 22 00:01:43,020 --> 00:01:45,520 ♬「親愛なる友よ」 23 00:01:45,520 --> 00:01:53,520 ♬「遠くまで 響くはエール」 24 00:01:59,540 --> 00:02:02,270 (善治)旦那 今日は生ぎのいいのが入ってますよ。 25 00:02:02,270 --> 00:02:06,810 お~ それより あれ 何だ? 26 00:02:06,810 --> 00:02:10,280 (三郎)おい おめえら 手伝え! (桑田)はあ? 27 00:02:10,280 --> 00:02:13,490 いいがら いいがら! 桑田 及川 運んでくれ。 28 00:02:13,490 --> 00:02:15,990 (及川)はい! 落とすなよ! 29 00:02:15,990 --> 00:02:20,860 壊したら 一大事だからな! (大河原)何? 旦那さん… あれ…。 30 00:02:20,860 --> 00:02:26,170 まさ! まさ! 31 00:02:26,170 --> 00:02:30,040 起きちゃうから そんな大きな声出さないで。 32 00:02:30,040 --> 00:02:34,310 お~ めんこいな~。 まさ よぐ頑張った。 33 00:02:34,310 --> 00:02:37,180 どこ行ってたの? あっ そうだ…。 34 00:02:37,180 --> 00:02:40,510 おい こっち こっち! はい はい はい! ただいま! 35 00:02:40,510 --> 00:02:42,850 ゆっくり ゆっくり…。 早く 早く! 36 00:02:42,850 --> 00:02:45,320 段差あっぞ。 落とすなよ。 はい ただいま。 37 00:02:45,320 --> 00:02:48,190 (まさ)何? それ。 38 00:02:48,190 --> 00:02:51,520 レジスターっつうもんだ。 こいづは すげえんだ。 39 00:02:51,520 --> 00:02:55,690 客がいくら買ったかを全部記録できる。 40 00:02:55,690 --> 00:02:58,730 こんな日に… これを買いに? 41 00:02:58,730 --> 00:03:02,970 そうだ。 まだ 日本に数台しかねえ。 42 00:03:02,970 --> 00:03:06,270 こいづのために もっと働かなきゃなんねえ。 43 00:03:06,270 --> 00:03:09,140 これで商売 頑張っぞ! 44 00:03:09,140 --> 00:03:13,150 いてっ! いててて いててて…。 あっ… 大丈夫ですか? 45 00:03:13,150 --> 00:03:17,020 たまげたね~。 46 00:03:17,020 --> 00:03:23,160 子宝に恵まれず 諦めかけていた時にできた子ども 裕一。 47 00:03:23,160 --> 00:03:27,860 おかげで ご両親の愛情をたっぷり受け…。 48 00:03:29,830 --> 00:03:33,170 いや いささか 受け過ぎたのか➡ 49 00:03:33,170 --> 00:03:37,170 ちょっぴり心もとない 子どもに育ったようです。 50 00:03:37,170 --> 00:03:40,040 (笑い声) 51 00:03:40,040 --> 00:03:52,040 ♬~ 52 00:03:53,850 --> 00:03:58,190 (笑い声) 53 00:03:58,190 --> 00:04:01,990 とにかく 運動は からっきし。 54 00:04:06,470 --> 00:04:08,400 (裕一)あっ。 (笑い声) 55 00:04:08,400 --> 00:04:13,340 武道も苦手。 そして 何より…。 56 00:04:13,340 --> 00:04:16,980 に… に…➡ 57 00:04:16,980 --> 00:04:20,810 に… 庭の… す す…。 58 00:04:20,810 --> 00:04:24,680 緊張すると 言葉がうまく出ません。 59 00:04:24,680 --> 00:04:31,160 す… 隅で… 先ほどから…。 60 00:04:31,160 --> 00:04:35,490 自分の内面が うまく外に出せない感じ。 61 00:04:35,490 --> 00:04:39,360 外の世界との間に壁がある感じ。 62 00:04:39,360 --> 00:04:44,360 自分と彼らとの距離は 遠くに感じました。 63 00:04:46,140 --> 00:04:48,670 (笑い声) 64 00:04:48,670 --> 00:04:52,510 (史郎)花! おなごか おめえ。 (笑い声) 65 00:04:52,510 --> 00:04:56,180 (太郎)おめえんち すげえ でっけえ呉服屋らしいな。 66 00:04:56,180 --> 00:05:02,120 町一番の金持ちだって自慢してっぺ。 ハハハハ! 67 00:05:02,120 --> 00:05:06,460 な… な… 何もしてねえよ。 68 00:05:06,460 --> 00:05:11,960 「な… な… 何も…」。 (笑い声) 69 00:05:11,960 --> 00:05:15,760 でも おめえに文句があるやつ いっぞ。 70 00:05:17,470 --> 00:05:20,270 (とみ)うぢの店の方が金持ちだわ。 71 00:05:20,270 --> 00:05:25,140 それに あんたんどごは 父っちゃんの代になって落ち目だっぺ。 72 00:05:25,140 --> 00:05:30,820 そこでだ どっちが金持ちか けんかで決着つけっぺ。 73 00:05:30,820 --> 00:05:34,020 乃木大将が審判すっから。 74 00:05:42,530 --> 00:05:46,300 や… やんないよ 僕は。 75 00:05:46,300 --> 00:05:51,000 あんたの そのどもり 父っちゃんのせいなんだべ? 76 00:05:54,040 --> 00:05:58,510 父っちゃんが 商売下手だから そんなんになったんだべ。 77 00:05:58,510 --> 00:06:01,510 うぢの父ちゃんが言っでだ。 78 00:06:03,350 --> 00:06:08,120 おっ! やる気になったか? 79 00:06:08,120 --> 00:06:12,460 お お お… おなごだからって➡ 80 00:06:12,460 --> 00:06:15,160 手… 手 抜がねえからな。 81 00:06:18,330 --> 00:06:21,130 んっ…。 ん~…。 82 00:06:21,130 --> 00:06:23,430 ん~… やっ! 83 00:06:31,140 --> 00:06:35,150 (鉄男)おめえの負けでいいな?➡ 84 00:06:35,150 --> 00:06:39,820 やめろ その笑い。 85 00:06:39,820 --> 00:06:42,860 悔しいことを笑ってごまかすな。 86 00:06:42,860 --> 00:06:44,990 この づぐだれが。 87 00:06:44,990 --> 00:06:50,860 「づぐだれ」というのは 「意気地なし」という意味です。 88 00:06:50,860 --> 00:06:56,170 (鉄男)俺は おめえみてえな づぐだれが大っ嫌えだ。 89 00:06:56,170 --> 00:06:59,370 街で見かけたら ぶっ飛ばす。 90 00:07:09,250 --> 00:07:11,950 (善治)それは心配ですね 旦那。 91 00:07:11,950 --> 00:07:16,120 ほら 言葉のあれもあっぺ。 だからよ…。 92 00:07:16,120 --> 00:07:19,120 男子たるもの たくましく育ってほしいっすよね。 93 00:07:19,120 --> 00:07:24,460 俺の若え頃みてえにな。 おっ 旦那さんも 相当? 94 00:07:24,460 --> 00:07:28,130 もぢろん。 向かってくる野郎は バッタバッタと。 95 00:07:28,130 --> 00:07:32,640 バッタバッタ バッタバッタ…。 (茂兵衛)三郎君 久しぶりだ。 96 00:07:32,640 --> 00:07:34,640 はい。 97 00:07:43,150 --> 00:07:46,450 声 ちっちぇえ…。 98 00:07:49,490 --> 00:07:52,390 この人は 権藤茂兵衛さん。 99 00:07:52,390 --> 00:07:55,160 お母さんのお兄さんです。 100 00:07:55,160 --> 00:08:01,600 県内でも有数の資産家で 銀行を中心に いろんな商売をしています。 101 00:08:01,600 --> 00:08:05,100 …で どうなんだ? 経営の方は。 102 00:08:05,100 --> 00:08:09,610 まあ… まあまあで。 103 00:08:09,610 --> 00:08:16,110 毎日 何十人も経営者を見てるが 駄目なやつは みんな一緒だな。 104 00:08:16,110 --> 00:08:20,450 兄さん わざわざ そんなこと言いに? 105 00:08:20,450 --> 00:08:24,450 俺 暇じゃねえ。 じゃあ 何? 106 00:08:29,130 --> 00:08:33,000 (レコード)「良雄なるか よう見えたぞ。➡ 107 00:08:33,000 --> 00:08:37,270 そなた来るを待つや 久しゅう思うていたぞ」。➡ 108 00:08:37,270 --> 00:08:43,810 「はっ いつもながら 麗しきを拝し 内蔵助 身にとり…」。 109 00:08:43,810 --> 00:08:48,510 桃中軒空左衛門です ハハハ。 110 00:08:51,280 --> 00:08:56,080 蓄音機に レジスターか… くだらん。 111 00:08:57,820 --> 00:09:02,590 東北で2台目ですよ。 見てて下さい。 112 00:09:02,590 --> 00:09:06,100 うん? 113 00:09:06,100 --> 00:09:08,030 あれ? 114 00:09:08,030 --> 00:09:09,970 ハハ… アハハ…。➡ 115 00:09:09,970 --> 00:09:13,610 あれ? ハハハ…。 (レジスターを打つ音) 116 00:09:13,610 --> 00:09:15,640 邪魔した。 117 00:09:15,640 --> 00:09:18,840 あれれ? おい…。 118 00:09:22,310 --> 00:09:27,120 (三郎)義兄さん 来る予定だったか? 今日。 119 00:09:27,120 --> 00:09:29,960 日銀にでも寄った帰りじゃない? 120 00:09:29,960 --> 00:09:32,790 あらかじめ 来っ時は言ってもらわねえど。 121 00:09:32,790 --> 00:09:36,660 ごめんなさい。 伝えておきます。 122 00:09:36,660 --> 00:09:38,960 (ため息) 123 00:09:46,340 --> 00:09:50,040 おめえ その顔…。 124 00:09:55,050 --> 00:09:58,480 ≪(まさ)あと もう少し…。 (けん玉をする音) 125 00:09:58,480 --> 00:10:06,360 甘えたい裕一でしたが お母さんは 2歳下の弟 浩二に付きっきり。 126 00:10:06,360 --> 00:10:12,360 ちなみに 弟が生まれたお祝いは 蓄音機でした。 127 00:10:24,010 --> 00:10:27,310 ≪(三郎)裕一 入るぞ。 128 00:10:27,310 --> 00:10:29,510 うん。 129 00:10:39,060 --> 00:10:41,360 よっと…。 130 00:10:49,570 --> 00:10:54,710 何? うん? あっ そうだ…。 131 00:10:54,710 --> 00:10:58,880 あれだ 勉強。 勉強してっか? 132 00:10:58,880 --> 00:11:01,650 まあ それなりには。 133 00:11:01,650 --> 00:11:05,150 そうか。 134 00:11:05,150 --> 00:11:10,820 こんな時 言葉に詰まるのは お父さんも一緒でした。 135 00:11:10,820 --> 00:11:17,160 まあ あれだ… 人生いろいろある。 136 00:11:17,160 --> 00:11:19,660 なかなか 思いどおりにはなんねえ。 137 00:11:19,660 --> 00:11:26,170 だから 何でもいい 夢中になるもん探せ。 なっ? 138 00:11:26,170 --> 00:11:30,170 それがあれば 生きていけっから。 139 00:11:33,310 --> 00:11:36,680 お… お父さんは? えっ? 140 00:11:36,680 --> 00:11:40,520 お… お父さんは 何? 141 00:11:40,520 --> 00:11:44,690 今は おめえの話だよ。 142 00:11:44,690 --> 00:11:47,390 あるか? 何か。 143 00:11:52,560 --> 00:11:57,060 山。 はっ? 144 00:11:58,870 --> 00:12:03,640 川。 山? 川って… あれか? 145 00:12:03,640 --> 00:12:06,550 流れてる川か? 146 00:12:06,550 --> 00:12:11,380 うん。 あれ見てっと ほっとする。 147 00:12:11,380 --> 00:12:16,150 何で おめえ そんな…。 もっと楽しいこと…。 148 00:12:16,150 --> 00:12:19,660 しゃべんなくて済むがら。 149 00:12:19,660 --> 00:12:23,300 そうか…。 150 00:12:23,300 --> 00:12:26,160 そ… そうだ! 新しいレコード買ったんだ。 151 00:12:26,160 --> 00:12:29,500 舶来品だ。 聴くか? 152 00:12:29,500 --> 00:12:31,440 いい。 153 00:12:31,440 --> 00:13:04,340 ♬~ 154 00:13:04,340 --> 00:13:07,140 そして この日➡ 155 00:13:07,140 --> 00:13:13,340 初めて お父さんは 西洋音楽のレコードをかけました。 156 00:13:17,780 --> 00:13:29,160 ♬~(「威風堂々」) 157 00:13:29,160 --> 00:14:06,800 ≪♬~ 158 00:14:06,800 --> 00:14:15,470 ♬~ 159 00:14:15,470 --> 00:14:17,410 裕一。 160 00:14:17,410 --> 00:14:41,500 ♬~ 161 00:14:41,500 --> 00:14:49,800 その音色は 裕一の心に 深く響き渡ったのです。