1 00:00:09,390 --> 00:00:17,260 ♬~ 2 00:00:17,260 --> 00:00:24,200 裕一のもとに届いたのは 国際作曲コンクール入賞の知らせでした。 3 00:00:24,200 --> 00:00:30,010 当時 日本人が 本場 西洋の 音楽コンクールで入賞することは➡ 4 00:00:30,010 --> 00:00:33,940 驚くべき快挙でした。 5 00:00:33,940 --> 00:00:38,220 手紙には イギリスへの留学の誘いと➡ 6 00:00:38,220 --> 00:00:44,090 その費用を全額免除することなどが 書かれていました。 7 00:00:44,090 --> 00:00:46,090 (裕一)痛い…。 8 00:00:46,090 --> 00:00:50,760 ありがとうございました。 (鈴木)は~い ありがとうございます! 9 00:00:50,760 --> 00:00:53,100 はあ…。 10 00:00:53,100 --> 00:00:56,000 しかし 茂兵衛との養子の約束があり➡ 11 00:00:56,000 --> 00:00:59,440 受賞の話は まだ みんなには伏せていたのです。 12 00:00:59,440 --> 00:01:03,410 何か また にやけてね? (昌子)まさか 賞 取ったんじゃない? 13 00:01:03,410 --> 00:01:07,710 ないない。 音楽に詳しい友達が 言ってたから。 何て? 14 00:01:07,710 --> 00:01:11,050 こんな田舎の青年が太刀打ちできる コンクールじゃねえって。 15 00:01:11,050 --> 00:01:13,050 ああ…。 16 00:01:17,550 --> 00:01:23,430 ♬~ 17 00:01:23,430 --> 00:01:29,170 ♬「泣いて 生まれて 響く命」 18 00:01:29,170 --> 00:01:34,740 ♬「きっと嬉しくて 笑っているんだ」 19 00:01:34,740 --> 00:01:40,210 ♬「僕らはきっと 出逢うでしょう」 20 00:01:40,210 --> 00:01:46,420 ♬「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」 21 00:01:46,420 --> 00:01:54,290 ♬「きっといつか今日の日も 意味を持って ほら」 22 00:01:54,290 --> 00:01:58,030 ♬「耳をすませば」 23 00:01:58,030 --> 00:02:03,700 ♬「星の見えない日々を 超えるたびに」 24 00:02:03,700 --> 00:02:09,370 ♬「互い照らすその意味を 知るのでしょう」 25 00:02:09,370 --> 00:02:12,410 ♬「愛する人よ」 26 00:02:12,410 --> 00:02:15,250 ♬「親愛なる友よ」 27 00:02:15,250 --> 00:02:23,250 ♬「遠くまで 響くはエール」 28 00:02:25,920 --> 00:02:31,760 午後3時32分 ご臨終です。 29 00:02:31,760 --> 00:02:34,200 (八重)おとうさん… おとうさん…。 30 00:02:34,200 --> 00:02:39,740 そんな折 権藤家の当主 源蔵が急死しました。 31 00:02:39,740 --> 00:02:44,070 (すすり泣き) 32 00:02:44,070 --> 00:02:49,950 (まさ)兄さんが 裕一の養子縁組み 今月中にはって。 33 00:02:49,950 --> 00:02:53,780 (三郎)そりゃ 事情は分かっけど 急じゃねえか? 34 00:02:53,780 --> 00:03:00,160 でも 裕一も銀行員になって2年たつし 頃合いじゃない? 35 00:03:00,160 --> 00:03:04,660 あいづのことだ まだ一人前になっちゃいねえだろ。 36 00:03:06,860 --> 00:03:08,900 (浩二)ねえ 父さん…。 37 00:03:08,900 --> 00:03:11,540 また新しい商売の話か? 38 00:03:11,540 --> 00:03:15,370 呉服屋の仕事 覚えてからだ。 39 00:03:15,370 --> 00:03:18,180 何年かかんだよ…。 40 00:03:18,180 --> 00:03:21,040 10年だな。 41 00:03:21,040 --> 00:03:24,840 銀行屋とは違って覚えっことが多いんだ。 42 00:03:30,390 --> 00:03:33,190 話は… 分かりました。 43 00:03:33,190 --> 00:03:37,060 心の整理をしたいので 少しだけ待って下さい。 44 00:03:37,060 --> 00:03:41,730 (茂兵衛)荷造りもしとけよ。 養子になったら うちに住め。 45 00:03:41,730 --> 00:03:43,770 ここ気に入ってるんで あの まだ…。 46 00:03:43,770 --> 00:03:50,210 駄目だ。 おめえは 権藤裕一になるんだ。 いいな? 47 00:03:50,210 --> 00:03:55,050 (戸の開閉音) 48 00:03:55,050 --> 00:04:02,350 裕一は 将来の進路について 藤堂先生に手紙を書きました。 49 00:04:09,360 --> 00:04:11,400 (藤堂)古山。 50 00:04:11,400 --> 00:04:13,700 あっ 先生…。 51 00:04:13,700 --> 00:04:17,700 ちょっと出てきていいですか? (落合)いいよ 行ってらっしゃい。 52 00:04:21,570 --> 00:04:24,870 先生 わざわざ すいません。 53 00:04:30,710 --> 00:04:33,050 はあ…。 54 00:04:33,050 --> 00:04:37,920 ほれたな。 ほれましたね。 55 00:04:37,920 --> 00:04:39,920 (藤堂)やったな! おめでとう! 56 00:04:39,920 --> 00:04:42,190 し~っ… ごめんなさい。 57 00:04:42,190 --> 00:04:46,730 静かに…。 ごめん… つい… うれしくてな。 58 00:04:46,730 --> 00:04:49,200 先生 ど… どう思います? 59 00:04:49,200 --> 00:04:52,570 留学だ。 決まってるだろう。 60 00:04:52,570 --> 00:04:55,210 これが どんなにすごいことか 分かってないのか? 61 00:04:55,210 --> 00:05:00,680 いやいや… 分かってます。 分かってますけど…。 62 00:05:00,680 --> 00:05:07,150 僕… 家族のために 音楽捨てて 養子になること決まってんです。 63 00:05:07,150 --> 00:05:11,690 今更 銀行辞めて 作曲家になるなんて 言えません。 64 00:05:11,690 --> 00:05:18,160 なぜだ? そりゃ 養子先の人からは 恨まれるかもしれんが…。 65 00:05:18,160 --> 00:05:21,030 ご両親は喜ぶだろう。 66 00:05:21,030 --> 00:05:25,040 お金… 融資してもらってんです。 67 00:05:25,040 --> 00:05:28,240 …ないと うち 倒産します。 68 00:05:31,540 --> 00:05:39,050 音楽か 家族か… 難しいな。 69 00:05:39,050 --> 00:05:43,350 先生なら どうしますか? 70 00:05:46,920 --> 00:05:51,400 自分の人生だ。 自分の人生を生きる。 71 00:05:51,400 --> 00:05:56,400 天から授かった宝物は ドブには捨てない。 72 00:06:00,500 --> 00:06:02,540 ありがとうございます 先生。 73 00:06:02,540 --> 00:06:05,380 あっ… あの… こ… このことは➡ 74 00:06:05,380 --> 00:06:09,150 まだ くれぐれも… 内密で。 75 00:06:09,150 --> 00:06:11,080 うん。 76 00:06:11,080 --> 00:06:13,680 しかし 数日後…。 77 00:06:13,680 --> 00:06:20,360 おい! あ~ ハハッ おい 古山君… 古山君! 78 00:06:20,360 --> 00:06:23,260 やったな… おめでとう おめでとう! 79 00:06:23,260 --> 00:06:25,860 何がですか? な… 何? 80 00:06:25,860 --> 00:06:31,060 とぼけんでねえよ。 ほれ ほれ ほれ これだ これだ これだ…。 81 00:06:39,180 --> 00:06:41,240 先生~! 82 00:06:41,240 --> 00:06:45,950 先生! くれぐれも内密にって 言ったじゃないですか! 83 00:06:45,950 --> 00:06:49,720 僕 まだ 先生にしか報告してないんですよ! 84 00:06:49,720 --> 00:06:54,390 藤堂先生は喜びを我慢できず 鉄男に話してしまいました。 85 00:06:54,390 --> 00:06:58,260 (鉄男)福島の青年が快挙を達成しました! 86 00:06:58,260 --> 00:07:01,200 これは どういうことだ!? 87 00:07:01,200 --> 00:07:03,200 (音)♬「あ~ あ~」 88 00:07:03,200 --> 00:07:07,900 (御手洗) ビッグニュース! ビッグニュースよ。 89 00:07:11,680 --> 00:07:17,480 ビッグニュース… ビッグニュース… ビッグニュースだ! 90 00:07:17,480 --> 00:07:22,573 史上最年少だよ! 21歳って お姉ちゃんと同級生じゃん。 91 00:07:22,586 --> 00:07:24,250 すごいでしょう! 92 00:07:24,250 --> 00:07:28,230 国際作曲コンクールは とにかく どすごい賞なの! 93 00:07:28,230 --> 00:07:31,360 審査員は ラヴェル ストラヴィンスキーだよ。 94 00:07:31,360 --> 00:07:36,030 一流 一流! えっ 知らんの!? 95 00:07:36,030 --> 00:07:39,370 しかも 曲名「竹取物語」。 96 00:07:39,370 --> 00:07:43,070 小学校で かぐや姫やったの覚えとる。 97 00:07:46,880 --> 00:07:51,750 ああ… 聴いてみたい…。 98 00:07:51,750 --> 00:07:55,550 どういう人なんだろう? 99 00:07:55,550 --> 00:08:01,120 私と2歳しか違わんのに… 天才だわ。 紛れもない天才だわ! 100 00:08:01,120 --> 00:08:03,830 この喜びを伝えたい。 ファンレターだわ! 101 00:08:03,830 --> 00:08:05,760 梅 書いて! 102 00:08:05,760 --> 00:08:09,130 (梅)自分で書きんて。 お願い! あんた 小説書いとるじゃん。 103 00:08:09,130 --> 00:08:13,000 たかが ファンレターでしょ! 「たかが」って何なの!? 104 00:08:13,000 --> 00:08:18,810 お姉ちゃんは 文章を勘違いしとるよ。 美辞麗句並べたって伝わらんの。 105 00:08:18,810 --> 00:08:21,510 心から出た思いをつづらなきゃ。 106 00:08:21,510 --> 00:08:24,010 適当なこと言っとらんで お願い! 107 00:08:24,010 --> 00:08:26,920 いかん! いかん いかん! 108 00:08:26,920 --> 00:08:29,150 ファンレターぐらい 自分で書かなきゃ。 109 00:08:29,150 --> 00:08:34,860 それに 作曲家にファンレターなんて そんなに届くの? 110 00:08:34,860 --> 00:08:37,160 お願い~。 いかん! 111 00:08:37,160 --> 00:08:40,700 お願い~ 梅ちゃん…。 いかん いかん! 離せ! 112 00:08:40,700 --> 00:08:46,700 ファンレターは届いていました。 想像をはるかに超えて。 113 00:08:56,250 --> 00:09:01,480 「古山裕一様 突然のお手紙 失礼します。➡ 114 00:09:01,480 --> 00:09:05,990 私は 豊橋に住む 関内 音と申します。➡ 115 00:09:05,990 --> 00:09:12,760 音という名前のとおり 私は音楽を愛しています。➡ 116 00:09:12,760 --> 00:09:17,330 『竹取物語』という題名 本当にすてきです。➡ 117 00:09:17,330 --> 00:09:21,500 実は 私も 子どもの頃 かぐや姫を演じたので➡ 118 00:09:21,500 --> 00:09:26,140 大げさですが 運命を感じてしまいました。➡ 119 00:09:26,140 --> 00:09:31,510 いつか オーケストラが 大きな劇場で演奏するのでしょうね。➡ 120 00:09:31,510 --> 00:09:33,550 楽しみでしょうがありません。➡ 121 00:09:33,550 --> 00:09:42,230 必ず 東京でも海外でも駆けつけたい。 いや 駆けつけます!➡ 122 00:09:42,230 --> 00:09:47,360 あなたのような天才が同年代にいることに 勇気づけられますとともに➡ 123 00:09:47,360 --> 00:09:50,700 自分に焦りも覚えます。➡ 124 00:09:50,700 --> 00:09:56,870 いつか 僭越ですが あなたの作曲した曲を 舞台で歌える日があることを➡ 125 00:09:56,870 --> 00:09:59,370 願っています」。 126 00:10:03,380 --> 00:10:08,890 「あなたの魂を 私は歌で伝える。➡ 127 00:10:08,890 --> 00:10:15,660 そんな夢のような日を 思い描いています。➡ 128 00:10:15,660 --> 00:10:19,200 今後のご活躍を祈っています。➡ 129 00:10:19,200 --> 00:10:23,900 お体に気をつけて。 関内 音」。 130 00:10:23,900 --> 00:10:45,290 ♬~ 131 00:10:45,290 --> 00:10:49,590 ≪(三郎)裕一! 裕一! 132 00:10:49,590 --> 00:10:53,460 おい… ああ~っ! あっ ちょっと… えっ 父さん 何!? 133 00:10:53,460 --> 00:10:55,470 突然 すまん! 何? 134 00:10:55,470 --> 00:10:57,930 二十歳 超えたろ? うん。 135 00:10:57,930 --> 00:11:01,710 酒 飲み行くぞ! いててて…。 136 00:11:01,710 --> 00:11:05,040 す… 座ってて。 (三郎)いてて…。➡ 137 00:11:05,040 --> 00:11:08,040 乾杯。 乾杯。 138 00:11:08,040 --> 00:11:14,050 おっ! いいね。 139 00:11:14,050 --> 00:11:16,250 あっ…。 おお…。 140 00:11:21,390 --> 00:11:29,070 あ~ しかし すげえ賞 取ったな。 おめでとう。 141 00:11:29,070 --> 00:11:31,000 怒ってっかと思った。 142 00:11:31,000 --> 00:11:34,200 浩二は カンカンだ。 母さんは不安がってる。 143 00:11:34,200 --> 00:11:36,740 俺も あの人にどやされた。 144 00:11:36,740 --> 00:11:39,640 これは どういうことだ!? 145 00:11:39,640 --> 00:11:44,410 ごめん… どうすっか決めてから 報告するつもりだったのに。 146 00:11:44,410 --> 00:11:46,450 いや~ いいんだ いいんだ。 147 00:11:46,450 --> 00:11:50,220 しかし あれだな 賞金あんだべ? いぐらだ? 148 00:11:50,220 --> 00:11:55,090 400ポンド。 うん。 日本円で 4, 000円ぐれえかな。 149 00:11:55,090 --> 00:12:00,030 今のお金で およそ1, 200万円です。 150 00:12:00,030 --> 00:12:03,900 おめえ… それは すんげえな! 151 00:12:03,900 --> 00:12:06,540 いや… 留学費用だよ。 152 00:12:06,540 --> 00:12:10,410 イギリスまでの渡航費 学費とか生活費含めてのお金だから。 153 00:12:10,410 --> 00:12:16,710 それでも すげえだろ! 福島の片田舎の 音楽学校にも行ってねえ男に そだ大金。 154 00:12:16,710 --> 00:12:22,410 おめえ… 俺の息子か~? ハハハ…。 155 00:12:27,720 --> 00:12:32,520 俺… どうしたらいい? 156 00:12:36,070 --> 00:12:39,900 留学は いつからなんだ? 157 00:12:39,900 --> 00:12:43,210 9月の初めには出発しないと 間に合わない。 158 00:12:43,210 --> 00:12:49,210 5か月後か… 時間があるような ねえような。 159 00:12:50,950 --> 00:12:53,580 ごめん。 160 00:12:53,580 --> 00:12:57,220 音楽… 諦めてたつもりなのに…。 161 00:12:57,220 --> 00:13:01,690 うれしいことだべ! 謝る話じゃねえ。 162 00:13:01,690 --> 00:13:07,360 父さんに 音楽諦めんなって言われて➡ 163 00:13:07,360 --> 00:13:09,560 腹 立ったんだ。 164 00:13:14,700 --> 00:13:19,880 残酷だよ… 父さん。 165 00:13:19,880 --> 00:13:29,590 ♬~ 166 00:13:29,590 --> 00:13:31,590 すまねえ。 167 00:13:31,590 --> 00:13:35,360 い… 言い訳みたいに 聞こえっかもしんねえけど➡ 168 00:13:35,360 --> 00:13:37,290 コンクールに応募したのも➡ 169 00:13:37,290 --> 00:13:42,270 断ち切れない気持ちに けじめつけるためだったんだ。 170 00:13:42,270 --> 00:13:46,570 でも おめえは成果を上げた。 171 00:13:46,570 --> 00:13:51,210 しかも… ものすげえ賞だ。 172 00:13:51,210 --> 00:13:54,010 ハハハハハ…。 173 00:13:56,580 --> 00:13:59,480 よく分かんないくせに。 174 00:13:59,480 --> 00:14:03,150 おめえは 俺の自慢の息子だ。 175 00:14:03,150 --> 00:14:08,960 失敗ばかりの人生だが 唯一 誇れんのは おめえだ。 176 00:14:08,960 --> 00:14:16,700 まあ 俺に任せとけ。 ハハハハ…。 177 00:14:16,700 --> 00:14:18,700 うん! 178 00:14:21,040 --> 00:14:24,710 う~ん…。 179 00:14:24,710 --> 00:14:29,550 (岩城)待っとる時は来んよ。 諦めた頃に便りは届く。 180 00:14:29,550 --> 00:14:32,550 えっ? ≪(ベル) 181 00:14:37,290 --> 00:14:39,290 (ベル) 182 00:14:43,730 --> 00:14:55,030 (鐘の音)