1 00:00:08,240 --> 00:00:10,880 (木枯)お待たせ。 2 00:00:10,880 --> 00:00:15,720 君に ちゃんと紹介しておきたいと思って。 山藤太郎さん。 3 00:00:15,720 --> 00:00:17,750 (裕一)あっ。 改めまして 山藤です。 4 00:00:17,750 --> 00:00:23,890 古山裕一です。 あっ 木枯君とは同期で… 差は もう ついちゃったんですけど…。 5 00:00:23,890 --> 00:00:28,060 木枯さんは あなたには とても 才能があると おっしゃってましたよ。 6 00:00:28,060 --> 00:00:31,730 お世辞ですよ。 (木枯)僕は お世辞なんか言わない。 7 00:00:31,730 --> 00:00:35,230 君の曲は 山藤さんに きっと合うよ。 8 00:00:35,230 --> 00:00:41,110 いつか 是非 一緒にやってほしいな。 あ… ありがとう。 9 00:00:41,110 --> 00:00:43,110 あれ? これ…。 10 00:00:43,110 --> 00:00:46,410 ああ… あの… 早稲田の応援歌 頼まれまして。 11 00:00:46,410 --> 00:00:51,920 慶應の あの「若き血」に必ず勝てって 言われてます。 12 00:00:51,920 --> 00:00:55,760 フフ…。 どうしました? 13 00:00:55,760 --> 00:00:59,630 「若き血」は 僕が塾生時代に生まれたんです。 14 00:00:59,630 --> 00:01:03,860 えっ? (山藤) 応援団に歌唱指導したのは僕なんです。 15 00:01:03,860 --> 00:01:06,700 えっ… 応援団だったんですか!? いえいえ…。 16 00:01:06,700 --> 00:01:09,030 歌の指導を頼まれたんです。 17 00:01:09,030 --> 00:01:11,370 ♬「光輝みてる我等」 18 00:01:11,370 --> 00:01:14,870 (山藤)その時 僕は まだ2年生なのに➡ 19 00:01:14,870 --> 00:01:21,510 上級生に対して 何度も何度も 違うと 歌わせたあげく…。 20 00:01:21,510 --> 00:01:24,220 何回言ったら分かるんだ。 21 00:01:24,220 --> 00:01:27,890 ただ 大声出したって 気持ちは伝わらないんだ! 22 00:01:27,890 --> 00:01:32,060 あなたたちは 母校を愛してないのか!? 23 00:01:32,060 --> 00:01:35,930 うるせえ~! 調子に乗るな。 24 00:01:35,930 --> 00:01:38,930 俺は お前より慶應を愛してる! 25 00:01:38,930 --> 00:01:43,240 この大学を 何よりも誰よりも 俺は愛してる! 26 00:01:43,240 --> 00:01:47,040 それです。 はあ? 27 00:01:49,540 --> 00:01:54,910 今のあなたの叫びこそ 「若き血」です。 28 00:01:54,910 --> 00:02:02,190 「若き血」が応援歌になって以来 我が慶應義塾は早稲田に連戦連勝です。➡ 29 00:02:02,190 --> 00:02:05,890 勝つのは… 容易ではないですよ。 30 00:02:09,500 --> 00:02:13,030 う~ん… 勝ち負け以前の問題です。 31 00:02:13,030 --> 00:02:18,900 ♬~ 32 00:02:18,900 --> 00:02:24,740 ♬「泣いて 生まれて 響く命」 33 00:02:24,740 --> 00:02:30,380 ♬「きっと嬉しくて 笑っているんだ」 34 00:02:30,380 --> 00:02:35,720 ♬「僕らはきっと 出逢うでしょう」 35 00:02:35,720 --> 00:02:41,890 ♬「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」 36 00:02:41,890 --> 00:02:49,770 ♬「きっといつか今日の日も 意味を持って ほら」 37 00:02:49,770 --> 00:02:53,610 ♬「耳をすませば」 38 00:02:53,610 --> 00:02:59,250 ♬「星の見えない日々を 超えるたびに」 39 00:02:59,250 --> 00:03:04,850 ♬「互い照らすその意味を 知るのでしょう」 40 00:03:04,850 --> 00:03:07,890 ♬「愛する人よ」 41 00:03:07,890 --> 00:03:10,660 ♬「親愛なる友よ」 42 00:03:10,660 --> 00:03:18,960 ♬「遠くまで 響くはエール」 43 00:03:21,300 --> 00:03:25,170 あれ? まだ書けてない。 え~? 44 00:03:25,170 --> 00:03:28,870 (ノックとドアが開く音) 45 00:03:32,380 --> 00:03:34,710 あ~ ありがとう。 46 00:03:34,710 --> 00:03:36,750 (音)進まんの? う~ん…。 47 00:03:36,750 --> 00:03:40,050 前半は シューベルトのイメージで いけそうなんだけどね➡ 48 00:03:40,050 --> 00:03:42,890 最後が もう全く浮かばない。 49 00:03:42,890 --> 00:03:44,820 「覇者 覇者」の部分? 50 00:03:44,820 --> 00:03:48,230 応援歌ってさ 迫力が大事だと思うんだけど➡ 51 00:03:48,230 --> 00:03:51,260 「は」の発音って弱いでしょ? そうね。 52 00:03:51,260 --> 00:03:53,900 「か」とかなら いいのかな? 53 00:03:53,900 --> 00:03:58,070 「勝つ!」とか こう… 「かっ飛ばせ~」とか…。 54 00:03:58,070 --> 00:04:03,680 提案してみようかな。 うん… 頑張って。 55 00:04:03,680 --> 00:04:06,710 ありがとう。 56 00:04:06,710 --> 00:04:09,850 「勝~つ!」 「かっ飛ばせ~」。 57 00:04:09,850 --> 00:04:11,780 (田中)なかです! 58 00:04:11,780 --> 00:04:15,350 こん歌詞は完璧ですけん。 そうですか…。 特に この「覇者 覇者」は➡ 59 00:04:15,350 --> 00:04:18,690 慶應ば圧倒する気持ちが出とって 譲れんとです! 60 00:04:18,690 --> 00:04:21,190 そ… そう… はい 分かりました。 はい。 61 00:04:21,190 --> 00:04:24,030 お願いします! はい… はい… お願いされました。 62 00:04:24,030 --> 00:04:25,970 失礼します! はい どうも。 ご苦労さまです。 63 00:04:25,970 --> 00:04:28,270 (保)ありがとうございました。 64 00:04:32,500 --> 00:04:35,700 (保)お代わりは? あっ お願いします。 65 00:04:37,340 --> 00:04:40,710 困ってるね~。 書けないの? 66 00:04:40,710 --> 00:04:45,220 あ~… 応援歌って ほら ある一定の形 あるじゃないですか。 67 00:04:45,220 --> 00:04:48,520 どうしても それに引っ張られて ありきたりになっちまうんです。 68 00:04:48,520 --> 00:04:51,390 ありきたりじゃ まずいの? いや そりゃ…➡ 69 00:04:51,390 --> 00:04:54,290 そりゃ どうせ 作んなら 違うもん作りたいじゃないですか。 70 00:04:54,290 --> 00:04:57,260 そっか… そうだよね。 71 00:04:57,260 --> 00:05:04,340 僕も 毎日 同じコーヒーを作ることに 疑問を持つことがある。 72 00:05:04,340 --> 00:05:09,680 いや… コーヒーは…。 えっ 何? 73 00:05:09,680 --> 00:05:18,380 いや… その味が飲みたくて来てるわけで 毎回違ってたら… 困りますよ。 74 00:05:18,380 --> 00:05:24,220 裕一君が書けないのはさ 自分の音楽を 作ろうとしてるからじゃないかな?➡ 75 00:05:24,220 --> 00:05:29,500 僕が コーヒーをブレンドする時に 考えるのは お客さんの顔なわけ。➡ 76 00:05:29,500 --> 00:05:32,700 これを飲んだら どんな反応するかなとか。 77 00:05:32,700 --> 00:05:38,370 意味分かんないよ! 僕が 曲 作んのに 何で自分の音楽 作っちゃいけないの? 78 00:05:38,370 --> 00:05:41,040 だったら ほかに頼んでも同じ ってことになんない? 79 00:05:41,040 --> 00:05:44,380 マスター 客商売だから こびないと やっていけないかもしれないけど➡ 80 00:05:44,380 --> 00:05:49,210 僕たちの世界じゃ 意味ないよね!? ねえ そう思わない? 81 00:05:49,210 --> 00:05:51,720 難しいよね。 82 00:05:51,720 --> 00:05:55,050 いや 人のまねして歌えって言われて どう思う? 83 00:05:55,050 --> 00:05:58,350 ありきたりの歌が分かりやすいからって 安易でしょ? 84 00:06:00,330 --> 00:06:05,830 私は まだ基礎やっとる段階だから よく分からんけど…。 85 00:06:05,830 --> 00:06:09,470 何? 86 00:06:09,470 --> 00:06:15,340 廿日市さんも言ってた。 裕一さんの音楽は 西洋音楽に こだわっとるって。 87 00:06:15,340 --> 00:06:19,680 そ… そりゃ… そりゃ 僕 西洋音楽で 音楽 学んだんだもん しかたない。 88 00:06:19,680 --> 00:06:27,550 そうなんだけど… 作ってくる曲が…➡ 89 00:06:27,550 --> 00:06:31,290 作ってくる曲が…。 90 00:06:31,290 --> 00:06:36,700 何? 言って。 聞いときたい。 91 00:06:36,700 --> 00:06:39,360 怒らん? 92 00:06:39,360 --> 00:06:42,700 うん… 僕 冷静だよ。 言って。 93 00:06:42,700 --> 00:06:45,740 「鼻につく」って。 94 00:06:45,740 --> 00:06:49,880 普通に盛り上がればいいメロディーも 何か…➡ 95 00:06:49,880 --> 00:06:54,380 こざかしい知識をひけらかして 曲を台なしにしとるって。 96 00:06:59,520 --> 00:07:03,390 怒った…。 でも言っときたかったの。 97 00:07:03,390 --> 00:07:06,990 一年間 一枚も レコードになっとらんのは事実だし➡ 98 00:07:06,990 --> 00:07:10,460 何か変えんと まずいと思う。 99 00:07:10,460 --> 00:07:13,330 変える? 変える? 100 00:07:13,330 --> 00:07:16,670 フフ… 何それ。 101 00:07:16,670 --> 00:07:22,010 いや… 本当だったら 今頃 イギリスで 音楽の勉強してるはずだったのに➡ 102 00:07:22,010 --> 00:07:27,880 東京の隅っこで 応援団と大衆曲の曲 作ってんだよ? 103 00:07:27,880 --> 00:07:31,680 もう十分 変わってるよ! 104 00:07:31,680 --> 00:07:37,180 それでも… それでも 自分の音楽 表現しようって頑張ってんだよ! 105 00:07:39,360 --> 00:07:42,260 …なら このままでいいの? 106 00:07:42,260 --> 00:07:46,760 自分の音楽は捨てないよ。 捨てたら意味ないよ! 107 00:07:50,370 --> 00:07:53,210 (せきばらい) もういい。 108 00:07:53,210 --> 00:07:56,410 明日から ごはんは作りません。 勝手にやって下さい。 109 00:07:59,980 --> 00:08:04,150 ん~! んっ… んっ! 110 00:08:04,150 --> 00:08:07,050 あ~ みんな 何なんだよ…。 111 00:08:07,050 --> 00:08:09,820 僕に何を期待してんだよ! 112 00:08:09,820 --> 00:08:13,320 人には得意不得意あんだろうに…。 113 00:08:19,330 --> 00:08:23,170 うん…。 114 00:08:23,170 --> 00:08:25,370 こうなったら…。 115 00:08:28,010 --> 00:08:33,810 これだ… これが僕だ。 116 00:08:39,020 --> 00:08:41,920 久志さんの心配が当たりました。 117 00:08:41,920 --> 00:08:46,190 (久志)でしょう? 裕一みたいに 独学でやってきた人間は➡ 118 00:08:46,190 --> 00:08:49,700 往々にして はまりやすいケースだよね。 119 00:08:49,700 --> 00:08:53,030 久志さんは 悩み事とか ないんですか? 120 00:08:53,030 --> 00:08:54,970 そう見える? 121 00:08:54,970 --> 00:09:02,140 だって… 学校内では憧れの的だし 歌も顔もいいですし➡ 122 00:09:02,140 --> 00:09:06,450 相談したら いつも的確な答えを下さいますし。 123 00:09:06,450 --> 00:09:09,250 ほれた? 人妻です。 124 00:09:11,150 --> 00:09:15,820 裕一の最大の幸福は… 君だ。 125 00:09:15,820 --> 00:09:18,660 音楽の才能は その次。 126 00:09:18,660 --> 00:09:20,660 そんな…。 127 00:09:27,370 --> 00:09:34,010 そうだといいんですけど このままだと裕一さんが心配で。 128 00:09:34,010 --> 00:09:38,710 才能を無駄にして 後悔しながら生きてほしくないんです。 129 00:09:40,480 --> 00:09:44,350 応援歌を作ることで何かが変わる。 130 00:09:44,350 --> 00:09:48,850 応援歌は 文字どおり 人を元気づける歌だからね。 131 00:09:50,690 --> 00:09:54,560 ≪キャ~! 132 00:09:54,560 --> 00:09:57,360 ≪ああ… すてき…。 133 00:09:57,360 --> 00:09:59,870 それ 気を付けた方がいいですよ。 134 00:09:59,870 --> 00:10:03,500 罪だな… 僕という存在が。 135 00:10:03,500 --> 00:10:06,870 (恵)う~ん… どうだろう? 136 00:10:06,870 --> 00:10:11,370 彼を変えられるのは 自分だけだと思うけど。 137 00:10:13,050 --> 00:10:16,720 私にできることは ないってことですか…。 138 00:10:16,720 --> 00:10:19,220 そうねえ…。 139 00:10:19,220 --> 00:10:22,250 あっ! 140 00:10:22,250 --> 00:10:27,930 あっ… あった あった。 はい。 141 00:10:27,930 --> 00:10:32,400 徳川家の遺訓? 142 00:10:32,400 --> 00:10:38,540 (恵)「人の壹生は重荷を負て 遠き道をゆくが如し➡ 143 00:10:38,540 --> 00:10:41,740 急ぐべからず」。 144 00:10:41,740 --> 00:10:46,740 「不自由を常と思えば 不足なし」。 145 00:11:07,500 --> 00:11:26,390 ♬~ 146 00:11:26,390 --> 00:11:31,060 う~ん… あと100回だな。 147 00:11:31,060 --> 00:11:34,730 ♬~(鼻歌) 148 00:11:34,730 --> 00:11:44,400 ♬~ 149 00:11:44,400 --> 00:11:46,340 んっ! 150 00:11:46,340 --> 00:11:53,080 ♬~ 151 00:11:53,080 --> 00:11:57,880 何もしないって つらいわ 家康さん。 152 00:12:00,820 --> 00:12:06,520 出来た… 最高傑作かもしれない。 153 00:12:10,030 --> 00:12:12,500 裕一が書き上げたのは➡ 154 00:12:12,500 --> 00:12:17,300 「反逆の詩」という西洋音楽でした。 155 00:12:19,270 --> 00:12:27,880 (貧乏揺すりの音) 156 00:12:27,880 --> 00:12:29,920 ん~… うお~! 157 00:12:29,920 --> 00:12:32,220 曲は まだね!? あと5日ったい! 158 00:12:32,220 --> 00:12:35,720 (小熊)団長! もう ほかの作曲家を手配しましょう! 159 00:12:35,720 --> 00:12:38,220 こ~りゃ~! 160 00:12:38,220 --> 00:12:40,890 お前… それでも応援部とね!? 161 00:12:40,890 --> 00:12:43,730 人ば信じられんで なにが応援ね! 162 00:12:43,730 --> 00:12:47,530 俺は信じとう… あいつば 信じとう! 163 00:12:47,530 --> 00:12:50,030 はい…。 ≪(事務局長)失礼するよ! 164 00:12:51,740 --> 00:12:58,440 (事務局長)うん? 君たち 新しい応援歌を 作っていると聞いたが 本当かね? 165 00:13:00,350 --> 00:13:02,280 それが何か? 166 00:13:02,280 --> 00:13:05,220 作曲は誰かね? 古山裕一っちゅう若者です。 167 00:13:05,220 --> 00:13:07,490 おいおい! それは困るね~。 168 00:13:07,490 --> 00:13:10,190 学校の応援歌を 勝手に やってもらっちゃあ。 169 00:13:10,190 --> 00:13:12,690 詞も公募です。 問題なかでしょう。 170 00:13:12,690 --> 00:13:16,360 西條八十先生が関わってるなら 詞は問題ないでしょう。 171 00:13:16,360 --> 00:13:19,260 曲は 我々が選んだ人に作ってもらいます。 172 00:13:19,260 --> 00:13:22,170 秋の早慶戦まで あと5日です! 間に合わんとです! 173 00:13:22,170 --> 00:13:24,100 (事務局長) 別に今季でなくてもいいでしょう。 174 00:13:24,100 --> 00:13:28,510 いや… それでは 団長が卒業になってしまいますよ! 175 00:13:28,510 --> 00:13:30,880 だから? あっ いや…。 176 00:13:30,880 --> 00:13:35,080 学校のことに個人の思いなど 挟まる余地はなし。 177 00:13:36,680 --> 00:13:40,590 話はつきましたね。 では私が 日本で最高の作曲家➡ 178 00:13:40,590 --> 00:13:43,220 小山田先生に頼んであげましょう。 179 00:13:43,220 --> 00:13:47,090 (村田)小山田先生は一度 作っておられます! だから? 180 00:13:47,090 --> 00:13:50,530 その時の曲が 古くさいと あまり評判がよくなく…。 181 00:13:50,530 --> 00:13:54,030 個人の主観など関係ない! では! 182 00:13:56,740 --> 00:14:00,440 団長… どうしますか!? 183 00:14:06,340 --> 00:14:10,850 フフッ… ハハハハハ…。 184 00:14:10,850 --> 00:14:20,360 ハハハハ… ハハハハハ! 185 00:14:20,360 --> 00:14:24,360 これで俺ん腹は決まった。 186 00:14:24,360 --> 00:14:27,230 古山裕一と心中ったい! 187 00:14:27,230 --> 00:14:35,370 何が どげんなろうと早稲田第六応援歌は 今度ん早慶戦で歌う! よかか!? 188 00:14:35,370 --> 00:14:37,310 (一同)はい! 189 00:14:37,310 --> 00:14:40,250 そのころ 裕一は…。 190 00:14:40,250 --> 00:14:55,250 ♬~