1 00:00:34,169 --> 00:00:36,104 <神守幹次郎殿は➡ 2 00:00:36,104 --> 00:00:40,108 理不尽な夫から 私 汀女を救い出し➡ 3 00:00:40,108 --> 00:00:44,746 3年の逃亡の果てに 江戸に流れ着きました。➡ 4 00:00:44,746 --> 00:00:49,584 そして 吉原の女たちを 守る事になったのです> 5 00:00:49,584 --> 00:00:55,584 ♬~ 6 00:00:57,926 --> 00:01:00,626 女は切手! 7 00:01:03,265 --> 00:01:05,600 これで来てくれるかねえ。 8 00:01:05,600 --> 00:01:07,535 <遊女たちにとって➡ 9 00:01:07,535 --> 00:01:11,273 お客様に また来て下さるよう 文を書く事は➡ 10 00:01:11,273 --> 00:01:14,273 大切な仕事の一つでした> 11 00:01:17,145 --> 00:01:19,447 その紅は? 12 00:01:19,447 --> 00:01:21,950 これは 天紅っていうんです。 13 00:01:21,950 --> 00:01:25,453 あなたは特別な人ですよっていう 印ですよ。 14 00:01:25,453 --> 00:01:28,790 …と言いながら いろんな人にしてるけど。 15 00:01:28,790 --> 00:01:33,228 (笑い声) 16 00:01:33,228 --> 00:01:38,900 あら? もう紙がないわ。 17 00:01:38,900 --> 00:01:44,706 私のを お使いなさい。 あっ ありがとうございます! 18 00:01:44,706 --> 00:01:48,576 <この方は 雛菊さんです。➡ 19 00:01:48,576 --> 00:01:51,413 この雛菊さんの天紅の文が➡ 20 00:01:51,413 --> 00:01:55,283 とんでもない騒ぎを 起こす事になるのです> 21 00:01:55,283 --> 00:02:06,483 ♬~ 22 00:02:11,599 --> 00:02:14,936 (貞三)お願いします!➡ 23 00:02:14,936 --> 00:02:17,839 お願いですから なんとかして下さい! 24 00:02:17,839 --> 00:02:20,608 (長吉)これは 鶴亀屋の旦那 どうしやした? 25 00:02:20,608 --> 00:02:24,112 番所が うちの雛菊を 引っ立てようとしてんです! 26 00:02:24,112 --> 00:02:28,450 引っ立てる? 訳を聞いたのか? それが 皆目 分からないんです! 27 00:02:28,450 --> 00:02:33,250 分からないとは どういう事です? とにかく 来て下さい! 28 00:02:44,899 --> 00:02:49,237 (長吉)村崎様 何があったんですかい? 29 00:02:49,237 --> 00:02:53,742 これから この女を 殺しの疑いで取り調べる。 30 00:02:53,742 --> 00:02:55,777 (一同)え!? この女が➡ 31 00:02:55,777 --> 00:02:58,413 誰を殺したとおっしゃるんで!? 32 00:02:58,413 --> 00:03:01,750 雛菊さんが 人殺しなんか する訳ありませんよ! 33 00:03:01,750 --> 00:03:03,785 お前たちは 上に行ってろ! 34 00:03:03,785 --> 00:03:06,588 だって! 間違いに決まってますよ。 35 00:03:06,588 --> 00:03:08,523 雛菊さんみたいに優しい方が➡ 36 00:03:08,523 --> 00:03:10,759 人殺しなんて できるはずが ないじゃありませんか! 37 00:03:10,759 --> 00:03:13,094 そうですよ! (貞三)私だって そう思うさ。 38 00:03:13,094 --> 00:03:18,794 みんな 戻るのよ。 だって 鞆世さん…。 39 00:03:20,435 --> 00:03:24,305 私たちは 自分の務めをするしか ないんだよ。 40 00:03:24,305 --> 00:03:28,943 鞆世さん 私は人殺しなんてしていません。 41 00:03:28,943 --> 00:03:32,714 心配しないで下さい。 42 00:03:32,714 --> 00:03:39,387 ♬~ 43 00:03:39,387 --> 00:03:43,687 みんなを頼みます。 44 00:03:46,895 --> 00:03:50,195 追って沙汰をする。 45 00:03:51,766 --> 00:03:57,238 雛菊さんを助けてやって下さい! お願いします! 46 00:03:57,238 --> 00:04:01,938 分かった。 悪いようにはしねえよ。 47 00:04:03,578 --> 00:04:06,081 (鞆世)さあ みんな 行こう。 48 00:04:06,081 --> 00:04:08,917 <この方は 鞆世さん。➡ 49 00:04:08,917 --> 00:04:11,753 この店で お職を張る人です。➡ 50 00:04:11,753 --> 00:04:16,624 お職とは その店の一番の売れっ子の事です> 51 00:04:16,624 --> 00:04:21,763 鶴亀屋と言やあ 美人で評判の鞆世が お職を張り➡ 52 00:04:21,763 --> 00:04:25,934 気立てのよさが評判の雛菊が それに続く売れっ子。 53 00:04:25,934 --> 00:04:28,269 2人が もり立ててきたんだ。 54 00:04:28,269 --> 00:04:30,772 それにしても 殺しの嫌疑って何だ? 55 00:04:30,772 --> 00:04:33,208 近頃 吉原ん中じゃ 殺しなんて起こってねえぞ。 56 00:04:33,208 --> 00:04:37,408 ≪頭取が お戻りです! 57 00:04:41,082 --> 00:04:46,754 やっと 番所から 話を聞き出してきた。 58 00:04:46,754 --> 00:04:50,758 雛菊の客の清右衛門て男が死んだ。 59 00:04:50,758 --> 00:04:52,894 (男衆たち)え? 60 00:04:52,894 --> 00:04:57,398 本所の ろうそく問屋の主だよ。 61 00:04:57,398 --> 00:05:02,570 どうやら 雛菊は その男を殺した疑いを持たれてる。 62 00:05:02,570 --> 00:05:06,407 え? でも 吉原の外で起こった 殺しでしょ。 だから➡ 63 00:05:06,407 --> 00:05:09,911 聞き出せたのは そこまでなんだよ。 64 00:05:09,911 --> 00:05:12,580 清右衛門が どうやって死んだのか➡ 65 00:05:12,580 --> 00:05:15,250 その雛菊と どういう関わりがあったのか➡ 66 00:05:15,250 --> 00:05:19,587 そういうところを 村崎様は 一っつも 話してくんねえんだ。 67 00:05:19,587 --> 00:05:23,458 その ろうそく問屋の主が どうやって死んだか➡ 68 00:05:23,458 --> 00:05:25,460 その辺から調べてみましょう。 69 00:05:25,460 --> 00:05:31,299 ただ 村崎様のご機嫌を 損ねないようにな。 70 00:05:31,299 --> 00:05:33,868 (男衆たち)へい! 71 00:05:33,868 --> 00:05:37,368 あの店です。 72 00:05:39,207 --> 00:05:43,545 清右衛門が死んだのは 昨日の事だそうです。 昨日…。 73 00:05:43,545 --> 00:05:47,882 先代には子どもがなく 養子の 清右衛門が 後を継いでいました。 74 00:05:47,882 --> 00:05:50,552 清右衛門は 雛菊の所に よく通ってたのかい? 75 00:05:50,552 --> 00:05:56,424 ええ。 遊び人で かなりの上客だったようです。 76 00:05:56,424 --> 00:06:00,228 あの男は? (清次)番頭の茂蔵です。➡ 77 00:06:00,228 --> 00:06:02,163 店は 実のところ➡ 78 00:06:02,163 --> 00:06:05,463 あの男が 切り盛りしていたようです。 79 00:06:07,101 --> 00:06:10,801 あっ これは…。 80 00:06:14,576 --> 00:06:21,349 通夜に来た者から聞いた話では 清右衛門は雛菊のなじみ客だった。 81 00:06:21,349 --> 00:06:23,284 仕事が忙しくて➡ 82 00:06:23,284 --> 00:06:26,921 しばらく 吉原に足が向けられない 日が続いていたところ➡ 83 00:06:26,921 --> 00:06:30,592 雛菊から文が届いたそうです。 文が? 84 00:06:30,592 --> 00:06:37,198 ええ。 届けたのは文使いで 名を正五郎といいます。 85 00:06:37,198 --> 00:06:41,869 清右衛門さん。 雛菊さんからの文 お届けに参りました。 86 00:06:41,869 --> 00:06:43,805 待ってたよ 正五郎さん! 87 00:06:43,805 --> 00:06:48,209 おっ これは 天紅がついてるじゃないか。 88 00:06:48,209 --> 00:06:51,246 身請けなさるんですか? そのつもりだ。 89 00:06:51,246 --> 00:06:53,715 長い間 渋っていたんだが➡ 90 00:06:53,715 --> 00:06:55,750 天紅の文を送ってきた という事は➡ 91 00:06:55,750 --> 00:06:58,219 そのつもりに なってくれたんだね。 92 00:06:58,219 --> 00:07:01,919 雛菊や もうすぐ会いに行くよ。 93 00:07:05,893 --> 00:07:08,229 じゃあ 早速 今夜にでも。 94 00:07:08,229 --> 00:07:11,266 髪を結い直してもらおうか。 へい。 95 00:07:11,266 --> 00:07:14,902 本当なら 女房に したいところなんだがねえ➡ 96 00:07:14,902 --> 00:07:17,805 養子の身で おっ母さんには逆らえず…。 97 00:07:17,805 --> 00:07:22,410 (うめき声) 98 00:07:22,410 --> 00:07:28,082 どうされました? 大丈夫ですか!? 旦那! 99 00:07:28,082 --> 00:07:30,018 文に毒が? 100 00:07:30,018 --> 00:07:35,690 医者の見立てでは 天紅の所に 鳥兜が塗ってあったらしいです。 101 00:07:35,690 --> 00:07:41,496 それで 文に毒を塗って 清右衛門さんを毒殺したかどで➡ 102 00:07:41,496 --> 00:07:48,202 雛菊さんが捕らえられたんですか。 どうも そのようです。 103 00:07:48,202 --> 00:07:52,073 天紅に毒…。 104 00:07:52,073 --> 00:07:57,712 あね様は 天紅を ご存じでしたか? ええ。 105 00:07:57,712 --> 00:08:03,885 実は 私… 見ていたのです。 何を? 106 00:08:03,885 --> 00:08:07,722 雛菊さんが 文に天紅をつけるところを…。 107 00:08:07,722 --> 00:08:11,225 手習いの時に。 108 00:08:11,225 --> 00:08:14,262 え? 毒が塗られたとしたら➡ 109 00:08:14,262 --> 00:08:18,062 あれから後という事になりますね。 110 00:08:25,740 --> 00:08:28,576 鳥兜? はあ。 111 00:08:28,576 --> 00:08:31,913 鳥兜の毒は どうしたら手に入るのですか? 112 00:08:31,913 --> 00:08:37,352 (お芳)鳥兜って 猛毒でしょ。 誰かを殺したいのか? 113 00:08:37,352 --> 00:08:43,524 いや 某は 毒など使いません。 ハハハハハッ そうだな。 114 00:08:43,524 --> 00:08:50,198 いや~ 鳥兜は 扱いを間違うと 猛毒だが 鎮痛の効能もある。 115 00:08:50,198 --> 00:08:52,533 薬種問屋なら どこでも売ってるよ。 116 00:08:52,533 --> 00:08:55,370 では 誰でも買える という事ですか? 117 00:08:55,370 --> 00:08:59,540 問屋なら手に入る。 知り合いの 医者に こっそり頼めば➡ 118 00:08:59,540 --> 00:09:04,040 誰でも手に入るという事だ。 119 00:09:07,882 --> 00:09:11,719 天紅に鳥兜…。 120 00:09:11,719 --> 00:09:16,391 吉原の中の女が 鳥兜の毒を 手に入れる事は無理です。➡ 121 00:09:16,391 --> 00:09:20,061 もし 雛菊がやったとしても 一人で できる事じゃありません。 122 00:09:20,061 --> 00:09:22,964 手伝ったとしたら 誰だ? 123 00:09:22,964 --> 00:09:26,234 一番 考えられるのは 文使いの正五郎でしょう。 124 00:09:26,234 --> 00:09:30,104 ところが この正五郎 八方 手を尽くして捜したんですが➡ 125 00:09:30,104 --> 00:09:33,040 清右衛門が殺された髪結い床から 姿を消して➡ 126 00:09:33,040 --> 00:09:36,511 それっきり うちにも帰らず 行方をくらましてるんでさあ。 127 00:09:36,511 --> 00:09:41,382 行方をくらました? それじゃあ まるで 自分が手伝いましたって➡ 128 00:09:41,382 --> 00:09:45,082 白状しているようなもんじゃ ねえか。 129 00:09:48,689 --> 00:09:52,489 女は切手! 130 00:09:57,031 --> 00:09:58,966 (せきばらい) 131 00:09:58,966 --> 00:10:02,203 女は切手だよ! 132 00:10:02,203 --> 00:10:06,707 (村崎)待て! はい。 133 00:10:06,707 --> 00:10:13,047 その方ら 雛菊の件で 何か嗅ぎ回っておるようだな。 134 00:10:13,047 --> 00:10:16,083 余計な手出しはするな。 135 00:10:16,083 --> 00:10:19,921 お役目の邪魔をするつもりは ございません。 ただ…。 136 00:10:19,921 --> 00:10:22,557 ただ 何だ? 137 00:10:22,557 --> 00:10:27,228 店の女たちに頼まれたのです。 雛菊を助けてくれと。 138 00:10:27,228 --> 00:10:29,163 ぬけぬけと! 139 00:10:29,163 --> 00:10:33,034 少し腕が立つからといって つけあがるな! 140 00:10:33,034 --> 00:10:37,939 はい。 ところで… 雛菊は 取り調べには何と? 141 00:10:37,939 --> 00:10:40,241 いや それがもう…。 142 00:10:40,241 --> 00:10:43,578 ウンッ! お前の知った事ではない。 143 00:10:43,578 --> 00:10:47,448 分かりました。 ごめん。 144 00:10:47,448 --> 00:10:54,648 まあ 何だ… お前ら 先に行ってろ! 行け! 145 00:10:58,426 --> 00:11:04,098 その方が 雛菊に話を聞きたいというなら➡ 146 00:11:04,098 --> 00:11:06,434 聞かせてやってもよいぞ。 147 00:11:06,434 --> 00:11:11,939 番所と会所の仲だ。 そう むげにも扱えんからな。 148 00:11:11,939 --> 00:11:15,610 あの女 涼しい顔して➡ 149 00:11:15,610 --> 00:11:18,946 「私はやっていない」の一点張りだ。 150 00:11:18,946 --> 00:11:24,619 まあ どうせ お前が行ったところで 同じ事だ。 151 00:11:24,619 --> 00:11:27,319 (ため息) 152 00:11:39,066 --> 00:11:43,066 会所の者だ。 153 00:11:46,407 --> 00:11:50,207 ご面倒を おかけしております。 154 00:11:51,913 --> 00:11:55,113 やっていないのだな? 155 00:11:56,751 --> 00:11:58,751 はい。 156 00:12:02,256 --> 00:12:07,128 某は お前の事は何も知らぬ。 157 00:12:07,128 --> 00:12:11,966 しかし 店の女たちが 口をそろえて➡ 158 00:12:11,966 --> 00:12:17,738 お前が 人を殺めるなど 断じてないと言っている。 159 00:12:17,738 --> 00:12:21,943 その者たちの事を信じたい。 160 00:12:21,943 --> 00:12:27,815 ありがとうございます。 161 00:12:27,815 --> 00:12:31,953 ただ…。 ただ? 162 00:12:31,953 --> 00:12:40,061 もし 私の無実の証しが 立てられたとしたら➡ 163 00:12:40,061 --> 00:12:46,734 その時には もっと恐ろしい事が 起こるような気がして…。 164 00:12:46,734 --> 00:12:52,907 何? どういう事だ。 165 00:12:52,907 --> 00:13:00,781 別の大切なものを壊してしまう…。 166 00:13:00,781 --> 00:13:03,918 なぜか そんな気が…。 167 00:13:03,918 --> 00:13:10,791 大切なもの…。 それは何だ? 168 00:13:10,791 --> 00:13:18,933 あっ いえ。 今 申した事は お忘れ下さい。 169 00:13:18,933 --> 00:13:30,277 ♬~ 170 00:13:30,277 --> 00:13:35,277 ありがとうございました。 どういたしまして。 171 00:13:37,551 --> 00:13:39,887 あの…。 はい。 172 00:13:39,887 --> 00:13:44,187 少し お話ししたい事が…。 173 00:13:45,760 --> 00:13:50,231 (薄墨)自分の無実の証しが 立てられた時には➡ 174 00:13:50,231 --> 00:13:53,134 もっと恐ろしい事が起こる…。 175 00:13:53,134 --> 00:13:59,740 ええ。 何か大切なものを 壊してしまうと…。 176 00:13:59,740 --> 00:14:04,940 雛菊さんは それきり 何も言わなかったそうです。 177 00:14:06,514 --> 00:14:09,750 それを どうして 私に? 178 00:14:09,750 --> 00:14:16,090 幹殿が… いえ 私の夫が申しておりました。 179 00:14:16,090 --> 00:14:19,760 あなたなら 吉原の女の心の内が➡ 180 00:14:19,760 --> 00:14:24,060 何か お分かりに なるのではないかと。 181 00:14:31,272 --> 00:14:34,272 ごゆっくり。 182 00:15:01,068 --> 00:15:05,740 人にとって 一番 恐ろしい事…。 183 00:15:05,740 --> 00:15:12,240 それは 一番 大切なものを失う事。 184 00:15:14,915 --> 00:15:21,255 ここにいる女は皆 売られてきた身です。 185 00:15:21,255 --> 00:15:24,291 自由を奪われて生きる中で➡ 186 00:15:24,291 --> 00:15:27,428 何か 自分の心のよすがとなる➡ 187 00:15:27,428 --> 00:15:31,298 大切なものを 見つけようとするものです。 188 00:15:31,298 --> 00:15:39,540 それは 何なのですか? さあ それは 人それぞれ。 189 00:15:39,540 --> 00:15:45,713 ある人は ふるさとに残してきた親や兄弟。 190 00:15:45,713 --> 00:15:51,886 ある人は 好きな男の人。 191 00:15:51,886 --> 00:15:59,686 確かに それを失う事は 恐ろしい事ですね。 192 00:16:03,497 --> 00:16:08,435 薄墨太夫の大切なものは? 193 00:16:08,435 --> 00:16:13,574 さて 何でしょう…。 194 00:16:13,574 --> 00:16:19,446 いずれにせよ 女の事は 殿方には なかなか分からぬもの。 195 00:16:19,446 --> 00:16:23,250 まして 遊女の心の内など。 196 00:16:23,250 --> 00:16:28,122 せいぜい ご苦労されればよいのです。 197 00:16:28,122 --> 00:16:34,695 ♬~ 198 00:16:34,695 --> 00:16:42,036 そうは思いませぬか? そうですね。 199 00:16:42,036 --> 00:16:46,236 (笑い声) 200 00:16:47,842 --> 00:16:49,777 神守様が? 201 00:16:49,777 --> 00:16:55,577 女心を知ろうと ご苦労なさってるようですよ。 202 00:16:57,384 --> 00:17:00,888 お邪魔した。 何か分かりましたか? 203 00:17:00,888 --> 00:17:05,759 いえ 一向に。 こうなったら 真正面から行くしかありません。 204 00:17:05,759 --> 00:17:11,259 はい。 存分におやり下さいまし。 205 00:17:14,735 --> 00:17:18,239 面白いお方ですね! 206 00:17:18,239 --> 00:17:24,039 わしが見込んだのは 剣の腕だけじゃねえぞ。 207 00:17:28,749 --> 00:17:33,520 文に毒が…。 毒が塗られたとしたら➡ 208 00:17:33,520 --> 00:17:37,391 雛菊が 手習いのあと 文を ここに持って帰ってからだ。 209 00:17:37,391 --> 00:17:41,028 何か 心当たりはないか? まさか…➡ 210 00:17:41,028 --> 00:17:43,931 この中の誰かがやったとでも おっしゃるんですか? 211 00:17:43,931 --> 00:17:45,900 分からないから聞いてる。 212 00:17:45,900 --> 00:17:50,704 ここに 身内を陥れるような者は おりませんよ。 213 00:17:50,704 --> 00:17:55,376 この店のお職を張る者として はっきりと申し上げます。 214 00:17:55,376 --> 00:18:02,149 すまぬ。 ただ 雛菊を助けたかったのだ。 215 00:18:02,149 --> 00:18:04,385 お前たちと 同じ気持ちだ。 216 00:18:04,385 --> 00:18:08,889 (泣き声) 217 00:18:08,889 --> 00:18:10,925 どうしたの? 218 00:18:10,925 --> 00:18:15,225 私 見たんです。 219 00:18:22,236 --> 00:18:26,740 何を? 何を見たっていうんだい? 220 00:18:26,740 --> 00:18:30,611 私 恐ろしくて言えなかった。 221 00:18:30,611 --> 00:18:35,849 私たちの仲じゃないか。 この方も 信用できるお人だよ。 222 00:18:35,849 --> 00:18:38,886 安心して 言ってごらん。 223 00:18:38,886 --> 00:18:44,858 悪いようにはせぬ。 話してくれぬか? 224 00:18:44,858 --> 00:18:53,558 私 見たんです。 あれは いつだったか…。 225 00:18:55,369 --> 00:18:58,272 ≪(雛菊)わちきには主さんだけ。➡ 226 00:18:58,272 --> 00:19:02,242 ほかのお人に抱かれるのは つらくてなりんせん。➡ 227 00:19:02,242 --> 00:19:07,548 一緒になる相手は 主さんだけ。 228 00:19:07,548 --> 00:19:13,548 (春日)それは 確かに 雛菊さんの声でした。 229 00:19:21,562 --> 00:19:23,597 雛菊と正五郎が? 230 00:19:23,597 --> 00:19:27,368 (鞆世)遊女が出入りの文使いと 情を通じ合うなど➡ 231 00:19:27,368 --> 00:19:30,070 決して あってはならない事。➡ 232 00:19:30,070 --> 00:19:33,941 もし 見つかったら 恐ろしい折檻が待っています。 233 00:19:33,941 --> 00:19:37,678 この子は 見てしまった事が恐ろしくて➡ 234 00:19:37,678 --> 00:19:40,714 ずっと誰にも言えなかったのです。 235 00:19:40,714 --> 00:19:44,451 そうでしょう? はい。 236 00:19:44,451 --> 00:19:51,859 確かに 「わちきには主さんだけ」。 そう言っていたのか? はい。 237 00:19:51,859 --> 00:19:56,559 ほかのお人に抱かれるのが つらくてなりんせんと。 238 00:19:58,198 --> 00:20:04,004 まさか 雛菊さんは 正五郎さんと グルになって 清右衛門さんを? 239 00:20:04,004 --> 00:20:09,543 正五郎さん どこ行っちゃったのかしらね…。 240 00:20:09,543 --> 00:20:14,843 早く正五郎さんを見つけて下さい。 241 00:20:20,888 --> 00:20:25,225 雛菊と正五郎が 情を通じ合っていた? 242 00:20:25,225 --> 00:20:32,566 はい。 春日が確かに見たと。 遊女と文使いが…。 243 00:20:32,566 --> 00:20:37,237 雛菊と正五郎が グルになりゃ 毒を塗るのも 朝飯前だ。 244 00:20:37,237 --> 00:20:41,575 つまり 雛菊と正五郎が いい仲になった。 245 00:20:41,575 --> 00:20:45,913 そこで 雛菊を 強引に身請けしようとしている➡ 246 00:20:45,913 --> 00:20:47,848 清右衛門が邪魔になった。 247 00:20:47,848 --> 00:20:50,250 邪魔というだけで 殺しはしないでしょう。 248 00:20:50,250 --> 00:20:53,921 ただ 雛菊と正五郎が 情を通じてる事を➡ 249 00:20:53,921 --> 00:20:55,856 清右衛門は 知っていたんだろうか? 250 00:20:55,856 --> 00:20:58,258 あっ そうか! 251 00:20:58,258 --> 00:21:02,096 もし 清右衛門が2人の事を知って それを種に 雛菊を脅して➡ 252 00:21:02,096 --> 00:21:04,131 自分のものにしようと していたら…。 253 00:21:04,131 --> 00:21:08,869 だったとしたら 殺したくもなる。 254 00:21:08,869 --> 00:21:14,808 神守様 よく調べて下さいました。 いえ。 255 00:21:14,808 --> 00:21:17,945 このお侍は 妙に 女たちに受けがいいんでね。 256 00:21:17,945 --> 00:21:20,280 やかましい。 257 00:21:20,280 --> 00:21:23,951 ただ 1つ 腑に落ちない事がございます。 258 00:21:23,951 --> 00:21:25,886 何でしょうか? 259 00:21:25,886 --> 00:21:30,624 某が会った雛菊は 自分の欲や立場を守るために➡ 260 00:21:30,624 --> 00:21:33,894 人を殺めたりするような女には 見えませんでした。 261 00:21:33,894 --> 00:21:36,230 雛菊が やったとは…。 262 00:21:36,230 --> 00:21:40,530 もし その思いが 正しいと思われるなら…。 263 00:21:42,569 --> 00:21:44,505 ご自分の手で➡ 264 00:21:44,505 --> 00:21:50,244 そのまことを つかみ取って いらっしゃる事ですな。 265 00:21:50,244 --> 00:21:53,147 はい。 266 00:21:53,147 --> 00:21:56,583 ≪(清次)大変です! 何だい? 267 00:21:56,583 --> 00:21:59,253 大川で 男の死骸が揚がりました。 268 00:21:59,253 --> 00:22:02,156 どうやら 文使いの正五郎です。 269 00:22:02,156 --> 00:22:04,156 (一同)えっ! 270 00:22:08,929 --> 00:22:14,629 大川で 正五郎の死骸が揚がったぞ。 271 00:22:16,270 --> 00:22:18,270 え…? 272 00:22:21,608 --> 00:22:26,280 近くの川べりで➡ 273 00:22:26,280 --> 00:22:30,617 これが 見つかった!➡ 274 00:22:30,617 --> 00:22:36,317 正五郎とお前は グルになって 清右衛門を殺した。 275 00:22:37,891 --> 00:22:41,228 しかし 逃げるうちに➡ 276 00:22:41,228 --> 00:22:44,565 自分のやった事が 恐ろしくなって➡ 277 00:22:44,565 --> 00:22:47,565 自ら 命を絶ったのだ! 278 00:22:49,903 --> 00:22:54,241 その うろたえぶりが 何よりの証し! 279 00:22:54,241 --> 00:22:57,144 もう 観念せい! 280 00:22:57,144 --> 00:23:08,444 ♬~ 281 00:23:12,593 --> 00:23:17,264 正五郎の遺書… 動かぬ証拠ですね。 282 00:23:17,264 --> 00:23:21,935 ですが 私には どうも信じられないのです。 283 00:23:21,935 --> 00:23:23,870 雛菊さんが やったのなら➡ 284 00:23:23,870 --> 00:23:27,274 鳥兜は どうやって 手に入れたのでしょうか? 285 00:23:27,274 --> 00:23:32,546 当人は あれから 口を閉ざして 何も話そうとしないそうです。 286 00:23:32,546 --> 00:23:34,881 そうですか。 287 00:23:34,881 --> 00:23:39,753 相庵先生の話では 鳥兜は どこかの医者を通じて➡ 288 00:23:39,753 --> 00:23:41,755 手に入れたのではないかと。 289 00:23:41,755 --> 00:23:45,525 いっそ 江戸で薬を扱っている所を 全て あたれば➡ 290 00:23:45,525 --> 00:23:48,228 何か分かるのではないですか? 291 00:23:48,228 --> 00:23:51,528 どれほどの時が かかるかと…。 292 00:23:59,239 --> 00:24:02,142 (佐吉)おっとっとっと…。 293 00:24:02,142 --> 00:24:05,112 (店の女)いらっしゃい! どうも。 294 00:24:05,112 --> 00:24:07,114 この男に 酒だ。 (店の女)は~い。 295 00:24:07,114 --> 00:24:09,583 何か 分かったか? はい。 296 00:24:09,583 --> 00:24:13,920 天紅に塗られていたのが 鳥兜の毒だと見立てたのは➡ 297 00:24:13,920 --> 00:24:15,856 諒庵という医者です。 298 00:24:15,856 --> 00:24:19,593 諒庵? その医者が どういう いきさつで? 299 00:24:19,593 --> 00:24:21,528 それがね…。 300 00:24:21,528 --> 00:24:24,264 誰か! 誰か~! 301 00:24:24,264 --> 00:24:27,601 どうしました? 急に苦しみだして! 302 00:24:27,601 --> 00:24:29,936 (佐吉)清右衛門が倒れた時に➡ 303 00:24:29,936 --> 00:24:33,540 たまたま 外を通りかかったって いうじゃありませんか。 304 00:24:33,540 --> 00:24:38,412 たまたま? フフフ… 出来すぎでしょう? 305 00:24:38,412 --> 00:24:41,412 (店の女)はい お待ち。 ああ ありがとう。 306 00:24:47,554 --> 00:24:51,224 この諒庵っていう医者 調べてみたら➡ 307 00:24:51,224 --> 00:24:54,127 かなり たちの悪い男でね。 308 00:24:54,127 --> 00:24:57,097 博打にも 手を出しているようですよ。 309 00:24:57,097 --> 00:24:59,566 また 博打か。 310 00:24:59,566 --> 00:25:01,501 こいつが いつも行くのが➡ 311 00:25:01,501 --> 00:25:04,237 三ノ輪の寺で 開かれている賭場で➡ 312 00:25:04,237 --> 00:25:08,575 ここの常連に 面白い野郎がおりました。 誰だ? 313 00:25:08,575 --> 00:25:12,446 ろうそく問屋の番頭 茂蔵です。 314 00:25:12,446 --> 00:25:15,248 ええっ!? 315 00:25:15,248 --> 00:25:19,119 (佐吉)茂蔵は 清右衛門亡きあと➡ 316 00:25:19,119 --> 00:25:22,589 ろうそく問屋の後継ぎに 決まったそうです。 317 00:25:22,589 --> 00:25:24,524 もともと 茂蔵は➡ 318 00:25:24,524 --> 00:25:28,261 養子の清右衛門に 後継ぎの座を 奪われた格好になって➡ 319 00:25:28,261 --> 00:25:32,532 くさっていたそうですよ。 晴れて 店の主になったんで➡ 320 00:25:32,532 --> 00:25:35,569 これからは おおっぴらに 吉原に通い始めるだろうと➡ 321 00:25:35,569 --> 00:25:40,407 専らの噂ですよ。 前みたいに コソコソせずにね。 322 00:25:40,407 --> 00:25:46,107 茂蔵は 吉原に通っていたのか。 323 00:25:47,881 --> 00:25:49,816 なじみの女は? 324 00:25:49,816 --> 00:25:52,816 さあ そこまでは。 325 00:25:59,226 --> 00:26:04,097 茂蔵には 清右衛門を殺す理由がある。 326 00:26:04,097 --> 00:26:07,567 吉原にも通ってた。 327 00:26:07,567 --> 00:26:10,904 もし その相手が 鶴亀屋の誰かなら…。➡ 328 00:26:10,904 --> 00:26:13,807 茂蔵は お忍びで通ってたというし➡ 329 00:26:13,807 --> 00:26:18,245 女が それは私ですと 言う訳もねえしな。 330 00:26:18,245 --> 00:26:20,545 どうやって確かめる? 331 00:26:23,583 --> 00:26:25,919 私が 文を? 332 00:26:25,919 --> 00:26:28,255 はい。 333 00:26:28,255 --> 00:26:31,925 この文字に 似せて書く事は できますか? 334 00:26:31,925 --> 00:26:35,625 そこそこできると思いますが。 335 00:26:37,197 --> 00:26:39,533 これは 誰の字ですか? 336 00:26:39,533 --> 00:26:45,233 それは まだ…。 何も言わずに やってもらえませんか? 337 00:26:46,873 --> 00:26:48,873 分かりました。 338 00:26:52,212 --> 00:26:59,553 何と書けば よいですか? はい。 では まいります。 339 00:26:59,553 --> 00:27:03,890 「早く あなたに お会いしたい。➡ 340 00:27:03,890 --> 00:27:10,230 会ってはならぬと知りながらも はやる気持ちを抑えかね…」。 341 00:27:10,230 --> 00:27:14,568 フフフフ…。 何が おかしいのですか? 342 00:27:14,568 --> 00:27:17,904 それは 幹殿が考えた文句ですか? 343 00:27:17,904 --> 00:27:22,776 どうでもよいではありませんか。 早く お書き下さい。 はい。 344 00:27:22,776 --> 00:27:26,246 天紅は つけますか? 345 00:27:26,246 --> 00:27:30,584 それは… いいです。 346 00:27:30,584 --> 00:27:33,284 フフフ…。 347 00:27:59,212 --> 00:28:02,549 うまくいったね。 ああ。 348 00:28:02,549 --> 00:28:05,452 正五郎は 誰に殺させたんだい? 349 00:28:05,452 --> 00:28:10,423 名前も知らないゴロツキを金で雇った。 足のつく心配はない。 350 00:28:10,423 --> 00:28:13,423 そっちも 大丈夫だな? 351 00:28:16,563 --> 00:28:21,902 (鞆世)雛菊の天紅から 鳥兜の毒が出た。➡ 352 00:28:21,902 --> 00:28:25,902 それに あんたが書いた正五郎の遺書。 353 00:28:27,574 --> 00:28:30,243 雛菊が やってないと 言い張ったところで➡ 354 00:28:30,243 --> 00:28:33,513 誰も信じやしないさ。 355 00:28:33,513 --> 00:28:37,851 あんたは 望みどおり 店を我が物にできた。 356 00:28:37,851 --> 00:28:41,521 私も 思いを遂げる事ができるわ。 357 00:28:41,521 --> 00:28:43,857 ああ。 358 00:28:43,857 --> 00:28:48,194 それにしても まだ 会うのは まずいだろう。 359 00:28:48,194 --> 00:28:51,097 どうして 急に 「会いたい」なんて文を? 360 00:28:51,097 --> 00:28:54,534 私は 文など出してないよ。 361 00:28:54,534 --> 00:28:57,437 え? 362 00:28:57,437 --> 00:29:00,437 じゃあ この文は? 363 00:29:08,081 --> 00:29:11,084 これは 私が書いたものじゃない! 364 00:29:11,084 --> 00:29:13,219 えっ! 365 00:29:13,219 --> 00:29:15,155 (襖が開く音) 366 00:29:15,155 --> 00:29:17,090 誰だ!? 367 00:29:17,090 --> 00:29:19,893 会所が雇ってる侍よ! えっ? 368 00:29:19,893 --> 00:29:22,228 やはり お前か。 369 00:29:22,228 --> 00:29:25,131 どうして!? 370 00:29:25,131 --> 00:29:27,901 お前の あの言葉だ。 371 00:29:27,901 --> 00:29:31,771 早く 正五郎さんを見つけて下さい。 372 00:29:31,771 --> 00:29:36,176 お前は 「正五郎を 捜して下さい」ではなく➡ 373 00:29:36,176 --> 00:29:38,845 「見つけて下さい」と言った。 374 00:29:38,845 --> 00:29:41,748 あの言葉が引っ掛かっていた。 375 00:29:41,748 --> 00:29:47,448 まるで もう正五郎が死んでる事を 知っているような口ぶりだった。 376 00:29:50,457 --> 00:29:53,193 雛菊は言っていた。 377 00:29:53,193 --> 00:29:59,065 私の無実の証しが 立てられたとしたら➡ 378 00:29:59,065 --> 00:30:06,539 その時には もっと恐ろしい事が 起こるような気がして…。 379 00:30:06,539 --> 00:30:11,878 身内の誰かが やった事だと 感じていたのだろう。 380 00:30:11,878 --> 00:30:17,217 だから 自分の無実が分かれば 身内の誰かが捕まる。 381 00:30:17,217 --> 00:30:19,886 雛菊は こうも言っていた。 382 00:30:19,886 --> 00:30:27,560 別の大切なものを壊してしまう…。 383 00:30:27,560 --> 00:30:33,433 雛菊は 自分の疑いを 晴らしたいのと同じぐらいに➡ 384 00:30:33,433 --> 00:30:35,902 仲間の事を思っていたのだ。 385 00:30:35,902 --> 00:30:43,243 フフッ…。 お人よしだよ 全く。 386 00:30:43,243 --> 00:30:46,146 それに引き換え お前は➡ 387 00:30:46,146 --> 00:30:51,584 自分が身請けされるために 仲間を罪に陥れるとは! 388 00:30:51,584 --> 00:30:54,487 身請け? 389 00:30:54,487 --> 00:30:57,187 何の話だい? 390 00:30:58,925 --> 00:31:03,263 お前は この者に身請けされ➡ 391 00:31:03,263 --> 00:31:06,166 吉原の外に出るために やったのではないのか? 392 00:31:06,166 --> 00:31:15,275 (笑い声) 393 00:31:15,275 --> 00:31:18,611 誰が こんな男と。 394 00:31:18,611 --> 00:31:21,948 鞆世! そりゃ 一体…!? 395 00:31:21,948 --> 00:31:25,285 あんたなんかに 身請けされるために➡ 396 00:31:25,285 --> 00:31:29,155 人殺しなんかするもんか。 397 00:31:29,155 --> 00:31:31,155 では 何故? 398 00:31:33,093 --> 00:31:40,767 私はね この店で お職を張り続けていたかった。 399 00:31:40,767 --> 00:31:43,236 それだけだよ。 400 00:31:43,236 --> 00:31:45,171 どういう事だ? 401 00:31:45,171 --> 00:31:47,907 何 訳の分からぬ事を…。 402 00:31:47,907 --> 00:31:51,244 (鞆世)あんたらに分かるもんかい。 403 00:31:51,244 --> 00:31:56,583 貧乏のせいで売り飛ばされて➡ 404 00:31:56,583 --> 00:32:06,259 どんな苦労して お職の座を手に入れたと思う! 405 00:32:06,259 --> 00:32:10,597 お職になって 初めてさ➡ 406 00:32:10,597 --> 00:32:16,936 人が 私の事を 大事にしてくれたのは。 407 00:32:16,936 --> 00:32:23,610 だけど 雛菊は…➡ 408 00:32:23,610 --> 00:32:28,481 あの子は きれいで 気立てもいい。 409 00:32:28,481 --> 00:32:33,419 じき お職の座を 私から取るに 決まってる。 410 00:32:33,419 --> 00:32:35,555 雛菊は そういう事をするような 女ではない! 411 00:32:35,555 --> 00:32:39,425 あの子がしなくても 周りが ほっとかないのさ! 412 00:32:39,425 --> 00:32:42,896 男は 若くて きれいな子を選ぶ。 413 00:32:42,896 --> 00:32:48,234 店だって いい客がつく方を 前に出したい! 414 00:32:48,234 --> 00:32:57,243 いずれ また 私は 隅っこに追いやられるのさ。 415 00:32:57,243 --> 00:33:05,585 そんな事… 許せない! 416 00:33:05,585 --> 00:33:11,585 許してなるものか! 417 00:33:15,261 --> 00:33:17,931 後から来た養子に➡ 418 00:33:17,931 --> 00:33:22,268 跡取りの座を取られて 冷や飯を食っていた この人が➡ 419 00:33:22,268 --> 00:33:26,139 私の相棒には ふさわしかった。 420 00:33:26,139 --> 00:33:30,944 私が この男を引き入れたんだよ。 421 00:33:30,944 --> 00:33:36,244 俺を利用したのか? この女。 422 00:33:38,551 --> 00:33:42,222 こうなったら 一緒に死んでやる! 423 00:33:42,222 --> 00:33:45,124 あっ! ああ~! うっ! 424 00:33:45,124 --> 00:33:47,124 うっ! 425 00:33:51,898 --> 00:33:57,570 分かったよ。 観念したよ。 426 00:33:57,570 --> 00:34:02,909 番所に行くぞ。 そこで 洗いざらい話せ。 427 00:34:02,909 --> 00:34:05,812 ああ。 428 00:34:05,812 --> 00:34:09,812 その前に 一杯 飲ませておくれ。 429 00:34:29,602 --> 00:34:32,872 鳥兜か。 430 00:34:32,872 --> 00:34:35,872 後生だよ。 431 00:34:37,543 --> 00:34:40,243 死なせておくれ! 432 00:34:42,415 --> 00:34:48,415 自分の口から 全てを話すんだ。 433 00:34:51,557 --> 00:35:18,257 (泣き声) 434 00:35:21,554 --> 00:35:23,923 (ウグイスの鳴き声) 435 00:35:23,923 --> 00:35:28,261 皆様には ご心配をおかけ致しました。 436 00:35:28,261 --> 00:35:33,533 とんだ災難だったな。 もう大丈夫だ。 437 00:35:33,533 --> 00:35:38,404 あんたは やったのが鞆世だと分かってて➡ 438 00:35:38,404 --> 00:35:40,873 かばってたのかい? 439 00:35:40,873 --> 00:35:45,211 最初は しかとは分かりませんでした。 440 00:35:45,211 --> 00:35:52,552 でも 正五郎さんの遺書だという あの文を見た時に…➡ 441 00:35:52,552 --> 00:35:59,225 あの文字 いつだったか 鞆世さんに送られてきた文に。➡ 442 00:35:59,225 --> 00:36:06,225 あの時の文と同じ ひどく癖のある文字でした。 443 00:36:11,571 --> 00:36:15,571 鞆世の男が書いたと 思ったのだな? 444 00:36:18,244 --> 00:36:23,583 鞆世さんは 好きな人と 一緒になりたい一心で➡ 445 00:36:23,583 --> 00:36:27,583 思い余って あんな事をしたんですね。 446 00:36:29,389 --> 00:36:32,392 あんたなんかに 身請けされるために➡ 447 00:36:32,392 --> 00:36:35,862 人殺しなんかするもんか。 448 00:36:35,862 --> 00:36:41,534 (雛菊)鞆世さんは 吉原に来たばかりで 心細い私に➡ 449 00:36:41,534 --> 00:36:45,204 それは親切にしてくれたんです。 450 00:36:45,204 --> 00:36:50,543 稼ぎのない新入りの私に ごはんを食べさせてくれて➡ 451 00:36:50,543 --> 00:36:56,215 遊女としての振る舞い方を 一から仕込んでくれました。 452 00:36:56,215 --> 00:37:01,554 (鞆世)私はね この店で お職を張り続けていたかった。 453 00:37:01,554 --> 00:37:04,554 それだけだよ。 454 00:37:06,225 --> 00:37:13,099 そんな恩義のある人の幸せを 邪魔してしまった。 455 00:37:13,099 --> 00:37:16,235 それが 心残りです。 456 00:37:16,235 --> 00:37:19,935 (長吉) 本当に いい人だな あんたは。 457 00:37:21,574 --> 00:37:23,509 いえ…。 458 00:37:23,509 --> 00:37:26,446 (仙右衛門)一つ 分からねえのは 春日が聞いたという➡ 459 00:37:26,446 --> 00:37:30,249 あんたの声だ。 文使いの正五郎と あんたは…。 460 00:37:30,249 --> 00:37:32,518 正五郎さんと私が? 461 00:37:32,518 --> 00:37:34,854 「あちきには 主さんだけ。➡ 462 00:37:34,854 --> 00:37:37,523 ほかのお人に抱かれるのが つらくてなりんせん」って➡ 463 00:37:37,523 --> 00:37:39,459 正五郎に言ったんだろ? 464 00:37:39,459 --> 00:37:41,459 え? 465 00:37:43,396 --> 00:37:50,103 あの時…。 あっ あれは 文の文句ですよ。 466 00:37:50,103 --> 00:37:52,071 え? 467 00:37:52,071 --> 00:37:55,074 文に どんな事を書けば 気持ちが通じるか➡ 468 00:37:55,074 --> 00:37:57,543 正五郎さんに 相談していたんですよ。 469 00:37:57,543 --> 00:38:00,213 あ~ 何だ。 そうだったのかい。 470 00:38:00,213 --> 00:38:03,549 その文の相手は? 471 00:38:03,549 --> 00:38:08,221 大工の常太郎さんって人です。 え? 472 00:38:08,221 --> 00:38:11,557 今は 上方に修業に行ってるんです。 473 00:38:11,557 --> 00:38:15,895 年季が明けたら 一緒になろうって 約束してます。 474 00:38:15,895 --> 00:38:18,564 何年かかるか知れませんが➡ 475 00:38:18,564 --> 00:38:23,436 所帯を持つために 必死に働いて お金をためてくれてるんです。 476 00:38:23,436 --> 00:38:26,439 そら よかったな。 477 00:38:26,439 --> 00:38:29,208 幸せになんなよ。 478 00:38:29,208 --> 00:38:31,908 ありがとうございます。 479 00:38:33,513 --> 00:38:36,813 でも…。 でも? 480 00:38:38,384 --> 00:38:46,859 こたびのような事があって 私だけが幸せになってよいのか…。 481 00:38:46,859 --> 00:38:49,529 よい! 482 00:38:49,529 --> 00:38:52,865 幸せになってよい。 483 00:38:52,865 --> 00:38:57,737 人が 幸せになっては いけないなどという事は➡ 484 00:38:57,737 --> 00:39:00,737 あるはずがない! 485 00:39:04,210 --> 00:39:06,546 はい。 486 00:39:06,546 --> 00:39:21,093 ♬~ 487 00:39:21,093 --> 00:39:27,567 鞆世さんは お職の座を脅かす 雛菊さんが邪魔で あんな事を…。 488 00:39:27,567 --> 00:39:30,469 その事を 雛菊さんには? 489 00:39:30,469 --> 00:39:35,374 話せませんでした。 その方がよいかと。 490 00:39:35,374 --> 00:39:38,844 そうですね。 491 00:39:38,844 --> 00:39:44,517 しかし いまだに 鞆世の気持ちが よく分かりません。 492 00:39:44,517 --> 00:39:48,854 薄墨太夫が 言っていたじゃありませんか。 493 00:39:48,854 --> 00:39:53,726 何を大切にするか 何を守ろうとするか➡ 494 00:39:53,726 --> 00:39:58,531 その人の心の内は 誰にも分からないと。 495 00:39:58,531 --> 00:40:03,831 お金なのか 名誉なのか 力なのか。 496 00:40:07,206 --> 00:40:13,206 薄墨太夫は 何を 守ろうとしているのでしょう? 497 00:40:14,880 --> 00:40:17,783 あね様は いかがですか? 498 00:40:17,783 --> 00:40:25,224 私ですか? 私の大切なものは たった一つです。 499 00:40:25,224 --> 00:40:27,159 たった一つ? 500 00:40:27,159 --> 00:40:35,868 幹殿と一緒に逃げる事を選んで やっとつかんだ この暮らし。 501 00:40:35,868 --> 00:40:41,568 あなたと こうして一緒に お食事ができる事。 502 00:40:46,245 --> 00:40:48,545 私も 同じく。 503 00:40:50,116 --> 00:40:52,416 フフフ…。 504 00:40:56,889 --> 00:40:59,889 お代わり。 はい。 505 00:41:23,616 --> 00:41:26,519 ♬~ 506 00:41:26,519 --> 00:41:33,225 <薄墨太夫に 危機が近づいていた事を➡ 507 00:41:33,225 --> 00:41:38,225 私たちは まだ 知りませんでした> 508 00:41:42,568 --> 00:41:44,503 若い侍…。 509 00:41:44,503 --> 00:41:48,240 お聞きになったのですね 私が吉原に来た訳。 510 00:41:48,240 --> 00:41:51,911 敵は 薄墨太夫の過去と関わりのある➡ 511 00:41:51,911 --> 00:41:54,211 人間でございましょうな。 512 00:41:56,248 --> 00:41:58,184 お久しゅうございます。 513 00:41:58,184 --> 00:42:00,119 薄墨太夫が危ない! 514 00:42:00,119 --> 00:42:02,119 必ず あなたを お守りします。 515 00:42:04,123 --> 00:42:15,634 ♬「君のそばにいる」 516 00:42:15,634 --> 00:42:26,779 ♬「君を守って行く」 517 00:42:26,779 --> 00:42:38,391 ♬「悲しみを 消してあげることは 出来ないけど」 518 00:42:38,391 --> 00:42:49,101 ♬「ここからは ふたり 同じ道を行く」 519 00:42:49,101 --> 00:43:00,579 ♬「せめて ひととき」 520 00:43:00,579 --> 00:43:11,757 ♬「風よ やさしく」 521 00:43:11,757 --> 00:43:25,257 ♬「二人 包んで」