1 00:00:05,105 --> 00:00:07,407 <お染と弥六。➡ 2 00:00:07,407 --> 00:00:11,111 2人が許されぬ恋に 命を落としてから 百年。➡ 3 00:00:11,111 --> 00:00:14,414 幽霊となったお染は 幕末の江戸で➡ 4 00:00:14,414 --> 00:00:17,117 ついに 弥六を捜し当てた。➡ 5 00:00:17,117 --> 00:00:20,621 あの世の女と この世の男。➡ 6 00:00:20,621 --> 00:00:23,523 2人が始めた不思議な商売とは…> 7 00:00:23,523 --> 00:00:26,126 (弥六)「ゆうれい貸します」。 (お染)幽霊…? 8 00:00:26,126 --> 00:00:29,429 まともじゃ 太刀打ちできねえが どうしても 恨みを晴らしてえ奴➡ 9 00:00:29,429 --> 00:00:32,966 脅してえ奴 そういう人間を 幽霊で懲らしめてやるんだ。 10 00:00:32,966 --> 00:00:36,803 <今日も 誰かが 幽霊を借りにやって来る> 11 00:00:36,803 --> 00:00:51,318 ♬~ (テーマ音楽) 12 00:01:02,262 --> 00:01:05,165 ⚟(雷鳴) 13 00:01:05,165 --> 00:01:11,605 (雨音) 14 00:01:11,605 --> 00:01:30,290 ♬~ 15 00:01:30,290 --> 00:01:36,430 うれしい。 やっと 決心してくれたのね。 16 00:01:36,430 --> 00:01:39,299 向こうの世界に 一緒に…。 17 00:01:39,299 --> 00:01:51,311 ♬~ 18 00:01:51,311 --> 00:01:53,614 ああ…。 ああ…。 19 00:02:02,923 --> 00:02:04,925 何なんだ…。 20 00:02:19,272 --> 00:02:22,175 (念仏を唱える声) 21 00:02:22,175 --> 00:02:26,613 (鈴の音) 22 00:02:26,613 --> 00:02:30,283 <この世にいられる期限は あと僅か。➡ 23 00:02:30,283 --> 00:02:34,121 幽霊たちの姿は めっきり はかなくなっていた…> 24 00:02:34,121 --> 00:02:37,157 (お絹)あの桶野郎 念仏 唱えやがった。 25 00:02:37,157 --> 00:02:41,428 (おみつ)でも 弥六さんの念仏で お二人とも成仏できるのでは? 26 00:02:41,428 --> 00:02:44,297 (お絹)また… 痛っ…。 27 00:02:44,297 --> 00:02:47,134 (おみつ)あと10日…。 28 00:02:47,134 --> 00:02:51,438 10日で 弥六さんの心をつかまないと 私たち…。 29 00:02:51,438 --> 00:02:53,373 (おみつ)お二人とも 地獄に落ちる。 30 00:02:53,373 --> 00:02:55,308 冗談じゃないよ! 31 00:02:55,308 --> 00:02:58,311 ここで 地獄へなんぞ落ちてたまるもんかね! 32 00:02:58,311 --> 00:03:01,081 お染姐さんと 弥六さんが通じ合ったら➡ 33 00:03:01,081 --> 00:03:04,584 その時は お別れの時。 34 00:03:04,584 --> 00:03:11,091 成仏ってな そういうもんなんだよ。 自分だけ つらい顔するんじゃないよ。 35 00:03:11,091 --> 00:03:15,929 私だってね 食べたこともない おいしいものが➡ 36 00:03:15,929 --> 00:03:21,401 まだまだ あると思うとね… あっ… 痛い… ああ 痛い…。 37 00:03:21,401 --> 00:03:24,104 おっ母さん…! みつ お水を。 お水? 38 00:03:24,104 --> 00:03:27,607 朝一番に 井戸でくんだ水。 あれが 私たちの気つけ薬なんだ。 39 00:03:27,607 --> 00:03:29,943 弥六さんとこから お願い。 心得ました。 40 00:03:29,943 --> 00:03:32,245 (お絹)ああ~ 痛い… 痛いよ…。 おっ母さん。 41 00:03:39,419 --> 00:03:43,623 ⚟市 どうした 大丈夫か? 市 しっかりしろ! 42 00:03:43,623 --> 00:03:47,294 (惣右衛門)いかがなされた? あ…。 あ~ いや…。 43 00:03:47,294 --> 00:03:51,631 こいつが ちょいと熱を…。 熱を…。 44 00:03:51,631 --> 00:03:53,567 はっ…。 45 00:03:53,567 --> 00:03:56,303 明日 わしの知り合いの医者を よこそう。 46 00:03:56,303 --> 00:04:02,509 そちら様が? いや また 出直して参る。 では ごめん。 47 00:04:11,251 --> 00:04:13,253 惣右衛門様…。 48 00:04:21,762 --> 00:04:24,264 みつは あのまま どこ行っちまったんだい。 49 00:04:24,264 --> 00:04:27,100 水も運んでこないで。 50 00:04:27,100 --> 00:04:32,405 おかげで 一晩中 寝込んじまったじゃないか。 51 00:04:32,405 --> 00:04:35,108 (おかね)ねえねえ ねえねえ… いっちゃん 病気なんだって? 52 00:04:35,108 --> 00:04:37,110 (お勘)今 お医者が診てる。 53 00:04:42,783 --> 00:04:45,819 何してたの? 一体。 お染姐さん。 54 00:04:45,819 --> 00:04:49,956 いっちゃん どうしたんだい? 55 00:04:49,956 --> 00:04:52,859 どうですかね? 先生。 (法庵)う~ん…。 56 00:04:52,859 --> 00:04:59,432 熱は薬で下がりますね…。 う~ん…。風邪ですかね? 57 00:04:59,432 --> 00:05:04,237 …のようで ではない。 じゃあ 麻疹みたいな? 58 00:05:04,237 --> 00:05:07,240 …のようにも見える。 が 違う。 59 00:05:07,240 --> 00:05:09,576 じゃ 一体 何なんですかい? 先生…。 60 00:05:09,576 --> 00:05:14,080 これは 普通の病ではなさそうじゃ…。 61 00:05:14,080 --> 00:05:18,952 …と言いますと? 抜けておるのだ ごっそりとな。 62 00:05:18,952 --> 00:05:21,588 …わしの頭ではない! 63 00:05:21,588 --> 00:05:25,392 この子の生気が。 命の元が! 64 00:05:25,392 --> 00:05:27,327 命の元…!? 65 00:05:27,327 --> 00:05:33,333 まるで 何やら 奪い取られているようじゃ…。 66 00:05:36,937 --> 00:05:41,608 先生 どうも ありがとうございました。 67 00:05:41,608 --> 00:05:44,277 交代だ。 もう帰っていいよ。 えっ? 68 00:05:44,277 --> 00:05:46,780 いっちゃんが心配で いてくれたんだろう? 69 00:05:46,780 --> 00:05:50,116 います。 私も…。 ⚟ちょっと ちょっと… 弥六さん➡ 70 00:05:50,116 --> 00:05:53,153 いっちゃん 大丈夫なのかい? おうよ。 見舞いに来てくれたのかい? 71 00:05:53,153 --> 00:05:55,989 そうじゃなくてさ…。 幽霊のせいだよ。違う 違う! 72 00:05:55,989 --> 00:05:59,292 違わないよ! この へんてこな… 看板のせいだよ これ! 73 00:05:59,292 --> 00:06:02,195 (お好)祟られてんだ…。 取り憑いてんだよ。 74 00:06:02,195 --> 00:06:05,565 そりゃ 憑いてるとも。 見えるか? この辺だ… この辺に憑いてるんだよ。 75 00:06:05,565 --> 00:06:07,901 いいかげんなことおよしよ もう あんた! 何を言ってやんだよ。 76 00:06:07,901 --> 00:06:10,937 俺は このとおり ピンピンしてるしな 市も すぐ治る。 さあ 戻った 戻った…。 77 00:06:10,937 --> 00:06:13,073 心配してんだからね 私は。 いや いいんだって…! 78 00:06:13,073 --> 00:06:15,008 余計な心配して… いいから➡ 79 00:06:15,008 --> 00:06:18,245 お前ら戻って 自分のこと心配してろ 自分のことを ほら。 80 00:06:18,245 --> 00:06:24,050 ほら もう 行けよ ほら! 余計なことだよ! ほら! 81 00:06:24,050 --> 00:06:27,254 すいません お待たせしちまって。 82 00:06:27,254 --> 00:06:31,925 その上 医者の先生まで お世話いただき どうも…。 83 00:06:31,925 --> 00:06:35,762 いやいや。 子を思う気持ちは 誰しも同じ。 84 00:06:35,762 --> 00:06:39,599 申し遅れたが 某 刈谷惣右衛門と申す。 85 00:06:39,599 --> 00:06:42,402 弥六でございます。 86 00:06:42,402 --> 00:06:47,240 このような時に まことに言いにくいのだが…。 87 00:06:47,240 --> 00:06:52,946 心得てます。 あなた様は これで おいでになったんでございましょう? 88 00:06:52,946 --> 00:06:58,118 ああ…。 幽霊殿を 貸していただきたい。 89 00:06:58,118 --> 00:07:00,053 お任せください。 90 00:07:00,053 --> 00:07:03,356 …で どこの どなたを 脅したいんで? 91 00:07:03,356 --> 00:07:05,892 某の 一人息子を。 92 00:07:05,892 --> 00:07:09,229 息子の名は 刈谷伊織。 93 00:07:09,229 --> 00:07:14,734 刈谷家は 小禄ながら 代々 旗本の家柄。 94 00:07:14,734 --> 00:07:18,605 伊織も 出世を見込まれていたのだが➡ 95 00:07:18,605 --> 00:07:21,508 ところが…。 96 00:07:21,508 --> 00:07:27,080  回想 (小田)この度の拙者の過失を 自分が かぶると申し出た者がおる。 97 00:07:27,080 --> 00:07:30,383 いや… 見上げた心根と感服いたした。 98 00:07:30,383 --> 00:07:33,253 (伊織)では 身代わりを? 99 00:07:33,253 --> 00:07:37,924 わしが お咎めを受け それで済むのであれば 事はたやすい。 100 00:07:37,924 --> 00:07:41,261 だが そうなれば 奉行の堀田様にも 累が及ぶであろう。 101 00:07:41,261 --> 00:07:46,399 それだけは 何としても避けねばならぬ。 102 00:07:46,399 --> 00:07:51,271 しかし 身代わりを立てれば お役は 一時 罷免しても➡ 103 00:07:51,271 --> 00:07:55,608 後々 過分の出世を約束せねばなるまい。 104 00:07:55,608 --> 00:07:59,946 無論 それは やぶさかではないのだが➡ 105 00:07:59,946 --> 00:08:04,951 さて どうしたものかのう…。 106 00:08:06,553 --> 00:08:12,058 (惣右衛門)結局 ほとぼりが冷めたらば 呼び戻すと言い含められ➡ 107 00:08:12,058 --> 00:08:16,229 その身代わりを 息子が買って出たのだが…。 108 00:08:16,229 --> 00:08:18,898 音沙汰は なし…? 109 00:08:18,898 --> 00:08:22,369 (惣右衛門) お役復帰もかなわず そのうち 息子は➡ 110 00:08:22,369 --> 00:08:25,572 怪しげな浪人どもと つきあうようになった。➡ 111 00:08:25,572 --> 00:08:31,444 最近では その連中と よからぬ所業に及んでいる様子だ。 112 00:08:31,444 --> 00:08:38,752 わしも 最近 めっきり心の臓が弱くなっての。 113 00:08:38,752 --> 00:08:45,392 命尽きる前に 元の まっとうな息子に戻してやりたい。 114 00:08:45,392 --> 00:08:49,596 そこで 死んだ妻を装って➡ 115 00:08:49,596 --> 00:08:55,468 息子を戒めてほしいのだ。 頼む…。 116 00:08:55,468 --> 00:08:57,937 私に お任せくださいませ。 117 00:08:57,937 --> 00:09:00,540 え? お前に…。 あっ… 痛…。 118 00:09:00,540 --> 00:09:03,576 みつの気持ちは うれしいけど これは 私にやらせて。 119 00:09:03,576 --> 00:09:06,045 お染姐さん…。 稼ぎたいんだ。 いろいろ。 120 00:09:06,045 --> 00:09:08,081 私だって いろいろ…。 121 00:09:08,081 --> 00:09:11,918 よし。 今度は みつでいこう。 はい。 122 00:09:11,918 --> 00:09:16,556 なぜ!? 言ったろ 稼ぎたいって。 精つけなきゃいけないんだよ。 123 00:09:16,556 --> 00:09:19,225 子供の病だからって 侮ってたら 大変なことに。 124 00:09:19,225 --> 00:09:23,897 ははん。 市太郎の薬代 稼ぎたいんだね。 125 00:09:23,897 --> 00:09:29,702 あの人にとって 市太郎は宝だから だから 少しでも役に立ちたいんだ。 126 00:09:29,702 --> 00:09:31,638 おっ母さん…! 127 00:09:31,638 --> 00:09:36,242 じゃあ 2人で やってみるか! お手並み拝見と…。 128 00:09:36,242 --> 00:09:40,747 フフ…。 あっ… 痛~。 129 00:09:40,747 --> 00:09:44,584 いたのか。 どうしたんだよ。 130 00:09:44,584 --> 00:09:46,920 こっち来りゃ いいじゃないか。 131 00:09:46,920 --> 00:09:50,256 うん。 いっちゃんの具合 どう? 132 00:09:50,256 --> 00:09:54,093 ハハ… 何だよ…。 ひょっとして 気に病んでるのか? 133 00:09:54,093 --> 00:09:56,396 長屋連中の言ってたこと。 134 00:09:56,396 --> 00:09:58,331 そんなんじゃないけど。 135 00:09:58,331 --> 00:10:03,603 安心しな。 お前と市の病とは 何の関わりもねえよ。 136 00:10:03,603 --> 00:10:10,376 子供ってのはな しょっちゅう 訳のわかんない熱 出すんだよ。 137 00:10:10,376 --> 00:10:13,613 じゃあ ちょっと顔だけ。 138 00:10:13,613 --> 00:10:20,386 ♬~ 139 00:10:20,386 --> 00:10:25,391 つらいかい? こんなん なっちまって…。 140 00:10:27,293 --> 00:10:30,797 おお 市。 目が覚めたか? 141 00:10:30,797 --> 00:10:33,833 (市太郎)気持ちいい。 染さんの手…。 142 00:10:33,833 --> 00:10:37,537 私の? ひんやりとして…。 143 00:10:42,308 --> 00:10:44,811 早く よくなっとくれよ。 144 00:10:44,811 --> 00:10:46,746 言い返してくれる相手がいないと➡ 145 00:10:46,746 --> 00:10:48,982 さみしいじゃないか…。 146 00:10:48,982 --> 00:10:53,153 よし。 今 粥炊いてやる。 染。 お前も食べていけ。 147 00:10:53,153 --> 00:10:57,023 3人で 一緒に食べよう。 あいにく 今夜は 仕事なもんで。 148 00:10:57,023 --> 00:11:00,260 仕事? 刈谷様のか。 149 00:11:00,260 --> 00:11:02,929 私が やることになってね。 150 00:11:02,929 --> 00:11:05,765 いっちゃんの薬代 ばっちり稼いでくっからね。 151 00:11:05,765 --> 00:11:08,601 よっ お染姐さん しっかり頼むぜ! 152 00:11:08,601 --> 00:11:11,271 あいよ! 153 00:11:11,271 --> 00:11:17,143 そうだ。 市の病が治ったら たまには 遠出してみねえか。 154 00:11:17,143 --> 00:11:20,613 えっ? お前さんだってよ➡ 155 00:11:20,613 --> 00:11:22,949 こんな狭い長屋にばかり 取り憑いてたんじゃ➡ 156 00:11:22,949 --> 00:11:27,120 くさくさすっだろうよ。 取り憑くは ないだろう。 157 00:11:27,120 --> 00:11:33,426 ああ すまねえ。 百年たった江戸を あちこち見物するがいいぜ。 158 00:11:33,426 --> 00:11:35,962 私は ここが好きなんだよ。 159 00:11:35,962 --> 00:11:38,865 どっか 騒々しい こういう暮らしの匂いがさ。 160 00:11:38,865 --> 00:11:52,512 ♬~ 161 00:11:52,512 --> 00:11:58,217 せめて もう少し この世にいられたら…。 162 00:11:58,217 --> 00:12:17,403 ♬~ 163 00:12:17,403 --> 00:12:22,108 あなた…。 伊織様。 164 00:12:26,112 --> 00:12:30,617 起きてくださいませ…。 あなた。 165 00:12:30,617 --> 00:12:34,120 うん? 何奴だ! 166 00:12:34,120 --> 00:12:39,792 ⚟しまです。 あなたの妻です。 167 00:12:39,792 --> 00:12:42,295 妻…。 168 00:12:42,295 --> 00:12:44,230 はい。 169 00:12:44,230 --> 00:12:46,966 何をしに現れた? 170 00:12:46,966 --> 00:12:52,772 お役復帰が かなわず ふさぐ気持ちも わかります。 171 00:12:52,772 --> 00:12:57,310 ですが どうぞ 元のあなたに 戻ってくださいまし。 172 00:12:57,310 --> 00:13:01,180 父上様も心配しておられます。 173 00:13:01,180 --> 00:13:04,117 フフフフ…。 174 00:13:04,117 --> 00:13:06,119 ハハハ…。 175 00:13:06,119 --> 00:13:13,593 父上が心配しているだと? 元の私に戻れだと? ハハハ…。 176 00:13:13,593 --> 00:13:19,465 出ていけ。 お前に 意見などされる覚えはないわ! 177 00:13:19,465 --> 00:13:22,468 失せろ! 怪かし! 178 00:13:28,408 --> 00:13:30,943 伊織様 恥を知りなさい。 179 00:13:30,943 --> 00:13:34,414 悪いお仲間とは どうぞ 手を切ってくださいませ。 180 00:13:34,414 --> 00:13:38,284 精進すれば お役復帰も また必ず…。 181 00:13:38,284 --> 00:13:42,121 おのれも 怪かしの片割れか! 182 00:13:42,121 --> 00:13:45,792 消え失せろ! ⚟(戸が開く音) 183 00:13:45,792 --> 00:13:50,430 父上…!? 何のまねです? これは。 184 00:13:50,430 --> 00:13:55,735 いや わしには 何も見えぬが。 185 00:13:57,970 --> 00:13:59,906 怪かしの手を借りて➡ 186 00:13:59,906 --> 00:14:05,778 お前を諌め その行く末を見届けようとの…。 187 00:14:05,778 --> 00:14:10,983 伊織。 わかってくれ。 父の思いをな…。 188 00:14:29,902 --> 00:14:35,708 みつでございます。 橋元源左の娘 みつでございます。 189 00:14:35,708 --> 00:14:38,611 みつ…!? みつ殿? 190 00:14:38,611 --> 00:14:40,546 お目にかかれて うれしゅうございます。 191 00:14:40,546 --> 00:14:43,416 惣右衛門様! わしの名を? 192 00:14:43,416 --> 00:14:46,953 忘れるはずありません。 50年たった今でも…。 193 00:14:46,953 --> 00:14:48,888 50年…? 194 00:14:48,888 --> 00:14:52,759 あの夜 ずっと お待ち申しておりました。 195 00:14:52,759 --> 00:14:57,430 父は 御家人。 惣右衛門様は お旗本。 196 00:14:57,430 --> 00:15:02,268 「家を捨て 共に逃げよう」と 打ち明けてくださった時は➡ 197 00:15:02,268 --> 00:15:06,072 天にも昇る心地でございました。 198 00:15:06,072 --> 00:15:11,878 それが かなわず このような身になり果てた今も➡ 199 00:15:11,878 --> 00:15:16,249 その気持ちに変わりはございません。 200 00:15:16,249 --> 00:15:21,087 弥六さんからの頼みで 伊織様を 諌めに参りました。 201 00:15:21,087 --> 00:15:25,758 では そなた… 幽霊か? 202 00:15:25,758 --> 00:15:32,632 はい。 ですが 力及ばず 申し訳ございません。 203 00:15:32,632 --> 00:15:43,276 ただ このような ご縁で 惣右衛門様に 再び お目にかかれて➡ 204 00:15:43,276 --> 00:15:49,782 こういう巡り合わせも あるものだなと…。 205 00:15:49,782 --> 00:15:53,286 お人違いでは ござらぬかな。 206 00:15:54,954 --> 00:15:59,292 そなたに 見覚えはござらぬ。 207 00:15:59,292 --> 00:16:07,900 ♬~ 208 00:16:07,900 --> 00:16:10,603 覚えていない…。 209 00:16:53,779 --> 00:16:57,950 (おみつ)逃げてと すがったのは 私の方でした。 210 00:16:57,950 --> 00:17:01,554 50年前…? 211 00:17:01,554 --> 00:17:07,727 応えるように 「家を捨てよう」と あの人が言い➡ 212 00:17:07,727 --> 00:17:15,902 それから 私は 毎晩 待ちました。 あの人が来るのを…。 213 00:17:15,902 --> 00:17:20,606 けれど… とうとう来なかった。 214 00:17:22,675 --> 00:17:29,081 だいぶ たって あの人が 同じ旗本のお嬢様と➡ 215 00:17:29,081 --> 00:17:33,953 祝言を挙げたという夜➡ 216 00:17:33,953 --> 00:17:36,389 私…。 217 00:17:36,389 --> 00:17:42,929 ♬~ 218 00:17:42,929 --> 00:17:47,266 生きてさえいれば…。 どんなに つらくても➡ 219 00:17:47,266 --> 00:17:49,602 生きてさえいれば…。 220 00:17:49,602 --> 00:17:54,106 あの人に 何かのしるしを 残せたかもしれないのに…。 221 00:17:55,775 --> 00:17:58,811 戻ろう。 222 00:17:58,811 --> 00:18:01,047 覚えてないなんて。 223 00:18:01,047 --> 00:18:04,917 惚れ合ったことを 覚えてないなんて許せない そんなの…! 224 00:18:04,917 --> 00:18:06,919 お染姐さん…。 225 00:18:06,919 --> 00:18:13,059 あんたが 命がけで惚れたってこと… 思い出させるんだよ。 226 00:18:13,059 --> 00:18:16,095 そうでなきゃ 惚れた甲斐ってもんがないじゃないか。 227 00:18:16,095 --> 00:18:18,731 はい…。 228 00:18:18,731 --> 00:18:22,568 戻ろう。 まだ間に合う。 229 00:18:22,568 --> 00:18:27,073 ♬~ 230 00:18:27,073 --> 00:18:29,575 姐さん…!? 231 00:18:29,575 --> 00:18:33,279 何でもない…。 お染姐さん! 232 00:18:35,247 --> 00:18:40,119 染 しっかりおしよ…。 染。 233 00:18:40,119 --> 00:18:45,758 染が こんなことになってるっていうのに 弥六の奴 何をしてんだろ! 234 00:18:45,758 --> 00:18:49,562 あの男は 染が大切じゃないのかい! 235 00:18:52,098 --> 00:18:54,767 みつ…。 染…。 236 00:18:54,767 --> 00:19:02,274 しっかりやるんだよ…。 言ったとおり あんたの力で…。 237 00:19:14,120 --> 00:19:19,925 (風の音) 238 00:19:19,925 --> 00:19:33,472 ♬~ 239 00:19:33,472 --> 00:19:36,442 (おみつ)お約束を 忘れてはなりませぬ。➡ 240 00:19:36,442 --> 00:19:44,116 刈谷伊織様の お役復帰のお約束を…。 さもないと…。 241 00:19:44,116 --> 00:19:54,760 ♬~ 242 00:19:54,760 --> 00:19:57,963 ああ~! 243 00:20:08,274 --> 00:20:14,413 ご心配をおかけして。 (平作)どうも ざわざわしてるようだな。 244 00:20:14,413 --> 00:20:19,618 お前の出してる あの看板が 長屋の連中には どうも鬼門らしい。 245 00:20:19,618 --> 00:20:23,289 市の病も そのせいだって言ってる者もいる。 246 00:20:23,289 --> 00:20:27,126 そのうち お前も 取り憑かれて➡ 247 00:20:27,126 --> 00:20:30,429 あの世に 連れ去られるんじゃねえかって。 んな馬鹿な。 248 00:20:30,429 --> 00:20:33,799 いや お前が そう言われてるうちはいいよ。 249 00:20:33,799 --> 00:20:36,635 だけど お前 長屋には 子供が たくさんいるんだぜ。 250 00:20:36,635 --> 00:20:38,971 怪我でもしたらどうするんだい? 251 00:20:38,971 --> 00:20:42,308 はやり病にかかることだって あるだろう。 252 00:20:42,308 --> 00:20:46,812 じゃあ 大家さん 看板を下ろせと? 253 00:20:46,812 --> 00:20:52,151 お前は 職人だろ。 桶を作ってりゃ いいんだよ! 254 00:20:52,151 --> 00:20:54,653 何だって こんな煩わしい看板が 必要なんだい!? 255 00:20:54,653 --> 00:20:57,556 確かに 俺は職人だ。 けどよ 大家さん➡ 256 00:20:57,556 --> 00:21:00,159 何か こう 時たま カ~ッとよ…➡ 257 00:21:00,159 --> 00:21:02,928 カ~ッと とんでもねえことをしたくなる 時はねえですかい? 258 00:21:02,928 --> 00:21:06,265 それまでの てめえの器に合わねえ 何か 自分らしくねえことを。 259 00:21:06,265 --> 00:21:10,136 それが 幽霊か? うまく言えねえけど…。 260 00:21:10,136 --> 00:21:13,773 市を 奉公先から引き取ったの お前だろ。 261 00:21:13,773 --> 00:21:20,279 お前が あの子を 一人前にする務めが あるんじゃねえのか? 262 00:21:20,279 --> 00:21:23,983 一日だけ考えさしてください。 263 00:21:35,628 --> 00:21:41,133 どうしたら…。 俺は どうしたらいいんだ…。 264 00:22:07,259 --> 00:22:09,195 刈谷様…。 265 00:22:09,195 --> 00:22:13,399 長屋の人が教えてくれての。 今日は ここにいると。 266 00:22:13,399 --> 00:22:17,937 ガキの面倒は見るから 仕事に行ってこいって言われやしてね。 267 00:22:17,937 --> 00:22:26,745 (雨音) 268 00:22:29,648 --> 00:22:35,354 今日は 弥六殿に詫びに参った。 あっしに? 269 00:22:35,354 --> 00:22:41,293 さよう。 いろいろ考えて 息子の迷いは➡ 270 00:22:41,293 --> 00:22:45,431 やはり わしが払ってやらねばと 思うようになった。 271 00:22:45,431 --> 00:22:54,440 それというのも ゆうべ… 昔 縁あった娘と出会いましてな➡ 272 00:22:54,440 --> 00:22:58,143 わしは 「見覚えがない」と言った。 273 00:22:58,143 --> 00:23:00,579 それは どういう訳で? 274 00:23:00,579 --> 00:23:08,320 昔 わしは その娘を裏切った。 出世のためだ。 275 00:23:08,320 --> 00:23:15,127 そのために 娘を 二度 傷つけてしまった。 276 00:23:15,127 --> 00:23:19,598 娘を捨てて 手に入れたものは 人から見れば➡ 277 00:23:19,598 --> 00:23:26,772 全く つまらぬものかもしれんが 旗本の家柄というものは➡ 278 00:23:26,772 --> 00:23:31,277 わしにとっては 掛けがえのないものだった。 279 00:23:33,412 --> 00:23:38,284 それでのう 息子の いらだちは➡ 280 00:23:38,284 --> 00:23:43,088 人の手を借りて直すものではないと。 281 00:23:43,088 --> 00:23:48,994 そう思えたのも 弥六殿の幽霊のおかげだ。 282 00:23:48,994 --> 00:23:54,300 そう おっしゃられても…。 改めて 礼を申す。 283 00:24:03,075 --> 00:24:41,613 ♬~ 284 00:24:41,613 --> 00:24:44,416 伊助! 開けてくれ。 285 00:24:44,416 --> 00:24:46,352 ⚟一体 これは どういうことだよ!? (たたく音) 286 00:24:46,352 --> 00:24:48,354 ⚟お勘! 287 00:24:50,956 --> 00:24:53,659 おかね! 教えてくれよ! 288 00:24:55,828 --> 00:24:57,830 長助! 289 00:24:59,631 --> 00:25:02,534 おくま…! 290 00:25:02,534 --> 00:25:04,837 寅之助の旦那! 291 00:25:11,910 --> 00:25:14,580 (伊織)俺が? (大野)そうだ。➡ 292 00:25:14,580 --> 00:25:19,084 ある人が腕の立つ侍を探している。 293 00:25:19,084 --> 00:25:22,921 邪魔な男を 一人 片づけたいそうだ。 294 00:25:22,921 --> 00:25:26,592 (国枝)腕なら お前が一番立つ。 295 00:25:26,592 --> 00:25:29,495 人斬りをか…。 296 00:25:29,495 --> 00:25:34,800 (大野)遊ぶ金が たんまり入るぞ。 やってくれるな? 297 00:25:40,272 --> 00:25:42,775 おい 待て! 待たぬか 刈谷! 298 00:26:08,734 --> 00:26:12,237 ついてくるな! そうは いかないよ。 299 00:26:12,237 --> 00:26:14,573 こっちには こっちの事情があってね。 300 00:26:14,573 --> 00:26:16,909 まっとうな 元のあんたに 戻ってもらわないと。 301 00:26:16,909 --> 00:26:19,578 まっとうだと? 何を 今更。 302 00:26:19,578 --> 00:26:21,613 俺は すき好んで こうなったわけではない! 303 00:26:21,613 --> 00:26:25,451 どうだか。 何…。 304 00:26:25,451 --> 00:26:28,086 小田様が 俺を欺いた。 305 00:26:28,086 --> 00:26:31,590 俺は あやつの口車に乗せられて 裏切られたんだ。 306 00:26:31,590 --> 00:26:36,261 「乗せられた」「裏切られた」…。 そうだ。あんたも 侍の端くれなら➡ 307 00:26:36,261 --> 00:26:40,566 自分で自分の始末つけるぐらいの 気概がなくて どうすんのさ? 308 00:26:45,771 --> 00:26:47,706 ここが あんたに身代わりさせた➡ 309 00:26:47,706 --> 00:26:50,209 上役のお屋敷だろ? 310 00:26:53,645 --> 00:26:55,848 逃げちゃ駄目だ。 311 00:26:59,284 --> 00:27:01,220 本当に お役に戻りたいなら➡ 312 00:27:01,220 --> 00:27:05,224 やらなきゃいけないことが あるんじゃないのかい? 313 00:27:05,224 --> 00:27:07,526 ⚟どけ どけい! 314 00:27:09,361 --> 00:27:11,430 無礼な 何者だ! 315 00:27:11,430 --> 00:27:17,903 某 小田様の配下にあった 刈谷伊織の父 惣右衛門にござります。 316 00:27:17,903 --> 00:27:22,241 小田様に 是非 お願いいたしたき儀があって参りました。 317 00:27:22,241 --> 00:27:25,244 ええい どかぬか! 道を開けろ! 318 00:27:25,244 --> 00:27:30,749 先年 伊織には 失礼の段あって 小田様の ご勘気を受け➡ 319 00:27:30,749 --> 00:27:37,089 お役罷免になった由。 しかしながら その日より 今日まで➡ 320 00:27:37,089 --> 00:27:43,595 伊織の忠誠心は いささかも変わらず 精進をつとめておりまする。 321 00:27:43,595 --> 00:27:47,266 是非とも 復帰のご温情を賜りたく➡ 322 00:27:47,266 --> 00:27:51,937 何とぞ 今ひとたび せがれ 伊織のお役復帰を➡ 323 00:27:51,937 --> 00:27:54,940 何とぞ 何とぞ…! 324 00:27:58,810 --> 00:28:02,214 小田様。 刈谷伊織でござる。 325 00:28:02,214 --> 00:28:06,718 お役への復帰 願いとう存じます! 326 00:28:06,718 --> 00:28:09,354 ええい これ以上 妨げすると➡ 327 00:28:09,354 --> 00:28:11,290 ただでは すまんぞ! 328 00:28:11,290 --> 00:28:16,061 ⚟(小田)待て。 しまだ。 329 00:28:16,061 --> 00:28:18,263 はっ。 330 00:28:29,074 --> 00:28:33,378 小田様の仰せだ。 お屋敷まで同道せい! 331 00:28:33,378 --> 00:28:35,581 ははっ…! 332 00:28:39,184 --> 00:28:43,121 そろそろ 沙汰をせねばと思っておった。 333 00:28:43,121 --> 00:28:46,258 刈谷伊織。 はっ。 334 00:28:46,258 --> 00:28:51,930 先年の落ち度により その方を小普請入りとしたが➡ 335 00:28:51,930 --> 00:28:57,269 この度 評定所 改め方として お役復帰を申し渡す。 336 00:28:57,269 --> 00:28:59,204 ははっ…。 337 00:28:59,204 --> 00:29:04,042 (小田)以後 いっそう精進いたせ。 338 00:29:04,042 --> 00:29:10,349 ありがたきご沙汰…。 御礼の言葉もございません。 339 00:29:10,349 --> 00:29:15,854 過分の お取り計らい まことに ありがとう存じます。 340 00:29:18,056 --> 00:29:24,830 夜な夜な 怪しき怨霊にさいなまれ ろくに眠れぬ…。 341 00:29:24,830 --> 00:29:32,371 ♬~ 342 00:29:32,371 --> 00:29:36,908 父上。 ありがとうございました。 343 00:29:36,908 --> 00:29:40,412 これで よかったのかの? 344 00:29:44,082 --> 00:29:46,885 人斬りを頼まれました。 345 00:29:49,955 --> 00:29:52,758 逃げました。 346 00:29:52,758 --> 00:29:56,395 斬るのが怖くて 逃げたのです。 347 00:29:56,395 --> 00:30:02,601 フッ…。 思ったほど 人は道を外せぬものです。 348 00:30:02,601 --> 00:30:06,271 伊織…。 349 00:30:06,271 --> 00:30:09,775 私には お役しかありませぬ。 350 00:30:09,775 --> 00:30:14,946 人から見れば つまらぬものかもしれません。 351 00:30:14,946 --> 00:30:19,618 滑稽で偽りだらけの…。 352 00:30:19,618 --> 00:30:25,424 しかし 私は そこで生きてきました。 353 00:30:25,424 --> 00:30:29,428 この道を 全うします。 うん。 354 00:30:31,630 --> 00:30:33,632 参りましょう。 355 00:30:40,138 --> 00:30:43,975 さあ。 でも…。 356 00:30:43,975 --> 00:30:45,911 行っといで。 357 00:30:45,911 --> 00:30:53,318 ♬~ 358 00:30:53,318 --> 00:30:56,988 かたじけない。 そのような…。 359 00:30:56,988 --> 00:31:02,494 わしのように 取るに足らぬ男を 50年も…。 360 00:31:04,096 --> 00:31:07,766 わしは そなたは忘れぬ。 361 00:31:07,766 --> 00:31:12,938 今のそなたのことは もう二度とな。 362 00:31:12,938 --> 00:31:15,607 惣右衛門様…。 363 00:31:15,607 --> 00:31:25,117 ♬~ 364 00:31:35,994 --> 00:31:41,633 参ったね お札だらけでさ あちこち。 365 00:31:41,633 --> 00:31:46,304 ここへ来るまで まあ… 難儀だったよ。 366 00:31:46,304 --> 00:31:50,642 あんたのうちまで貼られてたら どうしようかと思った。 367 00:31:50,642 --> 00:31:54,980 あるにはあるんだよ。 必ず貼れって押しつけられた。 368 00:31:54,980 --> 00:31:58,016 聞きたいことがあって来たんだよ。 369 00:31:58,016 --> 00:32:02,788 あんた 染のこと どう思ってる? 370 00:32:02,788 --> 00:32:06,258 好きなのかい? 染が。 371 00:32:06,258 --> 00:32:09,161 そりゃあ 嫌な奴と商売なんか…。 372 00:32:09,161 --> 00:32:11,129 所帯を持ってもいいと? 373 00:32:11,129 --> 00:32:13,999 ちょっと待ってくれよ… 染は 幽霊だぜ。 374 00:32:13,999 --> 00:32:16,268 幽霊と俺が どうして所帯なんか…。 375 00:32:16,268 --> 00:32:18,770 そう。 持てるわけがないか。 376 00:32:18,770 --> 00:32:22,274 あんたには その気がないんだということは➡ 377 00:32:22,274 --> 00:32:26,611 私と染は 地獄へ落ちていかなきゃならなくなる。 378 00:32:26,611 --> 00:32:28,547 何の話だい? 379 00:32:28,547 --> 00:32:34,119 私と染はね もうすぐ この世の中から 消えてなくなるんだよ。 380 00:32:34,119 --> 00:32:37,956 ええ…? あんたと会って 四十九日。 381 00:32:37,956 --> 00:32:42,627 今日で あと 9日足らずだ。 382 00:32:42,627 --> 00:32:47,432 その間に お前さんと染が 情が通じなければ➡ 383 00:32:47,432 --> 00:32:53,972 私たちは 地獄へ落ちていかなきゃならなくなる。 384 00:32:53,972 --> 00:32:58,643 染はね それでもいいと思ってるらしいよ。 385 00:32:58,643 --> 00:33:01,613 どうせ 思いが かなわないなら➡ 386 00:33:01,613 --> 00:33:07,452 せめて 最後は あんたといたいって…。 なあ おっ母さん…。 387 00:33:07,452 --> 00:33:15,393 このままだと 間違いなく 私たちは 地獄行きだね。 388 00:33:15,393 --> 00:33:18,763 地獄ってのは 針の山とか 血の池とか? 389 00:33:18,763 --> 00:33:23,935 フフフ… そんなとこ 怖くも何ともないだろ。 390 00:33:23,935 --> 00:33:27,272 私たちが 落ちていく地獄はね➡ 391 00:33:27,272 --> 00:33:32,410 何にもないんだよ。 392 00:33:32,410 --> 00:33:37,249 ただ 寂しくてね…➡ 393 00:33:37,249 --> 00:33:42,787 暗く 冷た~いところで…➡ 394 00:33:42,787 --> 00:33:46,958 さまよい続けるんだよ…。 395 00:33:46,958 --> 00:33:51,796 ず~っとね…。 396 00:33:51,796 --> 00:33:56,301 ⚟(鐘の音) 397 00:33:56,301 --> 00:33:58,303 どうすりゃいいんだよ? 俺は…。 398 00:33:58,303 --> 00:34:02,240 お札を貼ってほしいんだよ このうちにも。 お札を!? 399 00:34:02,240 --> 00:34:07,746 そして 二度と 染が このうちに入れないようにしておくれ。 400 00:34:07,746 --> 00:34:12,617 そうすりゃ 市太郎だって じきに治るだろうよ。 401 00:34:12,617 --> 00:34:17,255 それにね なにも所帯を持たなくたって➡ 402 00:34:17,255 --> 00:34:23,395 お前さんが 染を地獄へやりたくない という気持ちが伝われば➡ 403 00:34:23,395 --> 00:34:27,265 それで 私たちは 成仏できるかもしれないんだよ。 404 00:34:27,265 --> 00:34:32,404 これが 最後の手だてなんだ。 405 00:34:32,404 --> 00:34:36,274 染のため… あの子のために➡ 406 00:34:36,274 --> 00:34:41,112 お札を貼ってほしいんだよ! 407 00:34:41,112 --> 00:34:43,415 染のため…。 408 00:34:45,283 --> 00:34:49,287 弥六さん お願いします。 409 00:34:58,630 --> 00:35:02,334 ⚟(おみつ)弥六さん 弥六さん…。 410 00:35:10,742 --> 00:35:15,914 弥六さん。 短い間だったけど お世話になりました。 411 00:35:15,914 --> 00:35:18,950 何だよ 別れの挨拶みてえじゃねえか。 412 00:35:18,950 --> 00:35:24,089 お別れなんです。 私 何だか 成仏できるみたいなんです。 413 00:35:24,089 --> 00:35:26,124 成仏を…? 414 00:35:26,124 --> 00:35:30,395 私は 自分で自分の命を粗末にしました。 415 00:35:30,395 --> 00:35:34,265 だから 成仏もできず ずっと さまよっていたんです。 416 00:35:34,265 --> 00:35:39,137 50年も。 50年…!? 417 00:35:39,137 --> 00:35:45,410 でも そんな私を 「二度と忘れない」って 言ってくれる人がいたんです。 418 00:35:45,410 --> 00:35:50,281 生きている間は 振り向いてもくれない人だったのに。 419 00:35:50,281 --> 00:35:55,153 気が付いたら 何だか すごく 体が軽くなっていて。 420 00:35:55,153 --> 00:35:58,423 今にも 天に昇ってしまいそうで。 421 00:35:58,423 --> 00:36:01,893 そうか。 そいつは…。 422 00:36:01,893 --> 00:36:04,729 お染姐さんに 会って行きたかったけど➡ 423 00:36:04,729 --> 00:36:08,366 もう これ以上 ここに とどまれそうもありません。 424 00:36:08,366 --> 00:36:11,569 ですから 弥六さんから伝えてもらえますか? 425 00:36:11,569 --> 00:36:14,239 私のこと。 426 00:36:14,239 --> 00:36:17,575 ああ…。 弥六さん。 427 00:36:17,575 --> 00:36:21,246 お染姐さんを 幸せに。 428 00:36:21,246 --> 00:36:26,584 みつ…。 幸せにしてあげて…! 429 00:36:26,584 --> 00:36:33,758 ♬~ 430 00:36:33,758 --> 00:36:38,630 できねえ…。 できねえんだよ みつ。 431 00:36:38,630 --> 00:36:42,100 俺には 染を幸せになんて…。 432 00:36:42,100 --> 00:36:50,408  回想 染のため。 あの子のために お札を貼ってほしいんだよ! 433 00:36:50,408 --> 00:37:20,905 ♬~ 434 00:37:20,905 --> 00:37:25,744 染…。 つらいかい? 435 00:37:25,744 --> 00:37:28,546 もう少しの辛抱だからね。 436 00:37:31,382 --> 00:37:34,919 おっ母さん 勝手なことしちまって…➡ 437 00:37:34,919 --> 00:37:37,388 許しておくれ…。 438 00:37:37,388 --> 00:37:42,694 恨むんなら この私を お恨み…。 439 00:37:47,065 --> 00:37:53,972 弥六さん。 私… 染だよ。 これ何? 440 00:37:53,972 --> 00:37:56,608 何かの間違いだよね? 441 00:37:56,608 --> 00:38:00,879 ここを開けて この お札 剥がしておくれよ。 442 00:38:00,879 --> 00:38:04,749 ⚟そこにいるんだろ? 弥六さん…。 443 00:38:04,749 --> 00:38:12,590 お願い。 体じゅうが くたくたなんだ。 444 00:38:12,590 --> 00:38:17,395 泥みたいに 土に溶けてなくなりそうで…。 445 00:38:19,731 --> 00:38:23,935 せめて。 水を 一杯。 446 00:38:26,604 --> 00:38:29,440 すまねえ。 447 00:38:29,440 --> 00:38:33,945 弥六さん! ⚟ここは開けられねえ。 448 00:38:37,148 --> 00:38:41,119 なぜ黙ってた。 お前の寿命。 449 00:38:41,119 --> 00:38:43,588 たったの 四十九日だっていうじゃねえか。 450 00:38:43,588 --> 00:38:46,624 誰? 誰が言ったの? おっ母さん!? 451 00:38:46,624 --> 00:38:49,260 おっ母さんを責めちゃいけねえ。 452 00:38:49,260 --> 00:38:52,931 親なんていうのはな みんな そんなもんだよ。 453 00:38:52,931 --> 00:38:56,267 てめえの子 かわいさに 何でもするんだ。 何でもな…。 454 00:38:56,267 --> 00:38:59,604 俺も そうだよ…。 455 00:38:59,604 --> 00:39:02,574 いっちゃん そんなに悪いの? 456 00:39:02,574 --> 00:39:06,044 離れるんだ。 今 別れるんだ。 457 00:39:06,044 --> 00:39:09,547 それが お前のためなんだよ! 458 00:39:09,547 --> 00:39:12,050 私の…? 459 00:39:15,220 --> 00:39:18,223 みつも あの世で待ってるぞ。 460 00:39:18,223 --> 00:39:23,561 みつが? みつが成仏を? 461 00:39:23,561 --> 00:39:27,065 ⚟思いが通じてな…。 462 00:39:27,065 --> 00:39:30,735 そう…。 463 00:39:30,735 --> 00:39:33,771 ああ そう…! 464 00:39:33,771 --> 00:39:37,508 染! あと9日。 465 00:39:37,508 --> 00:39:40,445 俺は 一生懸命 念仏唱えてやる。 466 00:39:40,445 --> 00:39:44,749 絶対 お前と おっ母さんを 地獄になんか行かせやしねえ。 467 00:39:44,749 --> 00:39:47,385 だから もう ここへ来るな。 468 00:39:47,385 --> 00:39:52,757 ♬~ 469 00:39:52,757 --> 00:39:54,759 あんた…。 470 00:39:56,594 --> 00:40:00,765 二度と 俺の前に 姿を現すな! 471 00:40:00,765 --> 00:40:08,640 ♬~ 472 00:40:08,640 --> 00:40:14,312 そうだね。 それがいい…。 473 00:40:14,312 --> 00:40:25,923 ♬~ 474 00:40:25,923 --> 00:40:28,293 ⚟さよなら…。 475 00:40:28,293 --> 00:40:52,984 ♬~ 476 00:40:52,984 --> 00:40:55,820 染! 染! 477 00:40:55,820 --> 00:40:58,323 どこへ行ったんだ!? 染! 478 00:40:58,323 --> 00:41:00,925 父上? 479 00:41:00,925 --> 00:41:05,797 ♬~ 480 00:41:05,797 --> 00:41:09,100 すぐ戻る! 481 00:41:09,100 --> 00:41:11,936 染! 482 00:41:11,936 --> 00:41:13,938 染…! 483 00:41:16,107 --> 00:41:18,142 染! 484 00:41:18,142 --> 00:41:22,280 本当は あと3日ぐらい この世にいられる。 485 00:41:22,280 --> 00:41:24,615 だけど 今夜➡ 486 00:41:24,615 --> 00:41:27,285 田津さんが 私のために打ち上げてくれる花火➡ 487 00:41:27,285 --> 00:41:29,620 それに 乗って行きたいんだ。 488 00:41:29,620 --> 00:41:32,423 「花屋」の花火か…。 489 00:41:32,423 --> 00:41:34,959 そりゃ きっと きれいだろうな…。 490 00:41:34,959 --> 00:41:37,295 (花火の音) 491 00:41:37,295 --> 00:42:55,306 ♬~