1 00:00:02,769 --> 00:00:08,108 (お縫)お待たせさま。 今年最後の冷や麦よ。 2 00:00:08,108 --> 00:00:12,980 いや~ そろそろ秋だな。 そうですね。 3 00:00:12,980 --> 00:00:16,483 じゃあ 頂きます。 (2人)頂きます。 4 00:00:19,720 --> 00:00:27,427 ♬~(笛) 5 00:00:27,427 --> 00:00:29,363 (お俊)まただよ。 6 00:00:29,363 --> 00:00:31,798 ああ~ 気が めいるねえ。 7 00:00:31,798 --> 00:00:42,509 ♬~(笛) 8 00:00:42,509 --> 00:00:48,248 加助さん ずっと引きこもっちまって どうしたんだろ? 9 00:00:48,248 --> 00:00:53,820 お前さん 加助さんに何か言ったの? 10 00:00:53,820 --> 00:00:57,324 加助さん あんたのおせっかいは➡ 11 00:00:57,324 --> 00:01:01,094 やめろと言っても 止まるもんじゃないようだが➡ 12 00:01:01,094 --> 00:01:04,598 長屋のみんなを 危ない目に遭わせたくはない。 13 00:01:04,598 --> 00:01:10,804 (加助)もう二度と 人助けはしやせん。 14 00:01:14,608 --> 00:01:18,812 ええい! もう! 15 00:01:24,284 --> 00:01:26,954 (戸が開く音) 16 00:01:26,954 --> 00:01:29,856 どうしたの 加助さん。 17 00:01:29,856 --> 00:01:34,628 外は日和続きだっていうのに 毎日毎日 笛ばっかり。 18 00:01:34,628 --> 00:01:37,431 それも 本当に悲しそうな音色で。 19 00:01:37,431 --> 00:01:44,204 ああ 笛は死んだ女房から教わったんだ。 20 00:01:44,204 --> 00:01:49,176 娘も あっしの笛が大好きでね。 21 00:01:49,176 --> 00:01:54,014 けどね 笛は もっと にぎやかな方が…。 22 00:01:54,014 --> 00:01:58,719 そうだ! ちょうど八幡様で お祭りの笛太鼓をやってるから➡ 23 00:01:58,719 --> 00:02:01,088 一緒に見に行きましょうよ。 24 00:02:01,088 --> 00:02:05,392 お縫さん あっしは家を出ねえ! 25 00:02:05,392 --> 00:02:10,097 出ちゃいけねえんだ。 どうしてよ? 26 00:02:10,097 --> 00:02:16,403 万が一 困ってる人を見かけたら きっと おせっかいを焼いちまう。 27 00:02:16,403 --> 00:02:19,773 俺ぁ 金輪際 人助けはしねえ! 28 00:02:19,773 --> 00:02:22,609 だから こうして 笛で気ぃ紛らわ…。 29 00:02:22,609 --> 00:02:24,945 四の五の言わない! 30 00:02:24,945 --> 00:02:26,880 行くよ! あっ…。 31 00:02:26,880 --> 00:02:31,818 ♬~(笛太鼓) 32 00:02:31,818 --> 00:02:34,287 どう? 33 00:02:34,287 --> 00:02:36,289 ぴ~ひょろ ぴ~ひょろ ぴ~ひょろろ~。 34 00:02:36,289 --> 00:02:38,291 (犀香)お頼み申す。➡ 35 00:02:38,291 --> 00:02:41,595 どうか 殿に お目通りを! 36 00:02:44,998 --> 00:02:47,801 一目だけでも殿に。 37 00:02:47,801 --> 00:02:51,304 苅田掃部介直矩様に… うっ! 38 00:02:51,304 --> 00:02:53,306 犀が来たと お取り次ぎを! 39 00:02:53,306 --> 00:02:58,812 (門番)町人風情が バカを言え! うせろ! 40 00:02:58,812 --> 00:03:01,782 あのままじゃ殺されちゃう。 41 00:03:01,782 --> 00:03:04,084 行こう! けど…! 42 00:03:04,084 --> 00:03:06,887 (門番)ええい もう勘弁ならん! 43 00:03:12,392 --> 00:03:15,595 うあっ! ううっ…。 44 00:03:15,595 --> 00:03:17,531 加助さん! 45 00:03:17,531 --> 00:03:28,942 ♬~ 46 00:03:28,942 --> 00:03:32,446 ちょっと どいてくれ! どいてくれ! 47 00:03:35,415 --> 00:03:37,951 お前さん! (儀右衛門)何でえ? 48 00:03:37,951 --> 00:03:42,122 やっと 外に出たと思ったら 早速 行き倒れを拾ってきたようだ。 49 00:03:42,122 --> 00:03:46,293 困ったもんだ。 うれしそうだね。 50 00:03:46,293 --> 00:03:49,296 旦那 面目ねえ。 性懲りもなく つい…。 51 00:03:49,296 --> 00:03:53,066 どうしたんだい? けがしてるじゃねえか。 52 00:03:53,066 --> 00:03:56,803 (お俊)お縫 お医者は? 診てもらった。 53 00:03:56,803 --> 00:03:58,839 早く中に入れないと。 54 00:03:58,839 --> 00:04:03,243 おい 見ろよ 文吉。 また 善人野郎の人助けだ。 55 00:04:03,243 --> 00:04:07,914 今度は行き倒れかよ。 56 00:04:07,914 --> 00:04:11,785 犀香? え? 57 00:04:11,785 --> 00:04:13,787 犀香! 58 00:04:13,787 --> 00:04:16,623 おい どうしたい! しっかりしろ! 59 00:04:16,623 --> 00:04:18,925 犀香! 俺だ! 小瓢だ!➡ 60 00:04:18,925 --> 00:04:23,096 おい 犀香! 聞こえるか 犀香! 犀香! 61 00:04:23,096 --> 00:04:26,933 <世間様から 善人長屋と呼ばれちゃいますが➡ 62 00:04:26,933 --> 00:04:28,969 うちの店子は そろいもそろって➡ 63 00:04:28,969 --> 00:04:31,972 裏稼業持ちの悪党ばかり> 64 00:04:39,412 --> 00:04:42,616 <差配の一家は 盗品を売りさばく系図買い屋> 65 00:04:44,251 --> 00:04:47,788 <そんな悪党どもが 一人の善人に かき回されて➡ 66 00:04:47,788 --> 00:04:49,723 人助けを するはめになる➡ 67 00:04:49,723 --> 00:04:52,726 不思議な物語でございます> 68 00:05:14,381 --> 00:05:19,085 俺たちの親父は 博打狂いの くそ野郎だった。➡ 69 00:05:19,085 --> 00:05:21,588 おふくろは 女郎に売られた。 70 00:05:21,588 --> 00:05:26,459 兄貴は 体がでかかったから 年をごまかして 人足に出された。 71 00:05:26,459 --> 00:05:32,599 俺は体が小さかったから 陰間茶屋に売られた。 72 00:05:32,599 --> 00:05:35,101 陰間茶屋…。 73 00:05:35,101 --> 00:05:40,974  心の声 陰間茶屋は 男の子が 大人を相手に 春をひさぐ店…。 74 00:05:40,974 --> 00:05:47,681 犀香は その茶屋で 一番人気の色子だったんだ。➡ 75 00:05:47,681 --> 00:05:50,417 歌も踊りも見事でさ。➡ 76 00:05:50,417 --> 00:05:53,620 ほかの色子の面倒見もよかった。 77 00:05:53,620 --> 00:05:56,823 新入りの俺にも優しくて。 78 00:05:58,425 --> 00:06:04,231 小瓢と名を付けられて 初めて店に出された日には➡ 79 00:06:04,231 --> 00:06:08,235 一緒に泣いてくれたんだ。➡ 80 00:06:08,235 --> 00:06:13,240 そうやって みつきばかりがたった頃…➡ 81 00:06:13,240 --> 00:06:16,243 兄貴が助けに来てくれた。 82 00:06:18,078 --> 00:06:20,981 てや~! 83 00:06:20,981 --> 00:06:22,949 犀香。 何だ? 小瓢。 84 00:06:22,949 --> 00:06:25,585 犀香も一緒に逃げよう。 85 00:06:25,585 --> 00:06:29,256 私は…➡ 86 00:06:29,256 --> 00:06:35,061 ここを 自らの牢獄と定めているんだ。 87 00:06:35,061 --> 00:06:38,565 この世で一番大切なお方のために。 88 00:06:43,270 --> 00:06:45,272 今だ 行け! 89 00:06:45,272 --> 00:06:47,774 あっ! どけ! 文吉 行くぞ! 90 00:06:49,609 --> 00:06:51,945 待ちやがれ! 91 00:06:51,945 --> 00:06:54,781 うう~…。 離せ! 92 00:06:54,781 --> 00:06:56,716 文吉! 93 00:06:56,716 --> 00:06:59,286 行け~! 94 00:06:59,286 --> 00:07:02,188 行くぞ! 95 00:07:02,188 --> 00:07:05,558 (文吉)おかげで 俺は逃げ出せたが➡ 96 00:07:05,558 --> 00:07:07,761 犀香は…。 97 00:07:09,429 --> 00:07:13,900 あのあと どんな仕置きを受けたのか…。 98 00:07:13,900 --> 00:07:19,205 (犀香)うう… はあ…。 99 00:07:21,074 --> 00:07:24,945 茶屋を 自らの牢獄って…? 100 00:07:24,945 --> 00:07:27,947 どういう意味かは分からねえ。 101 00:07:27,947 --> 00:07:31,151 そん時から もう10年…。 102 00:07:39,926 --> 00:07:43,797 医者は 何て言ってんだ? 103 00:07:43,797 --> 00:07:48,501 臓腑が みんな やられてる。 104 00:07:50,570 --> 00:07:55,575 多分 年は… 越せないだろうって…。 105 00:08:07,721 --> 00:08:12,058 犀香みたいな いいやつ殺して➡ 106 00:08:12,058 --> 00:08:15,729 俺みたいな悪党を生かす気なら➡ 107 00:08:15,729 --> 00:08:19,366 俺ぁ 神様を ぶん殴ってやる! 108 00:08:19,366 --> 00:08:22,235 文さん… そんな罰当たり 言うもんじゃ…。 109 00:08:22,235 --> 00:08:26,740 けど! けど…。 110 00:08:29,009 --> 00:08:32,879 (文吉)畜生…。 111 00:08:32,879 --> 00:08:35,081 (犀香)小瓢…。 112 00:08:39,085 --> 00:08:41,087 犀香! 113 00:08:44,891 --> 00:08:50,196 久しいな 小瓢。 114 00:08:57,937 --> 00:09:02,909 犀香さんの本当の名は 三浦斎之介様といって➡ 115 00:09:02,909 --> 00:09:08,581 元は 下野井筒1万5,000石 苅田家のお殿様➡ 116 00:09:08,581 --> 00:09:12,218 苅田掃部介様の お小姓だったそうなの。 117 00:09:12,218 --> 00:09:15,722 それで 殿様に会いに行ったのかい。 118 00:09:15,722 --> 00:09:21,528 けどさ 大名のお小姓が どうして陰間茶屋にいたんだ。 119 00:09:21,528 --> 00:09:25,231 ああ そっちの お小姓かい。 120 00:09:25,231 --> 00:09:28,234 だから何なの? 半造おじさん。 121 00:09:28,234 --> 00:09:33,106 犀香さんとお殿様は 心の底から好き合ってたそうよ。 122 00:09:33,106 --> 00:09:37,744 なのに 生木を裂くように 引き裂かれちまって…。 123 00:09:37,744 --> 00:09:43,082 引き裂かれた? それが ひっどい話なの。 124 00:09:43,082 --> 00:09:45,919 お小姓で仕えて2年➡ 125 00:09:45,919 --> 00:09:50,590 お殿様に 奥方様が こし入れされたんだけど➡ 126 00:09:50,590 --> 00:09:52,926 跡継ぎが なかなか生まれない。 127 00:09:52,926 --> 00:09:56,763 お殿様が 犀香さんばかり かわいがってるせいだって➡ 128 00:09:56,763 --> 00:10:01,401 ご家老様たちに おいとまを出されちまって。 129 00:10:01,401 --> 00:10:03,470 殿…。 130 00:10:03,470 --> 00:10:09,943 それで自分から 陰間茶屋に行ったそうよ。 131 00:10:09,943 --> 00:10:14,614 元服の年を過ぎてから 色子ができなくなった犀香は➡ 132 00:10:14,614 --> 00:10:19,285 今度は旅回りの一座に入って 江戸から離れたそうで。 133 00:10:19,285 --> 00:10:25,425 そこで何年か 踊りや歌を披露して 過ごしたそうなんだけど➡ 134 00:10:25,425 --> 00:10:31,231 今年の春に病にかかって 一座を追い出されて。 135 00:10:31,231 --> 00:10:33,967 しかたなく 江戸に戻ったら➡ 136 00:10:33,967 --> 00:10:39,639 お殿様が どうしておられるか やっぱり どうしても気になって。 137 00:10:39,639 --> 00:10:43,143 それで 小姓の頃の知り合いを訪ねたら➡ 138 00:10:43,143 --> 00:10:49,315 殿様も今 重い病で もう長くはないだろう ということを聞かされて…。 139 00:10:49,315 --> 00:10:52,152 一目だけでも殿に。 140 00:10:52,152 --> 00:10:54,654 犀が来たと お取り次ぎを! 141 00:10:56,322 --> 00:11:00,260 儀右衛門の旦那! 無理を承知で お頼み申しやす。 142 00:11:00,260 --> 00:11:06,766 犀香を 10年以上 慕い続けてる殿様に 会わせてやっておくんなせえ! 143 00:11:08,601 --> 00:11:13,273 ほかならぬ文吉さんの頼みだから そら まあ なんとかしてやりたいが…。 144 00:11:13,273 --> 00:11:17,277 旦那。 そのお大名には 近づかねえ方がようござんす。 145 00:11:17,277 --> 00:11:20,947 何でだい 半造おじさん! まあ聞けよ 文吉。 146 00:11:20,947 --> 00:11:25,785 その苅田の殿様の奥方 お濠の方様ってのがよ➡ 147 00:11:25,785 --> 00:11:27,820 とんでもねえ 悋気持ちだって噂だ。 148 00:11:27,820 --> 00:11:30,957 すごく やきもち焼きなお方なの? 149 00:11:30,957 --> 00:11:35,428 ああ そうだ。 殿様の世話は 全て奥方が焼いてよ➡ 150 00:11:35,428 --> 00:11:38,331 奥女中すら近寄らせねえ。 151 00:11:38,331 --> 00:11:42,135 何でも なぎなたの使い手でよ➡ 152 00:11:42,135 --> 00:11:45,138 殿様に色目を使った茶坊主を…。 153 00:11:47,807 --> 00:11:50,643 (半造)斬り殺したとか しねえとか。 154 00:11:50,643 --> 00:11:53,446 斬り殺す…。 155 00:11:53,446 --> 00:11:58,151 そんな所に あの病人を連れてくなんぞ やめた方がいい。 156 00:12:11,397 --> 00:12:18,271 半造おじさんは 恋をしたことがないから そんな冷たいことが言えるのよ。 157 00:12:18,271 --> 00:12:21,407 お縫… こ… 恋って…。 158 00:12:21,407 --> 00:12:24,110 そうよ 恋よ! 159 00:12:24,110 --> 00:12:27,780 私はまだ 恋が どういうものかは 分かんないけど➡ 160 00:12:27,780 --> 00:12:30,817 でも きっと すごく つらいのに➡ 161 00:12:30,817 --> 00:12:34,420 どうやったって 諦められない思いじゃないかって➡ 162 00:12:34,420 --> 00:12:38,124 犀香さんを見てて思うの。 163 00:12:38,124 --> 00:12:40,960 犀香さんは長くない。 164 00:12:40,960 --> 00:12:46,766 お殿様も長くないなら 今しか…! 165 00:12:46,766 --> 00:12:49,669 そうよ 今しかないの! 166 00:12:49,669 --> 00:12:51,671 これは 命懸けの恋なの! 167 00:12:51,671 --> 00:12:54,307 おい… こ… 恋って…。 168 00:12:54,307 --> 00:12:56,976 (お俊)そうさねえ…。 169 00:12:56,976 --> 00:12:59,312 文ってのは どうかい? 170 00:12:59,312 --> 00:13:03,516 文… その手があったか! 171 00:13:05,084 --> 00:13:10,256 まずは 犀香さんに 殿様宛ての恋文を書いてもらう。 172 00:13:10,256 --> 00:13:13,926 ほんで その恋文を 庄治さんに託して➡ 173 00:13:13,926 --> 00:13:20,099 お殿様のお屋敷に じかに持っていって 渡してもらうってのは どうだ? なっ? 174 00:13:20,099 --> 00:13:23,970 (半造)こいつぁいい。 旦那…。 175 00:13:23,970 --> 00:13:25,972 かっちけねえ! (頭をぶつける音) 176 00:13:25,972 --> 00:13:30,176 おいおい おいおい…。 ちょっと もう 文さん! 177 00:13:35,581 --> 00:13:38,117 さてと…。 178 00:13:38,117 --> 00:13:44,290 ⚟(直次)姉上様におかれましては 本日も ご機嫌麗しく。 179 00:13:44,290 --> 00:13:48,628 ⚟(濠)直次殿も 息災で何より。➡ 180 00:13:48,628 --> 00:13:50,663 いつ以来かのう。 181 00:13:50,663 --> 00:13:54,967 (直次)ふたつき前に お会いして以来。 (濠)そう。 182 00:13:54,967 --> 00:14:01,074 (直次)拙者に折り入って御用とは 何でございましょう? 姉上。 183 00:14:01,074 --> 00:14:07,780 (濠)何。 久方ぶりに直次殿と お話でもと思ったまでじゃ。 184 00:14:11,250 --> 00:14:15,121 時に 兄上のご容体は いかがで…。 185 00:14:15,121 --> 00:14:18,591 直次殿。 家中には➡ 186 00:14:18,591 --> 00:14:24,397 殿亡きあとの苅田のお家を そなたが欲しているとの噂がある。 187 00:14:24,397 --> 00:14:28,935 なんと! 我が子 鶴松は まだ9つじゃ。 188 00:14:28,935 --> 00:14:31,771 「火のないところに煙は立たぬ」と申すが。 189 00:14:31,771 --> 00:14:36,409 姉上様は 強きお方でございまするが➡ 190 00:14:36,409 --> 00:14:39,779 ハッ やはり おなごですな。 191 00:14:39,779 --> 00:14:43,950 このような嘘偽りの噂に 心を弱らせておられるとは。 192 00:14:43,950 --> 00:14:48,788 国元より江戸へ 度々 金を送らせておるのは何故じゃ? 193 00:14:48,788 --> 00:14:51,124 はて 何のことやら。 194 00:14:51,124 --> 00:14:55,428 今月も 既に 三たび 国元より荷が着いたと聞く。 195 00:14:55,428 --> 00:14:59,966 その荷は 米 麦 雑穀の類いでござる。 196 00:14:59,966 --> 00:15:04,237 では なぜ それを ひそかに中屋敷に運んでおる。 197 00:15:04,237 --> 00:15:08,574 (せきばらい) (濠)直次殿。 198 00:15:08,574 --> 00:15:16,082 表沙汰にできぬ金を食らうのは 毒を食らうのと同じこと。 199 00:15:16,082 --> 00:15:19,385 鶴松の後見には わらわが立つ。 200 00:15:19,385 --> 00:15:22,088 そなたの思うようには決してさせぬ。 201 00:15:22,088 --> 00:15:24,023 跡目争い…。 202 00:15:24,023 --> 00:15:26,592 ⚟(直次)姉上様も お気を付けなされ。 203 00:15:26,592 --> 00:15:29,095 兄上が床に伏されたのは➡ 204 00:15:29,095 --> 00:15:33,399 姉上様が毒を盛ったとの よからぬ噂も。 205 00:15:33,399 --> 00:15:36,269 ⚟(濠)お~ 毒を…。 206 00:15:36,269 --> 00:15:56,556 ♬~ 207 00:16:06,899 --> 00:16:09,101 ⚟(足音) 208 00:16:11,237 --> 00:16:14,907 (侍女)大事ござりませぬか? くせ者じゃ。 くまなく探せ。 209 00:16:14,907 --> 00:16:17,577 (侍女)はい! (戸を閉める音) 210 00:16:17,577 --> 00:16:28,754 ♬~ 211 00:16:28,754 --> 00:16:30,690 殿は いかがじゃ? 藤江。 212 00:16:30,690 --> 00:16:34,927 相変わらず お苦しそうなご様子でございます。 213 00:16:34,927 --> 00:16:45,104 ♬~ 214 00:16:45,104 --> 00:16:48,140 母上。 (濠)鶴松。 215 00:16:48,140 --> 00:16:53,279 心配はいらぬ。 程なく よくなられる。 216 00:16:53,279 --> 00:16:56,616 (せきこみ) 217 00:16:56,616 --> 00:17:21,240 ♬~ 218 00:17:21,240 --> 00:17:26,112 お殿様が伏せったのは 奥方様が毒を? 219 00:17:26,112 --> 00:17:31,384 あ~…。 跡目を狙う弟が そう言ってやした。➡ 220 00:17:31,384 --> 00:17:33,920 さもありなんでさ。➡ 221 00:17:33,920 --> 00:17:39,225 奥方の まあ恐ろしいの何のって… アイタタタタッ…。 222 00:17:45,531 --> 00:17:47,934 半造さん どうしやした? 223 00:17:47,934 --> 00:17:50,603 旦那 ちょっと本腰を入れやして➡ 224 00:17:50,603 --> 00:17:54,273 例の お大名のネタを 調べてみたんでやすが➡ 225 00:17:54,273 --> 00:17:59,412 とある盗賊の一党が 苅田のお屋敷を 狙っているとか いねえとか。 226 00:17:59,412 --> 00:18:04,250 それも 一橋門外の上屋敷じゃねえ。 227 00:18:04,250 --> 00:18:06,886 鉄砲洲の中屋敷の方で。 228 00:18:06,886 --> 00:18:10,556 中屋敷…? ああ。➡ 229 00:18:10,556 --> 00:18:12,591 殿様がいるのは上屋敷。➡ 230 00:18:12,591 --> 00:18:16,896 中屋敷は普通 隠居した殿様の屋敷だ。 231 00:18:16,896 --> 00:18:21,567 苅田家の先代の隠居した殿様は もう亡くなっておりやす。 232 00:18:21,567 --> 00:18:29,075 その中屋敷に 盗賊が目をつけるほどの 小判があるってのは 何でだろうと…。 233 00:18:29,075 --> 00:18:33,946 半造さん 中屋敷に 今 住まっているのは? 234 00:18:33,946 --> 00:18:38,250 殿様の実弟の 苅田直次でやす。 235 00:18:38,250 --> 00:18:42,254 読めたぜ。 (庄治)えっ? 236 00:18:42,254 --> 00:18:48,594 苅田家は今 お家騒動の真っただ中だ。 237 00:18:48,594 --> 00:18:56,769 殿様の弟は 俵に小判を隠して 国元から中屋敷に運んでいる。 238 00:18:56,769 --> 00:19:04,877 その金は 跡目を自分に すげ替えるために 公儀のお偉いさんたちに配る➡ 239 00:19:04,877 --> 00:19:08,347 裏金だ。 240 00:19:08,347 --> 00:19:12,885 こいつぁ うかつには近づけねえ。 241 00:19:12,885 --> 00:19:16,756 これ以上やりゃ やぶから大蛇が出ちまう。 242 00:19:16,756 --> 00:19:23,062 旦那…。 すまねえな 文吉さん。 分かってくれ。 243 00:19:23,062 --> 00:19:27,566 こいつぁ 無理筋だ。 244 00:19:33,572 --> 00:19:39,378 <その日から しばらく 文さんの姿が消えた> 245 00:19:49,055 --> 00:19:51,757 ⚟(足音) 246 00:19:53,893 --> 00:19:56,595 文さん! よかった! 247 00:19:56,595 --> 00:20:00,766 よう 犀香! 具合は どうだい? 248 00:20:00,766 --> 00:20:03,269 何だよ 不景気だな。 249 00:20:03,269 --> 00:20:05,204 ほら見ろ! ほら! ほ~れ!➡ 250 00:20:05,204 --> 00:20:07,606 江戸一番でかい うなぎだ! 251 00:20:07,606 --> 00:20:10,276 文さん まさか それを捕まえに? 252 00:20:10,276 --> 00:20:13,779 おうよ。 加助さん さばいてくんな。 253 00:20:13,779 --> 00:20:15,715 これ。 うなぎ~!? 254 00:20:15,715 --> 00:20:19,518 よし ひとつ やってみるか。 頼んだ。 255 00:20:23,289 --> 00:20:28,494 ちっと見ねえ間に また痩せた…。 256 00:20:35,634 --> 00:20:45,144 ♬「たった七日の銀い花」 257 00:20:45,144 --> 00:20:54,854 ♬「たった七日の金色花」 258 00:20:54,854 --> 00:21:00,159 ♬「一年瀬を」 259 00:21:00,159 --> 00:21:11,604 ♬「比翼連理の枝となり」 260 00:21:11,604 --> 00:21:17,409 きれいな歌…。 何て歌ですか? 261 00:21:17,409 --> 00:21:23,949 犀の子守歌です。 262 00:21:23,949 --> 00:21:27,153 下野の…。 263 00:21:32,424 --> 00:21:38,631 私が育った 小さな里には➡ 264 00:21:38,631 --> 00:21:45,504 金銀の木犀が たくさん植わっていて…➡ 265 00:21:45,504 --> 00:21:54,180 秋になると よい香りが里に満ち…。 266 00:21:54,180 --> 00:22:03,756 しかし 木犀の花が咲き 香りが満ちるのは➡ 267 00:22:03,756 --> 00:22:10,529 一年に七日だけ…。 268 00:22:10,529 --> 00:22:19,772 それを歌った 昔から伝わる子守歌です。 269 00:22:19,772 --> 00:22:22,608 そうなんだ。 270 00:22:22,608 --> 00:22:29,281 殿も この子守歌を 大層 気に入られて…。 271 00:22:29,281 --> 00:22:33,118 ♬「枝となり」 272 00:22:33,118 --> 00:22:41,293 (2人)♬「飛べよ 飛べ 飛べ」 273 00:22:41,293 --> 00:22:49,168 ♬「鳥となりて飛んでいけ」 274 00:22:49,168 --> 00:23:02,248 ♬~ 275 00:23:02,248 --> 00:23:05,050 (直矩)我らの証しじゃ。 276 00:23:09,388 --> 00:23:15,394 (直矩)この歌を聴くと ひととき 我が牢獄を忘れられる…。 277 00:23:25,271 --> 00:23:27,606 牢獄…。 278 00:23:27,606 --> 00:23:34,947 殿は 私を木犀の「犀」の字から➡ 279 00:23:34,947 --> 00:23:39,285 犀と呼ばれました。 280 00:23:39,285 --> 00:23:51,497 それで 私は茶屋で 犀香と名乗ったんだ 小瓢。 281 00:23:55,134 --> 00:23:58,804 いい名だよ 犀香。 282 00:23:58,804 --> 00:24:02,675 (せきこみ) 大丈夫か? 283 00:24:02,675 --> 00:24:05,177 (せきこみ) 284 00:24:08,080 --> 00:24:16,789 だが… 会うことは もう… かなわぬらしい…。 285 00:24:16,789 --> 00:24:20,659 バカ 何 言ってんだ! 諦めるな! 286 00:24:20,659 --> 00:24:23,929 俺が必ず 殿様に会わせるから! 287 00:24:23,929 --> 00:24:29,268 (犀香)お前は優しいな 小瓢。 288 00:24:29,268 --> 00:24:34,773 ふざけんじゃねえぞ なあ 犀香…。 289 00:24:46,285 --> 00:24:49,288 加助さん! 290 00:24:49,288 --> 00:24:53,158 一生のお願い! えっ? 291 00:24:53,158 --> 00:25:16,281 ♬~ 292 00:25:16,281 --> 00:25:18,584 (加助 文吉)せ~の…。 293 00:25:21,253 --> 00:25:23,389 (せきこみ) 294 00:25:23,389 --> 00:25:25,758 (せきこみ) ここに下ろすぞ。 295 00:25:25,758 --> 00:25:30,596 (せきこみ) 大丈夫ですか? 296 00:25:30,596 --> 00:25:42,107 ♬~ 297 00:25:45,778 --> 00:26:03,062 ♬~(笛) 298 00:26:03,062 --> 00:26:09,835  心の声 文の代わりに せめて 犀の子守歌を お殿様に…。 299 00:26:09,835 --> 00:26:37,596 ♬~(笛) 300 00:26:37,596 --> 00:26:43,268 <加助さんは ひとときも休まず 笛を吹き続けてくれた> 301 00:26:43,268 --> 00:26:48,974 ♬~(笛) 302 00:26:51,009 --> 00:26:53,712 <けど…> 303 00:27:04,356 --> 00:27:06,725 (門が開く音) 304 00:27:06,725 --> 00:27:11,530 あっ! (門が開く音) 305 00:27:15,067 --> 00:27:17,269 誰だ? 306 00:27:26,778 --> 00:27:30,549 今の調べは そなたか? 307 00:27:30,549 --> 00:27:33,385 へ… へい。 308 00:27:33,385 --> 00:27:37,256 (せきこみ) 犀香さん。 309 00:27:37,256 --> 00:27:43,061 はあ… はあ… 藤江様…。 310 00:27:45,764 --> 00:27:50,068 そなたは… 斎之介か! 311 00:27:58,110 --> 00:28:00,812 参れ。 312 00:28:10,222 --> 00:28:12,224 (文吉)しっかり。 313 00:28:16,562 --> 00:28:20,899 斎之介を この者らに。 そりゃ どういうわけで。 314 00:28:20,899 --> 00:28:22,834 奥方様の お言いつけじゃ。 さあ。 315 00:28:22,834 --> 00:28:26,238 おい おい おいおい! 何でえ このアマ! 犀香に触るんじゃねえ! 316 00:28:26,238 --> 00:28:29,575 怪しい者じゃござんせん! 犀香さんは渡せません! 317 00:28:29,575 --> 00:28:33,378 あっ あっ! あっ あっ あっ… な… 何でえ! 318 00:28:33,378 --> 00:28:37,583 ⚟何を騒いでおる。 319 00:28:37,583 --> 00:28:41,787 (藤江)奥方様じゃ 控えなさい。 あ… 犀香。 320 00:28:44,356 --> 00:28:47,926  心の声 この人が…。 321 00:28:47,926 --> 00:28:52,798 お久しゅう… ございます…➡ 322 00:28:52,798 --> 00:28:57,269 奥方様。 323 00:28:57,269 --> 00:29:01,707 連れてまいれ。 (2人)はい。 324 00:29:01,707 --> 00:29:03,742 おい ちょ…! 325 00:29:03,742 --> 00:29:14,286 ♬~ 326 00:29:14,286 --> 00:29:16,221 お手討ちなら あっしを! 327 00:29:16,221 --> 00:29:19,124 煮て食おうと 焼いて食おうと 好きにしておくんなせえ! 328 00:29:19,124 --> 00:29:26,231 けど 犀香と お縫坊と加助のおっさんは あっしが無理やり連れてきたんだ! 329 00:29:26,231 --> 00:29:29,067 いいや! 文さんと 犀香さんと お縫さんは➡ 330 00:29:29,067 --> 00:29:32,104 あっしが無理やり連れてきやした! (文吉)黙ってやがれ! この善人野郎! 331 00:29:32,104 --> 00:29:35,841 違うんです! 本当のところは私です! 私が みんなをお屋敷に。 332 00:29:35,841 --> 00:29:37,776 お手討ちなら どうか私を! 333 00:29:37,776 --> 00:29:41,079 うるせえ! 女だてらに黙ってろい! だって 本当のことじゃない! 334 00:29:41,079 --> 00:29:44,116 元は あっしだ! あっしが最初に 犀香さんと関わったんだ! 335 00:29:44,116 --> 00:29:47,819 私が お祭りに行こうなんて…。 (濠)静まれ! 336 00:29:56,261 --> 00:30:06,772 (笑い声) 337 00:30:16,415 --> 00:30:21,286 案ずるな。 斎之介は 殿の寝所じゃ。 338 00:30:21,286 --> 00:30:27,793 そなたらの働きで 殿を お慰めすることができたようじゃ。 339 00:30:27,793 --> 00:30:32,297 心より 礼を申す。 340 00:30:32,297 --> 00:30:34,966 あ… よ… よしてくださいまし! 341 00:30:34,966 --> 00:30:39,271 あっしらみてえな町人に頭を。 ど… どうか。 342 00:30:43,642 --> 00:30:45,677 奥方様…。 343 00:30:45,677 --> 00:30:49,314 よかった…。 344 00:30:49,314 --> 00:30:54,653 誰でえ! 悋気持ちの なぎなた使いで 茶坊主を斬り殺したなんぞとは。 345 00:30:54,653 --> 00:30:58,457 ちょっと 文さん…! 殺してはおらぬ。 追い出しただけじゃ。 346 00:30:58,457 --> 00:31:03,261 やあ けど 本当よかった! 昔の男との色恋なんぞ➡ 347 00:31:03,261 --> 00:31:05,597 斬って捨てられるんじゃねえかと 気が気じゃなかったぜ。 348 00:31:05,597 --> 00:31:08,934 文さん! もう なれなれしくし過ぎよ! 349 00:31:08,934 --> 00:31:12,771 構わぬ。 350 00:31:12,771 --> 00:31:19,544 それに あれは 殿と小姓の色恋では…。 351 00:31:19,544 --> 00:31:24,850 お殿様と お小姓の色恋じゃ ねえ? 352 00:31:27,786 --> 00:31:33,592 <この時 奥方様から すごく切ない においがした。➡ 353 00:31:33,592 --> 00:31:41,133 犀香さんと同じくらい強くて 優しくて 命懸けの…> 354 00:31:41,133 --> 00:31:48,006 奥方様 お殿様と犀香さんのこと 教えてください。 355 00:31:48,006 --> 00:31:51,143 もし そのことで苦しんでおられるなら。 356 00:31:51,143 --> 00:31:55,647 もし そのことが お家の大事と関わりがあるなら➡ 357 00:31:55,647 --> 00:31:58,984 お助けしたいんです。 358 00:31:58,984 --> 00:32:02,387 失礼します。 えっ? ちょ… お縫さん! 359 00:32:02,387 --> 00:32:04,389 ちょ…! 360 00:32:46,798 --> 00:32:56,441 殿は… 男子として生まれたが…➡ 361 00:32:56,441 --> 00:33:00,245 中身は おなごの心根じゃ。 362 00:33:02,247 --> 00:33:08,920 (濠)今 お家が揺らいでおるのも それが根っこ。 363 00:33:08,920 --> 00:33:17,395 斎之介が いとまを出され 3年後 やっと 嫡男 鶴松が生まれた。 364 00:33:17,395 --> 00:33:24,102 殿も わらわも 大層喜んだ。 365 00:33:24,102 --> 00:33:30,275 しかし… 子が一人では心もとない。 366 00:33:30,275 --> 00:33:35,780 奥との相性が悪いなら 側室を持つようにと➡ 367 00:33:35,780 --> 00:33:39,084 しゅうとめ様が申された。 368 00:33:42,287 --> 00:33:44,623 殿は…。 369 00:33:44,623 --> 00:33:47,292 嫌じゃ。 370 00:33:47,292 --> 00:33:50,962 鶴松を もうけたではないか。 側室など いらぬ。 371 00:33:50,962 --> 00:33:53,798 しかし… これも お家のためなれば。 372 00:33:53,798 --> 00:34:01,373 嫌じゃ~! 嫌じゃ! 嫌じゃ 嫌じゃ 嫌じゃ…! 373 00:34:01,373 --> 00:34:06,578 もう… 我慢できぬ! 374 00:34:08,146 --> 00:34:10,115 殿…? 375 00:34:10,115 --> 00:34:14,753 (濠)その時 初めて打ち明けられた。 376 00:34:14,753 --> 00:34:21,092 幼い頃より 己の体を牢獄のように思ってきたと。 377 00:34:21,092 --> 00:34:23,128 牢獄…。 378 00:34:23,128 --> 00:34:26,965 その苦しみを忘れられたのは➡ 379 00:34:26,965 --> 00:34:31,469 斎之介と過ごす ひとときのみであったと…。 380 00:34:36,107 --> 00:34:43,281 犀… 会いたかった。 381 00:34:43,281 --> 00:34:51,957 私も 会いとうございました。 382 00:34:51,957 --> 00:34:59,431 おいとまを出され 切腹するは たやすけれど…。 383 00:34:59,431 --> 00:35:09,741 お前は 私を残して 死ぬような男ではないと信じていた。 384 00:35:09,741 --> 00:35:12,243 殿…。 385 00:35:12,243 --> 00:35:18,116 しかし もうすぐ私は死ぬ。 386 00:35:18,116 --> 00:35:25,624 死ねば この牢獄から やっと解き放たれる…。 387 00:35:32,097 --> 00:35:35,767 鳥になれる。 388 00:35:35,767 --> 00:35:43,274 私も 病を得ました。 389 00:35:43,274 --> 00:35:50,081 共に 鳥になれまする。 390 00:35:54,419 --> 00:35:58,790 だから 犀香さんは おいとまを出されたあと➡ 391 00:35:58,790 --> 00:36:03,762 自分で自分に牢獄を課したんですね。 392 00:36:03,762 --> 00:36:10,368 お殿様の とらわれの思いだけでも 一緒に背負いたいから…。 393 00:36:10,368 --> 00:36:14,906 2人の思いは本物じゃの。 394 00:36:14,906 --> 00:36:19,577 奥方様の思いも また。 わらわ…? 395 00:36:19,577 --> 00:36:25,083 奥方様は お殿様のお世話を 全て ご自分でなさった。 396 00:36:25,083 --> 00:36:31,589 悋気持ちを装って ご側室の話を潰し 色目を使った茶坊主を斬り殺した。 397 00:36:31,589 --> 00:36:35,794 何度 言わせる。 坊主は追い出しただけじゃ。 398 00:36:38,363 --> 00:36:43,935 悪い噂を 全て一人で引き受けて➡ 399 00:36:43,935 --> 00:36:46,971 誰にも つらさを打ち明けず➡ 400 00:36:46,971 --> 00:36:50,709 お殿様を守り続けてこられました。 401 00:36:50,709 --> 00:36:52,944 つれえな…。 402 00:36:52,944 --> 00:36:56,815 お家のために お子まで もうけて➡ 403 00:36:56,815 --> 00:37:03,888 けど 亭主の心は いつまでたっても 昔のお小姓に。 404 00:37:03,888 --> 00:37:08,359 あ… ちょっと はばかりを。 405 00:37:08,359 --> 00:37:10,361 えっ? はあ? 406 00:37:18,036 --> 00:37:23,241 だってよ… みんな 切ねえじゃねえか。 407 00:37:23,241 --> 00:37:25,243 何がじゃ? 408 00:37:25,243 --> 00:37:29,114 あ いえ お気になさらず。 409 00:37:29,114 --> 00:37:33,251 (濠)わらわに 哀れみをかけるのは 間違いじゃ。 410 00:37:33,251 --> 00:37:40,125 殿と わらわは 今 姉妹のような絆で結ばれておる。 411 00:37:40,125 --> 00:37:45,597 それもまた めおとの形じゃ。➡ 412 00:37:45,597 --> 00:37:47,932 もし わらわが男なら➡ 413 00:37:47,932 --> 00:37:51,803 あやつと刺し違えることも できようものを。 414 00:37:51,803 --> 00:37:58,576 家督を狙う 弟の直次様のことですか? そのようなことまで…。 415 00:37:58,576 --> 00:38:01,346 お子があるのに 刺し違えるなんて いけません! 416 00:38:01,346 --> 00:38:05,550 きっと ほかに 何か手だてがあるはずです。 417 00:38:09,220 --> 00:38:15,860 鉄砲洲の中屋敷が手薄になる時ゃ ございやせんか? 418 00:38:15,860 --> 00:38:20,565 来月2日 先代の殿の法要がある。 419 00:38:20,565 --> 00:38:23,268 それが何か? 420 00:38:35,580 --> 00:38:43,087 小瓢… ありがとう。 421 00:38:43,087 --> 00:38:50,094 これでもう 思い残すことはない。 422 00:38:52,263 --> 00:38:57,101 何 言ってんだ! これで よくなる! 423 00:38:57,101 --> 00:39:03,908 元気になりゃ あの奥方なら きっと いつだって屋敷に入れてくれるさ。 424 00:39:09,747 --> 00:40:37,135 ♬~ 425 00:40:37,135 --> 00:40:41,339 そういや お縫坊 さっき 奥方に何て言ったんだ? 426 00:40:43,908 --> 00:40:49,147 私たちの千七長屋は 善人長屋で通っちゃいますが➡ 427 00:40:49,147 --> 00:40:53,351 長屋のみんなは 裏稼業持ちの悪党ばかり。 428 00:40:55,820 --> 00:40:58,122 お力になれるかも。 429 00:40:59,691 --> 00:41:05,396 やぼね 文さん。 女同士のないしょごとよ。 430 00:41:05,396 --> 00:41:07,398 ふん! 431 00:41:16,040 --> 00:41:19,277 <先代のお殿様の法要の日➡ 432 00:41:19,277 --> 00:41:24,782 苅田家の中屋敷から 数千両の小判が消えた> 433 00:41:27,018 --> 00:41:30,421 <盗賊にネタを売ってくれた 半造おじさんは➡ 434 00:41:30,421 --> 00:41:33,958 裏界わいで名をあげた。➡ 435 00:41:33,958 --> 00:41:39,297 お殿様の弟の苅田直次は 裏金の罪を問われ➡ 436 00:41:39,297 --> 00:41:42,200 国元で蟄居となった。➡ 437 00:41:42,200 --> 00:41:49,440 それから程なく 犀香さんは 文さんに見守られて 息を引き取った。➡ 438 00:41:49,440 --> 00:41:53,945 お殿様も 同じ頃 旅立たれた> 439 00:42:00,084 --> 00:42:02,387 (鶴松)母上! 440 00:42:11,696 --> 00:42:18,903 <9歳の鶴松君が家督を継いだのは 木犀が甘やかに香る頃…> 441 00:42:20,938 --> 00:42:27,245 <全ては世間に一切出ない 裏の話でございます> 442 00:42:35,119 --> 00:42:37,055 お縫さんのお姉さん! 443 00:42:37,055 --> 00:42:38,990 こんな汚いお金 受け取るとでも思ったかい! 444 00:42:38,990 --> 00:42:42,994 8年ぶりだってのに…。 お貸ししたのは 5両のはず。 445 00:42:42,994 --> 00:42:45,630 からくりがあるなら 必ず暴いてみせるよ。 446 00:42:45,630 --> 00:42:49,300 抱けば分かる。 うちの娘に ひどいことをした女狐です。 447 00:42:49,300 --> 00:42:51,235 こっちの腹が おさまりませんよ! 448 00:42:51,235 --> 00:42:55,239 怖えよ…。 もういいの そんなこと。