1 00:00:09,943 --> 00:00:30,264 ♬~ 2 00:00:30,264 --> 00:00:32,799 (加助)あっ お縫さん? 3 00:00:32,799 --> 00:00:37,304 アハッ! (お縫)あっ 加助さん! 4 00:00:37,304 --> 00:00:39,239 どうして こんな所に? 5 00:00:39,239 --> 00:00:42,643 今朝 深川の八幡様で迷子を拾ってね。 6 00:00:42,643 --> 00:00:47,314 その子の家が この先で 今 送り届けたところさ。そうなんだ。 7 00:00:47,314 --> 00:00:50,817 まだ4つの女の子でね。 8 00:00:50,817 --> 00:00:54,454 こないだ お店奉公に出された お姉ちゃん会いたさに➡ 9 00:00:54,454 --> 00:00:57,324 一人で てくてく 深川まで…! 10 00:00:57,324 --> 00:00:59,326 いじらしいじゃねえか。 11 00:00:59,326 --> 00:01:03,096 姉妹ってのは 仲良しで いいもんだ。 12 00:01:03,096 --> 00:01:05,132 気が合わない姉妹だっているよ。 13 00:01:05,132 --> 00:01:07,768 へ? 14 00:01:07,768 --> 00:01:10,103 加助さん! 15 00:01:10,103 --> 00:01:13,140 ちょちょちょ…。 16 00:01:13,140 --> 00:01:17,411 この長屋に 左官の次吉さんって人が住んでるの。 17 00:01:17,411 --> 00:01:20,781 ちょっと のぞいて 姉さんがいるかどうか聞いてもらえない? 18 00:01:20,781 --> 00:01:23,417 姉さん? 19 00:01:23,417 --> 00:01:27,287 8年前に次吉さんちに嫁いだ➡ 20 00:01:27,287 --> 00:01:30,123 私の姉さんよ。 21 00:01:30,123 --> 00:01:32,793 お縫さんのお姉さん! 22 00:01:32,793 --> 00:01:34,728 そりゃあ 気合い入れて挨拶しねえとな。 23 00:01:34,728 --> 00:01:38,599 駄目 駄目 駄目! 24 00:01:38,599 --> 00:01:44,504 もし 姉さんがいなかったら 次吉さんに お届け物があるの。 25 00:01:44,504 --> 00:01:48,976 でも もし 姉さんがいたら…➡ 26 00:01:48,976 --> 00:01:50,911 このまま帰る。 27 00:01:50,911 --> 00:01:55,649 ん? いなかったら訪ねて いたら訪ねない? 28 00:01:55,649 --> 00:01:58,986 何で? お願い! 29 00:01:58,986 --> 00:02:02,389 <世間様から 善人長屋と呼ばれちゃいますが➡ 30 00:02:02,389 --> 00:02:04,458 うちの店子は そろいもそろって➡ 31 00:02:04,458 --> 00:02:07,461 裏稼業持ちの悪党ばかり> 32 00:02:15,268 --> 00:02:18,472 <差配の一家は 盗品を売りさばく系図買い屋> 33 00:02:20,107 --> 00:02:23,610 <そんな悪党どもが 一人の善人に かき回されて➡ 34 00:02:23,610 --> 00:02:25,545 人助けを するはめになる➡ 35 00:02:25,545 --> 00:02:28,548 不思議な物語でございます> 36 00:02:33,954 --> 00:02:38,792 お久しぶりです 次吉義兄さん。 足の具合は いかがですか? 37 00:02:38,792 --> 00:02:42,129 なかなか 痛みが引かなくてね。 38 00:02:42,129 --> 00:02:45,799 お縫ちゃん こんなとこまで わざわざ すまなかったな。 39 00:02:45,799 --> 00:02:48,635 よしてくださいよ 義兄さん。 40 00:02:48,635 --> 00:02:53,640 これ お父っつぁんから預かってきた お金です。 41 00:02:59,312 --> 00:03:01,248 かっちけねえ! 42 00:03:01,248 --> 00:03:04,584 次吉さん その足は どうなさったんで? 43 00:03:04,584 --> 00:03:08,922 アハハッ 去年 普請場で 屋根から落っこっちまってね。 44 00:03:08,922 --> 00:03:11,825 そりゃ大変だ…。 ん? 45 00:03:11,825 --> 00:03:17,397 去年って… 何で もっと早く 千鳥屋さんに知らせなかったんでやすか? 46 00:03:17,397 --> 00:03:21,268 お佳代のやつが 実家にだけは知らせてくれるなと。 47 00:03:21,268 --> 00:03:23,603 そりゃ また どうして? 加助さん。 48 00:03:23,603 --> 00:03:27,808 (次吉)いや あっしも なぜかは分からねえんで。 49 00:03:30,377 --> 00:03:37,784 この2両は 俺の膏薬代に 金貸しから借りた金で…。 50 00:03:37,784 --> 00:03:41,121 ああ 畜生! やっぱ 合点がいかねえや! 51 00:03:41,121 --> 00:03:44,958 次吉義兄さん 何かあったんですか? 52 00:03:44,958 --> 00:03:47,627 よけりゃ お話しくださいやし。 53 00:03:47,627 --> 00:03:50,130 及ばずながら 力になりやす! 54 00:03:50,130 --> 00:03:53,633 アハハハ…。 55 00:03:53,633 --> 00:03:58,972 お佳代が金を借りた相手ってのが お侍の後家で➡ 56 00:03:58,972 --> 00:04:01,875 お重っていう金貸しで➡ 57 00:04:01,875 --> 00:04:07,080 何事も用心深え お佳代だが この人なら信用できると➡ 58 00:04:07,080 --> 00:04:09,583 3両 借りたそうだ。 59 00:04:09,583 --> 00:04:14,387 年季貸しで 額は3両。 利息は2分。➡ 60 00:04:14,387 --> 00:04:17,290 利息分は あらかじめ引いてあります。 61 00:04:17,290 --> 00:04:22,762 証文は 同じものを 2枚作っておきました。➡ 62 00:04:22,762 --> 00:04:25,665 お確かめの上 お名前を。 63 00:04:25,665 --> 00:04:31,171 さすが。 お武家ゆかりの証文は風流ですね。 64 00:04:35,475 --> 00:04:37,477 どうぞ。 65 00:04:43,950 --> 00:04:50,290 では 証文を 1枚 お持ちください。 はい。 66 00:04:50,290 --> 00:04:55,796 1年後 必ず3両を お返しに上がります。 67 00:04:55,796 --> 00:04:58,298 それから とつきがたった。 68 00:04:58,298 --> 00:05:03,136 なんとか 3両 工面ができて 期限まで まだ ふたつきあったが➡ 69 00:05:03,136 --> 00:05:07,741 お佳代は 早速 お重のところに 3両 返しに行ったんだ。 70 00:05:07,741 --> 00:05:10,377 (お重)まあまあ お佳代さん。➡ 71 00:05:10,377 --> 00:05:13,280 期限まで まだ ふたつきもあるのに。 72 00:05:13,280 --> 00:05:17,284 性分なもので。 お重さん。 73 00:05:19,119 --> 00:05:22,923 お借りした お金です。 どうぞ お確かめを。 74 00:05:28,094 --> 00:05:32,399 3両? 75 00:05:32,399 --> 00:05:36,603 そちらの証文を見せてもらえますか? 76 00:05:46,613 --> 00:05:50,283 お佳代さん お貸ししたのは➡ 77 00:05:50,283 --> 00:05:54,287 3両じゃなく 5両のはず。 は? 78 00:05:54,287 --> 00:05:57,791 ここに 5両と書いてあります。 79 00:06:01,561 --> 00:06:04,464 けど… 借りたのは 確かに3両でした。 80 00:06:04,464 --> 00:06:09,436 5両です。 あと2両 足りません。 81 00:06:09,436 --> 00:06:13,740 3両が… 5両に化けた? 82 00:06:13,740 --> 00:06:16,243 証文を すり替えられたとか…? 83 00:06:16,243 --> 00:06:19,079 それはねえ。 用心深え お佳代は➡ 84 00:06:19,079 --> 00:06:25,252 証文と金を渡してから 突っ返されるまで 一度も目を離さなかったそうだ。 85 00:06:25,252 --> 00:06:27,587  心の声 私の勘が騒いでる。➡ 86 00:06:27,587 --> 00:06:33,460 これは きっと とんでもない悪党の手口…。 87 00:06:33,460 --> 00:06:37,931 次吉義兄さん その証文 見せてもらえませんか? 88 00:06:37,931 --> 00:06:40,133 ああ。 んっ! 89 00:06:42,602 --> 00:06:45,105 (次吉)これだ。 90 00:06:45,105 --> 00:06:49,276 はあ~ 本当に風流な証文だ。 91 00:06:49,276 --> 00:06:53,113 この証文 少しお借りしてもいいですか? 92 00:06:53,113 --> 00:06:55,148 そりゃあ 構わねえけど。 93 00:06:55,148 --> 00:06:57,784 姉さんには ないしょでお願いします。 94 00:06:57,784 --> 00:06:59,719 どうして 姉さんには ないしょなんだい? 95 00:06:59,719 --> 00:07:03,356 いいのよ もう。 お預かりします。 96 00:07:03,356 --> 00:07:05,358 ⚟(お佳代)ただいま。 97 00:07:16,369 --> 00:07:20,907 お久しぶりです お佳代姉さん…。 98 00:07:20,907 --> 00:07:23,810 こちらが! お初にお目にかかりやす。 99 00:07:23,810 --> 00:07:27,681 あっしは 善人長屋の加助と申し…。 (お佳代)お縫。 100 00:07:27,681 --> 00:07:30,583 何しに ここに来た? 101 00:07:30,583 --> 00:07:32,519 お佳代。 102 00:07:32,519 --> 00:07:36,022 お縫ちゃん こいつを届けに来てくれたんだよ。 103 00:07:39,259 --> 00:07:42,929 余計なことをするな! 出てけ! 104 00:07:42,929 --> 00:07:46,599 こんな汚いお金 私が受け取るとでも思ったかい!➡ 105 00:07:46,599 --> 00:07:49,302 悪党長屋に さっさと お帰り! 106 00:07:56,943 --> 00:07:59,279 大丈夫かい お縫さん! 107 00:07:59,279 --> 00:08:02,983 お佳代姉さん あんまりだ! 108 00:08:09,723 --> 00:08:12,525 何だって こんな ひどい仕打ちを。 109 00:08:14,361 --> 00:08:18,064 悪く思わないで。 110 00:08:18,064 --> 00:08:22,936 姉さんは 千鳥屋の稼業を…➡ 111 00:08:22,936 --> 00:08:25,739 質屋を嫌ってるから。 112 00:08:25,739 --> 00:08:29,242 けど 悪党長屋は言い過ぎだ。 113 00:08:29,242 --> 00:08:35,048 千七長屋は善人長屋で通ってる 気持ちのいい人たちばっかりだってのに。 114 00:08:38,918 --> 00:08:41,388 加助さん。 115 00:08:41,388 --> 00:08:47,260 姉さんが言ったことは お父っつぁんや おっ母さんには黙っててね。 116 00:08:47,260 --> 00:08:49,763 何でだい? 117 00:08:49,763 --> 00:08:52,966 聞いたら 悲しむから…。 118 00:08:57,937 --> 00:09:02,442 これが お佳代姉さんから預かった 証文です。 119 00:09:06,546 --> 00:09:10,717 でね お父っつぁんと おっ母さんの気持ちは➡ 120 00:09:10,717 --> 00:09:13,753 ありがたく頂戴するけど➡ 121 00:09:13,753 --> 00:09:17,757 2両は 自分で なんとかするって。 122 00:09:20,894 --> 00:09:26,599 でも その… 本当に ありがとうって。 123 00:09:38,445 --> 00:09:41,915 これは…➡ 124 00:09:41,915 --> 00:09:44,717 帰りに転んじまって。 125 00:09:46,786 --> 00:09:50,990 (お俊)あ… お縫 来て。 126 00:10:04,771 --> 00:10:10,276 (儀右衛門)どんな手妻だ… 畜生め。 127 00:10:17,484 --> 00:10:26,793 ♬~ 128 00:10:26,793 --> 00:10:30,296 痕が残らないといいけど…。 129 00:10:30,296 --> 00:10:39,973 ♬~ 130 00:10:39,973 --> 00:10:44,811 <お佳代姉さんは お父っつぁんが 裏で系図買いをしていることを➡ 131 00:10:44,811 --> 00:10:48,515 14歳になるまで知らずに育った> 132 00:10:51,150 --> 00:10:54,821 <そのことに気付いた時 親ばかりか➡ 133 00:10:54,821 --> 00:11:00,126 懐いていた長屋のみんなまで 裏稼業持ちの悪党だと分かった> 134 00:11:05,265 --> 00:11:09,469 お姉ちゃん どうしたの? 135 00:11:13,606 --> 00:11:15,542 来るな! 136 00:11:15,542 --> 00:11:25,118 ♬~ 137 00:11:25,118 --> 00:11:29,956 私は悪党じゃない…。 138 00:11:29,956 --> 00:11:32,959 悪党なんかじゃない! 139 00:11:35,295 --> 00:11:41,434 <私が大好きだった姉さんは すっかり変わってしまった。➡ 140 00:11:41,434 --> 00:11:48,641 身内だけでなく 長屋のみんなに 冷たく当たるようになった> 141 00:11:48,641 --> 00:11:53,313 (儀右衛門)いいかげんにしねえか! (たたく音) 142 00:11:53,313 --> 00:11:57,984 俺のことは いくら腐しても構わねえ。 143 00:11:57,984 --> 00:12:07,660 けどな お縫やお俊 それに店子のみんなを おとしめるような物言いはするな! 144 00:12:07,660 --> 00:12:10,463 こんな家に生まれなきゃよかった。 145 00:12:16,469 --> 00:12:19,105 <それから間もなく➡ 146 00:12:19,105 --> 00:12:23,943 姉さんは 町内のご隠居が持ち込んだ 縁談に飛びついた> 147 00:12:23,943 --> 00:12:34,120 ♬~ 148 00:12:34,120 --> 00:12:37,924 お縫も早く 嫁に出な。 149 00:12:39,993 --> 00:12:44,130 こんな薄汚い家…➡ 150 00:12:44,130 --> 00:12:46,833 いつまでも長居するもんじゃない。 151 00:12:50,303 --> 00:12:55,975 <お佳代姉さんと違って 私は物心付いた時には もう➡ 152 00:12:55,975 --> 00:13:00,947 親と長屋の正体に気付いていた。➡ 153 00:13:00,947 --> 00:13:03,082 姉さんの場合は➡ 154 00:13:03,082 --> 00:13:08,588 みんなに裏切られたような気持ちに なったのかもしれない。➡ 155 00:13:08,588 --> 00:13:11,090 けど…> 156 00:13:11,090 --> 00:13:14,594 けど… けどね…➡ 157 00:13:14,594 --> 00:13:19,766 いくら何でも 嫁入りの日に あんな捨て台詞 ひどすぎる! 158 00:13:19,766 --> 00:13:24,103 今日だって 私に当たるのは お門違いよ! 159 00:13:24,103 --> 00:13:28,408 お縫坊 大根が ヒリヒリ痛えってさ。 160 00:13:37,417 --> 00:13:40,953 痛いのは私よ! 161 00:13:40,953 --> 00:13:48,695 あの人 正しいのは自分だけって顔して 正義の大鎌を いつも振り回してる。 162 00:13:48,695 --> 00:13:55,435 ええ そう。 正しいことはご立派で 悪党は立派じゃない。 163 00:13:55,435 --> 00:14:00,273 けど 姉さんは 優しさ知らずよ。 164 00:14:00,273 --> 00:14:04,143 たとえ どんだけ正しくても➡ 165 00:14:04,143 --> 00:14:07,914 優しさなら 長屋のみんなの方が➡ 166 00:14:07,914 --> 00:14:14,087 何倍も 何倍も 何倍も 何倍も 上なんだから! 167 00:14:14,087 --> 00:14:16,756 うん。 168 00:14:16,756 --> 00:14:23,463 8年ぶりだってのに あんなの…。 169 00:14:32,772 --> 00:14:38,945 ちちんぷいぷい 御代の御宝。 170 00:14:38,945 --> 00:14:42,648 ほら 痛くねえ。 171 00:14:44,617 --> 00:14:49,422 子供扱いしないで。 ヘヘッ。 172 00:14:49,422 --> 00:14:52,291 ほら 食え。 173 00:14:52,291 --> 00:15:08,074 ♬~ 174 00:15:08,074 --> 00:15:12,245 (儀右衛門)確かに 金5両となっておりやすね。 175 00:15:12,245 --> 00:15:14,914 (半造)へい。 (2人)う~ん…。 176 00:15:14,914 --> 00:15:17,817 (新九郎)待たせたな。 あっ これは これは。 177 00:15:17,817 --> 00:15:21,254 (新九郎)あいびき相手が なかなか離してくれんでの。 178 00:15:21,254 --> 00:15:23,589 遅れて すまなかった。 ハハハハハ。 179 00:15:23,589 --> 00:15:27,093 新九郎様にお話ししたら 二つ返事で受けてくださいました。 180 00:15:27,093 --> 00:15:29,028 ああ~! 181 00:15:29,028 --> 00:15:31,264 新九郎様 半造さんも➡ 182 00:15:31,264 --> 00:15:35,768 この度は 身内のことで ご足労かけて 面目ないことです。 183 00:15:35,768 --> 00:15:38,671 あっ いえ。 どうぞ どうぞ どうぞ。 半造さんも。 184 00:15:38,671 --> 00:15:44,277 差配殿の身内は 我らが身内だ。 (半造)そのとおりで。 185 00:15:44,277 --> 00:15:49,115 新九郎様 これが 例の証文で。 186 00:15:49,115 --> 00:15:51,050 お俊から あらましは聞いた。 187 00:15:51,050 --> 00:15:55,888 「蛇の道は蛇」だ。 この証文に からくりがあるなら➡ 188 00:15:55,888 --> 00:15:59,759 よろず贋作承る この梶 新九郎が 必ず暴いてみせるよ。 189 00:15:59,759 --> 00:16:03,563 (半造)さすが 新九郎様。 心強いお言葉で。 190 00:16:05,565 --> 00:16:08,367 お縫は? 早く寝ちまいました。 191 00:16:08,367 --> 00:16:12,905 今日は疲れたみたいで。 で 新九郎様 いかがでございましょうか? 192 00:16:12,905 --> 00:16:16,776 あ~…。 193 00:16:16,776 --> 00:16:20,246 紙は美濃の紙だろう。 194 00:16:20,246 --> 00:16:25,117 そこそこの紙屋なら そろえのある 一枚30文ほどのもの。 195 00:16:25,117 --> 00:16:27,987 はあ~ さすがの さすがだ。 196 00:16:27,987 --> 00:16:31,591 で 3両が5両に化けた その からくりは? 197 00:16:31,591 --> 00:16:35,394 いや そこまでは まだ分からん。 198 00:16:35,394 --> 00:16:40,233 差配殿 これを預かってもよいか? よろしくお願いいたしやす。 199 00:16:40,233 --> 00:16:44,136 で 半造さん 金貸しの方は どうだ? 200 00:16:44,136 --> 00:16:48,274 へい。 金貸しの名は 沢渡 重。➡ 201 00:16:48,274 --> 00:16:51,611 お納戸組の お武家の側女だったが➡ 202 00:16:51,611 --> 00:16:54,647 5年前に 亭主を病で亡くしておりやしてね。 203 00:16:54,647 --> 00:16:57,783 後家か。 そのあとは➡ 204 00:16:57,783 --> 00:17:01,754 亭主の上役の妾になったんだが この男 還暦過ぎで➡ 205 00:17:01,754 --> 00:17:04,891 女盛りにゃ ちっと物足りねえようで。 206 00:17:04,891 --> 00:17:06,826 間男がいるのかい。 207 00:17:06,826 --> 00:17:10,062 長もちはしねえが 噂は絶えねえようで。 208 00:17:10,062 --> 00:17:17,570 3年前から お上黙認の金貸し いわゆる 後家貸しを始めやした。 209 00:17:17,570 --> 00:17:23,743 でも 金を貸すのは なぜか冬のみで。 冬のみ…? 210 00:17:23,743 --> 00:17:26,646 しかも 年季貸し一本。 211 00:17:26,646 --> 00:17:30,383 貸した金を 客が返すのも 1年後の冬。 212 00:17:30,383 --> 00:17:34,253 それを 雁の冬渡りになぞらえて➡ 213 00:17:34,253 --> 00:17:38,090 雁金貸しのお重って 風流な名で通っておりやす。 214 00:17:38,090 --> 00:17:40,126 雁金貸しのお重。 215 00:17:40,126 --> 00:17:45,965 証文の額が勝手に化けたってのは お佳代坊だけじゃねえようで。 216 00:17:45,965 --> 00:17:50,603 けど 化ける額は ぎりぎりに おさえてやがるようで。➡ 217 00:17:50,603 --> 00:17:53,940 だから こんな大騒ぎ なっておりやせん。 218 00:17:53,940 --> 00:17:58,277 なるほど。 一つ一つは小口だが 合わせれば大金が稼げる。 219 00:17:58,277 --> 00:18:00,713 狡猾な女だぜ。 220 00:18:00,713 --> 00:18:03,749 女じゃない。 女狐さ。 221 00:18:03,749 --> 00:18:06,886 けど せんだって とうとう死人が出たようで。 222 00:18:06,886 --> 00:18:09,722 えっ? (半造)病の亭主の薬代にと➡ 223 00:18:09,722 --> 00:18:14,593 お重に金を借りた 若女房でやす。 224 00:18:14,593 --> 00:18:20,366 借金から1年後 返済に行った目の前で➡ 225 00:18:20,366 --> 00:18:23,903 証文の額が ドロン 増えちまった。 226 00:18:23,903 --> 00:18:28,374 その時 何かが プツンと切れたんでしょう。 227 00:18:28,374 --> 00:18:33,179 若女房は その足で 大川に身投げを…。 228 00:18:36,248 --> 00:18:40,753 (半造)雁金貸しのお重は 人殺しでやす。 229 00:18:40,753 --> 00:18:50,463 ♬~ 230 00:18:50,463 --> 00:18:52,665 (猫の鳴き声) 231 00:18:54,300 --> 00:18:57,603 ハッ 何だ お前か。 232 00:18:57,603 --> 00:19:00,573 おいで。 233 00:19:00,573 --> 00:19:02,775 (鳴き声) 234 00:19:04,877 --> 00:19:07,346 お前は死んじゃ嫌よ。 235 00:19:07,346 --> 00:19:10,549 いつまでも 私と一緒にね。 よいしょ。 236 00:19:10,549 --> 00:19:13,352 (鳴き声) ん~。 237 00:19:25,064 --> 00:19:27,066 (次吉)お佳代。 238 00:19:29,902 --> 00:19:35,374 あの長屋の手は 死んでも借りないよ。 239 00:19:35,374 --> 00:19:40,079 そうじゃなくて。 お縫ちゃんに わびを入れろ。➡ 240 00:19:40,079 --> 00:19:47,253 たった一人の妹に 今日の仕打ちは ありゃねえぜ。 241 00:19:47,253 --> 00:19:57,963 ♬~ 242 00:19:57,963 --> 00:20:01,600 こんな汚いお金 私が受け取るとでも思ったかい! 243 00:20:01,600 --> 00:20:04,270 悪党長屋に さっさと お帰り! 244 00:20:04,270 --> 00:20:15,581 ♬~ 245 00:20:19,118 --> 00:20:24,623 (鶏の鳴き声) ささ! さ! さ! さ! ささささ! 246 00:20:24,623 --> 00:20:27,526 ガマだよ? ガマの油だよ? 247 00:20:27,526 --> 00:20:32,364 本当に よしてよ! 蛙は苦手で! 嫌~! 248 00:20:32,364 --> 00:20:36,135 (戸が開く音) 新九郎様! 249 00:20:36,135 --> 00:20:38,637 おお お縫 どうした? 助けてください! 250 00:20:38,637 --> 00:20:40,573 おはようございやす。 おう。 251 00:20:40,573 --> 00:20:45,144 さあ お縫さん 額の傷に ガマの油を。 252 00:20:45,144 --> 00:20:47,079 嫌! 253 00:20:47,079 --> 00:20:52,084 すまんが加助 ガマの油は後にして 墨を買ってきてくれぬか? 254 00:20:55,454 --> 00:20:57,990 へい! 合点で! 255 00:20:57,990 --> 00:20:59,925 その前に ガマの油。 256 00:20:59,925 --> 00:21:03,395 ガマの油は後にして 墨を買ってきてくれぬか? 257 00:21:03,395 --> 00:21:05,331 へい。 258 00:21:05,331 --> 00:21:11,604 もう一度 お重の証文を よく見てごらん。 はい。 259 00:21:11,604 --> 00:21:14,406 (新九郎)何か気付いたことはないか? 260 00:21:17,409 --> 00:21:19,612 ありません。 261 00:21:22,248 --> 00:21:27,086 これは お重の証文と同じ類いの紙だ。 262 00:21:27,086 --> 00:21:29,789 模様は春だが よく見てごらん。 263 00:21:33,425 --> 00:21:36,128 とっても きれいな紙。 264 00:21:39,231 --> 00:21:42,802 さて ここからが お立ち会い。 265 00:21:42,802 --> 00:21:46,005 まずは ここに 「参」と書いてみる。 266 00:21:51,510 --> 00:21:56,315 この周りを 水でぬらして…。 267 00:21:58,651 --> 00:22:01,654 それから これだ。 268 00:22:11,597 --> 00:22:15,768 すごい… まるで気付かなかった。 269 00:22:15,768 --> 00:22:20,940 模様の下に 違う字を書いておいて 模様を 糊で貼り付けた。 270 00:22:20,940 --> 00:22:27,413 そのとおり。 しかし からくりの残り半分が分からぬ。 271 00:22:27,413 --> 00:22:29,782 お佳代姉さんが見ている前で➡ 272 00:22:29,782 --> 00:22:33,619 どうやって 一瞬で糊を剥がせたのか… ですね。 273 00:22:33,619 --> 00:22:38,490 (新九郎)そうだ。 こんなもの 使えるはずもない。 274 00:22:38,490 --> 00:22:44,964 手がかりは 冬にしか金を貸さぬ やり口かもしれぬ…。 275 00:22:44,964 --> 00:22:47,967 雁金貸しか…。 276 00:23:02,915 --> 00:23:05,818 かなり 腫れは引いておるようだが➡ 277 00:23:05,818 --> 00:23:10,656 念のため ガマの油は塗ってもらえ。 278 00:23:10,656 --> 00:23:12,625 ガマは嫌! 279 00:23:12,625 --> 00:23:18,931 (雨音) 280 00:23:18,931 --> 00:23:20,866 ああっ! あっ! 281 00:23:20,866 --> 00:23:23,068 ああっ! 282 00:23:33,946 --> 00:23:36,248 どうされた? 283 00:23:45,557 --> 00:23:48,761 これを。 あ…。 284 00:23:50,796 --> 00:23:53,699 下駄か。 285 00:23:53,699 --> 00:23:56,135 おつかまりなされ。 286 00:23:56,135 --> 00:24:05,577 ♬~ 287 00:24:05,577 --> 00:24:07,513 足を。 288 00:24:07,513 --> 00:24:53,292 ♬~ 289 00:24:53,292 --> 00:24:56,128 5年前に夫を亡くし➡ 290 00:24:56,128 --> 00:25:01,934 この先 どうやって生きていこうかと 心細く…。 291 00:25:01,934 --> 00:25:07,573 後家貸しを営んでおりますのも 女が一人で生きていくためのすべ…。 292 00:25:07,573 --> 00:25:13,912 あっ。 どうぞ 蔑まないでくださいましね。 293 00:25:13,912 --> 00:25:16,749 蔑むものか。 294 00:25:16,749 --> 00:25:21,387 嘘。 蔑んでおられます。 295 00:25:21,387 --> 00:25:25,924 今日 初めて会ったお人と このような…。 296 00:25:25,924 --> 00:25:30,129 きっと 蔑んでおられます。 297 00:25:39,772 --> 00:25:42,808 かわいい人だ。 298 00:25:42,808 --> 00:25:46,645 いいえ 憎まれております。 299 00:25:46,645 --> 00:25:50,783 誰に? みんなに。 300 00:25:50,783 --> 00:25:57,122 そのせいで 死んだ人も…。 301 00:25:57,122 --> 00:26:02,327 あれっぽっちのお金で まさか死ぬなんて…。 302 00:26:04,229 --> 00:26:11,103 このごろは そのことばかり考えて… 心の底が しんとなる。 303 00:26:11,103 --> 00:26:15,607 特に 夜は しんと…。 304 00:26:18,377 --> 00:26:21,747 そのような夜は➡ 305 00:26:21,747 --> 00:26:26,084 また雨が降ってくれるとよいな。 え? 306 00:26:26,084 --> 00:26:32,591 さすれば また あなたに会える。 307 00:26:32,591 --> 00:26:34,593 お名を。 308 00:26:37,930 --> 00:26:42,768 梶 新九郎。 あなたの名は? 309 00:26:42,768 --> 00:26:45,671 沢渡 重…。 310 00:26:45,671 --> 00:26:49,374 新九郎様! フフフッ! 311 00:26:55,481 --> 00:26:59,118 (新九郎) これは お重の家から拝借してきた紙だ。 312 00:26:59,118 --> 00:27:05,924 そして これは この紙を使って 俺が書いた証文。➡ 313 00:27:05,924 --> 00:27:11,063 額は お佳代殿の時と同じ 3両としてある。 314 00:27:11,063 --> 00:27:14,766 差配殿 確かめてくれ。 あ へい。 315 00:27:22,774 --> 00:27:27,980 いえ あっ いや… 特に細工は何もねえようですが。 316 00:27:29,748 --> 00:27:33,085 それでは 種明かしをしよう。 317 00:27:33,085 --> 00:27:36,588 差配殿 そちらを よろしく。 ああ~。 318 00:27:38,257 --> 00:27:43,128 返済の折 雁金貸しのお重は ここに座った。 319 00:27:43,128 --> 00:27:46,932 お俊 お佳代殿の代わりを頼む。 320 00:27:46,932 --> 00:27:48,967 この手拭いを 小判に見立てて➡ 321 00:27:48,967 --> 00:27:51,603 返済してくれ。 承知いたしました。 322 00:27:51,603 --> 00:27:55,274 ご一同 片ときも目を離してはならんぞ。 323 00:27:55,274 --> 00:27:57,209 へい。 はい。 324 00:27:57,209 --> 00:27:59,511 では 頼む。 325 00:28:02,347 --> 00:28:07,653 お借りしました お金です。 どうぞ お確かめを。うん。 326 00:28:12,891 --> 00:28:14,893 3両!? 327 00:28:17,763 --> 00:28:21,900 そちらの証文を いま一度 見せてくれぬか? 328 00:28:21,900 --> 00:28:33,912 ♬~ 329 00:28:33,912 --> 00:28:40,085 やはり お貸ししたのは 3両ではなく5両のはず。 330 00:28:40,085 --> 00:28:42,988 えっ? 331 00:28:42,988 --> 00:28:46,858 ここに 5両と書いてある。 332 00:28:46,858 --> 00:28:48,794 あっ! えっ!? 333 00:28:48,794 --> 00:28:51,697 化けた! こいつぁ 一体…。 334 00:28:51,697 --> 00:28:54,399 新九郎様 一体 どうやったんで? 335 00:28:56,268 --> 00:29:00,105 仕掛けは お重の家から拝借してきた➡ 336 00:29:00,105 --> 00:29:02,541 この糊だ。 糊? 337 00:29:02,541 --> 00:29:05,444 この糊を 昨夜 帰って調べたところ➡ 338 00:29:05,444 --> 00:29:08,880 蝋が混ぜてあった。 蝋? 339 00:29:08,880 --> 00:29:12,384 いよいよ 種明かしをしよう。 340 00:29:16,355 --> 00:29:21,193 証文を 火鉢越しに受け取り➡ 341 00:29:21,193 --> 00:29:25,897 さりげなく 証文を火鉢に近づける。➡ 342 00:29:25,897 --> 00:29:31,236 さすれば 火鉢の熱で 蝋が溶け 模様が剥がれ➡ 343 00:29:31,236 --> 00:29:34,039 膝の上に滑り落ちる。 344 00:29:37,909 --> 00:29:41,380 (新九郎) 火鉢を使う冬にしか使えぬ からくりだ。 345 00:29:41,380 --> 00:29:44,750 雁金貸しと呼ばれる ゆえんだな。 346 00:29:44,750 --> 00:29:50,389 なんてこった… なんて女狐の悪知恵だ! 347 00:29:50,389 --> 00:29:53,292 恩に着ます 新九郎様! 348 00:29:53,292 --> 00:29:55,260 お父っつぁん どうしてやる? 349 00:29:55,260 --> 00:29:58,764 女狐を囲っている 上役のおじいさんに➡ 350 00:29:58,764 --> 00:30:04,269 この悪行と 男出入りの一切合財を 投げ文してやればいい。 351 00:30:04,269 --> 00:30:08,607 体面大事のお侍なら きっと女狐を見限る。 352 00:30:08,607 --> 00:30:12,944 いや うまくいけば成敗だ。 お俊 怖えよ…。 353 00:30:12,944 --> 00:30:16,415 お俊。 お重を あまり追い詰めるのは かわいそうだ。 354 00:30:16,415 --> 00:30:18,784 かわいそうだって? 355 00:30:18,784 --> 00:30:21,687 あの… こう言っちゃなんですが➡ 356 00:30:21,687 --> 00:30:25,957 紙と糊を くすねといて どの口が…。 357 00:30:25,957 --> 00:30:29,628 確かにの。 ただ お重は➡ 358 00:30:29,628 --> 00:30:34,132 心根は ただ寂しいだけの女に思えた。➡ 359 00:30:34,132 --> 00:30:39,938 内心は 己の悪事に おびえておるような。 360 00:30:39,938 --> 00:30:42,808 抱けば分かる。 361 00:30:42,808 --> 00:30:44,843 (お俊)お言葉ですが 新九郎様➡ 362 00:30:44,843 --> 00:30:47,679 うちの娘に ひどいことをした女狐です。➡ 363 00:30:47,679 --> 00:30:51,316 ぎゃふんと言わせてやらないと こっちの腹が おさまりませんよ! 364 00:30:51,316 --> 00:30:53,251 まあまあ お俊。 落ち着け。➡ 365 00:30:53,251 --> 00:30:58,657 え~…。 ん~…。 366 00:30:58,657 --> 00:31:00,926 あっ! 367 00:31:00,926 --> 00:31:11,269 ♬~ 368 00:31:11,269 --> 00:31:13,205 そいつはいいや。 369 00:31:13,205 --> 00:31:16,408 身投げした若女房の供養にもなりやす。 370 00:31:16,408 --> 00:31:21,413 まあ そうだね…。 で いつ やるんだい? 371 00:31:23,115 --> 00:31:29,621 雨の降る夜は… 戸締まりも緩かろう。 372 00:31:47,973 --> 00:31:51,643 きっと いらっしゃらない…。 373 00:31:51,643 --> 00:31:57,349 (雷鳴) 374 00:31:59,518 --> 00:32:15,834 ⚟(雷鳴) 375 00:32:15,834 --> 00:32:53,138 ♬~ 376 00:32:53,138 --> 00:33:00,946 恨めしや… 雁金貸し…。 377 00:33:00,946 --> 00:33:04,382 嫌~っ! 378 00:33:04,382 --> 00:33:10,255 大川の水は… 冷たいね…。 379 00:33:10,255 --> 00:33:13,124 ひっ! ごめんなさい! 380 00:33:13,124 --> 00:33:17,596 あの証文は 私が細工をいたしました! 381 00:33:17,596 --> 00:33:20,398 もう二度と いたしません! 382 00:33:20,398 --> 00:33:23,101 お許しを! お許しを~! 383 00:33:23,101 --> 00:33:29,808 あ~…。 384 00:33:32,611 --> 00:33:50,795 ♬~ 385 00:33:50,795 --> 00:33:54,633 南無阿弥陀仏! 南無阿弥陀仏! 386 00:33:54,633 --> 00:33:56,568 南無阿弥陀仏! 387 00:33:56,568 --> 00:34:02,908 (泣き声) 388 00:34:02,908 --> 00:34:07,379 ♬~ 389 00:34:07,379 --> 00:34:13,752 <その夜 雁金貸しのお重は 本所松倉町から姿を消した> 390 00:34:13,752 --> 00:34:15,954 恐ろしや~! 391 00:34:21,393 --> 00:34:23,328 お縫さん。 392 00:34:23,328 --> 00:34:27,098 加助さん どうしたの? また迷子でも拾った? 393 00:34:27,098 --> 00:34:30,135 いや ちっと やぼ用で…。 394 00:34:30,135 --> 00:34:32,270 お縫さんこそ どうして ここに? 395 00:34:32,270 --> 00:34:36,141 うん 何となく…。 396 00:34:36,141 --> 00:34:40,011 お花長屋は この近くだ。 397 00:34:40,011 --> 00:34:42,981 姉さんのところに寄ってくかい? 398 00:34:42,981 --> 00:34:46,985 ハハ… 怖いこと言わないでよ。 399 00:34:59,798 --> 00:35:02,701 こいつは 俺が返しに行ってくる。 400 00:35:02,701 --> 00:35:06,571 駄目だよ。 お前さんが行ったら 必ず こじれちまう。 401 00:35:06,571 --> 00:35:09,908 女狐の夜逃げは 私らが裏で何かやったって➡ 402 00:35:09,908 --> 00:35:12,243 お佳代なら 察しがつくはずだ。➡ 403 00:35:12,243 --> 00:35:17,082 そんなところに のこのこ顔出したら 飛んで火に入る何とかになっちまう。 404 00:35:17,082 --> 00:35:22,754 (儀右衛門)けどよ…。 あの子の身内嫌いは筋金入りだ。 405 00:35:22,754 --> 00:35:26,091 これは 私が返してくるよ。 406 00:35:26,091 --> 00:35:28,994 よせ よせ! そんなことしたら➡ 407 00:35:28,994 --> 00:35:33,765 お互いに 剣突食らわせ合って それこそ 正真正銘 金輪際➡ 408 00:35:33,765 --> 00:35:35,700 取り返しのつかねえことになっちまうよ。 409 00:35:35,700 --> 00:35:39,404 分かった! 私が返してくる! 410 00:35:39,404 --> 00:35:41,473 (2人)えっ? 411 00:35:41,473 --> 00:35:44,109 あ… でも やっぱり…。 412 00:35:44,109 --> 00:35:46,144 よし じゃあ これは お縫に頼もう。 413 00:35:46,144 --> 00:35:50,415 そうだね。 あっ あっ お願いします。 414 00:35:50,415 --> 00:35:54,119 う~ん…。 415 00:35:54,119 --> 00:35:56,321 ん? 416 00:35:57,956 --> 00:35:59,958 (儀右衛門)いらっしゃいませ。 417 00:36:06,765 --> 00:36:12,237 あっ! お佳代。 お佳代。 418 00:36:12,237 --> 00:36:15,740 (儀右衛門)何だ お前 来たのか。 419 00:36:15,740 --> 00:36:17,942 達者だったかい? 420 00:36:24,249 --> 00:36:26,451 お縫…。 421 00:36:33,391 --> 00:36:35,393 (儀右衛門)あっ! 422 00:36:40,265 --> 00:36:43,134 お縫 お縫! お前さん! 423 00:36:43,134 --> 00:36:47,772 けどよ… せっかく ああやって お佳代が。 424 00:36:47,772 --> 00:36:51,409 欲張っちゃいけないよ。 425 00:36:51,409 --> 00:36:53,912 今は これで…。 426 00:36:56,281 --> 00:36:58,950 十分だ。 427 00:36:58,950 --> 00:37:06,057 (泣き声) 428 00:37:06,057 --> 00:37:07,992 そうだな。 429 00:37:07,992 --> 00:37:23,241 ♬~ 430 00:37:23,241 --> 00:37:27,745 あの… 私…➡ 431 00:37:27,745 --> 00:37:32,951 消えた雁金貸しの家を見て思ったの。 432 00:37:35,086 --> 00:37:39,758 善人だろうが 悪人だろうが➡ 433 00:37:39,758 --> 00:37:45,563 私には 力になってくれる お父っつぁんや おっ母さん➡ 434 00:37:45,563 --> 00:37:50,268 長屋のみんながいる。 435 00:37:50,268 --> 00:37:54,272 でも お佳代姉さんは この8年➡ 436 00:37:54,272 --> 00:38:00,578 誰の力も借りずに頑張ってきたんだって。 すごいなって。 437 00:38:16,060 --> 00:38:22,734 私が今日 8年ぶりに千鳥屋に行ったのは➡ 438 00:38:22,734 --> 00:38:28,907 あんたの長屋の加助さんのせいだ。 加助さん? 439 00:38:28,907 --> 00:38:32,377 とんでもない おせっかい焼きだよ。 440 00:38:32,377 --> 00:38:35,280 あんたと私の仲を取り持ちたいって➡ 441 00:38:35,280 --> 00:38:39,250 毎日毎日 うちの長屋に顔出して…➡ 442 00:38:39,250 --> 00:38:42,754 ごはん作ったり 掃除したり➡ 443 00:38:42,754 --> 00:38:45,657 もう しつこいったら ありゃしない。 444 00:38:45,657 --> 00:38:50,261 こんちは! 加助でやす! 445 00:38:50,261 --> 00:38:55,099 追っ払っても 追っ払っても 来るんだよ。 446 00:38:55,099 --> 00:39:00,305 あの人 あんたたちの裏の顔を 知らないんだね。 447 00:39:02,340 --> 00:39:06,344 そのせいで うちの長屋も大変なの。 448 00:39:13,885 --> 00:39:19,691 うちの人とも すっかり仲良くなっちまって。 449 00:39:19,691 --> 00:39:26,464 せめて居心地悪くしてやろうと 意地悪 重ねるうちに➡ 450 00:39:26,464 --> 00:39:35,240 何だか私の方が 情け知らずの悪党に思えてきて…➡ 451 00:39:35,240 --> 00:39:39,911 腹立たしいったら ありゃしない。 452 00:39:39,911 --> 00:39:45,216 分かる! 善人って始末に負えないわ。 453 00:39:51,522 --> 00:39:56,027 そしたら 後家貸しが消えた。 454 00:39:59,764 --> 00:40:03,401 いいんだ。 借金は3両。 455 00:40:03,401 --> 00:40:06,905 その3両は ちゃんと返してるんだから。 456 00:40:09,607 --> 00:40:11,809 そうね。 457 00:40:31,863 --> 00:40:37,568 傷… よくなったみたいだね。 458 00:40:42,507 --> 00:40:48,813 けがさせちまって 悪かった。 459 00:40:48,813 --> 00:40:52,684 狙って投げたわけじゃないんだ。 460 00:40:52,684 --> 00:40:54,986 ごめん。 461 00:40:57,989 --> 00:41:00,692 姉さん…。 462 00:41:05,263 --> 00:41:08,566 もういいの そんなこと。 463 00:41:13,404 --> 00:41:15,340 よかないよ。 464 00:41:15,340 --> 00:41:20,178 あんたたちに助けてほしいと こっちが頼んだわけじゃない。 465 00:41:20,178 --> 00:41:25,616 系図買い屋の親を許したわけでも 悪党長屋に恐れ入ったわけでもない。 466 00:41:25,616 --> 00:41:31,422 今日だって 千鳥屋の敷居は またいでない。 467 00:41:31,422 --> 00:41:36,227 あんたが勝手に持っていった証文を 取り返しに行っただけだ。 468 00:41:38,129 --> 00:41:41,799 分かってるわ そんなこと。 469 00:41:41,799 --> 00:41:47,805 姉さんは いつだって 悪党嫌いの正しい人だもんね。 470 00:41:49,440 --> 00:41:52,810 ああ そうさ。 471 00:41:52,810 --> 00:41:57,615 証文を お返し。 お縫。 472 00:42:02,387 --> 00:42:06,391 はい お佳代姉さん。 473 00:42:19,804 --> 00:42:23,674 <その時見た 姉さんの背中は➡ 474 00:42:23,674 --> 00:42:29,680 久しぶりに見る 私の優しい お佳代姉さんだった> 475 00:42:35,286 --> 00:42:38,790 お多津…。 お前の亭主の加助だよ~! 476 00:42:38,790 --> 00:42:40,725 堅気じゃないって…? 477 00:42:40,725 --> 00:42:43,661 この世には 知らなくていいことが たくさんある。 478 00:42:43,661 --> 00:42:45,963 寂しかったな。 479 00:42:45,963 --> 00:42:47,899 長屋の連中 皆殺しだ。 480 00:42:47,899 --> 00:42:50,835 この命 張ってみる。 度胸がいいのも大概にしろ! 481 00:42:50,835 --> 00:42:55,139 加助さんなら そのからくり錠… 開けられる?