1 00:00:02,202 --> 00:00:05,772 (雷鳴) 2 00:00:05,772 --> 00:00:08,408 (捕り方)七天の甚兵衛と その一味➡ 3 00:00:08,408 --> 00:00:10,477 神妙に縛につけ! 4 00:00:10,477 --> 00:00:14,114 (喚声) 5 00:00:14,114 --> 00:00:16,316 わあ~! やあ~っ! 6 00:00:18,986 --> 00:00:21,288 あっ! ああっ! うっ! 7 00:00:23,290 --> 00:00:26,193 やあっ! お頭~! 8 00:00:26,193 --> 00:00:30,063 はあ~っ! 9 00:00:30,063 --> 00:00:32,100 うわ~っ! (捕り方)ひっ捕らえろ! 10 00:00:32,100 --> 00:00:46,013 ♬~ 11 00:00:46,013 --> 00:00:51,318 いらっしゃい いらっしゃい! さあ~ いらっしゃい~! 12 00:00:51,318 --> 00:00:55,155 (文吉)結構な人出だな。 江戸は暇人ばかりかい。 13 00:00:55,155 --> 00:00:57,824 与太 飛ばさないの 文さん。 14 00:00:57,824 --> 00:01:00,794 あれ 加助さんは? えっ? 15 00:01:00,794 --> 00:01:03,931 加助さ~ん! あっ。 16 00:01:03,931 --> 00:01:06,266 おい おい お縫坊。 17 00:01:06,266 --> 00:01:10,137 もう~ そんなとこに立ってたら はた迷惑よ 加助さん。 18 00:01:10,137 --> 00:01:17,411 3年前 お多津と めおとになって 初めて来た酉の市が➡ 19 00:01:17,411 --> 00:01:20,948 この八幡様だったんだ。 20 00:01:20,948 --> 00:01:22,883 ここに? 21 00:01:22,883 --> 00:01:26,620 お縫さんには 話したことがあったよな。 22 00:01:26,620 --> 00:01:36,129 去年 赤坂の大火事で 俺ぁ お多津と おたまを亡くしちまった。 23 00:01:36,129 --> 00:01:42,302 おたまって 娘さんの? ああ。 24 00:01:42,302 --> 00:01:47,808 後追いしようと さまよううち また ここに…。 25 00:01:50,644 --> 00:01:54,448 鳥居の向こうに めっぽう高い➡ 26 00:01:54,448 --> 00:01:59,319 真っ青な 突き抜けた空が見えてさ。 27 00:01:59,319 --> 00:02:04,124 ヘ… ヘヘ…。 28 00:02:04,124 --> 00:02:07,027 生きててよかった。 29 00:02:07,027 --> 00:02:13,600 今年は お縫さん 文吉さんと一緒に 酉の市だ。 30 00:02:13,600 --> 00:02:18,271 八幡様 ありがとうございやした! 31 00:02:18,271 --> 00:02:28,982 ♬~ 32 00:02:28,982 --> 00:02:31,184 お多津…。 33 00:02:37,657 --> 00:02:40,127 お多津! 34 00:02:40,127 --> 00:02:44,798 俺だ! お前の亭主の加助だよ~! 35 00:02:44,798 --> 00:02:47,300 文さん! 36 00:02:47,300 --> 00:02:52,139 お多津! お多津~! 37 00:02:52,139 --> 00:02:56,977 <世間様から 善人長屋と呼ばれちゃいますが➡ 38 00:02:56,977 --> 00:02:58,912 うちの店子は そろいもそろって➡ 39 00:02:58,912 --> 00:03:01,715 裏稼業持ちの悪党ばかり> 40 00:03:08,588 --> 00:03:12,292 <差配の一家は 盗品を売りさばく系図買い屋> 41 00:03:14,094 --> 00:03:17,597 <そんな悪党どもが 一人の善人に かき回されて➡ 42 00:03:17,597 --> 00:03:19,533 人助けを するはめになる➡ 43 00:03:19,533 --> 00:03:22,736 不思議な物語でございます> 44 00:03:42,756 --> 00:03:47,294 文さん? あっ! 45 00:03:47,294 --> 00:03:49,229 お多津は!? 46 00:03:49,229 --> 00:03:52,532 悪い 見失っちまった。 47 00:03:57,437 --> 00:04:03,944 文さん 大丈夫? 手当てするから 後で うちに来て。 48 00:04:12,252 --> 00:04:15,088 加助さん。 49 00:04:15,088 --> 00:04:21,962 錠前の注文が たまってるんで 明日 もう一度 八幡様に行ってみるよ。 50 00:04:21,962 --> 00:04:33,106 ♬~ 51 00:04:33,106 --> 00:04:37,944 もうちっとで追いつきそうで 「お多津さん」と呼んだらよ➡ 52 00:04:37,944 --> 00:04:41,615 その女は 足を速めた。 53 00:04:41,615 --> 00:04:46,419 その足運びが どうにも 堅気じゃない気がしたんだ。 54 00:04:46,419 --> 00:04:49,122 堅気じゃないって…? 55 00:04:49,122 --> 00:04:52,626 人をまくのを心得てる感じだ。➡ 56 00:04:52,626 --> 00:04:56,963 そこで 俺も気配を消して こっそりと つけてみた。➡ 57 00:04:56,963 --> 00:04:58,999 そしたら…➡ 58 00:04:58,999 --> 00:05:01,501 浅草まで来た時だ。 59 00:05:04,371 --> 00:05:08,575 (文吉)ごめんよ。 痛えな にいさん。 60 00:05:08,575 --> 00:05:12,445 おらっ! 61 00:05:12,445 --> 00:05:15,749 (文吉)いきなりで避けようがなかった。➡ 62 00:05:15,749 --> 00:05:19,953 間違えねえ。 そいつらは女と関わりがある。 63 00:05:23,089 --> 00:05:28,795 (文吉)俺は 女の方を諦めて やつらの方を追ってみた。 64 00:05:33,600 --> 00:05:41,308 (文吉)すると 浅草南の 祐念寺って小さな寺に入っていったよ。 65 00:05:43,276 --> 00:05:47,948 祐念寺…。 66 00:05:47,948 --> 00:05:50,984 私 その祐念寺って寺 探ってみる。 67 00:05:50,984 --> 00:05:53,753 およし。 おっ母さん。 68 00:05:53,753 --> 00:05:58,425 きっと 他人の空似だ。 お父っつぁん!? 69 00:05:58,425 --> 00:06:02,062 お多津と呼ばれて 女は逃げた。 70 00:06:02,062 --> 00:06:07,868 加助さんに会えない 会いたくない事情がある。 71 00:06:07,868 --> 00:06:12,372 つけてただけの文吉さんを いきなり殴る蹴るってのも➡ 72 00:06:12,372 --> 00:06:16,376 荒っぽすぎる。 手慣れ過ぎてる。 けど…。 73 00:06:18,578 --> 00:06:26,253 この世には 知らなくていいことが たくさんある。 74 00:06:26,253 --> 00:06:32,926 もし 大火事よりも もっと つらい何かが出てきたら➡ 75 00:06:32,926 --> 00:06:41,268 善人の加助さんを 今より もっと苦しめることになる。 76 00:06:41,268 --> 00:06:43,470 およし。 77 00:06:45,772 --> 00:06:49,276 じゃあ 俺は 殴られ損の蹴られ損かよ。 78 00:06:49,276 --> 00:06:54,481 バカ野郎。 命があっただけ ありがてえと思え。 79 00:06:57,150 --> 00:07:01,921 さてと。 畜生…。 80 00:07:01,921 --> 00:07:14,901 ♬~ 81 00:07:14,901 --> 00:07:16,937 <次の日から 加助さんは➡ 82 00:07:16,937 --> 00:07:22,942 朝早くから 毎日毎日 お多津さんを探し始めた> 83 00:07:26,613 --> 00:07:30,917 <お多津さんの消息は もちろんだろうけど➡ 84 00:07:30,917 --> 00:07:37,257 一人娘の おたまちゃんの生き死にが どうしても知りたいんだと思う。➡ 85 00:07:37,257 --> 00:07:41,127 おたまちゃんは 生きていれば 今3つ> 86 00:07:41,127 --> 00:07:44,764 (庄治)あの野郎…。 (安太郎)こりゃこりゃ ヘッ。 87 00:07:44,764 --> 00:07:51,404 <毎日毎日 八幡様から赤坂へ 行方を尋ねて さまよい歩き➡ 88 00:07:51,404 --> 00:07:54,908 夜は夜なべで仕事を続けた> 89 00:07:58,111 --> 00:08:01,348 <私は 何度か加助さんに言った。➡ 90 00:08:01,348 --> 00:08:05,051 こんなこと続けてちゃ 体を壊すと> 91 00:08:09,055 --> 00:08:15,562 <生きてる望みが出てきたんだから へっちゃらだと加助さんは答えた> 92 00:08:19,232 --> 00:08:25,038 (菊松)加助さん また痩せちまったな。 はあ… どうしたもんかね…。 93 00:08:25,038 --> 00:08:31,811 <毎日毎日 望みをつないで 毎日毎日 見つからなくて…> 94 00:08:31,811 --> 00:08:33,780 おっさん…。 95 00:08:33,780 --> 00:08:38,985 <でも やっぱり探すのが人の心だと 加助さんは言った> 96 00:08:42,389 --> 00:08:44,891 (半造)今日も外れか…。 97 00:09:00,540 --> 00:09:03,543 (鶏の鳴き声) 98 00:09:12,886 --> 00:09:15,922 手がかりは祐念寺だ。 99 00:09:15,922 --> 00:09:20,560 どうやって探る? 文さん…。 100 00:09:20,560 --> 00:09:24,731 江戸っ子が これ以上 見てられると思うかい? 101 00:09:24,731 --> 00:09:29,235 文さん! わ~! ちょ ちょ… やめろ! 離せ! 102 00:09:29,235 --> 00:09:33,907 けど 文吉さんは 連中に顔を見られてるだろう。 103 00:09:33,907 --> 00:09:35,942 何の話ですかい? おかみさん。 104 00:09:35,942 --> 00:09:38,945 こんな手は どうかい? 105 00:09:45,618 --> 00:09:49,456 なるほど! そいつぁ いい手だ! 106 00:09:49,456 --> 00:09:52,592 ありがとう おっ母さん! やるわ。 107 00:09:52,592 --> 00:09:56,096 儀右衛門の旦那には ないしょだよ。 108 00:09:56,096 --> 00:10:00,266 お竹おばさん? 今の手は お竹さんの策なんだよ。 109 00:10:00,266 --> 00:10:02,602 あっ… いいの!? 110 00:10:02,602 --> 00:10:07,474 (お竹)子供が生きてんなら 会わせてやりたいじゃないか。 111 00:10:07,474 --> 00:10:11,277 お竹おばさん! 112 00:10:11,277 --> 00:10:13,947 大丈夫 私がついてるよ。 113 00:10:13,947 --> 00:10:17,450 お竹さん お縫を頼むね。 114 00:10:19,619 --> 00:10:26,125 なるほどねえ。 男は理屈で動くが 女は情で動く。 115 00:10:26,125 --> 00:10:30,964 こいつぁ 儀右衛門の旦那も あ お手上げだよお。 116 00:10:30,964 --> 00:10:39,172 (笑い声) 117 00:10:40,673 --> 00:10:44,310 そうですか。 そんな遠方から わざわざ➡ 118 00:10:44,310 --> 00:10:47,313 行方知れずの息子さんを訪ねて この祐念寺に…? 119 00:10:47,313 --> 00:10:50,984 んだんだ。 村のもんがよ➡ 120 00:10:50,984 --> 00:10:55,822 浅草の祐念寺たら お寺でよお せがれを見だと➡ 121 00:10:55,822 --> 00:10:58,725 おらに教えてくれだもんで➡ 122 00:10:58,725 --> 00:11:04,264 娘っ子さ連れて やっとの思いで。 123 00:11:04,264 --> 00:11:07,267 どうか せがれに会わせてくんつぇ。 124 00:11:07,267 --> 00:11:11,037 顔さ見だら 兄ちゃかどうが分かっぺ。 125 00:11:11,037 --> 00:11:13,606 会わせてくんつぇ。 126 00:11:13,606 --> 00:11:16,809 はあ… 少々 お待ちを。 127 00:11:20,780 --> 00:11:24,417 お縫坊 なかなかの なまりだっぺ。 128 00:11:24,417 --> 00:11:27,787 お竹おばあに 仕込まれちゃからなあ。 129 00:11:27,787 --> 00:11:32,959 こんで 中の連中の顔さ まるっと確かめられっぺ。 130 00:11:32,959 --> 00:11:38,264 文さんを殴っだやつらの人相はと…。 131 00:11:42,635 --> 00:11:45,672 お待ち遠…。 132 00:11:45,672 --> 00:11:50,376 こん人じゃね! 兄ちゃは もっど いい男だぁ! 133 00:11:50,376 --> 00:11:52,312 は? (お竹)んだんだ。 134 00:11:52,312 --> 00:11:54,647 もっと 人がいんなら 連れてきてくんつぇ。 135 00:11:54,647 --> 00:11:57,550 と おっしゃいましても 今 お勤めの最中でして。 136 00:11:57,550 --> 00:12:01,254 駄目だってのか!? せがれを どこさ隠した! 137 00:12:01,254 --> 00:12:04,257 丑松~!おっ… おい! ちょっと! 138 00:12:04,257 --> 00:12:08,127 ちょっと…! 触んでねえ こら! 139 00:12:08,127 --> 00:12:11,264 お寺のくせによ お慈悲はねえのか? 140 00:12:11,264 --> 00:12:16,402 この寺は 妙な寺だ! 丑松~! 兄ちゃ~! 141 00:12:16,402 --> 00:12:22,909 どうしました そのような 大きなお声で。 142 00:12:26,779 --> 00:12:28,815 おめえ 誰だ? 143 00:12:28,815 --> 00:12:34,621 拙寺の住職 覚雲でございます。 144 00:12:38,791 --> 00:12:46,299 拙寺には あと2人 寺男がおりますゆえ 今 お改めを。 145 00:12:46,299 --> 00:12:50,637 ご住職のほかに 坊さんがいるなら 連れてきてくんつぇ。 146 00:12:50,637 --> 00:12:54,507 もしかしたら 坊主になってるかもしれねえべ。 147 00:12:54,507 --> 00:12:57,310 承知しました。 148 00:12:57,310 --> 00:13:00,813 皆を連れてきなさい。 はい。 149 00:13:08,588 --> 00:13:11,491  心の声 私の勘が働かない。➡ 150 00:13:11,491 --> 00:13:15,495 悪人のにおいが まるでしない。 151 00:13:24,404 --> 00:13:28,274  心の声  文さんを殴った連中の人相と似てる。 152 00:13:28,274 --> 00:13:33,946 拙寺におるのは これで全てでございます。 153 00:13:33,946 --> 00:13:36,149 ほんじゃ。 154 00:13:41,421 --> 00:13:43,790 おっ母! 155 00:13:43,790 --> 00:13:47,427 おら はばかりに行きてえ。 156 00:13:47,427 --> 00:13:50,296 何だ おめえ こんな大事な時に! 157 00:13:50,296 --> 00:13:54,300 腹が痛えんだ。 きっど あの弁当が…。 158 00:13:54,300 --> 00:13:56,969 (2人)はっ! イテテテテ…。 159 00:13:56,969 --> 00:14:01,941 御不浄は その庭を下りた先です。 どうぞ。 160 00:14:01,941 --> 00:14:05,078 すまねえすぅ! 161 00:14:05,078 --> 00:14:10,249 あ… ああ… イテテテテ… あっ あっ! 162 00:14:10,249 --> 00:14:12,251 (嘲笑) 163 00:14:12,251 --> 00:14:14,554 これ! 164 00:14:39,946 --> 00:14:42,148 こんにちは。 165 00:14:50,289 --> 00:14:53,960 こんにちは。 お名は 何て言うの? 166 00:14:53,960 --> 00:14:57,830 おたま。 おたま!? 167 00:14:57,830 --> 00:15:03,236 おたまって 娘さんの? ああ。 168 00:15:03,236 --> 00:15:05,738 おたまちゃん 今 いくつ? 169 00:15:05,738 --> 00:15:07,673 みっちゅ。 170 00:15:07,673 --> 00:15:09,609 おっ母さんは どこ? 171 00:15:09,609 --> 00:15:13,079 やちゅやの くら。 172 00:15:13,079 --> 00:15:15,782 やちゅ? 173 00:15:19,252 --> 00:15:25,591 ハハハッ かわいい子だっぺな~! 坊さんの子け? 174 00:15:25,591 --> 00:15:29,762 この子は お浜と申しましてな。 175 00:15:29,762 --> 00:15:35,101 母親が奉公に出ている間 拙僧が預かっておりますのじゃ。 176 00:15:35,101 --> 00:15:40,973 さあ おいで お浜。 おやつをあげよう。 177 00:15:40,973 --> 00:15:44,977 お浜じゃないよ! おたまだよ! 178 00:15:51,117 --> 00:15:54,153  心の声  私の勘が 一気に騒いだ。➡ 179 00:15:54,153 --> 00:15:57,657 ものすごく 血生臭いにおいだ。 180 00:16:04,363 --> 00:16:10,069 一人で寂しかったな。 181 00:16:15,741 --> 00:16:18,244 お浜。 182 00:16:26,452 --> 00:16:28,754 ハハハハ…。 183 00:16:36,762 --> 00:16:42,401 八幡様で見た女の人は お多津さんで間違いないと思う。 184 00:16:42,401 --> 00:16:44,470 おたまちゃんも 祐念寺にいた。 185 00:16:44,470 --> 00:16:48,774 そうかい。 おたまちゃん 生きてたのかい。 186 00:16:48,774 --> 00:16:51,677 だけど あれじゃ人質だわ。 187 00:16:51,677 --> 00:16:54,947 お多津さんは おたまちゃんを人質に取られて➡ 188 00:16:54,947 --> 00:16:56,883 よくないことを させられてるのかも。 189 00:16:56,883 --> 00:17:01,754 坊主の2人は 文さんから聞いた 男たちの人相に そっくりでしたよ。➡ 190 00:17:01,754 --> 00:17:05,558 寺男らも 坊主らも ありゃ 嘘つきの人相だ。➡ 191 00:17:05,558 --> 00:17:07,894 騙りの私が言うんだから 間違いない。 192 00:17:07,894 --> 00:17:10,930 中でも 住職の覚雲よ。 193 00:17:10,930 --> 00:17:13,366 最初は上手に隠してたけど➡ 194 00:17:13,366 --> 00:17:18,905 最後の最後に ものすごい血のにおいが 体からしたの。 195 00:17:18,905 --> 00:17:23,609 思い出しても… 震えが来る。 196 00:17:29,549 --> 00:17:34,086 お竹さん その寺 しめて何人いた? 197 00:17:34,086 --> 00:17:39,258 覚雲を筆頭に… 7人だね。 198 00:17:39,258 --> 00:17:46,599 7人…。 で 覚雲は どんな面だった? 199 00:17:46,599 --> 00:17:52,471 年は 儀右衛門の旦那より ちょっと下だ。 200 00:17:52,471 --> 00:17:55,608 見た目は お釈迦様みたいな面で➡ 201 00:17:55,608 --> 00:18:00,112 目の近くに 2つ ほくろがあったね。 202 00:18:02,715 --> 00:18:08,888 旦那… その坊主には 決して 手ぇ出しちゃならねえ。 203 00:18:08,888 --> 00:18:12,358 そいつは 元は本当に坊主だ。 204 00:18:12,358 --> 00:18:19,565 修行中に博打に狂って破門され 七天の頭に拾われて…。 205 00:18:19,565 --> 00:18:23,235 もう30年ほど前の話でやすが。 206 00:18:23,235 --> 00:18:25,171 七天の頭に。 207 00:18:25,171 --> 00:18:27,106 お父っつぁん 知ってるの? 208 00:18:27,106 --> 00:18:32,244 ああ。 いや 七天のお名だけはな。 209 00:18:32,244 --> 00:18:34,180 七天の頭といや➡ 210 00:18:34,180 --> 00:18:38,050 そのころ 江戸の裏を意のままにする 大盗賊だった。 211 00:18:38,050 --> 00:18:42,955 ああ 大勢の手下を束ね 狙うは あくどい大店ばかり。➡ 212 00:18:42,955 --> 00:18:47,593 そりゃ 見事な手際で 一滴の血も流さなかった。 213 00:18:47,593 --> 00:18:53,466 そういえば 一度 七天一家の盗品を さばかせてもらったことがあったが➡ 214 00:18:53,466 --> 00:18:59,105 その時 会った若衆も 気持ちのいい男だったが…。 215 00:18:59,105 --> 00:19:02,875 それで その坊主崩れは? 216 00:19:02,875 --> 00:19:09,048 そいつは 七天一家でも 博打のいざこざで 兄貴分の足を折りやがって➡ 217 00:19:09,048 --> 00:19:12,551 それで 頭から きつい仕置きを受けたんで。 218 00:19:12,551 --> 00:19:17,056 それを逆恨みして 頭たちを…➡ 219 00:19:17,056 --> 00:19:19,959 火盗改に売りやがった。➡ 220 00:19:19,959 --> 00:19:25,364 七天の頭と手下たちは 一網打尽 さらし首だ。➡ 221 00:19:25,364 --> 00:19:30,236 やがて その野郎は街道筋に逃げた。➡ 222 00:19:30,236 --> 00:19:35,041 そこで 荒っぽい連中を引き入れて 自分の一家を構え➡ 223 00:19:35,041 --> 00:19:37,743 押し込み殺しのやり放題。➡ 224 00:19:37,743 --> 00:19:43,616 あまりに むごいやり口から ついた通り名は➡ 225 00:19:43,616 --> 00:19:46,619 夜叉坊主の代之吉。 226 00:19:54,260 --> 00:19:57,463 やあ~! 227 00:20:01,267 --> 00:20:03,202 夜叉…。 228 00:20:03,202 --> 00:20:08,607 その夜叉が 江戸に舞い戻ってきた…? 229 00:20:08,607 --> 00:20:13,112 ただ ここ3年ほどは 噂が絶えておりやして。 230 00:20:13,112 --> 00:20:17,283 まあ あっしは てっきり 野たれ死んだと思っていたんだが…。 231 00:20:17,283 --> 00:20:21,620 旦那 その夜叉坊主だけは いけねえ。 232 00:20:21,620 --> 00:20:28,494 下手に構えりゃ 長屋の連中 皆殺しだ。 233 00:20:28,494 --> 00:20:33,632 だからって! いくら相手が夜叉だからって➡ 234 00:20:33,632 --> 00:20:37,503 3つの子を人質に取られて 見て見ぬふりなんてできない。 235 00:20:37,503 --> 00:20:41,807 お縫坊 聞き分けな。 嫌よ! ここで見捨てたら悪党よ! 236 00:20:41,807 --> 00:20:47,613 お縫 そもそも 俺たちは悪党だ。 237 00:20:47,613 --> 00:20:50,983 違うわ お父っつぁん。 238 00:20:50,983 --> 00:20:55,654 ここで見捨てたら 悪党にもなれない。 239 00:20:55,654 --> 00:20:57,656 卑怯者よ! 240 00:21:00,926 --> 00:21:02,862 ⚟(足音) 241 00:21:02,862 --> 00:21:07,266 旦那 俺たちゃ 確かに悪党だが➡ 242 00:21:07,266 --> 00:21:09,568 卑怯者じゃありやせんぜ。 243 00:21:12,772 --> 00:21:14,707 子細は文吉から聞きやした。 244 00:21:14,707 --> 00:21:17,643 あ~ 加助の野郎のおせっかいは 迷惑この上ねえが➡ 245 00:21:17,643 --> 00:21:19,645 そのおかげで あっしは恩人に➡ 246 00:21:19,645 --> 00:21:22,948 恩を少しだけ返すことができやした。 安太郎さん! 247 00:21:22,948 --> 00:21:25,451 (新九郎)俺は 特に加助に借りはないがな。 248 00:21:27,119 --> 00:21:30,022 俺は加助の人となりが好きだ。 新九郎様! 249 00:21:30,022 --> 00:21:31,991 (菊松)その上に 3つの子が人質なら➡ 250 00:21:31,991 --> 00:21:35,628 相手が夜叉でも閻魔でも お竹は やる女だ。 251 00:21:35,628 --> 00:21:38,964 女房がやるのに 亭主の俺が やらねえってわけにゃいきやせん。 252 00:21:38,964 --> 00:21:40,100 菊松っつぁん! (唐吉)旦那。➡ 253 00:21:40,100 --> 00:21:45,738 弟が 仕返しすると いきまいて 毎日うるせえの何の。 254 00:21:45,738 --> 00:21:48,974 俺は こいつの兄貴でやす。 255 00:21:48,974 --> 00:21:52,011 売られたけんかの片棒を やっぱり担ぐことにいたしやした。 256 00:21:52,011 --> 00:21:54,146 買っちゃしめえだ 唐吉! 唐さん! 257 00:21:54,146 --> 00:21:57,449 俺ぁ 正直 どっちでもいいんだが。 よく言った 庄治さん! 258 00:21:57,449 --> 00:21:59,385 けど みんなが一肌脱ぐってのに➡ 259 00:21:59,385 --> 00:22:01,754 一人だけ 厚着を決め込むわけにゃいかねえ。 260 00:22:01,754 --> 00:22:04,957 江戸っ子だからね。 ありがとう 庄おじさん! 261 00:22:06,592 --> 00:22:10,262 (儀右衛門)ハハハハハハハハ。 アハハハハハハハ。 262 00:22:10,262 --> 00:22:13,933 お前さん 気をしっかり持って。 ハハハハハハハッ! 263 00:22:13,933 --> 00:22:18,804 加助さんの おせっかい病が 悪党どもに うつっちまったか? 264 00:22:18,804 --> 00:22:22,608 フッ 信じられねえな。 265 00:22:22,608 --> 00:22:26,412 半造さん あんた どうする? 266 00:22:26,412 --> 00:22:31,250 えっ… いや あの… だから…➡ 267 00:22:31,250 --> 00:22:33,185 だから あっしは 最初から➡ 268 00:22:33,185 --> 00:22:36,422 加助みたいな善人を 長屋に入れるのは不承知だったんだよ! 269 00:22:36,422 --> 00:22:38,624 半造おじさん。 270 00:22:44,296 --> 00:22:49,602 どうやら 俺の短え人生だったよ…。 271 00:22:54,139 --> 00:22:57,042 あばよ…。 272 00:22:57,042 --> 00:23:00,546 旦那 やらせていただきやす。 273 00:23:03,749 --> 00:23:07,386 よし。 じゃあ まず➡ 274 00:23:07,386 --> 00:23:10,923 夜叉坊主が狙うお店を探るぜ。 275 00:23:10,923 --> 00:23:13,826 (一同)へい! 承知。 276 00:23:13,826 --> 00:23:31,110 ♬~ 277 00:23:34,947 --> 00:23:40,119 (鳥の鳴き声) 278 00:23:40,119 --> 00:23:46,892 (鐘の音) 279 00:23:46,892 --> 00:23:48,827 安太郎さん。 280 00:23:48,827 --> 00:23:52,298 気配 消しなよ 唐吉っつぁん。 へい。 281 00:23:52,298 --> 00:24:08,747 ♬~ 282 00:24:08,747 --> 00:24:12,084 畜生! まかれた! 283 00:24:12,084 --> 00:24:23,696 ♬~ 284 00:24:23,696 --> 00:24:27,633 なるほど。 玄人の手際だな。 285 00:24:27,633 --> 00:24:32,338 こっちも玄人よ 新様。 286 00:24:38,777 --> 00:24:41,113 赤坂…。 287 00:24:41,113 --> 00:25:26,258 ♬~ 288 00:25:26,258 --> 00:25:30,262 (お多津)ただいま戻りました。 遅くなっちまって すみません。 289 00:25:32,931 --> 00:25:36,602 夜叉坊主の代之吉が狙いをつけた お店にしちゃ➡ 290 00:25:36,602 --> 00:25:39,405 ちいと小さくねえかい? 庄さん。 291 00:25:39,405 --> 00:25:43,108 ヘヘヘ そう思うかい? 菊松さん。 292 00:25:43,108 --> 00:25:49,782 夜叉の野郎 とんでもねえ店に目ぇつけやがったなあ。 293 00:25:49,782 --> 00:25:55,587 奉公先は日本橋大伝馬町の 太物問屋 野州屋。 294 00:25:55,587 --> 00:25:59,124 お多津さんは そのお店で お滝と名乗り➡ 295 00:25:59,124 --> 00:26:02,728 1年前から 住み込みで女中をしていやしたよ。 296 00:26:02,728 --> 00:26:05,230 1年前っていうと 赤坂の? 297 00:26:05,230 --> 00:26:07,566 大火事があった すぐあとだ。 298 00:26:07,566 --> 00:26:10,235 野州屋の主は 名を喜八朗。 299 00:26:10,235 --> 00:26:14,573 若い頃に おかみさんを亡くし 子はいねえが 欲もねえ➡ 300 00:26:14,573 --> 00:26:19,078 ひたすら まっとうな商いをしていると 評判の高え男でね。 301 00:26:19,078 --> 00:26:21,747 これが 昨日 入りました➡ 302 00:26:21,747 --> 00:26:24,383 上質の伊勢木綿でございます。 303 00:26:24,383 --> 00:26:26,452 (菊松)結構な繁盛ぶりだが➡ 304 00:26:26,452 --> 00:26:30,923 夜叉坊主が3年ぶりに 仕事をしようってお店にしちゃ➡ 305 00:26:30,923 --> 00:26:33,258 どうにも小さすぎる気が…。 306 00:26:33,258 --> 00:26:35,928 会津縞がございます。 307 00:26:35,928 --> 00:26:40,732 さあさあ いいかげんに話してくれな 庄さんよ。 308 00:26:43,669 --> 00:26:47,539 騙りの菊松さんが知らねえのも 無理はねえ。 309 00:26:47,539 --> 00:26:51,410 野州屋は… いや 野州屋の蔵は➡ 310 00:26:51,410 --> 00:26:58,183 俺たち 盗人にとっちゃ お城の御金蔵より値打ちがある。 311 00:26:58,183 --> 00:27:00,719 御金蔵とは また大きく出たな。 312 00:27:00,719 --> 00:27:02,654 何十万両も小判があるってのかい? 313 00:27:02,654 --> 00:27:05,891 ヘヘッ まさかだぜ 文吉。 314 00:27:05,891 --> 00:27:08,360 じらすなよ 庄治さん。 315 00:27:08,360 --> 00:27:10,729 5年ほど前だ。 316 00:27:10,729 --> 00:27:16,935 腕自慢の錠前破りの盗人が 野州屋に忍び込んだと思いねえ。 317 00:27:22,341 --> 00:27:26,211 (庄治) ところがだ 蔵にかかっていたのはよ➡ 318 00:27:26,211 --> 00:27:29,915 見たこともねえ からくり錠だった。➡ 319 00:27:29,915 --> 00:27:34,786 どうやっても 歯が立たず 盗人は すごすご退散した。➡ 320 00:27:34,786 --> 00:27:39,625 からくり錠とは面白えと 盗人仲間で評判になった。➡ 321 00:27:39,625 --> 00:27:42,628 こいつを破りゃ 名があがる。➡ 322 00:27:42,628 --> 00:27:47,466 腕に覚えのある盗人が 我も我もと押しかけたが➡ 323 00:27:47,466 --> 00:27:50,769 結局 どいつもこいつも開けられず➡ 324 00:27:50,769 --> 00:27:58,577 ありゃ お城の御金蔵より難しいぜと 評判が評判を呼んだ。 325 00:28:02,881 --> 00:28:06,552 そんな顔しなさんな。 326 00:28:06,552 --> 00:28:13,725 何でも その からくり錠はよ 18ほども手順を踏まねえと開かねえ代物。 327 00:28:13,725 --> 00:28:15,761 もし こいつを開けられたら➡ 328 00:28:15,761 --> 00:28:19,598 そいつこそが 江戸一番の大泥棒だってな! ヘヘヘッ! 329 00:28:19,598 --> 00:28:22,234 野州屋さんも とんだ災難ね。 330 00:28:22,234 --> 00:28:24,570 全くだ。 331 00:28:24,570 --> 00:28:31,343 だが 1年もしねえうちに 俺たちの野州屋詣では収まった。 332 00:28:31,343 --> 00:28:33,912 誰が開けたんだい? 庄治さんかい? 333 00:28:33,912 --> 00:28:38,250 いやいや 俺なんぞは… ヘヘヘヘヘッ! 334 00:28:38,250 --> 00:28:42,588 またまた 噂が広まったのよ。 335 00:28:42,588 --> 00:28:46,758 野州屋の蔵を開けると➡ 336 00:28:46,758 --> 00:28:51,263 祟りがあるぞ。 337 00:28:51,263 --> 00:28:54,933 ハッ 祟り? 338 00:28:54,933 --> 00:28:58,403 神社や寺なら まだしもだ。 339 00:28:58,403 --> 00:29:03,041 小せえ太物問屋の蔵で 祟りなんて バカみてえだろ? 340 00:29:03,041 --> 00:29:07,546 けど この噂の出どころが➡ 341 00:29:07,546 --> 00:29:11,883 天龍の頭なら 従わねえわけにはいかねえ。 342 00:29:11,883 --> 00:29:14,553 天龍の頭が? 誰? それ。 343 00:29:14,553 --> 00:29:20,892 前に話したろう。 昔 江戸の裏を 意のままになさっていた七天の頭…。 344 00:29:20,892 --> 00:29:26,098 その再来といわれる大盗賊が…。 345 00:29:32,604 --> 00:29:34,906 (儀右衛門)天龍の頭よ。 346 00:29:34,906 --> 00:29:38,744 今や その手下は 30とも50ともいわれてる。 347 00:29:38,744 --> 00:29:44,082 七天の頭と同じ 血を流さねえ きれいな仕事が流儀だ。 348 00:29:44,082 --> 00:29:49,955 天龍の頭が 裏渡世で頭角を現してから こっち➡ 349 00:29:49,955 --> 00:29:55,093 江戸じゃ 汚え押し込みや殺しが すっかり減ったって➡ 350 00:29:55,093 --> 00:29:57,029 まあ 専らの噂だ。 351 00:29:57,029 --> 00:30:00,899 へえ~ 天龍のお頭…。 352 00:30:00,899 --> 00:30:05,804 けど お頭ほどのお方が 祟りに恐れるなんて 不思議だね。 353 00:30:05,804 --> 00:30:11,276 まあ 祟りは 頭のシャレでやしょう。 354 00:30:11,276 --> 00:30:19,017 けど 野州屋の蔵には決して手を出すなと 手下たちを戒めたのは本当の話で。 355 00:30:19,017 --> 00:30:22,821 ふ~ん… シャレ好きなのね。 356 00:30:27,292 --> 00:30:29,294 野州屋の蔵…。 357 00:30:29,294 --> 00:30:32,497 やちゅやの くら。 358 00:30:34,966 --> 00:30:41,473 あ~… 夜叉の腹が読めたぜ。 359 00:30:43,308 --> 00:30:49,981 街道筋から江戸へ舞い戻った夜叉坊主が 3年も身を潜めていたのは➡ 360 00:30:49,981 --> 00:30:53,452 天龍の頭が にらみを利かせていたからだ。 361 00:30:53,452 --> 00:30:56,822 押し込み殺しが専らの夜叉坊主が 江戸を荒らせば➡ 362 00:30:56,822 --> 00:30:59,324 天龍のお頭は黙っちゃいない。 363 00:30:59,324 --> 00:31:03,095 その上 七天のお頭を売った裏切り者だ。 364 00:31:03,095 --> 00:31:05,931 見つけりゃ 八つ裂きは間違いないね。 365 00:31:05,931 --> 00:31:08,767 八方塞がりになった夜叉坊主が 目をつけたのが➡ 366 00:31:08,767 --> 00:31:12,604 天龍の頭が戒めなすった野州屋の蔵。 367 00:31:12,604 --> 00:31:17,109 なるほど! 夜叉坊主が からくり錠を開けりゃ➡ 368 00:31:17,109 --> 00:31:19,044 天龍の頭の顔を潰せやす。 369 00:31:19,044 --> 00:31:21,613 天龍一家の力が弱まれば➡ 370 00:31:21,613 --> 00:31:26,785 押し込み 殺しもし放題って魂胆か。 そのために野州屋の…。 371 00:31:26,785 --> 00:31:28,720 野州屋のお多津さん➡ 372 00:31:28,720 --> 00:31:32,424 いや 今は お滝さんと名乗ってる 奉公人に目をつけた。 373 00:31:32,424 --> 00:31:36,128 (安太郎)子供を人質に からくり錠の鍵を探させる腹か。 374 00:31:36,128 --> 00:31:39,631 汚え野郎だ。 からくり錠の鍵だけじゃない。 375 00:31:39,631 --> 00:31:44,302 夜叉坊主は お多津さんに 押し込みの手引き役➡ 376 00:31:44,302 --> 00:31:46,805 引き込みも やらせる気だね。 377 00:31:46,805 --> 00:31:53,678 押し込み一本のやつらだ。 一挙両得と ほくそ笑んでやがるだろうぜ。 378 00:31:53,678 --> 00:31:57,149 そうなりゃ 野州屋は皆殺しだな。 379 00:31:57,149 --> 00:32:01,386 旦那 こいつは何としても 阻まなきゃなりませんぜ。 380 00:32:01,386 --> 00:32:04,689 そうだ! 汚えやつらだ! 381 00:32:08,927 --> 00:32:11,396 お… お縫? 382 00:32:11,396 --> 00:32:15,600 あ… ううん 何でもない。 383 00:32:22,607 --> 00:32:25,410 お縫坊? 384 00:32:25,410 --> 00:32:30,715 若い娘には 血生臭い話が過ぎたのかもな。 385 00:32:36,421 --> 00:32:42,127  心の声 夜叉坊主の代之吉が 江戸に舞い戻ったのは3年前。 386 00:32:42,127 --> 00:32:47,632 3年前 お多津と めおとになって 初めて来た酉の市が➡ 387 00:32:47,632 --> 00:32:49,935 この八幡様だったんだ。 388 00:32:59,311 --> 00:33:03,114 足元 気ぃ付けてな。 大丈夫。 389 00:33:03,114 --> 00:33:07,118 熊手 買えてよかったね。 いや~ こりゃ いいやつだよ…。 390 00:33:07,118 --> 00:33:24,402 ♬~ 391 00:33:24,402 --> 00:33:27,772 お多津! あっ すいやせん…。 392 00:33:27,772 --> 00:33:30,408 加助さん。 393 00:33:30,408 --> 00:33:35,113 あっ お縫さん。 どうしたんだい? こんな朝早くに。 394 00:33:35,113 --> 00:33:38,617 あの 今更だけど…➡ 395 00:33:38,617 --> 00:33:41,419 加助さんと お多津さんが めおとになったのは➡ 396 00:33:41,419 --> 00:33:43,355 3年前で間違いない? 397 00:33:43,355 --> 00:33:46,124 ああ 3年前だ。 間違いねえ。 398 00:33:46,124 --> 00:33:48,426 お多津さんと どうやって知り合ったの? 399 00:33:48,426 --> 00:33:51,630 見合いだよ。 町内のご隠居が➡ 400 00:33:51,630 --> 00:33:54,966 いい人がいるからと言って 連れてきてくれたんだ。 401 00:33:54,966 --> 00:34:01,239 俺ぁ お多津に 一目でほれて お多津も 俺をよく思ってくれて➡ 402 00:34:01,239 --> 00:34:04,576 とんとん拍子で祝言に。 403 00:34:04,576 --> 00:34:08,079 何でだい? そんなこと聞くなんて。 404 00:34:08,079 --> 00:34:11,750 お多津さんに… 身内は? 405 00:34:11,750 --> 00:34:13,785 親も きょうだいもいない。 406 00:34:13,785 --> 00:34:18,089 だから 大火事のあと 捜すツテがなかったんだ。 407 00:34:18,089 --> 00:34:23,762 でも… でもさ… やっと手がかりが見つかった。 408 00:34:23,762 --> 00:34:26,798 八幡様のおかげだよ。 409 00:34:26,798 --> 00:34:29,501 ありがとうございました! 410 00:34:32,771 --> 00:34:37,943 加助さんは… 日本橋の野州屋さんって知ってる? 411 00:34:37,943 --> 00:34:41,279 やしゅうや? 太物問屋の。 412 00:34:41,279 --> 00:34:45,150 そこの蔵の からくり錠が有名らしいの。 413 00:34:45,150 --> 00:34:47,152 ああ 知ってるよ。 414 00:34:47,152 --> 00:34:52,290 野州屋さんの蔵の錠は うちの師匠が最後に作った からくり錠だ。 415 00:34:52,290 --> 00:34:56,628 その からくり錠を 開けられるのは…。 416 00:34:56,628 --> 00:34:58,563 師匠だけさ。 417 00:34:58,563 --> 00:35:03,435 あ いや でも 4年前に 師匠が中風で倒れてからは いねえな。 418 00:35:03,435 --> 00:35:05,437 兄弟子たちでも無理だろう。 419 00:35:05,437 --> 00:35:10,909 何せ 18の手順を踏まなきゃ開かねえと 師匠に聞いたことがある。 420 00:35:10,909 --> 00:35:15,246 でも お縫さん 何だって そんなことを聞く…。 421 00:35:15,246 --> 00:35:19,250 あと一つだけ! 422 00:35:19,250 --> 00:35:25,757 加助さんなら そのからくり錠… 開けられる? 423 00:35:25,757 --> 00:35:29,260 俺かい? う~ん…。 424 00:35:29,260 --> 00:35:32,597 無理よね。 そんなの きっと無理。 425 00:35:32,597 --> 00:35:37,402 俺は師匠の最後の弟子だ。 師匠の癖は分かってる。 426 00:35:37,402 --> 00:35:39,771 やってみなきゃ分からねえが➡ 427 00:35:39,771 --> 00:35:43,408 多分 開けられるよ。 428 00:35:43,408 --> 00:35:47,278  心の声 全て つながってしまった…。 429 00:35:47,278 --> 00:35:50,949 どうしたんだい? 顔が真っ青だ。 430 00:35:50,949 --> 00:35:54,419 ごめん… また後で。 431 00:35:54,419 --> 00:36:09,234 ♬~ 432 00:36:09,234 --> 00:36:20,945 (3人)羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶 般若心経。 433 00:36:20,945 --> 00:36:23,648 ⚟お頭! (鐘の音) 434 00:36:25,684 --> 00:36:27,619 お頭!➡ 435 00:36:27,619 --> 00:36:30,388 お多津を見張るように おっしゃったのが ドンピシャリだ。 436 00:36:30,388 --> 00:36:35,093 あのアマ 赤坂の大火事で焼け死んだはずの亭主と➡ 437 00:36:35,093 --> 00:36:37,796 こっそり会っていやしたぜ。 438 00:36:45,103 --> 00:36:47,772 はて。 439 00:36:47,772 --> 00:36:52,644 錠前屋のご亭主と会っていたとな? 440 00:36:52,644 --> 00:36:55,947 へい! ついさっきだ! 441 00:36:55,947 --> 00:37:06,458 そうかい 錠前屋の加助は やっぱり生きてたかい。 442 00:37:08,526 --> 00:37:15,300 夜叉坊主の代之吉をだますと どうなるか➡ 443 00:37:15,300 --> 00:37:22,073 お多津には 思い知らせなきゃなるめえな。 444 00:37:22,073 --> 00:37:24,576 (3人)へい。 445 00:37:29,948 --> 00:37:34,385 野州屋のからくり錠は 加助さんの師匠が作った!? 446 00:37:34,385 --> 00:37:38,756 じゃあ 加助さんなら開けられるってのか? 447 00:37:38,756 --> 00:37:40,692 ええ 多分! 448 00:37:40,692 --> 00:37:44,929 だから 夜叉坊主の代之吉が 加助さんに目をつけたの。 449 00:37:44,929 --> 00:37:47,398 江戸に舞い戻ったのが3年前。 450 00:37:47,398 --> 00:37:52,237 加助さんと お多津さんが 夫婦になったのも3年前。 451 00:37:52,237 --> 00:37:56,107 夜叉坊主の代之吉が 2人を夫婦にしたのよ! 452 00:37:56,107 --> 00:37:59,611 お多津さんを使って 加助さんを一味に引き入れようとしたの。 453 00:37:59,611 --> 00:38:05,717 じゃあ お多津さんは はなから夜叉の一味…? 454 00:38:05,717 --> 00:38:10,054 まさか… そんなバカな…! 455 00:38:10,054 --> 00:38:13,892 私だって そんなこと思いたくない。 456 00:38:13,892 --> 00:38:19,063 でも そう考えると つじつまが合うの。 457 00:38:19,063 --> 00:38:23,368 お多津さんは 加助さんを引き入れようと 頃合いを見てた。 458 00:38:23,368 --> 00:38:26,738 でも 加助さんは あのとおり善人でしょう? 459 00:38:26,738 --> 00:38:30,608 なかなか 事が運ばないうちに おたまちゃんが生まれて➡ 460 00:38:30,608 --> 00:38:35,380 赤坂が大火事になって ちりぢりになった。 461 00:38:35,380 --> 00:38:40,251 多分 お多津さんは 自分から姿を消したの。 462 00:38:40,251 --> 00:38:43,254 善人の加助さんを助けるために。 463 00:38:46,124 --> 00:38:50,762 お多津さんは 加助さんが焼け死んだと 夜叉坊主をだました。 464 00:38:50,762 --> 00:38:56,401 それで夜叉坊主は お多津さんを 今度は野州屋さんに送り込んだの。 465 00:38:56,401 --> 00:39:02,207 おたまちゃんを人質に取って 名を お滝と変えさせて。 466 00:39:02,207 --> 00:39:07,545 だから 八幡様の酉の市で 加助さんに会った時➡ 467 00:39:07,545 --> 00:39:09,581 お多津さんは逃げたの。 468 00:39:09,581 --> 00:39:13,718 加助さんを巻き込みたくなかったから。 469 00:39:13,718 --> 00:39:18,890 だから… いくら夜叉の一味でも➡ 470 00:39:18,890 --> 00:39:23,728 お多津さんには 加助さんを思う気持ちがある! 471 00:39:23,728 --> 00:39:26,764 きっと ある! 今も! 慌てるな お縫。 472 00:39:26,764 --> 00:39:30,501 思う気持ちがあるかどうか そこまでは まだ分からねえ。 473 00:39:30,501 --> 00:39:34,072 そうなの。 474 00:39:34,072 --> 00:39:41,746 はあ~…。 だから… よかった。 475 00:39:41,746 --> 00:39:46,918 お父っつぁんに話したら 私 気持ちが固まったわ。 476 00:39:46,918 --> 00:39:49,821 固まった? 477 00:39:49,821 --> 00:39:54,092 私 お多津さんが どうしたいのか➡ 478 00:39:54,092 --> 00:39:58,263 野州屋さんに会いに行って 真意を確かめて…。 479 00:39:58,263 --> 00:40:02,133 バカ! 相手は夜叉の一味だぞ! 480 00:40:02,133 --> 00:40:04,135 うかつに近づいちゃ危ねえ! 481 00:40:04,135 --> 00:40:06,771 それに お前の言うように➡ 482 00:40:06,771 --> 00:40:10,408 お多津さんに 加助さんを思う気持ちが 残っていたところで➡ 483 00:40:10,408 --> 00:40:12,343 もう どうなるもんでもねえ。 484 00:40:12,343 --> 00:40:17,949 いや もし 思いがなけりゃ お前みたいな娘っ子の口を封じるのは➡ 485 00:40:17,949 --> 00:40:20,852 赤子の手をひねるよりも 簡単なことなんだぞ! 486 00:40:20,852 --> 00:40:23,755 ひねるなら ひねれってのよ。 お縫! 487 00:40:23,755 --> 00:40:30,528 加助さんと お多津さん おたまちゃんが もう一度 一緒に暮らせるなら➡ 488 00:40:30,528 --> 00:40:33,498 これが最後の機会なら➡ 489 00:40:33,498 --> 00:40:37,802 もし それが かなうなら…➡ 490 00:40:37,802 --> 00:40:41,973 かなう方に 私 この命 張ってみる! 491 00:40:41,973 --> 00:40:46,811 お縫! お前… 度胸がいいのも大概にしろ! 492 00:40:46,811 --> 00:40:52,617 いいきっぷだねえ。 我が子ながら ほれぼれするよ。 493 00:40:52,617 --> 00:40:56,454 お俊! やばい 聞いてたのかよ 何とか言ってやってくれよ! 494 00:40:56,454 --> 00:40:58,823 私も一緒に行くよ。 (儀右衛門)えっ!? 495 00:40:58,823 --> 00:41:01,092 支度しな。 はい! 496 00:41:01,092 --> 00:41:03,594 (儀右衛門)お俊! おい お俊! お俊! 497 00:41:03,594 --> 00:41:08,599 お縫? お縫! お縫! お縫~! 498 00:41:12,603 --> 00:41:22,113 (半鐘の音) 499 00:41:25,183 --> 00:41:28,786 お多津! おたま! 500 00:41:28,786 --> 00:41:32,423 お多津~! おたま~! 501 00:41:32,423 --> 00:41:36,928 お多津~! おたま~! 502 00:41:38,796 --> 00:41:42,100 他人の空似…。 503 00:41:47,305 --> 00:41:51,976 あの~ 錠前屋の加助さんで いらっしゃいますか? 504 00:41:51,976 --> 00:41:54,012 へい 加助でやすが。 505 00:41:54,012 --> 00:41:57,849 お多津さんから 言づてがございます。 506 00:41:57,849 --> 00:42:02,253 お多津から! やっぱり 生きていたんでやすね! 507 00:42:02,253 --> 00:42:05,156 お多津は何て? 今どこに!? おたまは!? 508 00:42:05,156 --> 00:42:08,059 うっ! 509 00:42:08,059 --> 00:42:11,596 今 連れてってやるぜ。 510 00:42:11,596 --> 00:42:35,286 ♬~ 511 00:42:35,286 --> 00:42:37,288 からくり錠のために めおとになった。 512 00:42:37,288 --> 00:42:39,624 野州屋さんから 悪党のにおいがしたの。 513 00:42:39,624 --> 00:42:42,126 まだ 裏に 何枚かありそうだね。 514 00:42:42,126 --> 00:42:44,162 親子3人 血祭りだ。 515 00:42:44,162 --> 00:42:46,297 開けたら あんたは悪人になる。 516 00:42:46,297 --> 00:42:48,966 俺は 錠前屋として開けなきゃならねえ。 517 00:42:48,966 --> 00:42:51,803 皆の命 俺が預かった。 518 00:42:51,803 --> 00:42:55,306 悪党の始末は 悪党がつける。