1 00:00:33,894 --> 00:00:38,748 (上野介)名高い剣客に 身辺を 守られるのは 安心でもある。 2 00:00:38,748 --> 00:00:42,953 しかし いささか 迷惑でもある。 3 00:00:42,953 --> 00:00:45,088 (典膳)堀部安兵衛? 4 00:00:45,088 --> 00:00:48,558 (長兵衛)堀内道場の近くで お見かけしたと。 5 00:00:48,558 --> 00:00:53,980 剣を生かし 剣に生きるならば おのずと 答えは出てこよう。 6 00:00:53,980 --> 00:00:59,280 (安兵衛)浅野家の家臣となり 堀部安兵衛を名乗ります。 7 00:01:02,155 --> 00:01:08,355 ♪♪~(テーマ音楽) 8 00:01:13,500 --> 00:01:15,652 長らく ご無音に打ち過ぎ→ 9 00:01:15,652 --> 00:01:19,089 失礼を重ねたる段 お許しのほどを…。 10 00:01:19,089 --> 00:01:22,292 (正春)達者で 何よりじゃ。 恐れ入ります。 11 00:01:22,292 --> 00:01:26,713 (敬之進)噂は 折々 耳にしておる。 はっ? 12 00:01:26,713 --> 00:01:32,018 牛込の長屋住まいから 浅草蔵前の口入れ屋。 ああ…。 13 00:01:32,018 --> 00:01:35,889 本所の吉良屋敷。 よう ご存じで。 14 00:01:35,889 --> 00:01:39,759 典膳の事は 誰でも知りたがる。 さよう さよう。 15 00:01:39,759 --> 00:01:43,129 (武兵衛)吉良家に お仕えですか? いや。 16 00:01:43,129 --> 00:01:46,933 どう見ても 浪人じゃ。 見た目は ともかく。 17 00:01:46,933 --> 00:01:49,352 また 用心棒かな? 18 00:01:49,352 --> 00:01:52,455 詮索は控えよ。 はっ。 19 00:01:52,455 --> 00:01:57,077 まずは 用向きじゃ。 さよう さよう。 20 00:01:57,077 --> 00:02:00,630 実は 安兵衛が事でござる。 21 00:02:00,630 --> 00:02:02,649 安兵衛? 22 00:02:02,649 --> 00:02:07,487 存じ寄りの者が この近くで 堀部安兵衛を見かけたと。 23 00:02:07,487 --> 00:02:09,956 ほう。 それも→ 24 00:02:09,956 --> 00:02:15,028 町人に成り済まし 青物を運んでおったそうで。 25 00:02:15,028 --> 00:02:17,931 ハハハ…。 初耳ですな。 26 00:02:17,931 --> 00:02:21,017 話は面白いが およそ ありえぬ。 27 00:02:21,017 --> 00:02:25,822 高田馬場で 勇名を馳せた男が 何で 青物売りに身を落とす? 28 00:02:25,822 --> 00:02:30,827 世を忍ぶ 仮の姿かと。 仮の姿? 29 00:02:30,827 --> 00:02:34,431 浅野家の浪人どもは 亡君の仇討ちをたくらみ→ 30 00:02:34,431 --> 00:02:38,518 江戸に潜伏しておる由。 根も葉もない作り話じゃ。 31 00:02:38,518 --> 00:02:42,822 江戸の町衆は 仇討ちを 心待ちにしておるようで。 32 00:02:42,822 --> 00:02:45,191 それを あおりたてる者が居る。 33 00:02:45,191 --> 00:02:48,428 しかし 安兵衛は 赤穂を立ち退いたまま→ 34 00:02:48,428 --> 00:02:50,730 行方が分かりませぬ。 35 00:02:50,730 --> 00:02:53,033 (正春)典膳。 はっ。 36 00:02:53,033 --> 00:02:55,986 おぬしは 安兵衛の消息を知りたいのか? 37 00:02:55,986 --> 00:03:00,223 仰せのとおり。 一日も早う 会いとうござります。 38 00:03:00,223 --> 00:03:02,225 会うて どうする? 39 00:03:02,225 --> 00:03:05,228 斬り捨てるのか? 40 00:03:05,228 --> 00:03:10,166 めっそうもない。 それがしは 安兵衛に 借りがござり申す。 41 00:03:10,166 --> 00:03:12,919 借り? 金を借りたのか? 42 00:03:12,919 --> 00:03:14,955 さにあらず。 43 00:03:14,955 --> 00:03:20,060 浅野家への仕官を 安兵衛に 勧めたのは それがしでござった。 44 00:03:20,060 --> 00:03:24,481 ほう。 今更 悔いても 詮ない事ながら→ 45 00:03:24,481 --> 00:03:28,852 浅野家が滅亡するとは 夢にも思わず。 46 00:03:28,852 --> 00:03:32,222 なるほど。 皮肉じゃな。 47 00:03:32,222 --> 00:03:36,092 それで 敵味方になったとは。 敵味方? 48 00:03:36,092 --> 00:03:40,380 典膳は 吉良家じゃ。 安兵衛は 浅野家じゃ。 49 00:03:40,380 --> 00:03:43,667 敵味方にはなりとうござらぬ。 50 00:03:43,667 --> 00:03:47,921 (敬之進)とは言うても…。 安兵衛には 恩義もござる。 51 00:03:47,921 --> 00:03:51,057 恩義? 情に厚い安兵衛は→ 52 00:03:51,057 --> 00:03:54,427 腕を斬られて 浪人になった それがしを助け→ 53 00:03:54,427 --> 00:03:57,364 こまごまと 面倒を見てくれました。 54 00:03:57,364 --> 00:04:02,969 同じ長屋で暮らすうちに 肝胆相照らす仲となりました。 55 00:04:02,969 --> 00:04:06,022 うん。 もしも 安兵衛が→ 56 00:04:06,022 --> 00:04:08,508 徒党を組んで 吉良家に討ち入れば→ 57 00:04:08,508 --> 00:04:11,061 本懐を遂げようが 遂げまいが→ 58 00:04:11,061 --> 00:04:15,832 不埒者として召し捕られ 死罪は免れますまい。 59 00:04:15,832 --> 00:04:20,832 それがしは 安兵衛を死なせとうござらぬ。 60 00:04:23,356 --> 00:04:26,826 仇討ちを食い止めたいのだな? 61 00:04:26,826 --> 00:04:34,250 はい 一刻も早う 安兵衛の所在を 突き止め 会う事ができますれば→ 62 00:04:34,250 --> 00:04:38,121 かように申し聞かせる所存に ござります。 63 00:04:38,121 --> 00:04:43,727 「恨むべきは ご公儀であり 仇討ちは 筋違いである」と。 64 00:04:43,727 --> 00:04:48,264 「理にかのうておらぬ」と。 65 00:04:48,264 --> 00:04:52,652 (安兵衛)御免。 (武兵衛)あっ…。 66 00:04:52,652 --> 00:04:55,622 安兵衛は これに居ります。 67 00:04:55,622 --> 00:04:58,391 バカ者が! どういうつもりだ!? 68 00:04:58,391 --> 00:05:02,695 お許し下され。 陰で聞いておって 胸が詰まりました。 69 00:05:02,695 --> 00:05:04,731 (武兵衛)お前が 口止めしておいて! 70 00:05:04,731 --> 00:05:07,450 典膳殿は 別儀でござる。 何が 別儀じゃ!? 71 00:05:07,450 --> 00:05:10,720 せっかく 我らが! 痛い! 72 00:05:10,720 --> 00:05:13,823 開いた口が 塞がらんわ! 73 00:05:13,823 --> 00:05:15,823 バカ! 74 00:05:19,162 --> 00:05:26,936 典膳殿 心配をかけて申し訳ござらぬ。 75 00:05:26,936 --> 00:05:30,636 (正春)これへ。 ははっ。 76 00:05:39,899 --> 00:05:41,985 ここに隠れていたのか? 77 00:05:41,985 --> 00:05:44,754 はい…。 いいえ。 78 00:05:44,754 --> 00:05:48,554 いかにも かくもうておった。 79 00:05:51,795 --> 00:05:55,131 江戸へ舞い戻ったのは 何のためか? 80 00:05:55,131 --> 00:05:58,585 ハハハ… どうか ご安心下され。 81 00:05:58,585 --> 00:06:02,422 仇討ちなど 毛頭 考えておりませぬ。 82 00:06:02,422 --> 00:06:04,657 にわかには 信じられぬな。 83 00:06:04,657 --> 00:06:12,031 いやいや 世間は とやかく言うて おりますが できる訳がござらぬ。 84 00:06:12,031 --> 00:06:14,184 (正春)安兵衛。 はっ。 85 00:06:14,184 --> 00:06:17,420 大石内蔵助は どうしておる? 86 00:06:17,420 --> 00:06:24,110 とっくに 赤穂を離れ 京都・山科に 住まい致しております。 87 00:06:24,110 --> 00:06:27,263 山科? 色里に通い→ 88 00:06:27,263 --> 00:06:30,633 夜な夜な 遊興三昧と 聞いております。 89 00:06:30,633 --> 00:06:35,688 これでは 仇討ちどころか 綿打ちもできません。 90 00:06:35,688 --> 00:06:39,325 弥兵衛殿は? 隠居致しました。 91 00:06:39,325 --> 00:06:45,532 77歳ゆえ 目も耳も 足腰も おぼつかなくなっております。 92 00:06:45,532 --> 00:06:50,186 お内儀は? 父の面倒を見ております。 93 00:06:50,186 --> 00:06:53,022 別れたのか? いえ。 94 00:06:53,022 --> 00:06:59,312 商いが繁盛すれば 長屋を借りて 呼び寄せまする。 95 00:06:59,312 --> 00:07:02,599 江戸に潜伏したのは いくたりか? 96 00:07:02,599 --> 00:07:04,684 潜伏? 97 00:07:04,684 --> 00:07:08,755 60人以上が 姿をくらましたと聞いておる。 98 00:07:08,755 --> 00:07:11,424 皆目 存じません。 99 00:07:11,424 --> 00:07:16,646 一人もか? 存じません。 100 00:07:16,646 --> 00:07:19,098 重ねて申し上げまするが→ 101 00:07:19,098 --> 00:07:25,521 浅野家の旧臣で 仇討ちを謀る者は 誰一人 居りますまい。 102 00:07:25,521 --> 00:07:27,907 先ほどのお言葉どおり→ 103 00:07:27,907 --> 00:07:30,526 恨むべきは ご公儀であり→ 104 00:07:30,526 --> 00:07:36,432 吉良様への仇討ちは 筋違いにござります。 105 00:07:36,432 --> 00:07:39,118 安兵衛。 はっ! 106 00:07:39,118 --> 00:07:42,188 これだけは言うておく。 107 00:07:42,188 --> 00:07:46,893 もしも 討ち入ってくれば…→ 108 00:07:46,893 --> 00:07:51,531 真っ先に お前を斬る。 109 00:07:51,531 --> 00:07:57,136 ハハハ… くわばら くわばら。 110 00:07:57,136 --> 00:08:08,731 ♪♪~ 111 00:08:08,731 --> 00:08:11,284  回想  恨むべきは ご公儀であり→ 112 00:08:11,284 --> 00:08:15,884 吉良様への仇討ちは 筋違いにござります。 113 00:08:18,291 --> 00:08:20,326 また ウソをついたな。 114 00:08:20,326 --> 00:08:22,395 ウソではありません。 115 00:08:22,395 --> 00:08:26,249 ほら また ウソだ。 116 00:08:26,249 --> 00:08:29,385 いい加減なヤツだな! 117 00:08:29,385 --> 00:08:33,856 せっかく かくまってやったのに のこのこ出てくるヤツがあるか!? 118 00:08:33,856 --> 00:08:36,059 お三方が ウソをついておりましたので。 119 00:08:36,059 --> 00:08:37,994 お前のためじゃ! 120 00:08:37,994 --> 00:08:40,396 おかげで 立場を失うたではないか!? 121 00:08:40,396 --> 00:08:42,482 恥をかいたではないか!? 122 00:08:42,482 --> 00:08:45,001 申し訳ござりませぬ。 123 00:08:45,001 --> 00:08:49,289 安兵衛。 はっ! 124 00:08:49,289 --> 00:08:55,628 お前に 典膳は斬れまい? 斬れません。 125 00:08:55,628 --> 00:08:59,949 (正春)典膳は 「お前を斬る」と言うたぞ。 126 00:08:59,949 --> 00:09:05,888 はい。 ならば 典膳に頼んで 吉良家に仕えたら どうじゃ? 127 00:09:05,888 --> 00:09:11,611 ええ~ いくら何でも それは 世間の物笑いになりましょう。 128 00:09:11,611 --> 00:09:15,598 ほう。 恥を知っているのか? 129 00:09:15,598 --> 00:09:17,850 ご勘弁下さい。 130 00:09:17,850 --> 00:09:21,120 ならば ここを出ろ! はあ? 131 00:09:21,120 --> 00:09:24,620 典膳は きっと また来る。 132 00:09:26,626 --> 00:09:28,711 ウソは 二度と つきとうない。 133 00:09:28,711 --> 00:09:33,611 慙愧に堪えん! お前は 出入り差し止めじゃ。 134 00:09:46,329 --> 00:09:48,715 (孫兵衛)弥七郎。 (弥七郎)はっ。 135 00:09:48,715 --> 00:09:50,783 泉岳寺の様子は どうじゃ? 136 00:09:50,783 --> 00:09:54,420 ははっ。 浅野家の墓所に→ 137 00:09:54,420 --> 00:09:58,858 香華を手向ける者が とみに 増えつつある由にござります。 138 00:09:58,858 --> 00:10:01,260 (義周)それは 町人どもか? 139 00:10:01,260 --> 00:10:04,347 それとも 浅野家にゆかりの者か? 140 00:10:04,347 --> 00:10:06,999 畏れながら 断じかねます。 141 00:10:06,999 --> 00:10:09,085 断じかねるとは? 142 00:10:09,085 --> 00:10:13,856 浅野家の浪人が 商人に化けている事もござります。 143 00:10:13,856 --> 00:10:18,127 そうか。 住職に問うても 口を割りません。 144 00:10:18,127 --> 00:10:21,431 寺男も 口を封じられております。 145 00:10:21,431 --> 00:10:25,284 引き続き 探索に努めよ。 かしこまりました。 146 00:10:25,284 --> 00:10:30,223 そろそろ 臭うてきましたな。 うん? 147 00:10:30,223 --> 00:10:32,325 (弥七郎)噂の真偽はともかく→ 148 00:10:32,325 --> 00:10:36,062 浅野の残党が 何人か 江戸に潜り込んだのは→ 149 00:10:36,062 --> 00:10:38,481 確かでござります。 150 00:10:38,481 --> 00:10:41,250 ≪(一学)申し上げます。 うん。 151 00:10:41,250 --> 00:10:47,190 丹下典膳殿 ご隠居様が 御用にござります。 152 00:10:47,190 --> 00:10:49,290 ご無礼つかまつります。 153 00:11:14,233 --> 00:11:17,453 典膳 まかり越しました。 154 00:11:17,453 --> 00:11:19,453 うん。 155 00:11:22,175 --> 00:11:24,175 ほれ。 156 00:11:50,219 --> 00:11:54,240 フフフ… うれしいか? 千春。 157 00:11:54,240 --> 00:11:56,275 (千春)はい。 158 00:11:56,275 --> 00:11:58,494 典膳は どうじゃ? 159 00:11:58,494 --> 00:12:01,597 はっ。 ハハハ…。 160 00:12:01,597 --> 00:12:04,684 千春は 今日から わしの侍女じゃ。 161 00:12:04,684 --> 00:12:09,722 そこもとの妻に戻るのは もっと先じゃ。 分かっておるな? 162 00:12:09,722 --> 00:12:12,492 ははっ。 163 00:12:12,492 --> 00:12:16,179 見よ この景色を。→ 164 00:12:16,179 --> 00:12:19,198 せっかくの庭が 台なしではないか? 165 00:12:19,198 --> 00:12:22,685 余命いくばくもない この目を慰めるには→ 166 00:12:22,685 --> 00:12:25,838 美女の顔でも 見るしかなかろうが? 167 00:12:25,838 --> 00:12:28,424 お戯れを。 168 00:12:28,424 --> 00:12:31,894 そのかわり 一連のごたごたが過ぎれば→ 169 00:12:31,894 --> 00:12:36,215 典膳を 吉良家に召し抱え 義周の傳役とする。 170 00:12:36,215 --> 00:12:41,571 知行は 200石とし 相応の屋敷を与える。 171 00:12:41,571 --> 00:12:43,823 ははっ! 172 00:12:43,823 --> 00:12:48,344 京風がよいか? 唐風がよいか? 173 00:12:48,344 --> 00:12:50,446 さあ。 174 00:12:50,446 --> 00:12:56,752 口約束と思うなよ。 その旨 遺言状にもしたためておいた。 175 00:12:56,752 --> 00:12:59,422 遺言状? 176 00:12:59,422 --> 00:13:03,192 ♪♪~ 177 00:13:03,192 --> 00:13:09,031 義周に 1通。 もう一通は 白金屋敷。 178 00:13:09,031 --> 00:13:12,485 ♪♪~ 179 00:13:12,485 --> 00:13:14,787 (上野介)典膳。 ははっ! 180 00:13:14,787 --> 00:13:18,991 浅野の残党が討ち入るとすれば 表門か? 裏門か? 181 00:13:18,991 --> 00:13:21,894 両方にござりましょう。 182 00:13:21,894 --> 00:13:23,930 挟み撃ちか! 183 00:13:23,930 --> 00:13:30,036 のみならず 塀を乗り越えたり 屋根伝いに忍び込んだり。 184 00:13:30,036 --> 00:13:33,089 何じゃと!? 浅野家は→ 185 00:13:33,089 --> 00:13:36,325 大名火消しの華とうたわれし お家柄ゆえ→ 186 00:13:36,325 --> 00:13:38,661 長梯子や掛け縄に長じ→ 187 00:13:38,661 --> 00:13:44,250 打ち壊しの掛け矢 大槌の扱いも お手の物にござりましょう。 188 00:13:44,250 --> 00:13:48,888 人数は? 分かりかねます。 189 00:13:48,888 --> 00:13:52,758 わしは 逃げも隠れもせんぞ! 190 00:13:52,758 --> 00:13:57,463 はっ! 家老どもの指図は 沙汰の限りじゃ! 191 00:13:57,463 --> 00:14:02,385 「女中部屋から床下にもぐれ」の 「内掛けをかぶれ」のと! 192 00:14:02,385 --> 00:14:04,353 わしは もぐらではないぞ! 193 00:14:04,353 --> 00:14:07,623 女子に化けてまで 逃げとうはないわ! 194 00:14:07,623 --> 00:14:11,394 みっともない死に方は 末代までの恥辱じゃ。 195 00:14:11,394 --> 00:14:14,230 ごもっとも至極。 逃がすならば→ 196 00:14:14,230 --> 00:14:17,283 当主の義周が 先であろうが!? えっ!? 197 00:14:17,283 --> 00:14:20,419 わしは この場で 堂々と 討たれてやるわ! 198 00:14:20,419 --> 00:14:22,622 その儀は しばらく。 199 00:14:22,622 --> 00:14:24,724 (上野介)重ねて申すぞ。 200 00:14:24,724 --> 00:14:31,947 典膳も 千春も わしには構うな! 201 00:14:31,947 --> 00:14:43,247 ♪♪~ 202 00:15:02,578 --> 00:15:27,378 ♪♪~ 203 00:15:29,955 --> 00:15:32,758 (平八郎)赤穂の者では ないようだな。 見覚えは? 204 00:15:32,758 --> 00:15:34,860 いえ。 205 00:15:34,860 --> 00:15:37,279 持ち物は? (新八)何も。 206 00:15:37,279 --> 00:15:41,984 番所に届けますか? 無用じゃ。 207 00:15:41,984 --> 00:15:45,654 今 調べが入ると 厄介な事になる。 208 00:15:45,654 --> 00:15:47,890 (新八)はっ! (平八郎)勘蔵。 209 00:15:47,890 --> 00:15:51,460 (勘蔵)はい。 川に放り込んでおけ。 210 00:15:51,460 --> 00:15:55,264 えっ? この事 他言無用じゃ。 よいな? 211 00:15:55,264 --> 00:15:58,364 あっ はい…。 212 00:16:01,921 --> 00:16:04,090 (権兵衛)助っ人じゃと!? 213 00:16:04,090 --> 00:16:07,593 (龍之進)吉良様のお屋敷は 手薄にござります。 214 00:16:07,593 --> 00:16:09,662 手薄ではない。 215 00:16:09,662 --> 00:16:14,183 上杉家から 15人の手だれを 差し遣わしておる。 216 00:16:14,183 --> 00:16:16,419 15人では足りませぬ! 217 00:16:16,419 --> 00:16:19,955 (お菊)だからといって そなたが行く事はあるまい。 218 00:16:19,955 --> 00:16:22,992 行かせて下さい! (権兵衛)ならぬ! 219 00:16:22,992 --> 00:16:28,130 父上! お前は 当家の跡取りじゃ。 220 00:16:28,130 --> 00:16:32,985 お屋敷には 千春が居ります。 典膳も居ります。 221 00:16:32,985 --> 00:16:35,121 もしもの事があれば→ 222 00:16:35,121 --> 00:16:39,742 やっと つないだ夫婦の絆が また ほどけてしまいましょう。→ 223 00:16:39,742 --> 00:16:43,195 せっかくの夢が はかなくなってしまいます。 224 00:16:43,195 --> 00:16:47,500 お前までやられたら どうする!? はっ? 225 00:16:47,500 --> 00:16:53,000 3人ともいなくなれば 長尾家は 終わりではないか!? 226 00:17:00,880 --> 00:17:04,984 申すまでもなく 吉良家ご当主 義周様は→ 227 00:17:04,984 --> 00:17:08,621 上杉綱憲公のご子息である。→ 228 00:17:08,621 --> 00:17:13,242 また ご隠居様は 綱憲公のご尊父である。→ 229 00:17:13,242 --> 00:17:19,298 したがって お屋敷の警固は 上杉家への忠義に ほかならず。→ 230 00:17:19,298 --> 00:17:23,285 分かったな? (一同)ははっ! 231 00:17:23,285 --> 00:17:26,956 警固の手はずや持ち場は 追って 弥七郎から申しつける。 232 00:17:26,956 --> 00:17:31,744 有事の際の総采配は この平八郎が受け持つ。 よいな? 233 00:17:31,744 --> 00:17:33,879 (一同)ははっ! 234 00:17:33,879 --> 00:17:36,515 弥七郎。 ははっ。 235 00:17:36,515 --> 00:17:40,386 おのおの方の持ち場は 表門 裏門→ 236 00:17:40,386 --> 00:17:45,257 ご当主のおわす母屋の表書院 ご寝所と心得よ。 237 00:17:45,257 --> 00:17:51,831 闘いの指図は 敵の動きを見て この新貝弥七郎が下す。 238 00:17:51,831 --> 00:17:55,150 ご隠居様の警固役は 清水一学。→ 239 00:17:55,150 --> 00:17:58,354 細かい事は 追って沙汰を致す。 心得ました。 240 00:17:58,354 --> 00:18:03,792 山添新八と 客分の丹下典膳は 持ち場を定めず 遊軍とする。 241 00:18:03,792 --> 00:18:06,695 承知つかまつり候。 242 00:18:06,695 --> 00:18:10,015 討ち入りがあるとすれば 夜分と心得よ。 243 00:18:10,015 --> 00:18:15,387 侍長屋の15人は 三手に分かれて 寝ずの番を務めるべし。 244 00:18:15,387 --> 00:18:19,525 酒は 決して飲むべからず! 245 00:18:19,525 --> 00:18:25,798 どうしても飲みたければ 夜明けに飲め。 昼間は寝ていよ。 246 00:18:25,798 --> 00:18:29,184 (笑い声) 247 00:18:29,184 --> 00:18:36,425 屋敷内の事は どんな事があっても 外へ漏らしてはなりませぬぞ。 248 00:18:36,425 --> 00:18:40,095 敵の乱入があれば まず 火を消す事。 249 00:18:40,095 --> 00:18:46,218 闇に潜むなり 逃げるなりして 斬り合いの邪魔をせぬ事。 250 00:18:46,218 --> 00:18:50,789 床下から出て お隣の土屋様に 急を知らせてもよいが→ 251 00:18:50,789 --> 00:18:55,227 敵に捕まれば 人質にされる。 252 00:18:55,227 --> 00:18:57,396 刀を突きつけられても→ 253 00:18:57,396 --> 00:19:01,417 ご隠居様の事は 一切 口を割らぬ事。 254 00:19:01,417 --> 00:19:04,720 ひとかどの武士なら 女を斬る事はない。 255 00:19:04,720 --> 00:19:08,420 (しのぶ)かしこまりました。 (一同)かしこまりました。 256 00:19:30,779 --> 00:19:33,999 わしじゃ。 257 00:19:33,999 --> 00:19:37,319 (弥兵衛)どこに行っておった? 父上! 258 00:19:37,319 --> 00:19:39,555 まあ 座れ。 259 00:19:39,555 --> 00:19:43,626 いかがなされました? 何じゃ!? その言いぐさは。 260 00:19:43,626 --> 00:19:46,261 いえいえ ここで お会いするとは。 261 00:19:46,261 --> 00:19:49,398 ああ すまなかった。 (近松勘六)また いつでも。 262 00:19:49,398 --> 00:19:52,518 年寄りは 引っ込んでおれと 申すのか? 263 00:19:52,518 --> 00:19:55,888 そうではございませんが おみ足がどうかと。 264 00:19:55,888 --> 00:19:58,724 うるさい。 もう治った。 265 00:19:58,724 --> 00:20:01,527 どうか ご無理を なされませぬよう。 266 00:20:01,527 --> 00:20:06,048 若い者に 任せておけぬのじゃ。 ごもっとも。 267 00:20:06,048 --> 00:20:12,171 よいか? わしが来なければ 「卜一」は 討てんのじゃ。 268 00:20:12,171 --> 00:20:14,271 ぼくいち? 269 00:20:17,810 --> 00:20:20,346 「卜」→ 270 00:20:20,346 --> 00:20:22,581 「一」じゃ。 271 00:20:22,581 --> 00:20:25,100 上様にござりますか? 272 00:20:25,100 --> 00:20:28,187 あほ! 273 00:20:28,187 --> 00:20:31,890 吉良上野介の「上」じゃ! 274 00:20:31,890 --> 00:20:34,960 お声が 高うござります。 275 00:20:34,960 --> 00:20:46,021 あのな 卜一の顔を知っておるのは このわし一人じゃ ハハハ…。 276 00:20:46,021 --> 00:20:49,825 卜一の額には 3寸の刀傷がござります。 277 00:20:49,825 --> 00:20:55,097 ああ 浅はかなヤツめが! 浅はか? 278 00:20:55,097 --> 00:21:00,052 同じ刀傷が 何人も居ったら どうする!? 279 00:21:00,052 --> 00:21:07,326 取った首が 偽物であったら 天下に 恥をさらす事になる。 280 00:21:07,326 --> 00:21:11,013 卜一の首を確かめる大役は→ 281 00:21:11,013 --> 00:21:15,984 この堀部弥兵衛をおいて 他になし。 282 00:21:15,984 --> 00:21:18,484 仰せのとおり。 283 00:21:22,224 --> 00:21:26,061 これは? (源五右衛門)吉良屋敷の図面じゃ。 284 00:21:26,061 --> 00:21:28,630 どこで 手に入れたのですか? 285 00:21:28,630 --> 00:21:30,630 実は…。 286 00:21:34,570 --> 00:21:38,023 ほう。 287 00:21:38,023 --> 00:21:43,946 安兵衛 討ち入りは近いぞ。 288 00:21:43,946 --> 00:21:47,032 はっ。 289 00:21:47,032 --> 00:21:52,588 首尾よく 卜一の首をはねたら→ 290 00:21:52,588 --> 00:21:59,945 ただちに 泉岳寺に持参し 殿の墓前に供え奉る。 291 00:21:59,945 --> 00:22:08,620 そして その場で 一同 打ちそろうて 腹を切る。 292 00:22:08,620 --> 00:22:14,026 それが 筋書きじゃ。 293 00:22:14,026 --> 00:22:16,395 年内でしょうか? 294 00:22:16,395 --> 00:22:19,348 恐らくな。 295 00:22:19,348 --> 00:22:21,683 ぐずぐずしてはおれんのじゃ。 296 00:22:21,683 --> 00:22:25,854 日がたてば たつほど 同志の数が減る。 297 00:22:25,854 --> 00:22:31,760 進藤源四郎 高田郡兵衛 共に脱落。 298 00:22:31,760 --> 00:22:34,229 萱野三平は 割腹。 299 00:22:34,229 --> 00:22:39,501 年が明ければ もっと減る。 300 00:22:39,501 --> 00:22:41,854 大石様は? 301 00:22:41,854 --> 00:22:47,659 間もなく 京を引き払い 江戸へ お入りになる。 302 00:22:47,659 --> 00:22:51,259 ♪♪~ 303 00:23:04,860 --> 00:23:07,996 御免なすって。 304 00:23:07,996 --> 00:23:13,118 どうした? 今朝方 堀部安兵衛が→ 305 00:23:13,118 --> 00:23:16,188 青物を売りに来やしたぜ。 なに!? 306 00:23:16,188 --> 00:23:22,194 素性を隠す様子もなく 「丹下殿に会いたい」と。 307 00:23:22,194 --> 00:23:24,279 真か? へい。 308 00:23:24,279 --> 00:23:30,219 お三に 大根を渡しながら あっけらかんと。 309 00:23:30,219 --> 00:23:36,592 いかが致します? 明日の朝も来るそうですが。 310 00:23:36,592 --> 00:23:40,028 すまんが 引き止めておいてくれ。 311 00:23:40,028 --> 00:23:44,528 おっと 合点承知の助! 312 00:23:56,595 --> 00:23:58,614 わしに会いたいと? 313 00:23:58,614 --> 00:24:03,852 はい。 なぜか 無性に お会いしとうなりました。 314 00:24:03,852 --> 00:24:07,089 わしも お前のウソを聞くのが 楽しみでやって来た。 315 00:24:07,089 --> 00:24:12,694 ハハハ… 今日は 本音でござる。 316 00:24:12,694 --> 00:24:15,113 ならば 尋ねるぞ。 317 00:24:15,113 --> 00:24:19,284 いえいえ こたびは それがしが お尋ねする番でござる。 318 00:24:19,284 --> 00:24:23,722 あいにくだが 聞かれても 答えられぬ事がある。 319 00:24:23,722 --> 00:24:28,327 それは お互いさまで。 320 00:24:28,327 --> 00:24:30,662 妙な事になったな。 321 00:24:30,662 --> 00:24:36,251 双方が 聞いても答えられぬでは 問答にならぬではないか? 322 00:24:36,251 --> 00:24:42,257 しからば 「もしも」の話に限りましょう。 323 00:24:42,257 --> 00:24:45,560 「もしも」? 「もしも」。 324 00:24:45,560 --> 00:24:53,452 あるいは 「ひょっとして」 「例えば」の類いでござる。 325 00:24:53,452 --> 00:24:56,052 ≪(お三)お邪魔します。 326 00:24:58,223 --> 00:25:04,496 (お三)粗茶でございます。 痛み入ります。 327 00:25:04,496 --> 00:25:06,682 どうぞ。 328 00:25:06,682 --> 00:25:10,168 達者かな? はい。 329 00:25:10,168 --> 00:25:14,323 大五郎は? じいさまと 祭り見物へ。 330 00:25:14,323 --> 00:25:16,323 そうか。 331 00:25:18,560 --> 00:25:20,560 ごゆっくり。 332 00:25:40,816 --> 00:25:44,753 今のは? 白竿屋の妹じゃ。 333 00:25:44,753 --> 00:25:47,122 美形ですな。 334 00:25:47,122 --> 00:25:49,308 続けよ。 はっ? 335 00:25:49,308 --> 00:25:54,196 「もしも」の話じゃ。 ああ。 336 00:25:54,196 --> 00:25:56,631 もしもでござる。 337 00:25:56,631 --> 00:26:02,270 もしも 浅野家の旧臣が 吉良家の 屋敷に討ち入りましたら→ 338 00:26:02,270 --> 00:26:04,523 いかがなされます? 339 00:26:04,523 --> 00:26:06,925 真っ先に お前を斬る。 340 00:26:06,925 --> 00:26:10,595 斬る? 前にも 言うたとおりじゃ。 341 00:26:10,595 --> 00:26:15,417 それは 何のためにござりますか? 何のため? 342 00:26:15,417 --> 00:26:19,254 少なくとも 忠義のためではござりませぬな。 343 00:26:19,254 --> 00:26:24,576 丹下さんは 吉良家の家臣ではなく 上杉家の家臣でもござらぬ。 344 00:26:24,576 --> 00:26:27,996 お雇いの客分に すぎ申さず。 345 00:26:27,996 --> 00:26:32,684 あえて申せば 金のため。 仕官のためですかな? 346 00:26:32,684 --> 00:26:35,153 たわけを申すな。 347 00:26:35,153 --> 00:26:39,024 わしは お前達の過ちを正すために 斬るのだ。 348 00:26:39,024 --> 00:26:41,093 恨むべきは ご公儀であり→ 349 00:26:41,093 --> 00:26:45,497 吉良家への仇討ちは 筋違いじゃと 言うたではないか!? 350 00:26:45,497 --> 00:26:47,766 いかにも 仰せのとおり。 351 00:26:47,766 --> 00:26:51,887 さればこそ 我らは 赤穂城明け渡しのみぎり→ 352 00:26:51,887 --> 00:26:55,957 籠城して 一戦交えようと致し申した。 353 00:26:55,957 --> 00:26:58,393 繰り言を申すな。 354 00:26:58,393 --> 00:27:01,396 大石殿は その後も諦めず→ 355 00:27:01,396 --> 00:27:05,367 京に滞在して 朝廷や公卿方に→ 356 00:27:05,367 --> 00:27:09,855 ご公儀へのとりなしを お頼みしたのでござる。 357 00:27:09,855 --> 00:27:14,426 ところが 太平の世に どっぷりとつかり→ 358 00:27:14,426 --> 00:27:19,281 保身に 汲々とするお歴々は どなたも お耳を貸さず→ 359 00:27:19,281 --> 00:27:24,719 大石殿の働きかけは 徒労に終わり申した。 360 00:27:24,719 --> 00:27:27,956 残る手だては ただ一つ。 361 00:27:27,956 --> 00:27:29,958 お分かりですな? 362 00:27:29,958 --> 00:27:32,077 だから それは 筋違いじゃと。 363 00:27:32,077 --> 00:27:35,447 そうとは限りませぬ。 なに!? 364 00:27:35,447 --> 00:27:40,485 世の人々は ご公儀の仕置きを憤り 浅野家に 肩入れしております。 365 00:27:40,485 --> 00:27:43,985 安兵衛。 まあ お聞き下され。 366 00:27:46,091 --> 00:27:49,094 もしも 我らが 仇討ちを果たせば→ 367 00:27:49,094 --> 00:27:54,449 世間の賞賛を浴び 大喝采と相成りましょう。 368 00:27:54,449 --> 00:27:58,687 大口をたたくな。 もしも 吉良殿の首を→ 369 00:27:58,687 --> 00:28:01,490 亡き殿の墓前に供え→ 370 00:28:01,490 --> 00:28:05,527 もしも 我らが その場で 打ちそろうて切腹すれば→ 371 00:28:05,527 --> 00:28:11,199 賞賛の声は波となり うねりと なって ご公儀を脅かします。 372 00:28:11,199 --> 00:28:14,119 甘い! 373 00:28:14,119 --> 00:28:17,222 浅野家は滅亡しても→ 374 00:28:17,222 --> 00:28:22,694 その武勇は 末代までの語りぐさと 相成りましょう。 375 00:28:22,694 --> 00:28:27,365 これほど 誉れ高い死に場所が 他にござりましょうか? 376 00:28:27,365 --> 00:28:29,718 もしもでござる。 377 00:28:29,718 --> 00:28:33,121 もしも 仇討ちを 邪魔立てする者があれば→ 378 00:28:33,121 --> 00:28:36,525 世間の怒りを買いましょう。 379 00:28:36,525 --> 00:28:40,529 つばをかけられ 石を投げられます。 380 00:28:40,529 --> 00:28:46,201 金で雇われたと分かれば 闇討ちを食うおそれもござります。 381 00:28:46,201 --> 00:28:50,055 これほど ぶざまな死に方が ござりましょうか? 382 00:28:50,055 --> 00:28:56,228 これぞ まさしく 犬死ににござそうらわずや!? 383 00:28:56,228 --> 00:29:00,448 わしを怒らせたいのか? めっそうもない。 384 00:29:00,448 --> 00:29:04,148 ここからが 本題でござる。 385 00:29:12,928 --> 00:29:17,566 恨むべきは ご公儀であると 丹下さんは仰せでござった。 386 00:29:17,566 --> 00:29:20,085 ならば 大義を貫くために→ 387 00:29:20,085 --> 00:29:23,822 仇討ちの邪魔をするのは それこそ 筋違い。 388 00:29:23,822 --> 00:29:27,058 ちょっと待て。 構えて申し上げる。 389 00:29:27,058 --> 00:29:31,730 今のうちに 吉良屋敷を お立ち退き願いたい。 390 00:29:31,730 --> 00:29:35,217 理屈が合わん。 理屈ではござらん! 391 00:29:35,217 --> 00:29:38,717 もしもの話でござる。 392 00:29:41,606 --> 00:29:44,593 困ったヤツだな。 393 00:29:44,593 --> 00:29:51,716 ありていに申せば 丹下さんと 敵味方にはなりとうない! 394 00:29:51,716 --> 00:29:56,221 丹下典膳に 犬死には不似合いでござる! 395 00:29:56,221 --> 00:30:07,265 ♪♪~ 396 00:30:07,265 --> 00:30:16,458 (犬のほえる声) 397 00:30:16,458 --> 00:30:19,794 通せ。 398 00:30:19,794 --> 00:30:22,464 邪魔じゃと申しておる。 399 00:30:22,464 --> 00:30:38,380 ♪♪~ 400 00:30:38,380 --> 00:30:41,967 ざまあ見やがれ。 ハハハ…。 401 00:30:41,967 --> 00:30:47,067 ♪♪~ 402 00:30:50,692 --> 00:30:52,892 ≪(勘蔵)旦那様。 403 00:30:55,030 --> 00:30:57,949 騒ぎが起きております。 うん? 404 00:30:57,949 --> 00:31:02,149 ご隠居様の手文庫から 大事な物が盗まれたそうで。 405 00:31:05,290 --> 00:31:08,727 お屋敷の絵図面なら とっくに お返し致しやした。 406 00:31:08,727 --> 00:31:10,695 それが 無くなっておる。 407 00:31:10,695 --> 00:31:14,316 そいつは いけませんな。 外から 盗人が入るはずはない。 408 00:31:14,316 --> 00:31:16,985 はっ? あれ? 409 00:31:16,985 --> 00:31:22,023 ひょっとして 手前どもの職人を お疑いですかい? 410 00:31:22,023 --> 00:31:25,960 疑うてはおらぬが 一応 持ち物や道具箱を調べる。 411 00:31:25,960 --> 00:31:28,730 冗談じゃござんせんぜ! 412 00:31:28,730 --> 00:31:33,218 大事なお得意様のご普請を承る この白竿屋が→ 413 00:31:33,218 --> 00:31:36,287 職人の素性を確かめもせず→ 414 00:31:36,287 --> 00:31:39,224 お屋敷へ送り込むと お思いですかい? 415 00:31:39,224 --> 00:31:43,812 いいから 道具箱を ここへ並べよ。 1人ずつ 裸になれ。 416 00:31:43,812 --> 00:31:47,198 おっと 待った! 417 00:31:47,198 --> 00:31:51,486 何も出てこなかったら どうなさいます? 418 00:31:51,486 --> 00:31:53,488 出てきたら どうする!? 419 00:31:53,488 --> 00:32:00,888 どうぞ ご遠慮なく スパッと この首 はねておくんなせえ! 420 00:32:07,185 --> 00:32:10,922 (孫兵衛)まさかと思うが 密告があった。 421 00:32:10,922 --> 00:32:14,893 密告? ご隠居様のお部屋から→ 422 00:32:14,893 --> 00:32:21,383 絵図面を持ち出したのは 千春殿じゃと。 えっ!? 423 00:32:21,383 --> 00:32:25,320 10日ほど前に 手文庫を開けるところを見たと。 424 00:32:25,320 --> 00:32:27,389 誰が そのような!? 425 00:32:27,389 --> 00:32:29,808 (孫兵衛)今は言えぬ。 426 00:32:29,808 --> 00:32:32,293 何のために 私が? 427 00:32:32,293 --> 00:32:36,765 (宮内)さあ 何のためかな? 428 00:32:36,765 --> 00:32:41,753 畏れながら 千春殿は 上杉家ご家老のご息女でござる。 429 00:32:41,753 --> 00:32:46,357 百も承知じゃ。 お前の妻であった事もな。 430 00:32:46,357 --> 00:32:51,045 (宮内)では 典膳に尋ねる。 はっ。 431 00:32:51,045 --> 00:32:55,366 今朝方 お前は どこへ行っておった? 432 00:32:55,366 --> 00:32:59,053 ご隠居様のお許しを得て 出かけていました。 433 00:32:59,053 --> 00:33:01,189 (宮内)だから どこへ行った!? 434 00:33:01,189 --> 00:33:04,559 ご隠居様は ご存じでござる。 ここでは 言えんのか!? 435 00:33:04,559 --> 00:33:06,895 ご隠居様のお許しがあれば。 436 00:33:06,895 --> 00:33:11,699 ええい 何かというと ご隠居様 ご隠居様じゃ。 437 00:33:11,699 --> 00:33:15,653 ちと なれなれしいぞ! (宮内)家臣でもないのに! 438 00:33:15,653 --> 00:33:20,975 よいか? 典膳。 我らに断りもなく お目にかかってはならぬ。→ 439 00:33:20,975 --> 00:33:25,163 今後は 差し控えよ! はっ。 440 00:33:25,163 --> 00:33:29,717 お前は かの堀部安兵衛と じっこんらしいな? 441 00:33:29,717 --> 00:33:32,587 堀内道場の同門にござります。 442 00:33:32,587 --> 00:33:38,159 もし 安兵衛が 一味に加わり 討ち入ってきたら どうする? 443 00:33:38,159 --> 00:33:42,363 「真っ先に お前を斬る」と 申し渡しました。 444 00:33:42,363 --> 00:33:44,499 会うたのか!? 445 00:33:44,499 --> 00:33:48,553 今朝 会いました。 ほう。 446 00:33:48,553 --> 00:33:51,823 すると 当屋敷の絵図面が→ 447 00:33:51,823 --> 00:33:56,628 お前から 安兵衛に 渡ったという事はあるまいな!? 448 00:33:56,628 --> 00:33:59,028 断じて ござらぬ! 449 00:34:01,032 --> 00:34:03,451 何じゃ!? その目は。 450 00:34:03,451 --> 00:34:06,621 (男)小林様が お見えにござります。 451 00:34:06,621 --> 00:34:13,461 ♪♪~ 452 00:34:13,461 --> 00:34:17,098 千春殿は 無実でござる。 453 00:34:17,098 --> 00:34:20,084 なぜ 分かった? かいつまんで申せば→ 454 00:34:20,084 --> 00:34:23,454 先刻 くみ取り屋が参りまして。 455 00:34:23,454 --> 00:34:26,724 くみ取り屋? 10日ほど前に来たばかりなので→ 456 00:34:26,724 --> 00:34:33,047 不審に思い 調べましたるところ 前のは 偽者と分かりました。 457 00:34:33,047 --> 00:34:35,049 偽者? 458 00:34:35,049 --> 00:34:37,785 (平八郎)恐らく 浅野家の一味でござりましょう。 459 00:34:37,785 --> 00:34:42,257 これを手引きしたのは 奥女中のしのぶでござります。 460 00:34:42,257 --> 00:34:44,325 しのぶ? 461 00:34:44,325 --> 00:34:46,377 絵図面は しのぶから→ 462 00:34:46,377 --> 00:34:48,730 くみ取り屋に渡ったものと 心得ます。 463 00:34:48,730 --> 00:34:50,815 ゆゆしき仕儀じゃ。 464 00:34:50,815 --> 00:34:55,336 そうか。 それで 千春殿に 罪をなすりつけたのか。 465 00:34:55,336 --> 00:34:57,355 して しのぶは? 466 00:34:57,355 --> 00:35:03,855 縛り上げて 脅しておりますが がんとして 口を割りませぬ。 467 00:35:10,852 --> 00:35:27,035 ♪♪~ 468 00:35:27,035 --> 00:35:29,704 討ち入りは 近いな。 469 00:35:29,704 --> 00:35:32,123 安兵衛殿は 何か? 470 00:35:32,123 --> 00:35:38,780 いや 子細は 何も語らぬが 「仇討ちの邪魔はするな」と言うた。 471 00:35:38,780 --> 00:35:43,818 邪魔? 吉良屋敷を立ち退けと。 472 00:35:43,818 --> 00:35:47,755 浅野方は 死に物狂いだ。 473 00:35:47,755 --> 00:35:54,979 失うものが何もないせいか ほとばしるような熱気が伝わる。 474 00:35:54,979 --> 00:35:59,334 それに引き換え 吉良方は どうじゃ? 475 00:35:59,334 --> 00:36:04,105 本気で闘う気があるとは思えぬ。 476 00:36:04,105 --> 00:36:07,125 あなただけが頼りなのでしょう。 477 00:36:07,125 --> 00:36:12,697 そうではない。 わしは ここでも 疎まれておる。 478 00:36:12,697 --> 00:36:15,767 いえ そんな。 ご家老衆は→ 479 00:36:15,767 --> 00:36:20,355 わしに 手柄を立てさせたくないようだ。 480 00:36:20,355 --> 00:36:23,791 弱みを見せたくないのでしょう。 481 00:36:23,791 --> 00:36:27,595 本心は 別儀と存じます。 482 00:36:27,595 --> 00:36:30,898 千春。 はい。 483 00:36:30,898 --> 00:36:34,252 ご隠居様の遺言はありがたいが→ 484 00:36:34,252 --> 00:36:40,625 わしは 吉良家には 仕官せぬかもしれぬ。 485 00:36:40,625 --> 00:36:46,798 そのお話は 春が来てからで よろしゅうございます。 486 00:36:46,798 --> 00:36:50,218 春が来れば よいのだが…。 487 00:36:50,218 --> 00:36:53,388 何を仰せられます!? 488 00:36:53,388 --> 00:36:57,325 (女の悲鳴) 489 00:36:57,325 --> 00:37:00,194 ≪(男1)何事じゃ! 490 00:37:00,194 --> 00:37:02,394 ≪(男2)誰か! 誰か! 491 00:37:04,515 --> 00:37:07,552 申し上げます。 どうした? 492 00:37:07,552 --> 00:37:13,658 しのぶ殿が 舌をかみ切って 相果てました。 493 00:37:13,658 --> 00:37:15,643 えっ!? 494 00:37:15,643 --> 00:37:21,566 ♪♪~ 495 00:37:21,566 --> 00:37:26,587 しのぶは 死に花を咲かせたな。 496 00:37:26,587 --> 00:37:29,323 死に花? 497 00:37:29,323 --> 00:37:34,023 死ぬる事で 己を生かしたのだ。 498 00:37:36,030 --> 00:37:39,734 おやめ下さりませ。 499 00:37:39,734 --> 00:37:42,970 聞きとうござりませぬ! 500 00:37:42,970 --> 00:37:53,398 ♪♪~ 501 00:37:53,398 --> 00:37:56,167 (孫太夫)大石殿が ひそかに 京を引き払い→ 502 00:37:56,167 --> 00:37:59,821 品川に ご到着なされた。 503 00:37:59,821 --> 00:38:02,957 (源五右衛門)いよいよですな。 うん。 504 00:38:02,957 --> 00:38:05,927 (孫太夫)これで 同志は 51人。 505 00:38:05,927 --> 00:38:09,147 討ち入りの道具は? 506 00:38:09,147 --> 00:38:12,784 梯子 まさかり げんのう 掛け矢は あらかた買い整え→ 507 00:38:12,784 --> 00:38:15,987 美作屋の蔵に隠しました, 508 00:38:15,987 --> 00:38:18,189 して 装束は? 509 00:38:18,189 --> 00:38:20,191 装束? 510 00:38:20,191 --> 00:38:22,760 鎧甲冑とは申しませぬが→ 511 00:38:22,760 --> 00:38:26,330 てんでんばらばらの商人姿では いささか…。 512 00:38:26,330 --> 00:38:28,783 (源五右衛門)力が入りませんな。 513 00:38:28,783 --> 00:38:33,654 う~ん 火事装束では どうか? 514 00:38:33,654 --> 00:38:36,023 なるほど! (弥兵衛)うん。 515 00:38:36,023 --> 00:38:39,360 大名火消しは 浅野家の得意じゃ。 516 00:38:39,360 --> 00:38:41,612 決まりましたな。 517 00:38:41,612 --> 00:38:45,416 早速 手配する。 518 00:38:45,416 --> 00:38:49,487 (勘六)合言葉は 「山」と「川」。 519 00:38:49,487 --> 00:38:51,722 (源五右衛門)古い! はっ? 520 00:38:51,722 --> 00:38:57,912 笑止千万じゃ。 「山」と言われれば 誰でも 「川」と答えるわ。 521 00:38:57,912 --> 00:39:00,912 う~ん。 考え直せ。 522 00:39:02,900 --> 00:39:06,521 「鶴」。 「亀」。 523 00:39:06,521 --> 00:39:09,290 「酒」。 「女」。 524 00:39:09,290 --> 00:39:12,193 やめんか! (笑い声) 525 00:39:12,193 --> 00:39:15,396 安兵衛。 はっ! 526 00:39:15,396 --> 00:39:18,850 お前 言うたな? 527 00:39:18,850 --> 00:39:26,240 「丹下典膳を 卜一屋敷から立ち退かせる」と。 528 00:39:26,240 --> 00:39:28,326 申しました。 529 00:39:28,326 --> 00:39:35,650 立ち退くどころか 守りの要として どんと居座っておるではないか!? 530 00:39:35,650 --> 00:39:39,987 あれは 邪魔ですな。 一番の難敵じゃ。 531 00:39:39,987 --> 00:39:44,025 さよう。 義経を守る 弁慶と申しますかな。 532 00:39:44,025 --> 00:39:47,328 邪魔な石は どかさねばならぬ。 533 00:39:47,328 --> 00:39:49,997 (孫太夫)どかすと言うても…。 (弥兵衛)安兵衛。 534 00:39:49,997 --> 00:39:53,084 はっ。 討ち入り前に→ 535 00:39:53,084 --> 00:39:58,923 なんとか 典膳をおびき出し 始末せい。 536 00:39:58,923 --> 00:40:05,663 始末? (弥兵衛)斬れと申しておる。 537 00:40:05,663 --> 00:40:07,698 その儀は 平に。 538 00:40:07,698 --> 00:40:10,218 何じゃと!? 539 00:40:10,218 --> 00:40:14,522 丹下典膳は 剣の師匠であり 無二の親友でござる。 540 00:40:14,522 --> 00:40:21,522 女々しい事を申すな! 仇討ちの 成否がかかっておるのじゃ! 541 00:40:23,648 --> 00:40:28,803 1人では無理なら 3人でも 5人でも 加勢を連れていけ。 542 00:40:28,803 --> 00:40:30,821 わしも 一緒に参ろう。 543 00:40:30,821 --> 00:40:36,360 それがしも 同道つかまつる。 だまし討ちは 卑怯でござる。 544 00:40:36,360 --> 00:40:39,847 この不忠者めが!→ 545 00:40:39,847 --> 00:40:44,352 殿の墓前に 卜一の首を供えとうないのか!? 546 00:40:44,352 --> 00:40:48,222 誓紙血判の同志を 裏切る所存か!? 547 00:40:48,222 --> 00:40:51,492 まあ まあ。 (弥兵衛)何が師匠じゃ!?→ 548 00:40:51,492 --> 00:40:54,996 何が親友じゃ!? 大義を忘れて 私情にこだわるとは→ 549 00:40:54,996 --> 00:40:59,884 およそ 武門にふさわしからず! 親子の縁を切るよって→ 550 00:40:59,884 --> 00:41:04,255 ここから ここから ここから ここから ここから出ていけ! 551 00:41:04,255 --> 00:41:07,525 (孫太夫)水じゃ! 水! (勘六)はい ただいま。 552 00:41:07,525 --> 00:41:34,225 ♪♪~ 553 00:41:37,255 --> 00:41:41,192 我慢比べだけで 生涯を終えるつもりか? 554 00:41:41,192 --> 00:41:44,645 嵐に立ち向かう小舟を 沈めようとしているのは 誰だ!? 555 00:41:44,645 --> 00:41:47,648 お待ち下さいまし。 邪魔者は このわしじゃ。 556 00:41:47,648 --> 00:41:51,348 討ち入りは 今夜だな? いかにも。 557 00:41:53,404 --> 00:41:57,275 あなた。 558 00:41:57,275 --> 00:42:03,564 ♪♪「真夜中過ぎに羽を広げて」 559 00:42:03,564 --> 00:42:10,288 ♪♪「音もなく飛び去った 鳥を見ていた」 560 00:42:10,288 --> 00:42:16,460 ♪♪「眠れぬ夜は なつかしい」 561 00:42:16,460 --> 00:42:22,600 ♪♪「あの歌を胸の中で」 562 00:42:22,600 --> 00:42:29,423 ♪♪「あまりに無力な この手のひら」 563 00:42:29,423 --> 00:42:35,663 ♪♪「憶えているあの冷たさはまだ」 564 00:42:35,663 --> 00:42:41,585 ♪♪「消えない 胸の奥を」 565 00:42:41,585 --> 00:42:50,895 ♪♪「えぐるよな 痛みはまだ止まらない」 566 00:42:50,895 --> 00:42:57,468 ♪♪「悲しみの叫びよ 静まれ」 567 00:42:57,468 --> 00:43:03,924 ♪♪「自らを傷つける刃を」 568 00:43:03,924 --> 00:43:10,481 ♪♪「心の闇に捨ててしまえ」 569 00:43:10,481 --> 00:43:16,454 ♪♪「生まれ持った優しさで」 570 00:43:16,454 --> 00:43:23,854 ♪♪~