1 00:00:03,670 --> 00:00:06,573 (乙)ふぁ~。 2 00:00:10,177 --> 00:00:12,179 (乙)ん…。 3 00:00:15,349 --> 00:00:17,851 (ドアの閉まる音) 4 00:00:17,851 --> 00:00:19,853 んっ。 5 00:00:21,855 --> 00:00:24,057 んっ。 6 00:00:29,696 --> 00:00:31,899 んっ。 7 00:00:34,034 --> 00:00:37,037 いってきます。 (化野)ああ。 8 00:00:37,037 --> 00:00:46,346 ♬~ 9 00:00:48,382 --> 00:00:50,384 (ドアの開く音) 10 00:00:50,384 --> 00:00:55,722 (店長)緒川さん 新刊来たから ビニールがけ頼むよ。 11 00:00:55,722 --> 00:00:58,926 (菫子)は~い。 ふぅ…。 12 00:02:45,866 --> 00:02:49,536 ふぅ… ん…。 13 00:02:49,536 --> 00:02:52,706 カッコー。 んっ? 14 00:02:52,706 --> 00:02:55,208 気のせいかな 化野くん。 15 00:02:55,208 --> 00:02:58,412 今 店内で鳥が鳴かなかったかい? 16 00:03:00,814 --> 00:03:04,317 カッコー。 あっ 今度は堂々と鳴いた。 17 00:03:04,317 --> 00:03:07,154 閑古鳥が鳴いたんですよ。 18 00:03:07,154 --> 00:03:10,157 なんだって? 知ってました? 19 00:03:10,157 --> 00:03:12,659 閑古鳥って カッコウのことです。 20 00:03:12,659 --> 00:03:14,661 ふぅ…。 21 00:03:14,661 --> 00:03:17,664 私と一緒のレジは そんなに退屈かい? 22 00:03:17,664 --> 00:03:22,002 まさか。 僕は菫子さんとレジに入るために➡ 23 00:03:22,002 --> 00:03:24,337 ここで働いてるんですから。 24 00:03:24,337 --> 00:03:27,674 ハッハハーッ そりゃ光栄だが➡ 25 00:03:27,674 --> 00:03:30,177 年長者を からかうもんじゃないぜ? 26 00:03:30,177 --> 00:03:33,013 10年早いぞ 少年。 27 00:03:33,013 --> 00:03:35,015 10年か…。 んっ? 28 00:03:35,015 --> 00:03:40,187 10年も待ったら 菫子さんも 本格的に熟女だしなぁ…。 29 00:03:40,187 --> 00:03:44,691 はは~ん。 からかってるんじゃ なく バカにしているのか。 30 00:03:44,691 --> 00:03:48,695 実際 暇じゃないですか。 んん…。 31 00:03:48,695 --> 00:03:51,531 どこの書店も バタバタ潰れてるし➡ 32 00:03:51,531 --> 00:03:54,701 みんな本屋なんて いらないのかもね。 33 00:03:54,701 --> 00:03:57,204 ふわぁ…。 34 00:03:57,204 --> 00:04:01,141 眠そうですね。 何か夜通し執筆でも? 35 00:04:01,141 --> 00:04:03,143 よくぞ聞いてくれた。 36 00:04:03,143 --> 00:04:06,646 昨日 オカルト板に 「きさらぎ駅」の 続報が来ただろ? 37 00:04:06,646 --> 00:04:08,648 ああ あれ。 38 00:04:08,648 --> 00:04:12,652 詰め甘々で ウソ丸出しな創作都市伝説。 39 00:04:12,652 --> 00:04:16,656 よく楽しめますね いい年して。 いてっ。 40 00:04:16,656 --> 00:04:21,328 何気に自分も読んでるくせに よく言うよ 小僧。 41 00:04:21,328 --> 00:04:23,330 小僧…。 42 00:04:23,330 --> 00:04:27,334 オカルトは 人知を超えるものへの 畏れと戸惑いを楽しめる。 43 00:04:27,334 --> 00:04:30,837 食欲や性欲みたいな 人の根源に関わる➡ 44 00:04:30,837 --> 00:04:33,840 本能を刺激する娯楽さ! 45 00:04:33,840 --> 00:04:36,176 つまり菫子さんは…。 46 00:04:36,176 --> 00:04:41,181 本能に作用するポルノのごときものに 夜通し熱中していたと。 47 00:04:41,181 --> 00:04:45,852 ああん!? もしや私は今 あらぬ誤解をされてはいまいか? 48 00:04:45,852 --> 00:04:49,022 (店長)驚いたな。 店長。 49 00:04:49,022 --> 00:04:51,691 化野くんが そんなにしゃべるとは。 50 00:04:51,691 --> 00:04:55,695 彼は存外おしゃべりですよ。 腹立つほどに。 51 00:04:55,695 --> 00:04:58,198 なっ? フフ。 52 00:04:58,198 --> 00:05:01,468 おい 今更 黙るのはズルくないか? 53 00:05:01,468 --> 00:05:03,470 知らなかった? 54 00:05:03,470 --> 00:05:06,640 化野くんは 緒川さんとしか しゃべらないんだよ。 55 00:05:06,640 --> 00:05:09,643 あぁ そうだ。 フフフ…。 56 00:05:09,643 --> 00:05:13,480 緒川さんにプレゼント。 なんです? 57 00:05:13,480 --> 00:05:16,983 「逆万引き」の本だよ。 逆万引き? 58 00:05:16,983 --> 00:05:21,321 おや 知らなかった? 文字どおり 万引きの逆でね➡ 59 00:05:21,321 --> 00:05:25,492 盗まれるんじゃなくて 売り場の本が増えてるんだ。 60 00:05:25,492 --> 00:05:28,328 どうせ 迷惑客の嫌がらせでしょう? 61 00:05:28,328 --> 00:05:32,499 それを言っちゃあ おしまいだけどね。 だけどさ➡ 62 00:05:32,499 --> 00:05:35,001 緒川さん たしか誕生日じゃなかった? 63 00:05:35,001 --> 00:05:37,504 (菫子)いや そうですけど…。 64 00:05:37,504 --> 00:05:41,508 (拍手) 65 00:05:41,508 --> 00:05:47,013 菫子さん 前言ってた 新作小説はどうなったんですか? 66 00:05:47,013 --> 00:05:51,851 最近書けてないなぁ。 しっかりしないと。 67 00:05:51,851 --> 00:05:54,688 それにしても水くさいですよ 菫子さん。 68 00:05:54,688 --> 00:05:58,692 誕生日 教えてくれてたら プレゼント用意したのに。 69 00:05:58,692 --> 00:06:02,629 じゃあ 今がチャンスだぞ。 70 00:06:02,629 --> 00:06:08,134 へこんでる先輩をそっとしておく 気遣いを見せるのが 最高のプレゼント。 71 00:06:08,134 --> 00:06:12,472 ハハハハハハッ 放っておけるわけ ないじゃないですか。 72 00:06:12,472 --> 00:06:16,576 僕はこれでも 作家 緒川菫子のファンなんです。 73 00:06:18,645 --> 00:06:20,847 よく言うよ。 74 00:06:22,983 --> 00:06:26,820 <菫子:忘れないために 私はここに記しておこう。 75 00:06:26,820 --> 00:06:29,656 これは私 緒川菫子と➡ 76 00:06:29,656 --> 00:06:33,326 口の減らない友人 化野蓮との➡ 77 00:06:33,326 --> 00:06:37,163 ささやかな友情と 別れに関する記録だ> 78 00:06:37,163 --> 00:06:40,333 (化野)じゃあ また明日。 (菫子)うん おやすみ。 79 00:06:40,333 --> 00:07:17,137 ♬~ 80 00:07:17,137 --> 00:07:20,340 ⦅司会:おめでとうございます⦆ (拍手) 81 00:07:24,311 --> 00:07:26,313 (時間を知らせる音) 82 00:07:26,313 --> 00:07:28,315 あっ。 83 00:07:35,155 --> 00:07:39,326 《あのころは なんだって書けたんだ。 84 00:07:39,326 --> 00:07:42,829 15歳で新人賞を受賞して…》 85 00:07:45,332 --> 00:07:50,003 《だが… 二十歳過ぎれば所詮はただの人。 86 00:07:50,003 --> 00:07:54,507 私は ただの人 だったらしい。 87 00:07:54,507 --> 00:07:57,677 あのころに戻りたいなぁ…》 88 00:07:57,677 --> 00:07:59,879 んっ? あ…。 89 00:08:02,282 --> 00:08:04,451 あ~ もう…。 90 00:08:04,451 --> 00:08:08,121 ん… く…。 91 00:08:08,121 --> 00:08:12,525 んん? タイトル読めないな。 92 00:08:15,795 --> 00:08:18,965 日本語っぽいけど微妙に違う。 93 00:08:18,965 --> 00:08:22,969 でも ひらがなもあるし 要所要所 読めるかな? 94 00:08:31,644 --> 00:08:34,981 『万葉集』だったかな フフ…。 95 00:08:34,981 --> 00:08:39,486 昔の人も若返りたいと思ってた ってことか? 96 00:08:39,486 --> 00:08:42,489 フフフッ。 97 00:08:42,489 --> 00:08:44,791 ケーキでも買いに行くかな。 98 00:09:00,607 --> 00:09:02,609 小僧…。 99 00:09:02,609 --> 00:09:05,512 そんな年でもないんだけどな。 100 00:09:10,784 --> 00:09:13,987 デリカシーのないヤツだよ まったく。 101 00:09:17,123 --> 00:09:21,294 ⚟らっしゃいませ~。 (チャイム) 102 00:09:21,294 --> 00:09:23,296 んっ? あっ! 103 00:09:23,296 --> 00:09:25,598 あ…。 104 00:09:28,134 --> 00:09:30,136 伸びたか? 105 00:09:32,138 --> 00:09:34,307 あれ? 106 00:09:34,307 --> 00:09:38,812 う… 目が… う…。 107 00:09:38,812 --> 00:09:40,814 くうっ。 108 00:09:44,317 --> 00:09:46,653 あ…。 109 00:09:46,653 --> 00:09:48,655 あっ うっ! 110 00:09:50,990 --> 00:09:53,326 靴が…。 111 00:09:53,326 --> 00:09:55,328 うっ。 112 00:09:55,328 --> 00:09:58,998 ハァ ハァ ハァ…。 113 00:09:58,998 --> 00:10:01,000 あぁ… はっ! 114 00:10:01,000 --> 00:10:06,339 あ… ああ… あっ! ハァッ。 115 00:10:06,339 --> 00:10:08,842 んっ!? えっ? (割れる音) 116 00:10:08,842 --> 00:10:11,344 何やってんの? あっ! 117 00:10:11,344 --> 00:10:13,680 ハァ ハァ ハァ。 118 00:10:13,680 --> 00:10:15,682 お客さん! えっ? 119 00:10:19,686 --> 00:10:23,356 (店長)化野くん ちょっと。 んっ? 120 00:10:23,356 --> 00:10:26,693 緒川さん 無断欠勤なんだよ。 121 00:10:26,693 --> 00:10:31,531 菫子さんが? 電話にも出ないから心配でさ。 122 00:10:31,531 --> 00:10:36,536 何か聞いてない? 様子見に行ったほうがいいかな。 123 00:10:36,536 --> 00:10:40,373 体調不良らしいですよ。 124 00:10:40,373 --> 00:10:42,375 えっ? そうなの? 125 00:10:42,375 --> 00:10:46,880 便秘が極まって 体内が人糞で満杯らしくて。 126 00:10:46,880 --> 00:10:49,549 命の危険があると 医者に言われたので➡ 127 00:10:49,549 --> 00:10:52,385 休むそうです。 マジで? 128 00:10:52,385 --> 00:10:55,555 ビビって泣きながら トイレに籠もっているそうです。 129 00:10:55,555 --> 00:10:59,893 そうか…。 お大事にって伝えておいて。 130 00:10:59,893 --> 00:11:03,496 わかりました。 131 00:11:03,496 --> 00:11:07,800 何があったかなんて 僕が知りたいところですよ。 132 00:11:16,843 --> 00:11:20,346 菫子さん…? 133 00:11:20,346 --> 00:11:23,516 《菫子:謎のメールから 始まるってのも アリだな。 134 00:11:23,516 --> 00:11:28,354 メールを打った少年は 予告どおりに 主人公と同じ店でバイトを始める。 135 00:11:28,354 --> 00:11:32,559 やっぱり 書店ってのが いいんじゃないか?》 136 00:11:37,530 --> 00:11:40,700 ⦅化野:菫子さんの家に? 137 00:11:40,700 --> 00:11:44,037 (店長)1週間となると 見過ごせないよ。 138 00:11:44,037 --> 00:11:46,706 様子見てきてくれないかなぁ。 139 00:11:46,706 --> 00:11:48,875 (化野)僕がですか?⦆ 140 00:11:48,875 --> 00:11:52,045 (玄関のチャイム) 141 00:11:52,045 --> 00:11:54,213 化野で~す。 (玄関のチャイム) 142 00:11:54,213 --> 00:11:58,051 様子見に来ました。 (ノック) 143 00:11:58,051 --> 00:12:01,821 いますか~? 144 00:12:01,821 --> 00:12:03,823 あ…。 145 00:12:03,823 --> 00:12:07,493 開いちゃったよ…。 146 00:12:07,493 --> 00:12:10,997 防犯意識 ガバガバじゃないですか。 147 00:12:10,997 --> 00:12:12,999 ふぅ…。 148 00:12:12,999 --> 00:12:17,503 ガサ入れで~す。 勝手に上がって 好き勝手しますよ~。 149 00:12:19,505 --> 00:12:23,509 クソッ いい匂いがする。 (匂いを嗅ぐ音) 150 00:12:23,509 --> 00:12:27,847 こんな形で 部屋に入りたくなかったなぁ。 151 00:12:27,847 --> 00:12:30,516 んっ? 📱 152 00:12:30,516 --> 00:12:33,686 📱 153 00:12:33,686 --> 00:12:36,356 スマホは置きっ放し。 📱 154 00:12:36,356 --> 00:12:39,025 争った形跡もない。 155 00:12:39,025 --> 00:12:41,194 いったい どこに…。 156 00:12:41,194 --> 00:12:43,196 はっ! 157 00:12:43,196 --> 00:13:03,483 ♬~ 158 00:13:03,483 --> 00:13:05,818 (匂いを嗅ぐ音) 159 00:13:05,818 --> 00:13:09,322 なるほど これが原因。 160 00:13:15,161 --> 00:13:18,831 フフ… 資料もそろった。 161 00:13:18,831 --> 00:13:22,168 これでまた小説が書けるぞ~。 162 00:13:22,168 --> 00:13:25,838 ウフ フフフフ… フフフフッ! 163 00:13:25,838 --> 00:13:28,675 子どもの姿も悪くないぞ~! 164 00:13:28,675 --> 00:13:31,010 アイデアが湧き出て➡ 165 00:13:31,010 --> 00:13:36,349 じっとしていられな~い! フフフフッ! 166 00:13:36,349 --> 00:13:39,552 ハッ ハッ ハッ… 家に帰って執筆だ! 167 00:13:42,689 --> 00:13:44,857 家に…。 168 00:13:44,857 --> 00:13:49,862 ん… 家って… どこだっけ? 169 00:13:49,862 --> 00:13:52,365 あ…。 菫子さん。 あっ! 170 00:13:52,365 --> 00:13:56,869 子どもの1人歩きは危ない。 はぁ…。 171 00:13:56,869 --> 00:14:01,140 帰り道がわからないなら 案内しますよ。 172 00:14:01,140 --> 00:14:03,643 誰だ? 君は…。 173 00:14:03,643 --> 00:14:06,979 薄情だなぁ。 忘れたんですか? 174 00:14:06,979 --> 00:14:11,150 いや 全然覚えが… うっ! 175 00:14:11,150 --> 00:14:15,655 ぐうっ! 頭痛い! 176 00:14:15,655 --> 00:14:19,492 その姿の反動ですよ。 ううっ… ああ…。 177 00:14:19,492 --> 00:14:21,994 若返ったと思ってますか? 178 00:14:21,994 --> 00:14:25,164 子どもの体に 押し固められてるだけで➡ 179 00:14:25,164 --> 00:14:29,335 あなたを構成する 縮んだ分の血や肉や骨…。 180 00:14:29,335 --> 00:14:33,673 あなたの余りは 今も その体の中にあるんです。 181 00:14:33,673 --> 00:14:36,676 どうして知ってる? ハッ! 182 00:14:36,676 --> 00:14:42,515 君は… 化野くんだ。 183 00:14:42,515 --> 00:14:46,519 おかしいよ… なぜ この姿に驚いてない? 184 00:14:46,519 --> 00:14:49,689 フッ… 菫子さん➡ 185 00:14:49,689 --> 00:14:53,192 この本を読みましたね。 それは…。 186 00:14:53,192 --> 00:14:56,529 (化野)声に出して 読んではならない呪いの本。 187 00:14:56,529 --> 00:14:59,532 呪書と呼ばれている怪異です。 188 00:14:59,532 --> 00:15:02,969 本を読んだ呪いで 小さくなったっていうのか? 189 00:15:02,969 --> 00:15:06,639 そんな バカげた話を 信じろっていうのか? 190 00:15:06,639 --> 00:15:10,977 そんな バカげた体になったのに 信じないっていうんですか? 191 00:15:10,977 --> 00:15:14,480 これは あなたの命に関わる話ですよ。 192 00:15:14,480 --> 00:15:17,150 命…? 193 00:15:17,150 --> 00:15:21,988 『万葉集』の和歌のうち 作者不詳の歌の中には➡ 194 00:15:21,988 --> 00:15:26,159 人ではない 「何か」が詠んだ歌が 紛れ込んでいる。 195 00:15:26,159 --> 00:15:29,495 読めば死者を呼び起こす挽歌。 196 00:15:29,495 --> 00:15:32,999 人の心を操作する相聞。 197 00:15:32,999 --> 00:15:35,334 あるいは 若さを取り戻す雑歌➡ 198 00:15:35,334 --> 00:15:37,336 なんてものもある。 199 00:15:37,336 --> 00:15:41,007 第十三巻 雑歌。 作者不詳。 200 00:15:41,007 --> 00:15:46,679 『万葉集』では 貴人の若返りを 願った女性の歌の一首なんです。 201 00:15:46,679 --> 00:15:49,182 (菫子)「天なるや 月日のごとく➡ 202 00:15:49,182 --> 00:15:51,184 吾が思ヘる➡ 203 00:15:51,184 --> 00:15:53,853 君が日に異に 老ゆらく惜しも」。 204 00:15:53,853 --> 00:15:56,689 歌うと怪現象が起こる歌? 205 00:15:56,689 --> 00:15:59,025 初耳だぞ そんなの。 206 00:15:59,025 --> 00:16:02,462 「月読の変若水」というやつですよ。 207 00:16:02,462 --> 00:16:05,798 とはいえ この歌は いくつかの条件がそろって➡ 208 00:16:05,798 --> 00:16:07,967 初めて効果が表れる➡ 209 00:16:07,967 --> 00:16:09,969 かなりレアな呪歌らしいですがね。 210 00:16:09,969 --> 00:16:12,138 条件? なんだい? 211 00:16:12,138 --> 00:16:15,308 教えましょうか? ぜひとも。 212 00:16:15,308 --> 00:16:21,481 その一。 時刻は深夜0時ごろ。 213 00:16:21,481 --> 00:16:25,985 その二。 月明かりの下で読む。 214 00:16:25,985 --> 00:16:30,490 その三。 28歳以上である。 215 00:16:30,490 --> 00:16:33,659 確かに… 全部当てはまってる。 216 00:16:33,659 --> 00:16:37,163 そして 最後の条件は…。 んっ? 217 00:16:37,163 --> 00:16:40,833 その四。 読み手が生娘であること。 218 00:16:40,833 --> 00:16:45,671 はっ? 聞き間違いかな。 今なんて? 219 00:16:45,671 --> 00:16:48,841 読み手が生娘であること。 うう…。 220 00:16:48,841 --> 00:16:51,344 読み手が生娘であること。 221 00:16:51,344 --> 00:16:55,014 2度言った…。 うっ… う…。 222 00:16:55,014 --> 00:16:58,017 怪異が 純潔を証明してくれたんです。 223 00:16:58,017 --> 00:17:00,620 頼むから黙ってくれないか? 224 00:17:00,620 --> 00:17:03,623 うっかり殺してしまいそうだ。 225 00:17:03,623 --> 00:17:07,126 どうしてそんな本が 私のもとに巡ってきた? 226 00:17:07,126 --> 00:17:09,128 ただの偶然です。 227 00:17:09,128 --> 00:17:12,632 あなたが特別 選ばれたわけじゃありません。 228 00:17:12,632 --> 00:17:15,801 私のせいじゃないって 言ってくれてるのかい? 229 00:17:15,801 --> 00:17:17,803 今 死にかけているのは➡ 230 00:17:17,803 --> 00:17:20,806 のんきにほっつき歩いている あなたのせいですけどね。 231 00:17:20,806 --> 00:17:23,142 う… げほ… げほ…。 232 00:17:23,142 --> 00:17:28,648 ハァ ハァ… ホントに 死ぬのか? 233 00:17:28,648 --> 00:17:32,151 元に戻るには月明かりが必要です。 234 00:17:32,151 --> 00:17:35,154 月の見えるところまで 行きましょう。 235 00:17:35,154 --> 00:17:38,858 今ならまだ間に合います。 236 00:17:41,994 --> 00:17:46,499 ここなら月が見える。 やってみましょう。 237 00:17:48,501 --> 00:17:51,170 また同じ歌を読めばいいのか? 238 00:17:51,170 --> 00:17:54,507 あなたが最初に読んだのは 反歌です。 239 00:17:54,507 --> 00:17:58,844 今回読むのは 最初の歌が 添えられている長歌です。 240 00:17:58,844 --> 00:18:02,548 ここです。 早く。 わかった。 241 00:18:16,295 --> 00:18:18,297 はっ! んっ! 242 00:18:18,297 --> 00:18:24,470 ♬~ 243 00:18:24,470 --> 00:18:26,472 くはっ! 244 00:18:26,472 --> 00:18:28,474 ふむ。 245 00:18:28,474 --> 00:18:32,144 ハァ… ハァ… ハァ…。 246 00:18:32,144 --> 00:18:34,814 (化野)無事戻れましたね。 247 00:18:34,814 --> 00:18:38,150 なんだか 恥ずかしいぞ これ。 248 00:18:38,150 --> 00:18:40,987 それ パンティーはいてるんですよね? 249 00:18:40,987 --> 00:18:42,989 当たり前だろ? 250 00:18:42,989 --> 00:18:44,991 君に良識があるのなら➡ 251 00:18:44,991 --> 00:18:47,994 何か隠すものを 貸してくれないか? 252 00:18:47,994 --> 00:18:50,496 良識か。 あったかな。 253 00:18:52,498 --> 00:18:54,834 その本は僕に預けてください。 254 00:18:54,834 --> 00:18:58,004 適当に処分しますんで。 255 00:18:58,004 --> 00:19:00,940 このタオルで そのケツ 隠せます? 256 00:19:00,940 --> 00:19:04,276 えっ? えぇ!? 257 00:19:04,276 --> 00:19:06,278 ハァハァハァ…。 258 00:19:06,278 --> 00:19:09,115 ちょっと 菫子さん! 259 00:19:09,115 --> 00:19:11,283 悪いが これは渡せないな! 260 00:19:11,283 --> 00:19:13,285 有効活用させてもらう! 261 00:19:13,285 --> 00:19:15,287 危険です! なっ? 262 00:19:15,287 --> 00:19:17,289 渡してもらいます! 263 00:19:17,289 --> 00:19:19,625 「天なるや 月日のごとく 吾が思へる➡ 264 00:19:19,625 --> 00:19:21,961 君が日に異に 老ゆらく惜しも」。 265 00:19:21,961 --> 00:19:24,130 ハァハァハァ。 あ~っ! 266 00:19:24,130 --> 00:19:27,800 なんだアイツ… ハァハァ どうやって先回りを…。 267 00:19:27,800 --> 00:19:29,802 はっ! ぬぅ…。 268 00:19:29,802 --> 00:19:32,304 「天橋も長くもがも 高山も高くもがも➡ 269 00:19:32,304 --> 00:19:34,640 月読の持てる変若水 い取り来て➡ 270 00:19:34,640 --> 00:19:36,976 君に奉りて 変若しめむはも」。 271 00:19:36,976 --> 00:19:38,978 ふっ! ぐ…。 272 00:19:38,978 --> 00:19:42,314 何 使いこなしてんだよ! この短太眉! 273 00:19:42,314 --> 00:19:44,650 ハァ… ハァ…。 274 00:19:44,650 --> 00:19:49,655 ゼェ… ゼェ… ゼェ… ゼェ…。 275 00:19:49,655 --> 00:19:51,657 どこだ ここは…。 276 00:19:51,657 --> 00:19:55,161 ハァ… ハァ… ハァ…。 277 00:19:55,161 --> 00:19:58,664 さぁ 本を渡してください。 278 00:19:58,664 --> 00:20:02,001 嫌だ! これがいるんだ! 279 00:20:02,001 --> 00:20:05,671 若くないと誰も私の本なんて 読んでくれない! 280 00:20:05,671 --> 00:20:08,340 どうして そういうことになるんです? 281 00:20:08,340 --> 00:20:13,512 私には! 才能なんてないって 思い知ったからさ! 282 00:20:13,512 --> 00:20:16,182 ずっと ボツ続きで➡ 283 00:20:16,182 --> 00:20:18,851 天才なんてメッキは とうに剥がれて➡ 284 00:20:18,851 --> 00:20:23,689 残されたのは 社会性のない ただの幼稚な人間。 285 00:20:23,689 --> 00:20:26,692 それでも小説が書きたいんだ! 286 00:20:26,692 --> 00:20:30,529 おもしろくないって 誰よりも自分がわかってる。 287 00:20:30,529 --> 00:20:33,699 書いても書いても だめって言われて➡ 288 00:20:33,699 --> 00:20:36,702 また書き直して…。 289 00:20:36,702 --> 00:20:40,372 それでも 書きたいんだ! 290 00:20:40,372 --> 00:20:49,882 (泣き声) 291 00:20:49,882 --> 00:20:54,053 鼻水出てますよ。 ふ… ふぁっ。 292 00:20:54,053 --> 00:20:57,056 (化野)大丈夫 書けますって。 293 00:20:57,056 --> 00:20:59,725 勇気はもともと あなたの中にある。 294 00:20:59,725 --> 00:21:04,497 なんせ半裸で街の中を 走れるんですから。 295 00:21:04,497 --> 00:21:08,000 僕は作家 緒川菫子のファンですから。 296 00:21:08,000 --> 00:21:11,504 どうか新作を 僕に読ませてください。 297 00:21:15,007 --> 00:21:19,178 「天橋も長くもがも 高山も高くもがも➡ 298 00:21:19,178 --> 00:21:23,015 月読の持てる変若水 い取り来て」。 299 00:21:23,015 --> 00:21:26,352 ずるいぞ 化野くん。 300 00:21:26,352 --> 00:21:29,655 そこまで言われちゃ断れない…。 301 00:21:33,859 --> 00:21:38,664 戻ってくれて うれしいです 菫子さん。 302 00:21:41,033 --> 00:21:45,638 (駅係員)拾得物の届け出でしたら こちらにどうぞ。 303 00:21:48,207 --> 00:21:50,376 呪書ですか。 304 00:21:50,376 --> 00:21:56,048 これですと 「やみ駅」行きの 乗車券1枚と交換可能です。 305 00:21:56,048 --> 00:21:58,884 今回はやめておきます。 306 00:21:58,884 --> 00:22:03,322 (駅係員)それは残念…。 307 00:22:03,322 --> 00:22:07,993 またのご利用 お待ちしております。 308 00:22:07,993 --> 00:22:11,297 神隠し…。