1 00:00:07,173 --> 00:00:08,883 (玄関チャイムの音) 2 00:00:10,719 --> 00:00:12,679 (玄関チャイムの音) 3 00:00:14,389 --> 00:00:16,099 (私の声)私は罪な男である 4 00:00:16,224 --> 00:00:18,560 門前には 1人の女が求愛に来ている 5 00:00:18,935 --> 00:00:22,689 長年 語学の友人であった彼女と 一線越えても よいものか? 6 00:00:22,814 --> 00:00:25,233 これほど 私にアタックしてきた 魅力的な人が― 7 00:00:25,358 --> 00:00:26,818 かつて いただろうか? 8 00:00:27,610 --> 00:00:30,030 しかし 私の目の前には 別の女がいる 9 00:00:30,155 --> 00:00:32,490 ある男の元から やってきたという彼女は― 10 00:00:32,615 --> 00:00:33,992 多くを語らない 11 00:00:34,492 --> 00:00:38,663 更に 私は頭の片隅で もう1人の女に思いをはせてみる 12 00:00:41,249 --> 00:00:43,376 彼女は 今も とある場所で 私のことを― 13 00:00:43,501 --> 00:00:45,795 今か 今かと待ちわびているのだ 14 00:00:47,046 --> 00:00:50,759 神よ モテる男は罪なのですか? 私は どうすれば… 15 00:00:50,884 --> 00:00:52,677 (ドアをたたく音) (羽貫(はぬき)さん)出てきて! 16 00:00:53,720 --> 00:00:55,555 (ジョニー)早く決めろー! 17 00:00:55,680 --> 00:00:56,723 あっ! 18 00:00:57,932 --> 00:00:59,768 (私の声) ドアの外には色っぽい羽貫さん 19 00:00:59,893 --> 00:01:01,561 下宿には無口で可憐(かれん)な香織(かおり)さん 20 00:01:01,686 --> 00:01:04,813 カフェで待っているのは まだ見ぬ文通相手の景子(けいこ)さん 21 00:01:05,982 --> 00:01:09,652 桃色遊戯の達人でないならば 誰か1人に絞らねばならぬ 22 00:01:09,778 --> 00:01:12,906 (私)ならば! (ジョニー)ならばー! 23 00:01:13,031 --> 00:01:14,824 私は景子さんを選ぶ! 24 00:01:14,949 --> 00:01:16,326 なんで!? 25 00:01:17,243 --> 00:01:18,787 (私の声)私は肉欲には負けぬ 26 00:01:18,912 --> 00:01:21,206 私が 今 すべきことは 虚飾を取り払い― 27 00:01:21,331 --> 00:01:23,541 ありのままの自分を さらけ出すことだ 28 00:01:23,708 --> 00:01:25,960 景子さん 待っていてくれ! 29 00:01:26,503 --> 00:01:32,509 ♪~ 30 00:02:49,085 --> 00:02:55,091 ~♪ 31 00:03:02,181 --> 00:03:04,601 (私の声) 当時 ピカピカの大学1回生の 私の目の前には 32 00:03:04,726 --> 00:03:07,395 薔薇色(ばらいろ)のキャンパスライフへの扉が 無数に開かれていた 33 00:03:07,520 --> 00:03:09,397 しかし 1つのサークルに 身を捧(ささ)げるということは― 34 00:03:09,522 --> 00:03:10,565 ともすれば 大学生活を― 35 00:03:10,690 --> 00:03:12,400 丸ごと棒に振るということにも なりかねない 36 00:03:12,525 --> 00:03:15,194 リスクは分散すべし 複数のサークルに参加して― 37 00:03:15,320 --> 00:03:17,739 多角的な薔薇色の キャンパスライフを送るのだ 38 00:03:20,658 --> 00:03:24,329 もともと インドア派である私は 読書を通じて出会いを求める 39 00:03:25,872 --> 00:03:28,875 本は海 活字の大海原に 今こそ船出(ふなで)するのだ 40 00:03:29,000 --> 00:03:31,711 人生の波が 風が 悲しみの雨 苦難の嵐 41 00:03:31,836 --> 00:03:35,215 絶望のサルガッソー 出会いと別れのリアス式海岸 42 00:03:41,679 --> 00:03:43,348 希望の朝日 43 00:03:45,141 --> 00:03:47,227 そして ある日 一艘(いっそう)の小舟と出会う 44 00:03:47,352 --> 00:03:49,354 その舟には黒髪の乙女が 45 00:03:56,361 --> 00:03:59,530 静かだ 読書というものは そもそもが一人旅である 46 00:03:59,656 --> 00:04:01,824 しかし これは あまりにも 静かすぎるではないか 47 00:04:03,701 --> 00:04:06,537 これでは 恋も芽生えない 太平洋 独りぼっちだ! 48 00:04:11,751 --> 00:04:14,379 (小津(おづ))毎度 おおきに 49 00:04:15,338 --> 00:04:17,089 これ よかったら 読んでみてください 50 00:04:17,632 --> 00:04:22,595 愚にもつかぬ青春小説ですが あなたの反面教師代わりに どうぞ 51 00:04:22,720 --> 00:04:24,013 やかましい! 52 00:04:26,182 --> 00:04:29,519 (私の声) 古本屋で購入したものだが もう要らないから読めという 53 00:04:29,644 --> 00:04:32,021 その内容は 愚にもつかぬ 青春小説であったが― 54 00:04:32,146 --> 00:04:35,275 最後のページに美しい筆跡で 住所と名前が書いてあった 55 00:04:35,400 --> 00:04:36,943 どうやら 元の持ち主らしい 56 00:04:37,068 --> 00:04:38,861 樋口(ひぐち)景子さんという その女性のことが― 57 00:04:38,987 --> 00:04:40,029 妙に気になった 58 00:04:40,780 --> 00:04:43,866 何を隠そう 私は かねてより 文通に憧れていたのである 59 00:04:43,992 --> 00:04:45,535 いつの日か 思いがけぬ好機を得て― 60 00:04:45,660 --> 00:04:48,538 典雅な文通をしたいなと夢見て 私はウズウズしていた 61 00:04:48,663 --> 00:04:50,540 この思いを 以前 小津に漏らした時… 62 00:04:50,665 --> 00:04:53,710 それで 見知らぬ女性に 卑猥(ひわい)な言葉を送りつけて― 63 00:04:53,835 --> 00:04:55,295 興奮するんでしょう? 64 00:04:55,420 --> 00:04:58,589 まったく 手の付けられない エロなんだから 困ってしまう 65 00:04:58,715 --> 00:05:00,591 この桃色筆まめ野郎 66 00:05:00,717 --> 00:05:02,927 (私の声)…と さんざん 変態呼ばわりされた 67 00:05:03,428 --> 00:05:05,221 しかし これは絶好の機会と見た 68 00:05:05,346 --> 00:05:06,973 これこそ 天の采配ではないのか 69 00:05:07,098 --> 00:05:10,727 見知らぬ女性と文通を開始する 千載一遇の大好機ではないのか 70 00:05:11,436 --> 00:05:13,646 …とはいえ 唐突に手紙を送りつけるのは無粋 71 00:05:13,771 --> 00:05:15,273 さもなくば 変態である 72 00:05:15,398 --> 00:05:16,649 そこで 私は美しく― 73 00:05:16,774 --> 00:05:18,943 かつ この変態的所業を 補って余りあるほどに― 74 00:05:19,068 --> 00:05:20,987 誠実さに あふれた便箋(びんせん)を購入し― 75 00:05:21,112 --> 00:05:23,948 実に当たり障りのない内容の 手紙を書いた 76 00:05:24,073 --> 00:05:26,784 唐突に手紙を送りつける非礼を まず 丁寧に詫(わ)び 77 00:05:26,909 --> 00:05:29,037 自分が真面目に学業に励む 学生であることを― 78 00:05:29,162 --> 00:05:30,121 さらりと書き添え 79 00:05:30,246 --> 00:05:31,414 読み終えた小説について― 80 00:05:31,539 --> 00:05:33,875 褒めるでもなく けなすでもない感想を書き加え 81 00:05:34,000 --> 00:05:36,544 あえて 返信が欲しいなどとは 一言も書かなかった 82 00:05:36,669 --> 00:05:38,796 あまり長々と書くと 変態が匂いたつので― 83 00:05:38,921 --> 00:05:42,133 推敲(すいこう)に推敲を重ねて 便箋1枚半に まとめ上げた 84 00:05:50,767 --> 00:05:51,851 (私の声) この風紀紊乱(ふうきびんらん)の世で 85 00:05:51,976 --> 00:05:53,978 見ず知らずの他人から 送ってよこした手紙に― 86 00:05:54,103 --> 00:05:56,272 返事をするのは 相当な決意を必要とする 87 00:05:56,397 --> 00:06:00,276 蝶(ちょう)よ 花よと育てられた 深窓の ご令嬢であれば なおのことだ 88 00:06:00,401 --> 00:06:02,278 もし 返事が来なくても 傷つかないようにと― 89 00:06:02,403 --> 00:06:03,821 私は覚悟していた 90 00:06:10,912 --> 00:06:13,748 (景子さんの声)“拝啓 お手紙ありがとうございます” 91 00:06:13,873 --> 00:06:15,833 (私の声)その手紙には 景子さん自身のことが 92 00:06:15,958 --> 00:06:17,001 控えめに つづられ― 93 00:06:17,126 --> 00:06:20,671 彼女が麗しの 黒髪の乙女であることが読み取れた 94 00:06:21,255 --> 00:06:22,465 ドンピシャだ! 95 00:06:23,508 --> 00:06:25,218 (私の声) こうしてウソのように 簡単な きっかけから 96 00:06:25,343 --> 00:06:28,596 我々の2年間にわたる 文通の火ぶたが切られたのだ 97 00:06:30,848 --> 00:06:33,059 “ひと足先に 夏が やってきたような―” 98 00:06:33,184 --> 00:06:35,561 “蒸し暑い日々が続いていますね” 99 00:06:35,770 --> 00:06:38,231 “私の下宿は なかなか風が通らないので” 100 00:06:38,356 --> 00:06:39,857 “余計 暑いです” 101 00:06:41,609 --> 00:06:43,361 (景子さんの声) “葵祭(あおいまつり)が終わったと思ったら―” 102 00:06:43,486 --> 00:06:45,571 “急に蒸し暑くなってきましたね” 103 00:06:45,696 --> 00:06:49,617 “梅雨(つゆ)入りの前に 夏の飛び地へ 迷い込んだような気がします” 104 00:06:49,867 --> 00:06:52,245 “大学で自由に 勉強できるということは” 105 00:06:52,370 --> 00:06:54,497 “とても すばらしいことだと思います” 106 00:06:54,789 --> 00:06:58,042 “大学では どんな研究を なさっているのですか?” 107 00:06:58,793 --> 00:07:01,420 (私の声)“研究というほど 大それたものでは ないのですが” 108 00:07:01,546 --> 00:07:03,506 “農学を専攻しております” 109 00:07:03,923 --> 00:07:06,134 “科学とは興味深い世界です” 110 00:07:06,259 --> 00:07:07,176 “生半可(なまはんか)なことでは―” 111 00:07:07,301 --> 00:07:09,220 “全てを見渡すことが できなくなったのが―” 112 00:07:09,345 --> 00:07:10,930 “残念に思われますが” 113 00:07:11,055 --> 00:07:14,434 “だからこそ 今の私たちの生活が あるわけなので” 114 00:07:14,559 --> 00:07:16,060 “贅沢(ぜいたく)は言えません” 115 00:07:17,186 --> 00:07:19,689 (景子さんの声) “ステキな勉強を なさっているのですね” 116 00:07:19,814 --> 00:07:21,107 “私のほうは この間―” 117 00:07:21,232 --> 00:07:24,152 “日本に3年いた 講師の方が 帰国することになって” 118 00:07:24,277 --> 00:07:27,613 “その送別会が 御池通(おいけどおり)の アイリッシュパブで開かれました” 119 00:07:28,156 --> 00:07:30,616 “私は お酒が 飲めないのですけれども” 120 00:07:30,741 --> 00:07:33,536 “白身魚の揚げ物が とても おいしゅうございました” 121 00:07:35,538 --> 00:07:37,790 (私の声) “アイリッシュパブへは 行ったことが ないのですが” 122 00:07:37,915 --> 00:07:39,041 “一度 行ってみたいものです” 123 00:07:39,834 --> 00:07:42,128 “英国の文化には とても興味があります” 124 00:07:42,253 --> 00:07:44,839 “いつか本場で私の語学が どれほど通用するのかを―” 125 00:07:44,964 --> 00:07:46,549 “試してみたく思っています” 126 00:07:47,133 --> 00:07:49,969 “父の仕事の都合で 幼少期はニューヨークで過ごし” 127 00:07:50,094 --> 00:07:51,971 “マイルス・デイビス マジック・ジョンソン” 128 00:07:52,096 --> 00:07:54,056 “(古いですね)” 129 00:07:54,182 --> 00:07:57,101 “…に 憧れて育ち スケートも そこで覚えました” 130 00:07:57,226 --> 00:07:58,352 “その頃の体験を生かして―” 131 00:07:58,478 --> 00:08:01,022 “今は インカレサークルで 英会話を教えています” 132 00:08:01,147 --> 00:08:05,776 “私の経験が少しでも 学生の 彼らの役に立てばと思っています” 133 00:08:06,736 --> 00:08:09,155 (景子さんの声)“海外生活を なさっていたんですね” 134 00:08:09,280 --> 00:08:10,865 “私の憧れです” 135 00:08:10,990 --> 00:08:13,117 “ただ あまり 勉強に根(こん)を詰めすぎると―” 136 00:08:13,242 --> 00:08:16,662 “体に良くありません ご無理なさらぬよう” 137 00:08:16,996 --> 00:08:18,664 (私の声) “ご心配 ありがとうございます” 138 00:08:18,789 --> 00:08:21,626 “おっしゃるとおり できるだけ 運動は するようにしています” 139 00:08:21,751 --> 00:08:23,044 “実は 息抜きがてら―” 140 00:08:23,169 --> 00:08:25,046 “アクション俳優も たしなんでいます” 141 00:08:25,171 --> 00:08:27,256 “子供っぽいと 笑われるかもしれませんが” 142 00:08:27,381 --> 00:08:29,050 “ヒーローものの番組です” 143 00:08:29,175 --> 00:08:31,427 “鍛えた体を 生かす機会を得ると同時に―” 144 00:08:31,552 --> 00:08:33,679 “子供たちに 夢を与えることができる” 145 00:08:33,804 --> 00:08:35,932 “なかなか やりがいのある仕事です” 146 00:08:36,057 --> 00:08:38,851 “正義は勝つ! …と 子供たちに教えたい” 147 00:08:38,976 --> 00:08:42,772 (子供たち) ♪ そーれ そーれ モチグマン 148 00:08:43,063 --> 00:08:47,401 ♪ 誰も倒さず 誰も傷つけず 149 00:08:47,568 --> 00:08:52,198 ♪ いつの間にか      もめごと 鎮め 150 00:08:52,323 --> 00:08:54,200 ♪ だけど 強いぞ 151 00:08:54,325 --> 00:08:56,327 (子供)あっ モチグマンを… (子供たち)助けろ! 152 00:08:56,452 --> 00:08:59,205 (司会のお姉さん) あらら? どうしたのー? 153 00:08:59,830 --> 00:09:02,208 お姉さんを かどわかそうとした 悪者たちね! 154 00:09:02,333 --> 00:09:05,211 さあ みんなで改心させよう! 155 00:09:05,336 --> 00:09:09,215 (子供たち) 改心しろ! 改心しろ! 改心しろ! 156 00:09:09,632 --> 00:09:12,134 改心しろ! 改心しろ! 157 00:09:12,260 --> 00:09:15,012 見て 逃げてくぞー! 158 00:09:15,471 --> 00:09:17,139 よかった よかった! 159 00:09:17,265 --> 00:09:18,099 (子供たちの歓声) 160 00:09:18,224 --> 00:09:20,142 (子供たち) ありがとう モチグマン! 161 00:09:21,018 --> 00:09:21,852 ああっ 162 00:09:25,523 --> 00:09:27,149 ありがとう 子供たち! 163 00:09:27,275 --> 00:09:28,401 (子供)だあれ? 164 00:09:28,526 --> 00:09:30,903 (子供1)きしょーい (子供2)変態じゃないの? 165 00:09:31,779 --> 00:09:34,031 (景子さんの声) “すばらしい活動だと思います” 166 00:09:34,156 --> 00:09:38,202 “実は 私も子供を元気づける ヒーローは大好きなのです” 167 00:09:38,536 --> 00:09:41,664 “私こそ 子供っぽくて お恥ずかしいのですが” 168 00:09:42,290 --> 00:09:45,084 (私の声)手紙が届くたび 景子さんの人柄が垣間見えてくる 169 00:09:45,209 --> 00:09:47,837 それは まさしく 私の理想というべき女性像であった 170 00:09:47,962 --> 00:09:51,424 勢い 私も自分のことを なるべく良く思われるように書いた 171 00:09:51,549 --> 00:09:52,967 多少 美化したところもあるが― 172 00:09:53,092 --> 00:09:55,219 これは むしろ シャレた演出というべきであろう 173 00:09:55,344 --> 00:09:59,599 なんか 最近 ニヤニヤしてますねえ 何か有意義なことでも? 174 00:09:59,724 --> 00:10:03,144 有意義も有意義だ お前に関係ないことだが 175 00:10:03,269 --> 00:10:05,354 あらら あなたらしくもない 176 00:10:05,479 --> 00:10:08,399 おおかた 見ず知らずの女性と 文通でも してるんでしょ? 177 00:10:08,524 --> 00:10:09,692 なぜ それを… 178 00:10:09,817 --> 00:10:10,943 図星ですね 179 00:10:11,068 --> 00:10:12,695 まっ 根性なしの あなたには― 180 00:10:12,820 --> 00:10:15,531 文通という手段は ピッタリかもしれませんが 181 00:10:15,656 --> 00:10:17,992 私は お前が考えてるような 不埒(ふらち)なことはせん! 182 00:10:18,117 --> 00:10:20,286 またまた 僕には分かっています 183 00:10:20,411 --> 00:10:22,455 あなたの半分はエロで出来ている 184 00:10:22,580 --> 00:10:24,874 今にも 会いたくて もんもんと してるくせに 185 00:10:24,999 --> 00:10:26,792 お前には分かるまい 186 00:10:26,917 --> 00:10:29,170 これはプラトニックな関係なんだ! 187 00:10:29,295 --> 00:10:30,296 (私の声) …とは言ったものの 188 00:10:30,421 --> 00:10:33,507 私は文通以外にも 2人の女性と親交を深めていた 189 00:10:33,633 --> 00:10:36,469 もっと気持ちに 身を任せれば いいのに 190 00:10:37,011 --> 00:10:39,472 (私の声) 羽貫さんの英語は 気持ちに 身を任せすぎであったが 191 00:10:39,597 --> 00:10:42,600 きちんと先生に伝わる 驚異のソウルトーク達人である 192 00:10:42,725 --> 00:10:46,729 (羽貫さん) へえ 小津くん 同回生なんだ スモールワールドね 193 00:10:46,854 --> 00:10:48,731 私の歯医者の クランケさんなのよ 194 00:10:48,856 --> 00:10:52,068 あいつの おせっかいには さんざんと迷惑をかけられました 195 00:10:52,193 --> 00:10:54,403 でしょうね それが趣味だもん 196 00:10:54,528 --> 00:10:56,947 そのくせ 自分のことは 秘密にするでしょう? 197 00:10:57,073 --> 00:10:59,492 私は あいつの下宿も 知らんのですよ 198 00:10:59,617 --> 00:11:01,035 何度 聞いても言わん 199 00:11:01,160 --> 00:11:03,371 あら 私は行ったことあるよ 200 00:11:03,496 --> 00:11:04,330 本当ですか? 201 00:11:04,455 --> 00:11:06,207 うん 浄土寺(じょうどじ)のね― 202 00:11:06,332 --> 00:11:08,501 白川通(しらかわどおり)から ちょっと入った所にある― 203 00:11:08,626 --> 00:11:10,336 砂糖菓子みたいなマンション 204 00:11:10,461 --> 00:11:13,172 小津君 ご両親から たんまり もらってるらしいのよ 205 00:11:13,297 --> 00:11:14,840 どこまでも腹の立つヤツ! 206 00:11:14,965 --> 00:11:18,219 (私の声) 気さくに話す羽貫さんは 年上で ステキな歯科衛生士 207 00:11:18,344 --> 00:11:20,888 教室のあと 毎回 カフェで お茶するようになっていた 208 00:11:24,934 --> 00:11:26,477 そして ヒーローショーが きっかけとなり― 209 00:11:26,602 --> 00:11:27,978 ある女性の世話をすることに 210 00:11:28,104 --> 00:11:30,773 (城ヶ崎(じょうがさき)先輩)紹介しよう 香織だ (私)あっ… 211 00:11:30,898 --> 00:11:35,027 (城ヶ崎先輩) 香織は とてもエレガントな女性だ 丁重に接してほしい 212 00:11:35,152 --> 00:11:38,781 じゃあ 留守をよろしく頼む 変な気 起こすなよ 213 00:11:38,906 --> 00:11:40,741 (私の声) 依頼主の城ヶ崎氏に言わせると 214 00:11:40,866 --> 00:11:43,327 私は筋金入りの 安全パイだということだった 215 00:11:43,452 --> 00:11:46,997 彼女の髪はキレイに なでつけられ きちんと上品な服を着ていた 216 00:11:47,123 --> 00:11:48,457 とても人形とは思えない 217 00:11:48,582 --> 00:11:50,459 この美しさに 城ヶ崎氏が夢中になるのも― 218 00:11:50,584 --> 00:11:51,961 分からぬではなかった 219 00:11:55,297 --> 00:11:57,174 小津君 お酒 飲まないよね 220 00:11:57,299 --> 00:11:58,217 羽貫さんは? 221 00:11:58,342 --> 00:12:01,011 迷惑かけちゃうから 親しい人としか飲まないの 222 00:12:01,429 --> 00:12:04,014 介抱など 私が いくらでも して差し上げますよ 223 00:12:04,598 --> 00:12:06,016 大変よお? 224 00:12:06,142 --> 00:12:07,518 (私の声)親しい人か… 225 00:12:07,893 --> 00:12:10,146 私は まだ そのカテゴリーに入っていない 226 00:12:10,271 --> 00:12:11,981 いや いつの日か 羽貫さんと― 227 00:12:12,106 --> 00:12:14,900 山崎(やまざき)蒸留所のウイスキーを 樽(たる)ごと飲み干すのだ! 228 00:12:16,277 --> 00:12:17,403 (ドアをたたく音) (私)あっ 229 00:12:17,528 --> 00:12:18,487 うわ… 230 00:12:19,405 --> 00:12:21,157 くっさいな お前んち 231 00:12:21,282 --> 00:12:23,909 (私の声)古くから続く “自虐的 代理代理戦争”の戦いで 232 00:12:24,034 --> 00:12:26,871 敵が城ヶ崎氏の下宿に 無断で忍び込み 隠しカメラで― 233 00:12:26,996 --> 00:12:29,123 城ヶ崎氏が 香織さんを めでているシーンを撮って― 234 00:12:29,248 --> 00:12:30,624 暴露上映したという 235 00:12:31,208 --> 00:12:33,752 お前のタマでは そんなこと できんだろうが 236 00:12:33,878 --> 00:12:35,671 俺の下宿は どうにも物騒だ 237 00:12:35,796 --> 00:12:37,673 香織を ここで しばらく預かっておいてくれ 238 00:12:39,133 --> 00:12:40,217 香織 ごめんね 239 00:12:40,342 --> 00:12:43,053 薄汚い所だけど しばらくの辛抱だから 240 00:12:44,472 --> 00:12:46,849 (私の声) 突然の同棲(どうせい)生活が始まった 241 00:12:47,933 --> 00:12:50,352 恋愛双六(すごろく)が そうした展開を見せる一方で― 242 00:12:50,478 --> 00:12:53,063 景子さんとの手紙の やりとりも 順調に続いていた 243 00:12:53,647 --> 00:12:55,399 文通には2つの鉄則がある 244 00:12:55,524 --> 00:12:57,818 1つは 必ず手書きの手紙であるということ 245 00:12:57,943 --> 00:12:59,403 そして もう1つは どんなことがあっても― 246 00:12:59,528 --> 00:13:02,198 たとえ 地獄の釜が開こうとも 世界の終わりが来ようとも― 247 00:13:02,323 --> 00:13:04,325 相手に会ってはいけない ということである 248 00:13:04,450 --> 00:13:06,243 …とはいえ 相手のことが 気になってしまうのも― 249 00:13:06,368 --> 00:13:07,369 また人情である 250 00:13:07,495 --> 00:13:08,871 彼女は どんな女性であろう? 251 00:13:08,996 --> 00:13:11,248 どんな服を着て どんな家に住み どんなふうに歩き― 252 00:13:11,373 --> 00:13:14,543 どんな姿をしているのであろう? もっと知りたい 253 00:13:15,127 --> 00:13:17,129 フッ… あっ? 254 00:13:17,254 --> 00:13:20,883 (私の声) 私は 一度だけ 彼女の住所に 足を向けたことがある 255 00:13:21,008 --> 00:13:22,134 魔が差したのだ 256 00:13:29,808 --> 00:13:31,101 (明石(あかし)さん) 何をしているのですか? 257 00:13:31,227 --> 00:13:33,270 (私) あっ ああ… すみません! 258 00:13:34,647 --> 00:13:35,814 (私の声)明石さんではないか 259 00:13:35,940 --> 00:13:37,775 私と気付かなかったであろうか? 260 00:13:38,359 --> 00:13:40,528 明石さんは 私の1つ下の学年であり― 261 00:13:40,653 --> 00:13:42,154 小津と同じ工学部である 262 00:13:42,279 --> 00:13:44,198 なぜ 下鴨幽水荘(しもがもゆうすいそう)の2階に居す― 263 00:13:44,323 --> 00:13:46,325 師匠と呼ばれる人物の元へ 出入りし 264 00:13:46,450 --> 00:13:48,327 小津のような男と つるむ羽目(はめ)になったのか― 265 00:13:48,452 --> 00:13:50,037 問い詰めてみたいと思っていた 266 00:13:50,162 --> 00:13:52,081 そんなこんなで このまま 景子さんとは― 267 00:13:52,206 --> 00:13:54,542 プラトニックな関係が 続くのかと思われたが… 268 00:13:55,292 --> 00:13:58,504 (景子さんの声)“前略 すっかり春めいてまいりましたね” 269 00:13:58,629 --> 00:14:01,090 “私たちが こうして 手紙の やりとりを始めてから―” 270 00:14:01,215 --> 00:14:03,175 “もう2年になります” 271 00:14:03,300 --> 00:14:06,387 “つきましては あなたに お伝えしたいことがあります” 272 00:14:06,679 --> 00:14:09,139 “よければ 一度 お目に かかれませんでしょうか?” 273 00:14:09,265 --> 00:14:11,141 ヒャッホー! 274 00:14:11,267 --> 00:14:14,645 (私の声) 彼女を本気にさせてしまったのは 私の文才の たまものであろう 275 00:14:14,770 --> 00:14:16,146 ことごとく 罪な男である 276 00:14:17,523 --> 00:14:19,233 しかし 彼女には会えない 277 00:14:19,358 --> 00:14:21,861 この2年間で 手紙の中の私は一人歩きし― 278 00:14:21,986 --> 00:14:24,363 現実の私を大きく引き離していた 279 00:14:24,488 --> 00:14:27,074 いつか 景子さんと会う暁には 手紙に沿うように― 280 00:14:27,199 --> 00:14:28,951 自らを高めている 予定だったのだが― 281 00:14:29,076 --> 00:14:32,037 いつしか すっかり 絵空事に なってしまっていた 282 00:14:32,663 --> 00:14:34,290 行けるぜー! 283 00:14:38,294 --> 00:14:40,462 (私の声)景子さんを 幻滅させることは できない 284 00:14:40,588 --> 00:14:43,382 私はウソをつきすぎた 会わす顔がない 285 00:14:43,632 --> 00:14:46,302 しかし 彼女は勇気を出して 会いたいと書いてくれたのだ 286 00:14:46,427 --> 00:14:48,304 男の私が グズグズしていて どうする 287 00:14:48,429 --> 00:14:49,471 今からでも遅くない 288 00:14:49,597 --> 00:14:51,807 私は手紙の中の私になるのだ そうだ! 289 00:14:52,266 --> 00:14:53,267 やってみせる! 290 00:14:53,392 --> 00:14:55,728 そして 彼女に ふさわしい男になるのだ! 291 00:14:57,771 --> 00:14:59,732 (私の声)しかし ハードルは あまりにも高すぎた 292 00:14:59,857 --> 00:15:02,693 なにゆえ 私は あのようなことを 書いたのだろうか? 293 00:15:03,652 --> 00:15:05,696 景子さんからは 日々 催促の手紙が届いたが― 294 00:15:05,821 --> 00:15:07,531 はぐらかし続けるしかなかった 295 00:15:07,656 --> 00:15:09,700 どう? 今日 飲みに行かない? 296 00:15:10,618 --> 00:15:12,745 (私の声) とうとう 羽貫さんから 飲みに誘われた 297 00:15:12,870 --> 00:15:15,539 親しい間柄という お墨付きを もらったということだ 298 00:15:15,664 --> 00:15:17,041 しかし! 299 00:15:17,666 --> 00:15:19,543 今日は ちょっとレポートがあるので 300 00:15:19,668 --> 00:15:21,003 そっか… 301 00:15:22,254 --> 00:15:24,632 うん レポート 頑張ってね 302 00:15:37,561 --> 00:15:39,063 (私の声) この待ち合わせが 今夜なのだ 303 00:15:39,188 --> 00:15:41,440 そして 更に 今日は 香織さんの最後の日でもある 304 00:15:42,024 --> 00:15:44,777 先日 城ヶ崎氏が 香織さんを引き取りにくると言った 305 00:15:44,902 --> 00:15:47,071 私たちは 引きはがされてしまうのだ 306 00:15:47,446 --> 00:15:49,949 (私) 私のことを忘れてしまうかな 307 00:15:50,699 --> 00:15:53,410 (私の声)3人の女性から 同時に決断を迫られている 308 00:15:53,535 --> 00:15:54,453 これまでの2年間― 309 00:15:54,578 --> 00:15:56,622 考えてみれば なんと甘い生活だったのか 310 00:15:56,747 --> 00:15:58,666 ここへ来て とうとう 全てがクライマックスを― 311 00:15:58,791 --> 00:15:59,959 迎えようとしている 312 00:16:00,084 --> 00:16:01,460 羽貫さんと飲みに行くか? 313 00:16:01,585 --> 00:16:02,962 香織さんを連れて 逃げるか? 314 00:16:03,087 --> 00:16:05,464 景子さんに会って 全てを さらけ出すか? 315 00:16:05,589 --> 00:16:09,301 八面六臂(はちめんろっぴ)の達人でなければ 誰か1人に絞らなければならない 316 00:16:09,843 --> 00:16:10,886 キモくても― 317 00:16:11,011 --> 00:16:14,264 こうして 毎日 誘ってくれる男が いいのかな? 318 00:16:14,848 --> 00:16:16,225 (私の声) あれでは エロ歯科医の毒牙(どくが)に 319 00:16:16,350 --> 00:16:18,227 落ちてしまいかねない 気配であった 320 00:16:18,352 --> 00:16:20,980 羽貫さんは心の よりどころが 欲しかったに違いない 321 00:16:21,105 --> 00:16:23,357 あれでは あのエロ歯科医の 誘いにも没落しかねない 322 00:16:23,482 --> 00:16:24,566 これは緊急事態である 323 00:16:24,692 --> 00:16:26,652 危機的状況を みすみす放ってはおけない 324 00:16:26,777 --> 00:16:28,028 とりあえず お婆(ばあ)に相談だ! 325 00:16:28,153 --> 00:16:29,780 (占い婆(ばば))はい 6千円 326 00:16:38,914 --> 00:16:41,917 覚悟を決めた 本当の自分を見てもらうのだ! 327 00:16:43,168 --> 00:16:45,045 (荒い息遣い) 328 00:16:45,170 --> 00:16:46,797 (占い婆)誰か お捜しですかね? 329 00:16:46,922 --> 00:16:48,424 お婆! あんた さっきも… 330 00:16:48,549 --> 00:16:52,052 好機は もう既に あなたの目の前に ぶら下がってございます 331 00:16:53,512 --> 00:16:56,390 (ジョニー) 家だ 家しかないぜ 奇襲しろ! 332 00:16:56,515 --> 00:17:00,185 バカな! 文通相手の自宅を 訪ねるなど 言語道断 333 00:17:00,310 --> 00:17:03,230 最悪のルール違反ではないか 断じて できない! 334 00:17:05,733 --> 00:17:08,193 行っけー! ヤッホ~ 335 00:17:08,986 --> 00:17:10,738 (私の声) ルールとは破るものだ 336 00:17:11,155 --> 00:17:13,949 あの306号室に 景子さんが住んでいる 337 00:17:14,074 --> 00:17:17,493 私は ありのままの私で 景子さんに ぶつかってみせる! 338 00:17:18,579 --> 00:17:19,496 ハッ 339 00:17:20,914 --> 00:17:24,209 (私の声) その時 私が見た景子さんは とても不気味な顔をしていた 340 00:17:24,334 --> 00:17:25,461 不摂生をしているらしく― 341 00:17:25,586 --> 00:17:27,963 月の裏側から来た 人間のような顔をしている 342 00:17:28,088 --> 00:17:30,591 他人の不幸を こいねがうような 不吉な笑みを浮かべていて― 343 00:17:30,716 --> 00:17:32,342 妖怪 ぬらりひょんと 言うべきだろう 344 00:17:32,468 --> 00:17:34,928 まるで もう小津である 小津と うり二つである 345 00:17:35,054 --> 00:17:37,347 むしろ 小津そのものである 小津本人である! 346 00:17:37,473 --> 00:17:38,307 ああ… 347 00:17:38,432 --> 00:17:41,101 (私の声) 私の頭の中に導き出された結論を のみ込むには 348 00:17:41,226 --> 00:17:43,145 多大な精神の力を必要とした 349 00:17:43,270 --> 00:17:46,899 想像を絶する苦さに耐えるために 私は升1杯の角砂糖を欲した 350 00:17:47,357 --> 00:17:49,109 樋口景子さんは存在しない 351 00:17:49,234 --> 00:17:51,570 私は2年もの間 小津と文通していたのだ 352 00:17:51,695 --> 00:17:54,114 これ以上 残酷な締めくくりは あるまい 353 00:17:54,531 --> 00:17:56,492 (明石さん)先輩 先輩ですね? 354 00:17:57,618 --> 00:17:58,619 明石さん 355 00:17:58,744 --> 00:18:00,204 (明石さん) だましていて ごめんなさい! 356 00:18:00,329 --> 00:18:01,288 あっ? 357 00:18:01,830 --> 00:18:05,334 申し訳ないですが 私も文通に加担していました 358 00:18:05,459 --> 00:18:07,836 小津先輩に頼まれて 代筆していたんです 359 00:18:08,962 --> 00:18:12,591 心苦しく思っていたものの なかなか言いだせなくて 360 00:18:12,716 --> 00:18:15,135 なんと… 明石さんであったか 361 00:18:15,260 --> 00:18:17,262 (明石さん) そうなんです すみません 362 00:18:17,387 --> 00:18:19,264 しかし 悪いのは全て小津だろう? 363 00:18:19,389 --> 00:18:22,643 いいえ 小津先輩は 途中で飽きてしまわれて― 364 00:18:22,768 --> 00:18:25,020 たまに いたずらを 企画されるだけで 365 00:18:25,145 --> 00:18:27,439 フェードアウトするのも 忍びなく思い― 366 00:18:27,564 --> 00:18:30,651 私が景子さんを引き継いで 手紙を書いていたのです 367 00:18:31,068 --> 00:18:32,402 そうであったか 368 00:18:32,528 --> 00:18:34,988 (明石さん) 景子さんのキャラクターを つかむのには苦労しました 369 00:18:35,114 --> 00:18:37,783 何せ 小津先輩は 先輩の好みを熟知されてて― 370 00:18:37,908 --> 00:18:39,910 それに合わせて 設定を考えられてましたから 371 00:18:40,035 --> 00:18:41,203 (私の声) 確かに 私にとって 372 00:18:41,328 --> 00:18:43,580 景子さんはハマりすぎるほど 理想の女性であった 373 00:18:43,705 --> 00:18:45,666 まさか 小津が作り出したものだったとは 374 00:18:45,791 --> 00:18:48,252 待ち合わせに来られなかったので もしかすると― 375 00:18:48,377 --> 00:18:51,421 ここへ 訪ねてくるかもしれないと 思って 張っていました 376 00:18:52,548 --> 00:18:53,382 ああ… 377 00:18:53,507 --> 00:18:56,552 (明石さん)私 先輩に 助けられたことが あるんです 378 00:18:56,677 --> 00:18:58,470 モチグマン・ショーのことを 覚えてますか? 379 00:18:59,054 --> 00:19:01,056 (私)あれは君だったのか 380 00:19:01,598 --> 00:19:03,392 (明石さん) 私は まだ高校生でした 381 00:19:03,767 --> 00:19:06,937 あの時 先輩は とても格好よかったです 382 00:19:08,188 --> 00:19:11,733 あれは 着ぐるみを着ていたから できたのであって― 383 00:19:12,192 --> 00:19:13,402 ホントの私は… 384 00:19:13,986 --> 00:19:16,321 文通は それなりに楽しかったのです 385 00:19:16,446 --> 00:19:18,615 確かに 先輩は ちょっと見栄っ張りでしたが 386 00:19:18,740 --> 00:19:21,827 私もウソをついていたので そこは おあいこですね 387 00:19:22,995 --> 00:19:24,121 あ? 388 00:19:26,415 --> 00:19:29,376 (明石さん) これは5人組なのですが 1匹 なくしてしまって 389 00:19:29,501 --> 00:19:33,130 モチグマンは本当に好きなのです お恥ずかしいですが 390 00:19:35,549 --> 00:19:38,677 好機は いつでも 目の前に ぶら下がってございます 391 00:19:53,442 --> 00:19:55,402 (ジョニーの声) なんで まっすぐ 帰ってきちゃったんだ? 392 00:19:55,527 --> 00:19:56,904 いい感じだったじゃねえか! 393 00:19:57,029 --> 00:19:59,156 あのまま デートに 誘っちまえば よかったのに! 394 00:20:02,492 --> 00:20:03,535 (私)勘違いするな 395 00:20:03,660 --> 00:20:05,913 明石さんは あくまでも モチグマンが好きなだけだ 396 00:20:06,038 --> 00:20:07,289 私ではない 397 00:20:07,414 --> 00:20:10,918 チェーッ ちぎれて 飛んでいきてえよー! 398 00:20:26,516 --> 00:20:27,434 小津め! 399 00:20:27,559 --> 00:20:28,852 (私の声)考えてみれば 景子さんといい 400 00:20:28,977 --> 00:20:30,229 羽貫さん 香織さんといい― 401 00:20:30,354 --> 00:20:32,022 ひょっとして 私は 小津の手のひらの上で― 402 00:20:32,147 --> 00:20:33,523 踊らされている だけではないのか? 403 00:20:33,649 --> 00:20:34,900 あの くされ妖怪め! 404 00:20:35,025 --> 00:20:37,402 他人の不幸をおかずに 飯が3杯 食えるという男だ 405 00:20:37,527 --> 00:20:39,905 思えば この2年 ヤツは さんざん私をおかずとして― 406 00:20:40,030 --> 00:20:41,949 うまい飯を むさぼり食ってきたに違いない 407 00:20:42,074 --> 00:20:43,367 万死に値する男だ 408 00:20:43,492 --> 00:20:45,244 コーヒーひきにかけて 粉々にしてやる! 409 00:20:45,702 --> 00:20:48,372 1人で丸ごとのカステラを 黙々と食べるという行為が― 410 00:20:48,497 --> 00:20:50,040 かえって私の孤独地獄を深め― 411 00:20:50,165 --> 00:20:53,001 私はカステラをモグモグやりながら 悪鬼の形相となった 412 00:20:53,126 --> 00:20:54,253 (私)うぐ… 413 00:20:54,711 --> 00:20:55,671 うう! 414 00:20:57,547 --> 00:20:58,882 (私の声) そうだ 勘違いするな 415 00:20:59,007 --> 00:21:01,843 私が ホレたのは あくまで 小津の作り上げた景子さんなのだ 416 00:21:01,969 --> 00:21:04,554 断じて 明石さんではない 論点をすり替えてはならぬ 417 00:21:04,680 --> 00:21:08,100 人恋しさに任せて 刹那(せつな)的に 相手を欲しがるなど言語道断 418 00:21:08,225 --> 00:21:10,060 結局 私は小津と どこまでも落ちていく― 419 00:21:10,185 --> 00:21:11,436 運命なのだ 420 00:21:11,561 --> 00:21:14,356 そう思うと なぜか不思議と ホッとしてしまう私がいた 421 00:21:14,481 --> 00:21:17,484 恋の表彰台は似合わない 私は これでいい 422 00:21:17,985 --> 00:21:19,027 …わけが ない! 423 00:21:19,152 --> 00:21:21,697 いかなる手を使っても 表彰台に上りたい! 424 00:21:30,998 --> 00:21:37,004 ♪~ 425 00:22:52,996 --> 00:22:59,002 ~♪